第二百八十二話 集落前の攻防 戦いから生まれた意思
バロン部隊と戦うヴリトラ達、アダンダラの部隊と戦うニーズヘッグ達。ダークエルフの集落前と森の入口前で始まった二つの戦いは徐々に激しさを増していく。自分達よりも人数が多いブラッド・レクイエム社にヴリトラ達は屈する事無く戦うのだった。
ダークエルフの集落前ではヴリトラ達が森林隠密部隊のBL兵達を相手に攻防を繰り広げていた。ヴリトラ、ラピュスは森羅とアゾットを使いMP7の銃撃を防ぎながら超振動マチェットを使うBL兵達と接近戦を繰り広げており、リンドブルムは木の陰に隠れながらMP7を使うBL兵達と撃ち合っていた。そしてジャバウォックとラランはお互いの背中を守りながらデュランダルと突撃槍で戦っている。
「これぐらいの相手なら何とかなりそうだな」
「ああ、だけど油断するなよ?俺達は一年前よりも強くなっているけど、それは敵も同じことだからな」
「分かってる」
互いに背中を向けながら会話をするヴリトラとラピュス。二人は森羅とアゾットを両手持ちでしっかりと構えながら自分達を取り囲む四人のBL兵達を警戒する。BL兵達も超振動マチェットを両手で構えながらヴリトラとラピュスを警戒していた。
BL兵の数はリンドブルムの銃撃で二人倒されている為、バロンを除いて残りは九人となっている。その内ヴリトラとラピュスのところに四人、リンドブルムのところに二人、そしてジャバウォックとラランのところに三人のBL兵が回されていた。目の前にいるBL兵達にヴリトラ達は鋭い視線を向ける。
「相手が誰であろうと全力で戦う、それは私の騎士の戦い方だ」
「ヘッ、だったら姫騎士として恥ずかしくない戦いをしろよ?」
そう言ったヴリトラは森羅を強く握り目の前にいる二人のBL兵に向かっていく。ラピュスもアゾットを構え直して自分の前にいるBL兵達の向かって走り出した。突然向かってくる二人に一瞬驚くBL兵達であったが冷静にヴリトラとラピュスの動きを分析し、迎え撃つ為に行動を開始する。
ヴリトラが向かった先にいる二人のBL兵はそれぞれ左右に分かれてヴリトラは挟む形に入る。そしてほぼ同時にヴリトラに斬りかかった。ヴリトラは左右からの同時攻撃を素早くチェックすると急停止し、その場で勢いよくジャンプしBL兵達の斬撃をかわした。
「「!」」
自分達の攻撃を軽々とかわしたヴリトラを見上げて驚くBL兵達。ヴリトラはジャンプしながらバク転し、BL兵達の近くに着地するとそのまま目の前に立っているBL兵達に横切りを放つ。だがBL兵達もヴリトラとは正反対の方向へ跳んでヴリトラの横切りを回避し体勢を立て直そうとする。
ヴリトラは反撃の隙を与えない為に自分から距離を取るBL兵達の後を追いかける様に跳ぶ。そしてBL兵達が構え直す前に袈裟切りで攻撃しBL兵達を倒した。離れた所でヴリトラとBL兵の戦いを眺めていたバロンは「ほほぉ」と言いたそうな素振りを見せる。
「流石は七竜将の隊長、一般兵程度では相手にもならんか・・・」
自分のリボルバー拳銃の手入れをしながら感想を口にするバロン。今度はヴリトラ離れてBL兵達と戦っているラピュスに目を向けた。
ラピュスは一人のBL兵と剣を交えており、お互いに相手を見て睨み合っている。するとラピュスの背後にもう一人のBL兵が回り込んでラピュスを背中から斬ろうとした。だがラピュスはその事を読んでいたのか目の前にいるBL兵を超振動マチェットごと押して離れると素早く振り返りもう一人のBL兵の斬撃をアゾットで止める。
