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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十六章~静かな森の妖精達~
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第二百八十話  ライトエルフの真実 現れた黒い聖獣


 ライトエルフ達からブラッド・レクイエム社との関係を聞き出そうとするヴリトラ達。だがライトエルフ達は質問に答える事無くヴリトラ達に攻撃を仕掛けて来る。ブラッド・レクイエム社との関係を知る為、そしてダークエルフ達をライトエルフ達から守る為にヴリトラ達は武器を手に取った。

 浮遊魔法と硬化魔法の二つを使い、刃物の様に鋭くなった無数に木の葉に囲まれるヴリトラ達は自分の得物を構えながらいつ襲って来るか分からない木の葉を警戒する。そしてそんなヴリトラ達を見てゾックスは嬉しそうに笑っていた。


「フハハハハッ!どうだ、刃と化した無数の葉に囲まれていてはもう身動きは取れまい!」

「チッ、確かにこれはちょっと厄介だな・・・」

「ああ、本気を出さないと全身傷だらけになっちまう」

 

 ヴリトラとジャバウォックは自分達の周りに浮いている木の葉を見ながら話す。ラピュス達も武器を握っていつ襲い掛かるか分からない木の葉を睨んでいる。無数の葉の内、どれが最初に動くか分からない以上は全ての木の葉に注意しなければならない。これではヴリトラ達が機械鎧兵士であっても油断はできなかった。


「さて、それじゃあそろそろ見せてもらおうか?下等種族の無様なダンスをなぁ」


 ゾックスはヴリトラ達を見て不敵な笑みを浮かべると魔法で木の葉を操り出す。するとヴリトラ達を取り囲む無数の葉の内、数枚がヴリトラ達に襲い掛かる。ヴリトラとジャバウォックは自分達に向かって飛んで来る葉に気付くと森羅とデュランダルで素早く弾き落とす。だがすぐに別の葉が二人に襲い掛かり、ヴリトラとジャバウォックは休む間もなく次の葉を落とした。


「・・・ヴリトラ、気付いたか?」

「ああぁ、あの葉、弾いた時に少しだけ重さを感じた。しかも同時に金属音も聞こえたよ。本当に普通の木の葉が鉄の様に硬くなってやがる!」

「まるで超能力者が操る手裏剣じゃねぇかよ!」


 硬くなった葉を弾き落としながら話すヴリトラとジャバウォック。一見話をしながら敵の攻撃を防ぎ余裕の様に見えるが、思った以上に衝撃がある為、二人は必至の状態だった。

 ラピュス達も自分達の武器を使い迫って来る葉を防いでいた。ラピュスはアゾットで弾き落とし、リンドブルムはライトソドムとダークゴモラで撃ち落とし、ラランは気の力で突撃槍に風を纏わせて葉を弾き落としていく。


「これは、思った以上にキツイ攻撃だな」

「うん、少しでも気を抜けば大怪我するよ」

「・・・重い」


 三人はそれぞれ攻撃を防ぎながら呟く。機械鎧兵士であるラピュスやリンドブルムが少し本気を出して防いでいるのだから、普通の姫騎士であるラランには少々キツイ状況であるのは間違いない。それでもラランは弱音を吐く事無く攻撃を防ぎ続けていた。

 一方、エリスはリーユを抱き寄せながら姿勢を低くしてヴリトラ達の後ろに隠れていた。彼女も姫騎士ではあるがラピュス達と比べると実戦経験は浅く、ヴリトラ達が必死に攻撃を防いでいるのに経験の少ない自分では攻撃を防ぐ事はできないと感じたのかリーユを守る事に専念したのだ。

 エリスは自分の上での中で震えているリーユの頭を撫でながらリーユを落ち着かせた。


「大丈夫だ、彼等がきっと私達を守ってくれる」

「ハ、ハイ・・・」


 励ましの言葉を掛けて来るエリスを見上げながらリーユは涙目で頷く。エリスはリーユの顔を見た後に自分達を取り囲み守ってくれているヴリトラ達の背中を見つめた。彼等の戦う姿を目にしたエリスはパティーラムが彼等を信頼する理由を知り、その強さと自分達を守ろうとする強い意志に感服する。

 

「ううう、凄い事になったのだ・・・」


 エリスとリーユの後ろではジーニアスがその大きな体を小さく丸めている。普通に立っていればライトエルフ達の刃と化した木の葉で切り裂かれると感じ、姿勢を低くして攻撃をかわしたのだ。それでもジーニアスの体を装甲車と同じくらいの大きさでいつ木の葉の切り裂かれるか分からない。その事に気付いたヴリトラは葉の攻撃を防ぎながらジーニアスの方を向く。


