表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十六章~静かな森の妖精達~
285/333

第二百八十三話  熱戦 迫る銃弾を潜り抜けろ!


 ヴリトラ達はバロンの部隊のBL兵を全員倒した。だが、バロンは慌てる事無く隠していた幻影黒騎士団の黒騎兵達を動かす。更にそこへエリスとリーニョまで現れ、ダークエルフがレヴァート王国と同盟を結ぶ事を知らされる。小さな混乱が生まれる戦場でヴリトラ達はバロン部隊との二回戦を始めるのだった。

 時は遡り、集落前でヴリトラ達がBL兵を一人ずつ倒していく頃、森の入口前でアダンダラの部隊と戦っていたニーズヘッグ達の方でも戦況が変わり始めていた。ニーズヘッグ、ジルニトラ、ファフニールはバラバラになって九人のBL兵をそれぞれ三人ずつ相手にしており、敵の隙を伺いながら反撃している。

 木の陰に隠れながら敵の銃撃を凌いでいた。BL兵は横一列に並び、左からMP7、ミニミ、モスバーグを持ち、発砲しながら近づいて来る。ジルニトラは敵の位置を確認して次にどう動くかを考えた。


「・・・敵はMP7とミニミ、あとモスバーグを持っている。この状況なら、まずはショットガンを持つ奴を倒した方がいいわね」


 どう攻めるかを決めたジルニトラはサクリファイスを構えて飛び出すタイミングを計った。そして敵の銃撃の間にほんの僅かな間ができた瞬間、ジルニトラは木の陰から飛び出して敵の右側へ回り込む様に走り出す。BL兵達も姿を見せたジルニトラに向かって銃を構える。だがジルニトラは既に反撃の態勢に入っており、銃撃される前にBL兵達に向かってサクリファイスを撃った。

 ジルニトラの銃撃はモスバーグを持つBL兵に命中する。だが他の二人のBL兵は横へ跳んで銃撃をギリギリでかわした。そしてすぐにジルニトラへ反撃する。ジルニトラも全力で走ってBL兵達の銃撃をかわす。そして近くにある大きな岩の飛び込むとその岩を盾もして銃撃を凌ぐ。


「ちぇ、またさっきと同じ状態になっちゃったわ・・・」


 岩にもたれながら鋭い表情を見せるジルニトラ。BL兵達は銃を乱射しながらジルニラが隠れている岩へ近づいて行く。彼等に二度も同じ手が通用するとは思っていないジルニトラは次に行動するか頭の中で考える。そんな時、ふと自分の機械外の両腕を見てある事を思い出した。


「そうだ、折角だからあれを使ってみようかしら」


 何かを思いついたジルニトラはチラッとBL兵の様子を伺い行動を開始するタイミングを計る。そしてそのタイミングが来た瞬間、持っていたサクリファイスを頭上に戦く放り投げた。

 岩の陰から飛び出したサクリファイスを見てBL兵は驚きサクリファイスを見上げる。それの直後にジルニトラが岩の陰から飛び出す。ジルニトラに気付いたBL兵達はすぐにジルニトラに銃を向けて引き金を引こうとする。だがこの時のBL兵達はある疑問を抱えていた。ジルニトラの武器はカスタムライフルのサクリファイスのみ、それはブラッド・レクイエム社のデータから彼等も知っている。それなのにジルニトラが唯一の武器を手放して飛び出してきたのか理解できなかったのだ。


「さぁて、これを避けてみなさい!」


 ジルニトラはそう言って両手をBL兵達に向ける。それを見たBL兵達はジルニトラが機械外のレーザーを撃ってくるのだと感じ距離を取ろうとした。ジルニトラのレーザーは強力だが発射までに僅かな時間を消費する。その僅かな時間の間に体勢を整えればレーザーを避ける事も可能なのだ。BL兵達はその事も理解していた為、すぐにレーザーを回避する為の行動に移る。しかし、この時のジルニトラはレーザーを撃つつもりは無かったのだ。

 BL兵が回避行動を取ろうとしているのを見たジルニトラはニッと笑い、両手の指先をBL兵達に向ける。するとジルニトラの十本の指先に小さな穴が開き、何かが射出された。しかもそれはレーザーと違いすぐに発射できる物だった。射出された物はBL兵達の体に命中し、攻撃を受けた二人のBL兵はその場に倒れる。全ての敵を倒したジルニトラは小さく息を吐き、自分の手の指先を見た。


