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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十六章~静かな森の妖精達~
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第二百七十八話  再び集落へ ライトエルフとの接触

 朝食を取ろうとしていたヴリトラ達の所に果物を持ったリーユがやって来て一緒に朝食を取る事にした。ヴリトラ達はリーユから彼女が集落で寂しい思いをしている事を聞かされ、彼女を支えてやろうと決める。それが数十年ぶりに芽生えた人間とエルフの小さな絆と言えた。

 再びダークエルフの集落へ向かおうとリーユを連れて森へと入って行くヴリトラとエリス。二人の他にもラピュス、リンドブルム、ジャバウォック、ララン、ジーニアスが同行し、残りは全員森の外で待機する事になった。

 リーユに案内されて集落へ続く一本道を進んでいくヴリトラ達。昨日集落へ行ったので集落へは無事に辿り着けると思っていたが、昨日森へ入った時に比べて若干風景が変わっていた。それに気づいたヴリトラ達はキョロキョロと周囲を見回す。


「なんか昨日と森の風景が変わっているような気がするんだけど・・・」

「お前もそう思うか?実は俺もなんだよ。どうなってるんだ?」


 森の変化に気付いたヴリトラにジャバウォックが自分も同じ感じがすると伝えて周りに生えている木を見上げる。勿論ラピュス達も同じように感じており、木や近くにある大きな岩を見て少し驚いた表情を浮かべていた。すると先頭を歩くリーユが前を向いたまま口を開く。


「此処にはリーユ達が住んでる集落があるから森に人間が入った時、すぐにこの森から出て行くようにしてあるってお爺様が言ってた」

「すぐに出て行くようにって、どうやって?」


 リンドブルムがリーユに尋ねるとリーユは木々を見ながら説明を続ける。


「この森には魔法が掛けられていて一日経つと木の位置や岩、川の大きさが変わって見えるようになっているの」

「幻覚みたいなもの?」

「うん。一日経つ度に森の風景が変われば魔法が掛かっている事を知らない人間はこの森が只の森じゃないと感じて不安になるから近づかないようにする。もし森で一日を過ごしても昨日と風景が違っていれば怖くなってすぐに出ようとするから森に長居されて集落が見つかる心配もないってお爺様が教えてくれたの」

「成る程、此処が迷いの森か何かだと感じた人間は恐怖のあまり近づこうとしなくなる、つまりダークエルフの姿を人間に見られる心配はない。心理的にも人間から自分達を守る事もできるって事か」


 ジャバウォックはリーユの説明を聞いて納得する。ヴリトラ達はダークエルフ達に幻覚を見せるほどの魔法を使う事ができるを知って更に驚く。そして、ダークエルフには自分達が想像していた以上に強い力を持っていると知り、驚くの同時にエルフと言う種族に興味を持つのだった。


「でも、数十年経ってこの森の事を忘れた人間達は時々森にやって来るようになったの」

「我が国の調査隊の様にか・・・」

「うん、だからあの日、人間の騎士を見た人達は攻撃魔法で威嚇したんだって・・・」


 エリスがダベルトの森を調査していた騎士達の事を口にするとリーユはエリスの方を向いて頷く。数十年も経っていればエルフ達が隠れ住んでいる森の悪い噂も消え、人間達が足を踏む入れるのも無理はない事だ。そしてそれは人間達がエルフ達へしてきた仕打ちの事も忘れていた事を意味する。エリスは人間達の無責任さと情けなさに申し訳なさそうな顔を浮かべた。


「・・・改めて私達人間がエルフ達に対してとても失礼な事をしていたと感じた。改めて謝ろう・・・」

「ううん、人間にもいい人がいるって分かったから、リーユは気にしてません」


 リーユはエリスを見ながら笑い気にしないと口にする。エリスは幼くして広い心を持つエリスに感動したのか笑ってリーユを見つめた。

 二人の会話を聞いていたヴリトラ達もリーユの寛大さに感服する。外見はリンドブルムやラランと変わらないのに無垢で優しい心を持つリーユ、まるでパティーラムと会話をしているような感じがした。