「ジーニアス、お前はエリス様とリーユを連れて森の上まで飛び上がれ!」

「え?」

「この状況でエリス様達を守りながら戦うのはちとキツイ。お前が二人を安全な上空まで連れて行くんだ!空の上ならライトエルフ達の攻撃も届かないだろう。戦いが終わるまでお前達は上空に避難してろ!」

「・・・わ、分かったのだ!」


 突然の指示に戸惑いを見せるジーニアスだったが、言われた通りエリスとリーユを大きな腕で抱き寄せると竜翼を広げて高く飛び上がった。


「うわあぁ!?」

「キャアア!」


 いきなり抱き寄せられて飛び上がり、森を見下ろせる高さまで上昇した事に驚き思わず声を上げるエリスとリーユ。ジーニアスは二人を落とさないように抱き寄せて自分が飛び上がった場所を見下ろした。


「・・・ヴリトラ殿、頑張るのだ」


 地上で戦うヴリトラ達の無事を祈りながら応援するジーニアス。戦う力を殆ど持たない聖賢竜の自分にできるのはそれぐらいしかないと小さな悔しさを胸にジーニアスは呟いた。

 その頃、ヴリトラ達は無事に森の真上まで飛び上がったジーニアス達を見て安心し、ライトエルフ達やダークエルフ達も驚きの顔で飛び上がったジーニアスを見上げていた。


「な、なんて奴だ、人間とダークエルフの子供を抱き上げてあんなに速く飛び上がるとは・・・」

おさ、どうしますか?」

「放っておけ、まずは目の前の下等生物どもを片付けるのが先だ!」


 ゾックスはジーニアスよりも目の前にいるヴリトラ達を先に始末したいらしく、仲間のライトエルフの言葉を軽く流してヴリトラ達を睨んだ。

 一方でヴリトラ達はゾックス達が一瞬ジーニアスに意識を向けた事で木の葉の攻撃が止み、その間に体勢を立て直していた。更に彼等は今までエリス達を守りながら戦っていた為、思う様に行動できなかったが、ジーニアスがエリスとリーユを連れて避難してくれたおかげで思う存分戦えるようになり、余裕の表情を受けべていた。


「悪いけど、もうさっきの様にはいかないぜ?さっきまではエリス様達を守る為にあの場から動けずにいたからちょっとヤバかったけど、ジーニアスのおかげで自由に動けるようになったからな」

「フン!くだらない強がりはやめろ、自由に動けるようになっても貴様らが僕らに八つ裂きにされる事には変わらない」

「・・・そう思いたちゃそう思ってくれていい。だけど、あまり自分の力を過信していると・・・」


 小さく俯きながら静かな声で呟きながらヴリトラはゆっくりと足に力を入れる。そして顔を上げてゾックスの方を見たヴリトラは鋭い視線を向けた。


「痛い目に遭うぜ!」


 そう言ってヴリトラはゾックスに向かって走る出す。ラピュス達もそれに続いて走り出し、ララン以外の四人は全員ライトエルフ達に向かっていった。

 突然走って来るヴリトラ達に一瞬驚きの表情を浮かべるゾックスだったが、すぐにヴリトラ達を小馬鹿にするような顔に戻った。


「フッ、血迷ったか。正面から突っ込むなんて」


 ヴリトラ達の行動を愚行と考えたゾックスは再び魔法を使って木の葉や剣を浮かせ走って来るヴリトラ達に向けて飛ばした。他のライトエルフ達も自分達の剣を動かしてヴリトラ達に攻撃を仕掛ける。だがヴリトラ達は向かってくる葉や剣を恐れる事無く走り続けた。

 葉と剣がギリギリまで近づくとヴリトラ達は華麗に攻撃を回避する。攻撃をかわしてほんの少しだけ隙ができると走る速さを上げて一気にゾックス達との距離を縮めていく。


「な、何だと!」

「俺達の攻撃をあんな簡単にかわした!?」


 自分達の操る剣や木の葉をかわしたヴリトラ達に驚くゾックスとライトエルフ達。だが彼等もかわされた葉や剣を操り再びヴリトラ達に襲い掛かる。側面や背後、頭上から迫って来る葉や剣をかわしたり武器で弾いたりなどして防いでいくヴリトラ達。そしてヴリトラ達が気付いていない攻撃もラランがSR9で撃ち落としていき攻撃は一つも当たらなかった。ヴリトラ達の表情にはさっきまで攻撃を防いでいた時の緊迫した様子は無く、彼等はただ黙ってゾックス達を睨んでいる。その目を見たゾックスは寒気の様な物を感じ取り怯えた様な顔をしていた。