背後からの奇襲を簡単に防いだラピュスにBL兵は驚きの反応を見せる。ラピュスはそんなBL兵を睨みながらゆっくりと口を開く。
「これ以上、私達の世界で好き勝手はさせない。お前達ブラッド・レクイエムは、私が倒す!」
自分の意思を告げたラピュスは止めていた超振動マチェットを払うと素早く超振動マチェットを握るBL兵の機械鎧の両腕を前腕部から切り落とす。両手を切り落とされて動揺を見せるBL兵、そこへラピュスの袈裟切りが放たれる。斬られたBL兵はその場に仰向けに倒れた。
仲間がやられたのを見たもう一人のBL兵は背を向けているラピュスに攻撃しようと超振動マチェットを持って走り出す。だがラピュスはその事に気付いているのか慌てる事無く前を向いたままジッとしていた。そしてBL兵がラピュスの背中に斬りかかって来た瞬間、ラピュスは振り返りながらBL兵の胴体をアゾットで真っ二つにし再び前を向いた。斬られたBL兵は上半身がずり落ち、上半身と下半身が離れた状態で倒れる。
二人のBL兵を倒したラピュスはアゾットを力強く振って刀身に付いている血を払い落とし、ラピュスは小さく息を吐いた。
「流石はティアマットだな」
ラピュスが敵を倒した姿を見たヴリトラは小さく笑いながら感心する。今のラピュスはヴリトラが初めて会った時とは比べ物にならないくらい強くなっており、幹部クラスの機械鎧が相手でも一人で倒せるとヴリトラは感じていた。
ヴリトラがラピュスを見て関していると、バロンもリボルバー拳銃を指で回しながら少し驚いていた。
「あの娘、我が社の危険人物表に載っていたな。確か一年前に女王との戦いで右腕に重傷を負ったと聞いたが・・・」
バロンがラピュスの姿を観察しているとラピュスの右腕が機械鎧になっている事に気付く。
「・・・成る程、右腕丸々一本を機械鎧に変えたのか。つまりアイツは我々と同じ機械鎧兵士・・・フフフ、これは面白くなってきた」
ラピュスの強さを目にしたバロンは今後の戦いがより楽しくなると感じて笑い出す。命がけの戦いの中で快楽を得るのはブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士の特徴でもある。ヴリトラ達にとってそれは哀れな感情でしかなかった。
ヴリトラとラピュスが自分達の敵を倒しえた頃、リンドブルム達の方でも戦いが終わろうとしていた。
リンドブルムと彼と戦っているBL兵達は木の陰から遠くにいる相手に向かって銃撃している。リンドブルムの使っているライトソドムとダークゴモラと違い、BL兵達の使っているMP7は貫通力の高い短機関銃だ。故に木の陰に隠れても貫通してリンドブルムに襲い掛かって来る。リンドブルムにとって木は銃撃を凌ぐ為の物ではなく、一瞬だけ姿を隠す為だけの物に過ぎなかった。
「このままじゃ木が穴だらけになって隠れられなくなっちゃうよ・・・こうなったら、ケチケチしてないで使っちゃおうかな」
俯せになりながらライトソドムの弾倉を新しい物に変えるリンドブルムはバックパックに手を突っ込み手榴弾を一つ取り出した。ダークゴモラをホルスターに納め、ライトソドムと手榴弾を持ちながら匍匐し、BL兵達が隠れている木が確認できる所まで移動した。BL兵達はMP7を発砲し続けており、飛んで来た弾丸がリンドブルムの近くに当たる。リンドブルムは一瞬驚くもBL兵達の方を向いて持っている手榴弾を安全ピンを抜かずに投げた。そして手榴弾がBL兵達の隠れている木の近くに落ちるとライトソドムで落ちた手榴弾を撃った。
