第二百八十一話 二つの激戦! バロン部隊とアダンダラ部隊
ゾックスを圧倒的な力の差で追いつめたヴリトラ達。彼等の強大な力の前にゾックスはブラッド・レクイエム社との関係、自分の兄を毒殺した事を白状した。だがその直後、ブラッド・レクイエム社の幹部機械鎧兵士バロンが現れてゾックスを殺してしまう。新たに現れた敵にヴリトラ達は緊張を走らせた。
ダークエルフの集落の入口前で自分達を取り囲むブラッド・レクイエム社に機械鎧兵士達。数はバロンを含めて十二人、ヴリトラ達が本気を出せば苦戦するような戦力ではないが、幹部であるバロンがどんな機械鎧を纏い、どんな戦い方をして来るか分からない。何より、エリス達を守りながら戦うのは非常に難しく、ヴリトラ達は不利な状態にあった。
「・・・チッ、このまま戦うのは危険だな」
「どうする?ヴリトラ」
戦況の厳しさに舌打ちをするヴリトラにラピュスが小声で尋ねる。ヴリトラは視線だけを動かして敵とエリス達の立ち位置を確認しどうするのか考えた。幸い、レーユ達はダークエルフは集落の入口近くにいる為、戦いが始まった瞬間に集落へ逃がせば問題ない。だがエリスとリーユ、そしてジーニアスは入口から離れた所におり、しかも近くにBL兵がいる。もし彼等が動いてBL兵達が彼等を攻撃すればただでは済まない。
ヴリトラはまず、どうやってエリス達を安全な所まで移動させるのかを考えた。するとヴリトラの隣になっていたリンドブルムが彼の足をつま先で軽く突き、バロン達に気付かれないようにヴリトラを呼んだ。
(ん?)
チラッとリンドブルムの方を見るとリンドブルムがヴリトラを見上げて片目を閉じ何かの合図を送る。それを見たヴリトラはリンドブルムが何かを思いついたと気付き、自分も片方の目を閉じて「任せた」と返事をした。
ヴリトラの返事を見たリンドブルムは小さく笑った後にバロン達ブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士達を睨む。するとライトソドムをホルスターにしまい、ダークゴモラを左手の指でクルクルと回しながらガンプレイを始める。その姿を見たバロンやBL兵達は不思議そうな反応をした。
「・・・どういうつもりだ?敵を前にしてガンプレイを始めるなど、窮地のあまり現実逃避でも始めたか?」
「・・・フフ」
リンドブルムの行動を小馬鹿にするバロンを見てリンドブルムは小さく笑う。そして次の瞬間、ガンプレイで回していたダークゴモラを高く投げ上げた。まっすぐ上に上がるダークゴモラにバロン達は一斉にダークゴモラを追い上を見る。それを確認したリンドブルムは素早くホルスターに納めてあったライトソドムを抜き、ジーニアスの近くにいる二人のBL兵を撃つ。BL兵達は体に銃撃を受けてそのまま倒れて動かなくなり、目の前で倒れたBL兵を見たジーニアス達も驚いた。
「ジーニアス!今のうちに集落の中へ飛び込めっ!」
「えっ・・・わ、分かったのだ!」
ヴリトラの突然の指示に戸惑いを見せるジーニアスであったが、すぐに自分やエリスとリーユを逃がす為の行動である事に気付く。ジーニアスはエリスとリーユを抱きかかえながら竜翼を広げ、低空飛行でダークエルフの集落へと飛び込んだ。
ジーニアスが集落へ入るのを見たレーユ達は驚きながら飛び込んだジーニアスを見た。バロン達も集落へ逃げ込んだジーニアスを見て少し驚いている。
「ギルダルネさん!レーユさん!貴方達も集落へ入ってください!全員は入ったらすぐに結界魔法を張ってそこから誰も入れないようにしてください!」
「え?」
「俺達が此処でコイツ等を倒します。それまで絶対に結界を解いたらダメですよ!?」
「ま、まさか、戦うつもりですか?」
突然現れた未知の敵と戦うと言い出すヴリトラに驚くギルダルネ。最初はライトエルフと自分達の問題だったのにいきなり現れてライトエルフを倒し、更にブラッド・レクイエム社の兵士達と戦うと言い出すヴリトラ達を見て彼等はヴリトラ達が何を考えているのか分からなくなっていた。
「ど、どうして戦うのですか?」
「どうして?・・・決まってるでしょう、コイツ等が敵だからですよ!」
「そ、それだけの理由で・・・」
「それにコイツ等はライトエルフと同盟を結んでライトエルフという戦力を手に入れました。となると、貴方達ダークエルフも仲間に引き込もうとするはずです。そして逆らった場合、力尽くで貴方達を従わせようとする。そんな事は絶対にさせない!」