「へぇ、なかなかいいじゃない。DrドクターGGジージーもいい物を付けてくれたわね」


 七竜将の機械鎧を設計したDr.GGに感謝しながらジルニトラは倒れているBL兵達の下へ歩いて行く。倒れているBL兵を見ると彼等の体にはやや太めの針が何本も刺さっていた。この針こそがジルニトラの指先から射出された物だったのだ。

 実はジルニトラの機械鎧にはレーザー以外にニードルガンが内蔵されており、レーザーが使えない状況の時には威力は劣るが速くて連射ができるニードルガンを使うようにしている。今までは高威力のレーザーばかりを使っていた為、ニードルガンを使い機会がほとんどなかったのだ。

 指先の銃口が閉じるとジルニトラは落ちているサクリファイスを拾い上げる。


「さて、こっちは片付いたし、ニーズヘッグ達の救援に行かなくちゃね!」


 ジルニトラは遠くから聞こえる銃声を聞き、ニーズヘッグ達の下へ走り出した。

 その頃、ニーズヘッグはアスカロンを鞭状にしてBL兵達の銃撃を防ぎながら後退していた。ニーズヘッグの前にはMP7を持つBL兵が二人、ミニミを持つBL兵が一人立っており、ニーズヘッグに向かって乱射している。流石に短機関銃二丁と軽機関銃の銃撃を防ぐのは機械鎧兵士であるニーズヘッグでもきついのか彼の表情が少し歪んでいた。


「クッソォ、流石のこれだけの弾を弾くのはしんどいぜ。早いところ勝負を片付けないと!」


 ニーズヘッグは弾丸を弾きながら早く勝負をつける事を考える。ニーズヘッグはほぼ全ての弾丸を弾いているが、弾き損ねた弾丸はニーズヘッグの腕や腿を掠めたりしており、ニーズヘッグは既に傷だらけだった。だが、その傷も掠っただけなので重傷と言えるものは一つもない。銃撃を続ける三人のBL兵を見てニーズヘッグは次第にイライラして来たのか表情に鋭さが増していく。


「調子に乗るのも、いい加減にしろよっ!」


 怒鳴りつけたニーズヘッグは大きく右へ跳んでBL兵達の正面から移動する。そして跳んだ状態のまま左足の膝の装甲を開き、BL兵達に向かってマイクロ弾は発射した。マイクロ弾は真っ直ぐBL兵達は飛んで行き、BL達もマイクロ弾を撃つ落とそうとする。だがマイクロ弾が予想以上に早く近づいて来た為、撃てば爆発に巻き込まれてしまうと考え撃てなかった。結果、マイクロ弾は一人のBL兵に命中し爆発、他の二人も爆発に巻き込んだ。

 BL兵達を一掃したニーズヘッグは左膝を元に戻し、溜め息をつきながらマイクロ弾の爆発で上がった煙を見た。


「フゥ・・・流石に今回はちょっとしんどかったぜ・・・」


 久しぶりに窮地に立たされたニーズヘッグは敵を倒してホッとする。だがその時、上がっている煙の中から何かが飛び出して来た。よく見るとそれは特殊スーツを焦がし、MP7を持つBL兵だった。どうやら爆発の時に仲間が盾になってくれたおかげで彼だけは無事だったようだ。

 まだ生きていたBL兵を見て驚くニーズヘッグだったがすぐにアスカロンを剣状に戻して構え直した。


「まだ生きていたか・・・やっぱりそう都合のいいようにはいかないか」


 ニーズヘッグが呟くとBL兵はMP7を捨て、両腕の機械鎧の装甲を動かし、内蔵機銃と内蔵超振動短剣を出して構えた。どうやら今度は銃による攻撃だけではなく、内蔵されている超振動短剣も使って戦うつもりのようだ。


「今度は剣も使うのか・・・」


 BL兵が戦い方を変えたのを見てニーズヘッグも戦い方を変える事にしたのかアスカロンの構えを変える。その直後、BL兵は地を蹴りニーズヘッグに向かって跳んで行く。そして右腕の内蔵超振動短剣で攻撃した。ニーズヘッグは素早くアスカロンでBL兵の斬撃を防いだ。アスカロンと内蔵超振動短剣の刃が触れ合い、金属が削れる音と火花が周囲に広がる。両者は互いに何度も刃をぶつけながら攻防を繰り返し、その度に火花が二人の周りに飛び散った。