撃たれた手榴弾は爆発し、その爆発に驚いたBL兵達は木の陰から飛び出した。その瞬間を待っていたリンドブルムは素早く立ち上がり飛び出しBL兵達を撃つ。銃撃なBL兵達の頭や左胸に命中し、BL兵達はその場に倒れた。
「・・・フゥ、手榴弾の数を気にせずに最初からこうすればよかった。そうすればもっと早くは片付いたのに・・・」
予想以上に時間が掛かってしまったことにリンドブルムは情けなさそうな顔で呟く。七竜将の一員として、たかが一般のBL兵相手に時間を掛けてしまった事がリンドブルムは気に入らなかったのだろう。
ジャバウォックとラランは三人のBL兵を相手に優位に戦っていた。BL兵の銃撃をデュランダルを盾代わりにして防ぐジャバウォックと超振動マチェットの攻撃を突撃槍で防ぐララン。普通の姫騎士であるラランだが、一年間ヴリトラ達と特訓をしていたので普通の人間でありながらも機械鎧兵士とまともに戦えるだけの技術を手に入れていた。
「・・・前と比べるとずっと戦いやすい」
「そりゃあそうだろう。お前は向こうでの一年間で色んな事を学んだからな今なら機械鎧兵士とも互角に戦えるはずだ」
自分自身が機械鎧兵士とまともに戦える事に驚くラランを見てジャバウォックは言う。ラランは一年前の自分を思い出しながら突撃槍を構える。そんなラランを見たBL兵は超振動マチェットを強く握ってラランに襲い掛かってきた。
超振動マチェットの連続切りをラランが突撃槍で全て防ぐ。一撃一撃を防ぐ時の重さはラランの腕から衝撃を伝える。だが彼女はそんな衝撃にすっかり慣れているのか表情はピクリとも動かない。BL兵の連撃に隙ができるとラランは軽く右へ跳び、気の力を使って突撃槍に風を纏わせる。そしてがら空きになっているBL兵の脇腹に突きを放つ。BL兵は超振動マチェットでその突きを払おうとするが纏われている風のせいで上手く槍を払えず槍先はBL兵の脇腹に刺さった。
攻撃を受けがBL兵は後ろへ跳び、槍先を脇腹から引き抜くと同時に機械鎧の内蔵機銃でラランに反撃しようとした。だがラランは走り出し狙いが定まらないようにする。BL兵は何とか狙い撃とうとするがラランが走りながら近づいて来る為、上手く狙えない。そしてラランは撃たれる事なくBL兵の懐に近づき突撃槍でBL兵の胸を貫く。BL兵はゆっくりと仰向けに倒れて動かなくなった。
「ハハハ、大したもんだぜ。生身で機械鎧兵士を倒しちまうとはな」
生身でしかも幼いラランが突撃槍だけでBL兵を倒した姿を見て笑うジャバウォック。まるで成長した子供を見て喜ぶ父親の様だった。そんなジャバウォックに残りのBL兵二人がMP7で攻撃しようとする。ジャバウォックはフッとBL兵達の方を向くとデュランダルと大きく横に振って攻撃する。二人のBL兵の内、一人はジャンプしてジャバウォックの横切りをかわしたがもう一人はかわせずに胴体から真っ二つになった。跳び上がったBL兵はジャバウォックの真上からMP7で狙い引き金を引こうとする。だがジャバウォックは空いている左手でマイクロウージーを抜き空中にいるBL兵に向かって引き金を引いた。空中にいた為、BL兵は銃撃をかわせず体中に弾丸を受け、そのまま地面に落下する。
ジャバウォックは自分が相手にしていたBL兵全員を倒すとデュランダルを担いでラランの方を向く。ラランも突撃槍を担ぎながらジャバウォックの方を向き、グウと左手の親指を立てた。
全てのBL兵を倒したヴリトラ達は合流しお互いの安否を確認する。すると今まで高みの見物をしていたバロンがヴリトラ達に向けて拍手を送った。
「いい戦いだった。流石は七竜将と言ったところだな」
「そりゃあ、どうも」