ヴリトラの言葉を聞いたギルダルネは彼等が自分達を守ろうとしてくれている事を知り、目を見開いて驚いた。自分達と同盟を結ぶ為にやっているのか、ただ守りたいからやっているのか、ギルダルネにはヴリトラ達の真意が分からない。だが自分達を守ろうとしてくれている事だけはよく分かった。
ギルダルネは自分達に背を向けてブラッド・レクイエム社と向かい合っているヴリトラ達を見ながら真剣な顔を見せる。その後ろではレーユもヴリトラ達の背中を驚きの表情のまま見ていた。
「皆の者、急いで集落へ戻るぞ!」
「え?お爺様?」
「全員が入ったらすぐに結界魔法を張って外からの侵入を防ぐのだ!」
「で、ですが彼等を残して・・・」
「その彼等が言っているのだぞ!?急げっ!」
力の入ったギルダルネの言葉を聞き、レーユやリーニョ、他のダークエルフ達は驚く。そして言われた通り集落の中へは避難していく。だが、ブラッド・レクイエム社がそれを黙って見ているはずが無かった。
「ダークエルフ達を止めろ!結界魔法とやらを張らせるなっ!」
バロンの指示を聞いたBL兵達がレーユ達にMP7を向けて引き金を引こうとする。だがBL兵達の前にヴリトラとジャバウォックが回り込み森羅とデュランダルで攻撃する。BL兵達は素早く後ろへ跳んで二人の斬撃を回避した。他のBL兵達も超振動マチェットを握りレーユ達の後を追いかけようとするがラピュスやラランが行かせまいと立ち塞がる。ダークエルフが全員は入るとギルダルネやダークエルフ達が呪文を唱え始めた。
「災いを防ぐ神秘の扉よ、穢れし者が踏み込めぬ聖域を作り出せ」
ギルダルネが結界魔法の呪文らしき言葉を唱えると見えない壁の様な物が作られて集落を包み込んでいく。やがて集落があった場所はただの広場となり集落は完全に消えた。
ダークエルフ達に逃げられたのを見てバロンは舌打ちをする。そして残ったヴリトラ、ラピュス、リンドブルム、ジャバウォック、ラランを素早く取り囲んだ。
「上手く行ったな、ヴリトラ?」
「ああ、ダークエルフ達の身の安全は確保された。これで集中してお前達と戦えるようになったぜ」
上手くレーユ達が集落へ逃げ込めた事にジャバウォックとヴリトラはニッと笑う。ラピュス達も安心した表情で二人の方を見ていた。
「・・・成る程、ダークエルフ達を逃がす為にあんなふざけた事をしたという訳か」
リンドブルムのガンプレイの意味を理解したバロンはヴリトラを見つめながら低い声を出す。一方でヴリトラとダークゴモラをキャッチしたリンドブルムは作戦が上手くいった事で笑みを浮かべている。
バロンはダークエルフ達が消えていった広場をしばらく見つめていると仮面の赤い目を光らせて右手に持っているリボルバー拳銃をヴリトラに向けた。
「まぁいい、さっきの結界魔法とやらもエルフの使う魔法だ。ライトエルフ達を連れてくればその結界魔法を解く事もできるはずだからな。まずはお前達から始末しよう」
「お前一人でできるのか?森の外にはまだ仲間がいるんだぜ?ソイツ等と合流すればお前達を倒すのも簡単だ」
「フフフフ、言ったはずだぞ?外にいるお前達の下には私の仲間が向かっているとな。他の七竜将のメンバーが此処に来る事などあり得ない」
「へぇ~?そんなに強い仲間なのか?」
「その質問、お前のそのまま返す」
お互いに仲間が勝つと信じるヴリトラとバロン。隊長同士が睨み合う中、ラピュス達やBL兵達も目の前にいる敵を睨みながら武器を構える。いつ戦いが始まってもおかしくないくらい緊迫した状況だった。
その頃、森の入口で待機していたニーズヘッグ達もブラッド・レクイエム社の別動隊に包囲されていた。ニーズヘッグ達を取り囲むように陣を組んでいる大勢のBL兵達。数はバロンの部隊よりも少し多い十五人でその中には幹部らしき機械鎧兵士の姿もある。
「フッフッフ~♪取り囲んだよぉ、どうやって戦うつもりかなぁ~?」
BL兵達の後ろで幹部らしき女機械鎧兵士が笑いながらニーズヘッグ達を見ていた。
外見は二十代半ばくらいで身長はジルニトラとほぼ同じ。茶色いセミショートにスチール製の猫耳カチューシャを付けている。バロンと同じブラッド・レクイエム社の特殊スーツを着て両腕が機械鎧になっており、腰には短機関銃のスコーピオンが二丁納められていた。