「な、何なんだアイツ等?さっきまでと全然様子が違うじゃないか、どうなってるんだ!?」


 ヴリトラ達の様子がさっきまで違い余裕の態度を取っている事が気に入らないのかゾックスは声を上げて周りにいるライトエルフ達に問う。だがライトエルフ達がその質問に答えられるはずもなく、ただ黙って戸惑っていた。

 するとゾックス達の集中力が途絶えた事で葉や剣の動きが止まり、それに気づいたヴリトラ達は一気にゾックス達との距離を縮め2m手前まで接近した。


「あっ!?」


 しまった、とヴリトラ達の方を見て驚くゾックス。だが既に遅かった。ヴリトラ達は既にゾックスやライトエルフ達の前まで来ており、ゾックス達はもう逃げる事もできない状態にある。そこへヴリトラ達に攻撃が炸裂した。

 ジャバウォックは右手で拳を作り目の前にいるライトエルフに強烈なアッパーを放つ。アッパーを受けたライトエルフは打ち上げられ、その一撃で数本の歯が折れ、ライトエルフは2、3m先に飛ばされて仰向けのまま意識を失う。


「ヒイィィィ!」


 仲間がやられた姿を見た別のライトエルフは固まって倒れている仲間を見つめる。するとライトエルフと同じ目線までジャンプしたリンドブルムがライトエルフの顔に強烈なビンタを放つ。ひっぱたかれたライトエルフはバランスを崩してその場に倒れ込み意識を失う。ラピュスも目の前にいるライトエルフの腹部に向かって回し蹴りを打ち込む。地球にいる間、ラピュスは武器が無い時の戦いの事を考えて七竜将から格闘技を習っていたのだ。ラピュスの蹴りを受けたライトエルフも大きく飛ばされ、飛ばされた先にある木に叩き付けられて気絶した。


「そ、そんな・・・」


 仲間が全員が倒された事でゾックスから先程までの威勢は完全に無くなっていた。そんなゾックスの顔にヴリトラは容赦なくパンチを打ち込んだ。


「いぎゃああああっ!痛い、痛いぃ~!!」


 殴られて倒れたゾックスは殴れた頬を抑えながらその場でうずくまり声を上げる。そんなゾックスをヴリトラ達は目を細くしながら見ていた。


「・・・何この人?一発殴られただけでこの乱れ様」

「ハッ、態度はデカいのに中身は驚くくらいちっぽけな野郎だな」


 人を見下してばかりだったゾックスの態度の変わりように呆れ果てるリンドブルムとジャバウォック。ラピュスはラランも呆れ顔でゾックスを見ており、ダークエルフ達もゾックスの姿を見て呆然としている。

 ヴリトラは痛みのあまり地面をのたうち回るゾックスの近づき、片膝をつくと彼の服を掴むと自分の顔の前まで持って来た。


「おい」

「ヒッ!」


 低い声を出すヴリトラはゾックスは涙目で怯える。そこにいるのは人間やダークエルフを見下す傲慢なライトエルフの長ではなく、ただ自分よりも強い敵に恐怖し震えている臆病な男だった。


「答えろ、お前はブラッド・レクイエムの事を知っているな?どうやって奴等の事を知った?」

「う、うう・・・」

「お前達ライトエルフはブラッド・レクイエムと同盟を結んだのか?」

「・・・・・・」


 ゾックスはヴリトラの質問に答えず彼から目を逸らして黙り込む。そんなゾックスの姿を見たヴリトラは深く溜め息をつくと掴んでいる服を離してゾックスに背を向ける。そしてデュランダルを担ぎながら自分とゾックスの会話を見ていたジャバウォックに声を掛けた。


「・・・コイツは質問に答える気はないみたいだ。ジャバウォック、頼むわ?」

「・・・あいよ」


 返事をしたジャバウォックはデュランダルを地面に刺すと拳をポキポキと鳴らしながら座り込んでいるゾックスに近づいて行く。ゾックスは近づいて来るジャバウォックを震えながら見上げる。

 