自分達を褒めるバロンを見ながらヴリトラは目を細くして答える。するとリンドブルムがライトソドムの残弾をチェックしながらバロンに話しかけて来た。
「それよりも、貴方は大丈夫なんですか?もう部下の機械鎧兵士は皆やっつけて貴方だけになったんですよ?」
「フフフフ、ご心配ありがとう、少年。お礼にいい事を教えてやろう」
仲間が全員やられたにもかかわらず余裕の態度を取るバロンにヴリトラ達は違和感を感じた。例えどんなに優れた戦士でも仲間が全員やられれば多少は動揺を見せるはず、だがバロンは冷静な態度を取ったままだった。
バロンはヴリトラ達の5m程手前まで来ると右手の指をパチンと鳴らした。するとバロンの背後にある木の陰から四つの人影が飛び出す。それは黒い全身甲冑で纏った四人の騎兵、そう、ブラッド・レクイエム社の精鋭部隊、幻影黒騎士団の黒騎兵だったのだ。
いきなり現れてバロンの前に立つ四人の黒騎兵にヴリトラ達は流石に驚きたのは目を見開いた。
「ゲッ!幻影黒騎士団じゃねぇか!」
「奴等まで連れて来ていたのか・・・」
「こりゃあ、九人の機械鎧兵士を相手にするよりも厄介だぞ・・・」
黒騎兵の姿を目にしたヴリトラ、ラピュス、ジャバウォックの表情に更に鋭さが増す。黒騎兵達の実力は一般のBL兵よりも上である為、僅か四人でもかなりの戦力になる。
ヴリトラ達は先程の様に余裕のある戦いはできないと確信し、真剣な表情で黒騎兵達を睨む。すると黒騎兵達の後ろいたバロンも背負っている盾を手に取り、右手に持っているリボルバー拳銃をヴリトラ達に向けた。
「さて、今度は私も戦いに参加させてもらうぞ?私自身でお前達の実力がどれほどの物なのか確かめさせてもらおう」
「おいおい、此処で更に幹部まで参戦かよ」
「・・・危険」
「だね・・・ヴリトラ、今度は全力で戦わないとマズいかもよ?」
「分かってるよ」
リンドブルムの忠告を聞いたヴリトラは超振動騎士剣とM4を構える黒騎兵を見て森羅を中段構えに持つ。ラピュスやジャバウォックも愛剣を握り自分達の得意な構えを取った。
双方の準備が整い、いよいよ第二回戦が始まると思われた、その時、突如何処からか一本の矢が黒騎兵に向かって飛んで来た。黒騎兵は持っている超振動騎士剣でその矢を落とし、矢は黒騎兵の足元に落ちる。
「な、何だ?」
「何処から矢が・・・」
ヴリトラ達は突然の矢に驚きながら飛んで来た方を向く。そこには集落から外に出て弓矢を構えているリーニョと騎士剣を構えるエリスの姿があった。
「お前達、大丈夫か!?」
「ひ、姫様!?」
「それに隣にいるのはダークエルフの・・・」
結界魔法の外に出て来たエリスとリーニョの姿を見て驚くラピュスとリンドブルム。バロンも集落へ逃げ込んだはずの二人が外に出て来た事に少し意外そうな反応を見せている。
「ほぉ、尻尾を巻いて逃げ出したかと思えば戻って来るとは、少しは度胸があるようだな」
戻って来た二人を見てバロンは彼女達の見方を少し改めた。
リーニョは弓矢を構えてバロン達を睨んでおり、エリスはバロン達を警戒しながらヴリトラ達に向けて大きな声を出した。
「七竜将!私達も一緒に戦うぞ!」
「えっ?」
いきなり現れて共に戦うと言い出すエリスにヴリトラは耳を疑う。勿論ラピュス達も同じ反応をした。
「何言ってるんですか!コイツ等は普通の敵ではないんです。危険ですから集落へ戻ってください!」
ヴリトラはエリスとリーニョに集落へ戻るよう言う。だが、エリスは真剣な表情でヴリトラ達を見ながら首を横に振った。
「お前達に戦わせて自分達だけ安全な所にいられる訳ないだろう!」