楽しそうに笑うその女幹部を見ていたジルニトラはサクリファイスを構えながら女幹部をジト目で見つめる。
「さっきからうるさいわねぇ。アンタ一体何なの?」
「んん、私?・・・フフフフッ、私はブラッド・レクイエム社の幹部でアダンダラって言うの。よろしくね♪」
「アダンダラ・・・」
アダンダラと名乗る女幹部を見てジルニトラや周りにいるニーズヘッグ達は表情を鋭くする。彼女がバロンの言っていた仲間でジークフリートが派遣していたもう一人の機械鎧兵士なのだ。
一見子供っぽい口調と態度のアダンダラにアリサや白竜遊撃隊の騎士達は彼女は大した事ないと考えていた。だが、七竜将はアダンダラの実力を警戒している。彼等は今までの戦いの経験からアダンダラの様な性格の戦士は最も注意するべきだと知っているからだ。
「・・・皆、あのアダンダラとか言う女は注意しろよ?」
「ええ、分かってるわよ」
「だが、注意するのは奴だけではない・・・」
「うん、他の機械鎧兵士も警戒しないとね」
ニーズヘッグの忠告を聞いたジルニトラは返事をし、オロチとファフニールは周りにいるBL兵達も警戒した。
ニーズヘッグ達を取り囲んでいるBL兵達はバロンの部隊と違い、MP7や超振動マチェットだけでなく、色々な武器を装備している。散弾銃のモスバーグ、軽機関銃のミニミ、突撃銃の「H&K HK33」が握られており、明らかにこちらの部隊の方が戦力が大きかった。
「今回はまた色んな武器を持ってきてるな」
「これはちょっと本気を出さないと危ないかもね」
「ああぁ。お前達、油断するなよ!?」
「了解・・・」
「分かった!」
「ハ、ハイ!」
オロチ、ファフニール、アリサがニーズヘッグに返事をするのと同時に自分達の武器を構える。勿論白竜遊撃隊の騎士達も騎士剣やMP7を構えていつでも戦える状態に入った。
構えるニーズヘッグ達を見たアダンダラは両手を後頭部に当てながら気楽そうな表情を見せた。
「あらあら?もしかして、この人数相手に勝つつもりでいるのかしら?」
「そのつもりだが?」
「ウフフフ、貴方って思った以上に馬鹿なのかしら?」
鋭い表情で自分を見るニーズヘッグにアダンダラは笑った。アダンダラの部隊は自分を含めて十五人の機械鎧兵士で構成されている。しかもBL兵の全員が重武装をしており、明らかにニーズヘッグ達と比べて戦力が大きかった。それを考えるとアダンダラが笑うのも無理はない。
ニーズヘッグ達七竜将のメンバーはアダンダラの笑う姿を気にもせずに自分達を取り囲んでいるBL兵に注意を向けていた。そんな中、オロチは隣でBL兵達を警戒しているアリサ達を見るとBL兵達の動きに注意しながらアリサ達に小声で話しかける。
「アリサ・・・」
「ハ、ハイ」
「この状態で戦えばお前達は間違いなくやられる。私が道を開くからお前達はあそこに見える岩まで走れ・・・」
そう言ってオロチは森の入口から十数メートル離れた所にある大きな岩を見る。アリサや騎士達もオロチが見ている方を向き岩を確認した。
「あそこに行ったら岩陰に隠れながら銃で敵に攻撃しろ。接近戦ではお前達の方が不利だ。銃が使える間は銃を使って戦え・・・」
「わ、分かりました」
「そしてもし敵が近づいて来て接近戦で戦う事になれば迷わず気の力を使え・・・」
「ハ、ハイ!」
普段クールなオロチがアリサ達に色々とアドバイスをし、そんな彼女を見たアリサは意外に思いながら返事をする。アリサや騎士達は持っているMP7を構えて自分達の前にいるBL兵達を睨んだ。BL兵達もアリサ達に向けてMP7やモスバーグを構えた。
オロチがアリサ達にアドバイスし終わると、アダンダラが腰に納めてあるスコーピオンを一丁抜いてニーズヘッグ達を見ながら微笑んだ。
「さて、それじゃあそろそろ始めましょうか?早く貴方達を片付けてバロンと合流しないといけないから」
「やっぱりまだ仲間がいたんだな?お前達がダークエルフの集落を狙ってこの森に来た事は分かってた。未知の種族であるエルフを相手にするのにブラッド・レクイエムはたった十五人の機械鎧兵士だけを送り込むはずがない。まだ別の戦力が近くにいるはずだと思ってた」
「フフフ、流石は七竜将の参謀的存在、鋭いわね?それじゃあ、そのご褒美にいい事を教えてあげる・・・私の仲間は森の中にいるわ。そして、既にダークエルフの集落を見つけている」