 しばらくするとBL兵が後ろへ跳び、距離を取りながら内蔵機銃を撃って来た。ニーズヘッグは銃撃をアスカロンで弾き、同じように後ろへ跳んで距離を作る。銃撃が止むと素早く右手に持っているアスカロンを左手に持ち替え、右手をバックパックに突っ込むと手榴弾を取り出して、安全ピンを抜かずにBL兵に向かって投げつける。そして手榴弾がBL兵の目の前まで飛んで行くと右腕の機械鎧の内蔵機銃を出して手榴弾を撃つ。撃たれた手榴弾はBL兵の目の前で爆発しBL兵を吹き飛ばした。流石に今度は爆発を防ぐ事はできず、まともに爆発を受けてそのまま倒れる。


「・・・フゥ、今度こそ終わったか」


 ニーズヘッグは内蔵機銃をしまいながらアスカロンを持ち直す。今度はさっきの様に突然敵が現れて驚かないよう油断せずに周囲を探り敵がいないかを調べる。そして周りに敵がいないのを確認するともう一度息を吐いた。


「よし、今度こそ敵はいないな」

「おーい!」


 遠くからジルニトラの声が聞こえ、ふと振り返ると自分に手を振りながら走って来るジルニトラの姿を見つける。


「ジルニトラ、生きてたか?」

「当ったり前でしょう?こんな事ぐらいで死ぬはずないじゃない」

「フッ、そう言えるくらいなら心配の必要もないな」

「ああぁ!何か引っかかる言い方ね?」


 ニーズヘッグのからかう様な口調にムッとするジルニトラ。そんな彼女の顔を見てニーズヘッグはニッと笑う。


「・・・て、今は楽しく話してる暇はないわよ?」

「っと、そうだったな。早いところファフニールとオロチ達の救援に行こう!」


 状況を思い出した二人は急いでまだ戦っているファフニール達の所へ向かう為走り出した。

 二人がファフニールが戦っている場所にやって来るとそこにはファフニールとさっきまでアリサ達の所にいたオロチが立っていた。オロチはファフニールと合流し二人でBL兵と戦っていたのだ。既に二人の周りではBL兵達が倒れており、勝負はついた後だった。


「あっ、ジルニトラ、ニーズヘッグ、無事だったんだね?」

「まぁね」

「怪我はないか?」

「ああ、大したことは無い。だが・・・」


 オロチは心配するニーズヘッグの体の傷を見て黙り込む。怪我の心配をするニーズヘッグ自身が傷を負っている為、複雑な気分になった。


「お前は少し怪我をしているな・・・」

「・・・言わないでくれよ。今回はマジできつかったんだからな」

「ただの修行不足だろう・・・」

「何だと!」

「二人とも、こんな時に喧嘩しないでよぉ!」


 言い合いを始めようとする二人を止めるファフニール。その隣ではジルニトラが呆れ顔で二人を見ていた。


「あっ、それよるもアリサ達はどうしたの?」

「・・・ッ!彼女達も機械鎧兵士と戦っていた・・・」


 オロチは大事な事を思い出してハッとアリサ達がいる方を向き、ニーズヘッグ達もフッとオロチが見ている方を向く。


「急いだほうがいいかもしれないわよ?今回の敵はかなりの重装備だからアリサ達だけじゃきついかも!」

「急ごう!アリサさん達が心配!」

「だな」


 四人はアリサ達を助ける為に一斉に走り出す。既にオロチがアリサ達から離れて十分近く経っていた。普通に考えれば大した時間の経過ではないが、戦場ではその僅かな時間すらも生死を大きく分ける重要なものなのだ。

 その頃アリサと白竜遊撃隊の騎士達は四人のBL兵達と激しい戦いを繰り広げていた。あれからずっと岩に隠れながらMP7で応戦していたが一向にBL兵達を倒せないでいる。ただただ弾薬は減っていくばかりでアリサ達は徐々に追い詰められていった。


「皆、弾はまだ残ってる!?」


 アリサがMP7の弾倉を新しいのに変えながら騎士達に尋ねる。騎士達も俯せになったり岩に隠れながら弾倉を交換していた。


「こ、こっちはもう殆ど残ってません!」

「こちらもあと弾倉が一つしか・・・」

「クウッ!マズイ、このままじゃオロチさん達が戻って来るまで持たない!」


 戦況が厳しい事に焦り出すアリサ。既にBL兵達は数m手前まで近づいてきており、いつ囲まれてもおかしくなかった。


「こうなったら、此処から移動して体勢を立て直すしか・・・」


 アリサがMP7をしまって腰の騎士剣を抜こうとする。だがその瞬間、今迄銃撃して来たBL兵達が銃撃を止め、一瞬にして岩の陰に隠れているアリサ達の正面に回り込んだ。しかもその手には超振動マチェットが握られており、接近戦闘態勢に入っていた。