「ですがっ!」
「それに、私達も共にコラール帝国と戦う同志だ。何もせずに隠れているつもりはない」
「でもコイツ等は・・・ん?」
エリスを説得しようとするヴリトラはエリスとの会話の中である事に気付く。
「コラール帝国と戦う同志・・・・・・もしかして!?」
ヴリトラはエリスとリーニョの方を向いて驚きの顔で尋ねる。するとエリスは微笑みながら頷き、リーニョも笑ってヴリトラ達を見つめた。
「お爺様との話し合った結果、我々ダークエルフはレヴァート王国との同盟を受け入れる事に決まった」
「ええぇ!?」
「そ、それでは・・・」
「ああ、私達も共にコラール帝国と戦う!」
何とダークエルフ達がレヴァート王国との同盟を受け入れた。それを聞いたヴリトラ達は驚きを隠せずにエリスとリーニョの方を見た。
「ど、どうしていきなり同盟を結ぶ事に?」
「説明はコイツ等を倒してからだ!」
「あ、ハイ・・・・・・いやいやいや、ちょっと待ってください!コイツ等と戦うのは危険と言ったでしょう?急いで集落に・・・」
「できん!」
力の入った声を出すリーニョにヴリトラは驚く。リーニョ、そしてエリスは真面目な顔でヴリトラ達をジッと見ると静かに口を開く。
「お前達は私達がライトエルフ達に襲われそうになった時に迷う事無く私達を助けてくれた。そして、このブラッド・レクイエムとか言う連中が現れた時も自分達だけで戦うと言い私達を逃がしてくれた。今度は我々が助ける番だ」
「私も王族としてお前達だけに戦わせる事などできない!私も姫騎士の端くれだ、安全なところでジッとせずにお前達と共に戦い祖国を守りたい!」
リーニョとエリスの意思を聞いたヴリトラ達は黙って彼女を見つめ続ける。
「・・・私はお前達が同盟を結びに来たとレーユから聞いた時にまた我々を利用しに来たのかと思い不快な気分になった。そして、話し合いの中で人間の中にもエルフと共に生きようとする者もいるとお前達が言っていたと聞かされた時は虫の言い訳だとも思って。だが、先程のお前達の態度を見てお前達はそのエルフと共に生きようとする人間であることを知り、私達はもう一度人間を信じてみようと決めたのだ。だから同盟を受け入れた!」
「そうだったんだ・・・」
リンドブルムはリーニョやダークエルフ達が感じた事を聞かされて目を見開く。ダークエルフが人間達をもう一度信じてくれると言った事がいまだに信じられないのだ。
ヴリトラ達が驚いている中、リーニョは弓矢でバロン達を狙いながら話を続ける。
「だから私は信じると決めたお前達と共に戦う事を決意した。勿論、他のダークエルフ達もだ。彼等も今、集落の中で戦いの準備をしている。終わり次第救援に来る!」
ダークエルフ達が人間達を信じると言う意思、そして共にコラール帝国、ブラッド・レクイエム社と戦うという決意、それを聞いたヴリトラはリーニョとエリスの強い思いを無駄にしてはいけないと感じる。
ヴリトラはバロン達の方を向くと森羅を構え直す。
「皆、エリス様達をフォローしながら戦うぞ」
「えっ!ヴ、ヴリトラ、このまま戦うつもりか!?」
「そりゃあ流石にマズいんじゃねぇのか?」
「ライトエルフの時だってリーユちゃん達を守りながら戦って苦労したじゃん!」
「・・・お二人は集落へ戻した方がいい」
ラピュス、ジャバウォック、リンドブルム、ラランがエリスとリーニョを守りながら戦うとするヴリトラに意見する。さっきのライトエルフとの戦いでエリス達を守りながら戦った結果、まともに身動きが取れなくて不利になったのだから無理もない事だった。するとヴリトラはバロン達を睨みながら口を動かした。