「何っ!?」
アダンダラの口から出た言葉にニーズヘッグは驚く。勿論ジルニトラ達も驚きの表情を浮かべていた。
「私達は既にライトエルフと同盟を結んでいてね、ダークエルフの集落の場所も分かっていたの。元々ダークエルフを仲間に引き入れる為に来たんだけど、森に入る途中で貴方達を見かけてね。ついでに始末しようって事になったのよ」
「チッ、なんて事だ・・・」
「でも、さっき集落へ向かったバロンの部隊から他の七竜将の隊員が集落の前にいるって連絡が入ったの。貴方達に集落にいる仲間の下へ向かわれちゃ困るから此処で必ず始末するわよ?」
「あたし達の抹殺と足止めの両方ができるって事ね・・・」
ジルニトラが気に入らなそうな顔で笑っているアダンダラを睨み付ける。アダンダラはジルニトラや他の七竜将のメンバーの視線を気にする事無くスコーピオンの銃口をニーズヘッグ達に向けた。
「貴方達を始末したら私達はすぐに集落へ行ってバロン達と一緒に貴方達の仲間も始末するから、それまで寂しがらずに待っててね・・・・・・撃てっ!」
アダンダラの合図でBL兵達は一斉に発砲する。ニーズヘッグ達は武器で弾丸を弾いたり素早く移動したりなどして銃撃をかわした。
オロチは斬月をアリサ達の前にいるBL兵達に向かって投げつけ、BL兵達は飛んで来る斬月を素早く回避した。BL兵達が移動し岩までの道が開かれるとアリサ達は一斉に走り出す。その間、BL兵達に攻撃されないように持っているMP7でBL兵達に威嚇射撃をする。撃たれたBL兵達は回避に専念していた為アリサ達を撃つ事ができずにいた。そしてアリサ達は無事に岩に辿り着き素早く岩陰に隠れる。
「ハァハァ・・・な、何とか無事に着けた・・・・」
全力で走っていた為、呼吸が乱れているアリサは岩にもたれながら息を整える。他の騎士達も座り込んだり岩の陰から敵の様子を伺いながら息を整えた。
アリサ達が岩陰に隠れていると真上からオロチがアリサ達の前に着地し、それに驚いたアリサ達が咄嗟にMP7を構える。
「落ち着け、私だ・・・」
「オロチさん、ビックリさせないで下さいよぉ~」
「この位で驚くな。これからもっと激しい戦いになるんだぞ・・・」
驚くアリサにオロチが注意しているとアリサ達が隠れている岩が銃撃を受け、岩の破片がアリサの顔の近くに飛び散る。驚いたアリサは俯せになって敵の銃撃があった方を覗き込む。そこには四人のBL兵がMP7、HK33を撃ちながら前進してくる姿があった。騎士達はMP7の残弾を気にしながらBL兵達に応戦する。アリサも匍匐したままの状態でMP7を撃つ。
BL兵達と銃撃戦を始めたアリサを見てオロチ姿勢を低くし、銃撃に気を付けながらアリサに近づく。
「アリサ、私はニーズヘッグ達の応援に行く。向こうの雑魚どもを片付けたらすぐに戻る、それまでお前達で持ち堪えろ・・・」
「ええぇ!?む、無理ですよぉ!」
「弱気になるな。お前達だってこれまで何度もブラッド・レクイエムの機械鎧兵士と戦い生き延びて来ただろう・・・」
「そ、それはオロチさんやヴリトラさん達がいたから・・・」
「ラピュスやラランは私達がいない状態でも一人で戦い勝った事もある。二人にできるのならお前達にも可能なはずだ・・・」
「う、うう・・・」
機械鎧兵士になる前のラピュスとラランが機械鎧兵士に勝った事がある、その事をオロチから聞かされたアリサは不安そうな顔になる。自分よりも実力が上のラピュスや天才姫騎士と言われたラランにできてもごく普通の姫騎士である自分にできるのかどうか不安なのだろう。アリサは俯せのまま俯いた。
そんなアリサを見ていたオロチは遠くから聞こえてくる銃声を聞き、フッと顔を上げると斬月を担いで立ち上がる。
「とにかく、もっと自分の力に自信を持て。私に言えるのはそれだけだ・・・」
そう言ったオロチは両足のジェットブースターを起動させて遠くで戦っているニーズヘッグ達の下へ飛んで行った。
「あっ!オロチさん!」
自分達を残して行ってしまったオロチに思わず上半身を起こすアリサ。そんなアリサの手元に弾丸が命中し、草や砂埃を舞い上げた。敵からの銃撃に驚いたアリサは再び俯せになり敵の方を向く。BL兵達は既にアリサ達の約30m手前まで近づいてきており、アリサ達は必死に応戦する。
(んもぉ~!もし死んだら化けて出てやりますからねぇ!)