「ま、待て・・・何をする気だ・・・?」

「・・・喋る気が無いなら、喋りたくなるようにするしかねぇだろう?」

「ヒイィ!?」


 ジャバウォックの言葉を聞いた自分がこれから何をされるのか察したゾックスは座り込んだまま後ろへ下がろうとする。しかし、恐怖のあまり立ち上がる事もできないゾックスは逃げる事もできなかった。そんなゾックスの前に立ち彼を見下ろすジャバウォックは機械鎧化している右手の拳を光らせた。


「先に言っておくぞ?俺は手加減ってもんを知らねぇ。さっさと言わねぇと命の保証はできないからな」

「あ、あ、ああ・・・」


 ゾックスは震えながら近づて来るはジャバウォックを見上げる。彼の頭の中にはもうどうする事もできない、諦めるしかないという考えしかなかった。

 ジャバウォックはゾックスの目の前まで来ると彼の服を掴み強引に立ち上がらせて右腕を上げる。そしてゾックスの顔にパンチを打ち込もうとした。


「ま、待ってくれ!分かった、話すよ!何でも話すから助けてくれぇ!」


 ゾックスが涙と鼻水でグチャグチャになっている顔で許しを請う。手の平を返した様なゾックスの態度にヴリトラ達は呆れを通り越して哀れんでいた。

 ライトエルフの誇りを捨て、助けを求める姿にジャバウォックは小さく溜め息をつき掴んでいた服を離す。バランスを崩したゾックスはその場に座り込んでガタガタと震える。


「なら話してもらおうか。お前達はブラッド・レクイエムと同盟を結んだのか?」

「あ、ああ、結んだよ。アイツ等、突然僕達の集落にやって来て、帝国の為に同盟を結べって言って来たんだ」

「ほぉ?」

「勿論、僕も長だった兄も反対したさ。そしたらアイツ等、同盟を結ばないなら力尽くで従わせるっていきなり襲い掛かって来て・・・僕等も抵抗したけど、見た事の無い力と武器の前に仲間は次々に殺されて・・・」


 ゾックスは座り込んだまま俯いて自分達の身に何が起きたのかを話していく。ヴリトラ達はその話を黙って聞いており、ダークエルフ達も座り込むゾックスを見ながら話に耳を傾けている。そこへ空中へ避難していたジーニアス達も下りて来てヴリトラ達の近くに着地した。


「僕はあんな得体のしれない敵と戦っても全滅するだけだと考えて兄さんに同盟を結ぶ事を提案したんだ。だけどアイツはまた人間達の道具として利用されるなど御免だと、ライトエルフの誇りを捨てる事はできないと言って僕の話を聞こうとしなかった・・・だから!」


 声に力を入れるゾックスにヴリトラ達は反応を見せ、ダークエルフ達も少し驚いた様な顔を見せる。

 ゾックスはゆっくりと顔を上げて目の前に立つジャバウォックや周りで自分を見ているヴリトラ達を見回しながらゆっくりと立ち上がった。


「だから、僕がライトエルフの長となって皆を守ろうとしたんだ!」

「だがライトエルフの長はテメェの兄のはずだ・・・・・・ッ!テメェ、まさかっ!?」


 何かに気付いたジャバウォックはゾックスを睨み付ける。するとゾックスはジャバウォックの方を見ながら声を上げた。


「ああ、そうだよっ!僕が兄さんを殺したんだ!アイツの料理に毒を盛ってあたかも病死したかのように見せた。そして僕が新しい長となって奴等と同盟を結んだんだよ!」


 先代の長は自分が殺したと言うゾックスにヴリトラ達は驚く。勿論、レーユ達ダークエルフも同じように驚いている。自分の兄を殺して長になったという真実は同じエルフであるレーユ達にとって衝撃的なものだったのだ。

 ヴリトラは冷静さを失っているゾックスを見て歯を噛みしめながら彼を睨み付けた。


「なんて奴だ、長になる為に自分の実の兄貴を殺すなんて!」

「信じられないね、最低だよこの人・・・」


 リンドブルムもゾックスを睨みながら呆れた様な声で呟く。するとゾックスはヴリトラ達を涙目で睨み返しながら再び大きな声を出す。


「何が最低だ!僕は一族を守りたくてやったんだ。誇りに為に多くのライトエルフを死なせようとした兄と違い、僕は皆を助けたんだぞ!?感謝される事はあっても軽蔑される事は無い!」