「確かに戦いでは不利になるだろう。だけど、もしここで俺達が二人と一緒に戦う事を否定すれば二人の決意を踏みにじる事になる。ダークエルフ達の俺達を信じて一緒に戦おうという意志も否定する事になっちまうんだぜ?」
「そ、それは・・・」
「それにさっきはライトエルフの使う魔法がどんなものか分からなかったから上手く動けなかったんだ。コイツ等の戦い方はよく知っているだろう?今度は守りながらでも戦えるはずだ」
「まぁ、確かに相手の戦い方が分かっていれば何とかなると思うが・・・」
「それにだ、仲間を守りながら勝つ事もできないで何が優秀な傭兵隊だ。俺はあの二人に意志を聞いて決めたぜ。必ず彼女達を守るってな!」
ヴリトラは二人の意思に答える為に共に戦う。それを聞いたラピュス達は黙り込んで考える。本当にこのまま戦っていいのか、それともエリスとリーニョの意思に答える為にも共に戦うか。四人は頭の中でどうするか考える。すると、答えが出たのかラピュスはヴリトラの顔を見ながら口を開いた。
「・・・分かった。私もお二人の意思を無駄にしたい為に共に戦う。そして必ずお二人を守って見せる」
「ヘヘッ、お前なら必ずそう言うと思ったぜ」
ラピュスを見ながら微笑むヴリトラ。そんなヴリトラをラピュスは「やれやれ」と言いたそうな笑みで見つめた。そして、それに続くようにリンドブルム達も答えを出した。
「仕方がないね、やろうか?」
「ああ、これまでも何度も警護依頼を受けて成功させてきたんだから、今更できないって言ったり失敗したりしたら赤っ恥もいいところだ」
「それにヴリトラが言うとなぜか上手くいきそうな気がするしね」
「・・・本当に不思議」
三人もラピュスと同じでエリスとリーニョと共に戦う事を決める。ヴリトラは賛同してくれた四人を見て心の中で感謝した。ヴリトラの言葉にはいくつか無茶苦茶なところもあるが、ラピュス達は彼の言葉に強い思いの様なものを感じており、彼の言う通りにすれば上手くいくと考えていた。なぜそうなるのか、それは誰にも分からない。
ヴリトラ達がエリスとリーニョの方を向いて一緒に戦おうという合図を送り、それを見たエリスとリーニョは頷く。
一方でバロンはダークエルフがレヴァート王国、そして七竜将と同盟を結んだという事を知り、面倒な事になったと感じたのリボルバー拳銃を握る手に力を入れていた。
「何という事だ。ライトエルフを味方に付ける事に成功したのにダークエルフが七竜将側に付くとは!・・・かくなる上は七竜将とあの二人の娘を抹殺し、ダークエルフ達の集落を制圧するしかないな」
バロンはリボルバー拳銃をヴリトラ達に向けるとヴリトラ達の武器を構えて警戒する。
「こうなった以上はお前達には消えてもらう。そしてダークエルフ達には我々の道具として働いてもらうしかない」
「そうやって彼等を道具扱いするからダークエルフ達は人間達への怒りを抱えて生きていく羽目になったんだ。お前達に彼等は渡さない!」
「ならば守って見せろ。ダークエルフを、お前達の仲間をな!」
バロンの言葉を合図に黒騎兵達は超振動騎士剣とM4を構えた。ヴリトラ達、そしてエリスとリーニョはバロンと四人の黒騎兵達を睨みつける。先程のBL兵達との戦いとは比べ物にならないくらいの激戦が今、始まろうとしていた。
BL兵達を全員倒す事ができた。だがその直後に幻影黒騎士団の黒騎兵達が現れる。ヴリトラ達は共に戦う事を決意したエリスとリーニョを守りながらバロンとの直接対決に挑むのだった。