心の中でオロチへの恨みの言葉を呟きながらアリサはMP7を撃ち続けるのだった。
一方、ニーズヘッグ達は十人のBL兵を相手に激戦を繰り広げていた。ニーズヘッグはアスカロンでBL兵の銃撃を防ぎながら隙を見つけては反撃していく。ジルニトラは走りながらサクリファイスを撃っており、BL兵達はジルニトラの銃撃をかわしながら反撃している。ジルニトラは近くにある大きな木の陰に飛び込む様に隠れ、木にもたれながら弾倉を交換し銃撃を凌いだ。
「流石に十人を三人で相手するのはちょっとしんどいわね・・・」
サクリファイスの弾倉を新しいのに変えたジルニトラは木の陰から敵の様子を伺う。三人のBL兵達はMP7、ミニミ、モスバーグを撃ちジルニトラが隠れている木を狙っている。飛び出せば確実に蜂の巣にされてしまう為、ジルニトラは動きを封じられていた。
「これじゃあ移動する事もできない。反撃の隙を与えないつもりね・・・」
BL兵達の考えられた攻撃にジルニトラは歯を噛みしめる。ジルニトラが木の陰に隠れている間、BL兵達は銃を撃ち続けながらジルニトラが隠れている木に近づいて行く距離を縮めていた。ジルニトラは絶体絶命の状態に追い込まれていく。
ジルニトラから少し離れた所ではファフニールがギガントパレードの大きな頭で銃撃を防ぎながら敵に反撃している。だがBL兵達は素早く移動してギガントパレードの打撃を軽々と回避し銃器で反撃する。だがファフニールも負けずとその銃撃をかわした。
「当たらない!・・・それなら、これでっ!」
ファフニールはギガントパレードを左手に持ち、機械鎧の右腕を前に突き出す。右腕の後前腕部の装甲が開き、機械外の内部から機銃が姿を見せる。ファフニールは一番近くにいるBL兵に向かって機銃を撃った。ファフニールが狙っていたBL兵は彼女の銃撃をかわす。だがその後ろにいた別のBL兵は銃撃を受けてしまい仰向けになって倒れた。
「よしっ!運よく一人倒した!」
偶然別のBL兵に銃撃が当たり、倒す事ができた事に喜ぶファフニール。だがすぐに他のBL兵がファフニールを取り囲む、銃器や超振動マチェットを構えた。ファフニールはギガントパレードを構え直して周りにいるBL兵を警戒する。
そんな戦いを離れた所でアダンダラは見物している。スコーピオンが上手く動くかチェックするアダンダラは微笑みを浮かべていた。
「ウフフフ、これぐらいで死んじゃ嫌だよ?せめて私を楽しませてから死んでよね、お馬鹿なライトエルフ達みたいに・・・ウッフッフッフ♪」
無邪気な笑顔の下に隠されている邪悪なアダンダラの本性、ニーズヘッグ達はアダンダラの本当の姿をまだ知らなかった。
ブラッド・レクエム社の機械鎧兵士部隊との戦闘が始まり、集落前と森の入口前でそれぞれ激闘を繰り広げるヴリトラ達。一体、どんな戦いになるのか、そしてバロンとアダンダラの実力はどれ程のものなのだろうか・・・。