 いきなり目の前に現れたBL兵達に驚くアリサ達。そんなアリサ達に構う事無くBL兵達は超振動マチェットを振り下ろした。アリサ達は咄嗟に回避した為、斬られる事は無かったがアリサ達が隠れていた岩には大きな切傷が生まれ、それを見たアリサ達は表情を固める。


「い、岩に切傷が・・・」

「これが超振動する剣の切れ味・・・」


 男性騎士とアリサが岩を軽く切った超振動マチェットに驚き震えた声を出す。改めて彼等はヴリトラ達の世界の武器がどれだけ優れているのかを理解する。そしてBL兵達は驚くアリサ達に攻撃を続けた。

 BL兵の一人が目の前にいるアリサに向かて超振動マチェットを振り下ろす。驚くアリサは咄嗟に騎士剣を抜いて振り下ろしを防ぐ。刃がぶつかり合い火花が飛び散る中、アリサは騎士剣で超振動マチェットを止める。だが機械鎧兵士の力に押され、アリサの表情が徐々に歪んでいく。それを見た男性騎士の一人がアリサを助けようと騎士剣を抜いてBL兵に攻撃しようとした。しかしそこへ別のBL兵が男性騎士へ超振動マチェットで攻撃を仕掛ける。BL兵の攻撃に気付いた男性騎士は驚きながらもなんとかその斬撃を騎士剣で止める。他の男性騎士達もBL兵達と剣を交え始めており、騎士と機械鎧兵士による剣の戦いが始まった。


「み、皆!」


 部下の騎士達がBL兵と戦っている姿を見たアリサは今自分が相手しているBL兵の超振動マチェットを押し返して距離を取る。態勢を立て直すとすぐに騎士剣を構え直しBL兵を睨む。BL兵もフルフェイスマスクの目を光らせながらアリサを見つめている。

 しばらく見つめ合っているとBL兵は地超振動マチェットを両手で持ち、アリサに向かって走り出した。そしてアリサの前まで来ると超振動マチェットで袈裟切りを放つ。アリサも騎士剣で袈裟切りを何とか防いだがその攻撃は重く、両腕に物凄い衝撃が走った。


「うううぅっ!」


 アリサは両腕からの衝撃に思わず声を漏らした。BL兵はアリサに休む間も与えずに連続攻撃を放った。何度も超振動マチェットの斬撃を止め、その度に腕から衝撃が伝わって来る。その衝撃がアリアの体力を少しずつ削っていった。


(お、重い!隊長は生身でこんな重い攻撃を何度も防いでいたの!?)


 ラピュスが機械鎧兵士になる前に何度もBL兵と戦い、この重い攻撃を防ぎながら彼等を倒していた事を考えるアリサは頭の中で呟きながら驚いた。戦っている自分だからこそBL兵の力はよく分かっている。分かっているからこそ驚いているのだ。


(こんな攻撃をする敵を生身の状態で倒したなんて・・・機械鎧兵士になる前の隊長って、どれだけ強かったのぉ!?)


 まだ自分の上官だった時のラピュスの強さに頭がこんがらがっていくアリサ。そんな事を考えていたせいでアリサの手の力がほんの少し緩んでしまう。その状態でBL兵の攻撃を受けていた為、騎士剣は弾かれてアリサの手から離れてしまった。


「あっ、しまった!」


 騎士剣は弾かれた事に気付き、アリサは弾かれた騎士剣を見ながら声を出す。そんなアリサにBL兵は超振動マチェットを構えながらゆっくりと迫って来た。


(もぉ~!何やってるのよ私っ!戦いの最中に考え事をするなんてぇ!)


 戦いに集中せずに別の事を考えていたという大きなミスをした事でアリサは自分を情けなく思う。ゆっくりと近づいて来るBL兵を見てアリサはゆっくりと後ろへ下がる。だがその時、足元にある石につまづき、アリサはその場で尻餅を付いてしまう。

 逃げる事もできなくなったアリサを見下ろすBL兵は超振動マチェットを振り上げて止めを刺そうとする。


(・・・ッ!オロチさん!)