「自分の犯した罪を棚に上げてよく言えるな?」

「黙れぇ!みんな、みんな兄さんが悪いんだぁ!そしてこんな事になったのも集落を攻めて来たブラッド・レクイエムとか言う奴等が悪いんだ!僕は何も悪くないぃ!!」


 あくまでも悪いのは自分以外の者全てだとゾックスは主張する。そんなゾックスを見てヴリトラ達はあまりの哀れさに声を掛ける気すら失せていた。

 だが次の瞬間、何処からか銃声が響き、何者かがゾックスの額を撃ち抜いた。ゾックスはそのまま仰向けに倒れて動かなくなり、周りにいたヴリトラ達は突然の銃撃で死んだゾックスを見て固まる。


「・・・やれやれ、役立たずの上に裏切りか。所詮は傲慢なライトエルフの長、何の役にも立たなかったわけだ」

「「「「「!」」」」」


 突然聞こえてくる男の声にヴリトラ達はフッと反応し周囲を見回し声の主を探す。するとリンドブルムが自分達が歩いて来た方向を見ると木の上から自分達を見下ろしている一人の機械鎧兵士の姿を見つけた。

 その機械鎧兵士は黒と赤の特殊スーツを着ており、顔にはインドネシアで使われている聖獣の仮面を被っている。そして右腕一本が黒い機械鎧となっており、その手には一丁のリボルバー拳銃が握られている。更に背中には大きな盾を背負っており、仮面の目を赤く光らせながらヴリトラ達を見下ろしていた。


「それにしてもこんな所にダークエルフの集落があったとは。まぁ、それを教えてくれたのだから多少は役に立ったと言うべきか」

「誰だ、お前は!?」


 ラピュスがアゾットを構えながら機械鎧兵士に尋ねる。彼女の周りではヴリトラ達が同じように自分達の武器を構えている。機械鎧兵士はラピュス達を見ながら木の上で頭を軽く下げて挨拶した。


「お初にお目にかかる。私はブラッド・レクイエム機械鎧兵士部隊第四中隊所属のバロン。以後お見知りおきを・・・」


 自分をバロンと名乗った機械鎧兵士は軽く木の枝から飛び降りて地面に着地する。この男こそがジークフリートがブリュンヒルデに話していたエルフの集落を見張る為に派遣された幹部の一人だった。

 突如現れた幹部を見てラピュスは鋭い目でバロンを睨む。


「・・・やっぱりブラッド・レクイエムだったのだな」

「フッ、まさかこんな所でお前達に会うとは思わなかったぞ?七竜将」


 初めて会ったはずなのに七竜将のメンバーの事を知っているバロンにヴリトラは意外そうな顔で反応する。


「俺達を知ってるのか?」

「勿論だ。お前達の事はジークフリート司令から聞かされていたからな。で、お前達が此処にいるという事はレヴァート王国もエルフの力を必要として同盟を結びに来たのだな?」

「鋭いねぇ・・・」


 ヴリトラはバロンの質問に動揺する事無くアッサリと認める。下手に動揺を見せたり否定すれば相手に何かしらの隙を与えてしまうと考えヴリトラは素直に認めたのだ。


「フフフフフ、お前達が此処に来ていたのは予想外だったが、丁度いい。此処でお前達を始末するついでにダークエルフとも同盟を結ぶ事にしよう。司令からは手荒な事はするなと言われていたが、まぁ仕方がないな」


 バロンはそう言って左手の指をパチンと鳴らす。すると周りに生えている木の影から大勢のBL兵が姿を見せる。しかもその全てが森での戦いを得意とする森林隠密フォレストステルス部隊だった。

 集落の入口前に取り囲むように現れた大勢のBL兵を見上げるヴリトラ達に緊張が走る。BL兵達は一斉に木から飛び降りて超振動マチェットやMP7を構えた。


「流石のお前達もこの数を相手にしては無傷ではいられないだろう?」

「・・・確かにこの数はちょっと面倒だな。だけど、俺達はこの一年間でかなり強くなってるんだ。それに森の入口で待機しているニーズヘッグ達に連絡すれば・・・」

「それは無駄だ」

「何?」

「すでにそっちには私と同じ幹部と部下を向かわせてある。今頃は取り囲まれている頃だろう」

「何だと!?」


 まだ他にも仲間がいる事を聞かされてヴリトラ達の顔に更なる緊張が走る。ヴリトラ達はブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士達を睨みながら構え、ダークエルフ達を守ろうとする。レーユ達は見た事の無い姿の敵に驚きを隠せずに固まっていた。

 ライトエルフ達に勝利したヴリトラ達だったが、その直後にブラッド・レクエム社の幹部であるバロンが大勢のBL兵を連れて現れる。一難去ってまた一難、一体この後どうなるのだろうか?」


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