 オロチの名を心の中で叫ぶアリサは目を閉じて俯く。そんなアリサにBL兵は超振動マチェットを振り下ろして攻撃しようとした。その時、BL兵の背後からオロチが現れ、斬月でBL兵の背中を攻撃する。BL兵は突然の背後からの攻撃に驚きた様子を見せなgら俯せに倒れて動かなくなる。

 目を開いたアリサは自分の隣に俯せになって倒れているBL兵を見て驚く。そして目の前に立っているオロチを見て更に驚いた。


「オ、オロチさん・・・」

「よく持ち堪えたな・・・」


 生き延びたアリサに静かなに声を掛けるオロチ。オロチがふとアリサの後ろを見てニーズヘッグ達が他のBL兵達を倒して男性騎士達を助けた姿を確認する。アリサも座り込んだまま振り返り部下達に無事を確認しホッとする。

 アリサはゆっくりと立ち上がり目の前で斬月を担いでいるオロチを見ると小さく頬を膨らませて怒り出す。


「もぉ~!オロチさん、酷いですよぉ!機械鎧兵士を私達に押し付けてどっかに行っちゃうなんてぇ!」

「私はお前達が私が戻るまでの間、持ち堪えられると信じていたから行ったんだ。現にお前達は私が戻って来るまで生き延びていただろう・・・」

「それって結果論じゃないんですかぁ!?もう少し遅かったら私達死んでたかもしれないんですよぉ?」


 アリサは無表情のオロチにツッコミを入れる様に怒る。確かに一歩間違えればアリサ達はやられていたかもしれない状態だったのだ。怒りたくなるのも無理はない。だがオロチは怒るアリサに冷静に対応した。


「お前は今までに何度も私達と共にブラッド・レクイエムと戦って来ただろう。その中で機械鎧兵士と戦う時もあった。お前達には十分機械鎧兵士との戦闘経験を積んでいたはずだ・・・」

「それは貴方達や隊長と一緒に戦ったからですよ。貴方達抜きで戦った事なんて一度もなかったんですから・・・」

「だがお前達は今回の戦いで私達の力に頼らずとも機械鎧兵士と戦い、生き延びる事ができた。これでお前達は私達がいなくても機械鎧兵士と戦えるようになったのだ。ラピュスやラランの様に楽に戦えるようになる日も遠くないはずだ・・・」

「むぅ~~!」


 上手く丸め込まれたような感じがするアリサは不満そうな顔をする。そこへニーズヘッグ達がやって来た。


「大丈夫か?」

「ああ、問題ない・・・」

「こっちはオロチさんのせいで死にかけましたけどね・・・」

「ハハハハ・・・それは災難だったな・・・」

「笑い事じゃないですよぉ!」

「ハハハ、すまない。だが、オロチもお前達の実力を信じていたというのは本当だ。今回は大目に見てやってくれ・・・」

「むぅ・・・・・・分かりましたよぉ」


 自分達を信じていたからオロチは離れたというニーズヘッグの言葉にアリサは頷く。その会話を見ていたジルニトラとファフニールは苦笑いを浮かべ、騎士達はジト目でニーズヘッグ達の会話を眺めている。やはり彼等も命を落とすかもしれなかったという状況に不満を抱いていたようだ。

 BL兵を全員倒し、残るは隊長のアダンダラだけとなった。ニーズヘッグ達は残ったアダンダラを倒す為に彼女がいる方を向く。アダンダラはニーズヘッグ達から20mほど離れた所にある丘の上でニーズヘッグ達を眺めていた。


「あらら、機械鎧兵士部隊は全滅かぁ・・・十四人も連れて行けば大丈夫かと思ったんだけど、この一年間、姿を消している間に随分と強くなったわね。それとも、うちの兵が弱くなったのかしら?」


 部下であるBL兵達がやられたにもかかわらず平然とした態度でニーズヘッグ達の様子を伺うアダンダラ。やはりブラッド・レクイエム社の幹部には部下を思う者は殆どいないようだ。

 アダンダラは歩きながら近づいて来るニーズヘッグ達の姿を見てクスクスと笑いながら両手を下す。すると両腕の後前腕部の装甲が動き、中から三本の鋭く長い鉤爪が飛び出した。


「さぁ~て、楽しませてくれるかなぁ?あ、の、子、達♪」


 両腕の鉤爪を光らせながら腰のスコーピオンを手の取るアダンダラはニコニコと笑ってニーズヘッグ達を見つめる。ニーズヘッグ達も機械鎧の内蔵兵器を出したアダンダラを見て表情を鋭くするのだった。

 ヴリトラ達に続いてニーズヘッグ達も敵部隊のBL兵達を殲滅させた。だがまだ幹部であるアダンダラが残っている。一人になっても余裕の表情を崩さないアダンダラを見てニーズヘッグ達は彼女の謎に包まれた戦闘能力を警戒するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