「リーユちゃんって小さいのにしっかりしてるよね?まるで大人みたいだよ」

「そう?お爺様やお姉様達はまだ子供だって言ってた」

「そうなの?」

「うん」

「・・・ねぇリーユちゃん、君って今何歳なの?」


 リンドブルムはリーユに彼女の年齢を尋ねた。女性に年齢の事をハッキリと聞くリンドブルムにヴリトラ達は呆れた顔を浮かべる。するとリーユは上を見ながら考え込み、やがて静かに口を開いた。


「確か・・・今年で五十二歳になる」

「ご、五十二歳ぃ!?」


 予想外の年齢にリンドブルムは声を上げ、ヴリトラ達も一斉に驚きその場で立ち止まる。リーユの年齢が見た目とは全然違う事と嫌な顔一つせずに普通に教える事にヴリトラ達は衝撃を受けたのだ。しかしラランとジーニアスは驚く事無くリーユを黙って見ていた。

 リーユは不思議そうな顔で立ち止まるヴリトラ達を見つめる。するとラピュスはリーユに近づき彼女の顔をジッと見てからジャバウォックの方を向く。


「ご、五十二歳って、ジャバウォックよりも年上じゃないのか?」

「あ、ああ、俺は確か今年で三十七だから・・・俺よりも十五も上って事かよ」

「それなのにどうしてそんなに若い姿を?」

「それはエルフが長寿だからなのだ」

 

 ラピュスとジャバウォックが驚きながら話していると一番後ろにいたジーニアスが喋り、ヴリトラ達は一斉にジーニアスを見上げた。


「エルフは皆人間の数十倍の寿命を持っている種族なのだ。ただ、寿命が長い代わりにエルフ達の肉体の成長は人間よりも遥かに遅いのだ。生まれてから二十年ぐらいで人間の五歳児くらいになり、五十代になってようやく十代前半ぐらいまでに肉体は成長するのだ」

「つまり、今のリーユは人間でいうところの十代、リブルやラランと同じくらいだという事か」

「そういう事になるのだ」


 ジーニアスからエルフの寿命について聞かされ、ラピュスはリーユの顔を見つめる。目の前にいるダークエルフの少女が今の自分達の中で最年長だという事が今一つ信じられなかった。

 ラピュスはヴリトラ達が目を丸くして驚きながらリーユを見つめており、リーユは周りから見られている事に照れているのか頬を少し赤く染めて目を逸らす。そこへラランがリーユの前まで来て無表情で彼女を見ながら口を開いた。


「・・・エルフは人間よりずっと長生きだから、年を取るのが遅い。それを羨ましがる人間も少なくない」

「・・・成る程な。もしかすると、それが人間がエルフ達に酷い仕打ちをしていた理由のひとつかもしれないな」


 ラランの話を聞いたヴリトラは驚きの表情から真剣な表情へと変わった。エルフは人間よりも寿命が長く、肉体の成長は人間よりも遅い。つまり若い肉体でいられる時間が人間よりも遥かに長いという事だ。それが人間達のエルフに対する嫉妬となり、八つ当たりをするかの様に酷い扱いをしていたとヴリトラは考えた。その事でエリスは更に人間がエルフと比べて小さい考え方をしていたかという事を理解する。エリスはあまりの情けなさに深く溜め息をついた。

 エリスが溜め息をついている隣でリンドブルムはリーユが五十代だという事を知り、意外そうな顔でリーユを見ている。するとまた別の疑問が頭に浮かんだ。


「それじゃあ、レーユさんは何歳なの?」

「おま、また軽々しく女の人の歳を・・・」

「確か百十一歳だったかなぁ」

「って、リーユも答えるなよ!」


 リンドブルムの質問に答えて姉の年齢を話すリーユにヴリトラはツッコミを入れる。


「因みにお爺様は今年で三百六十九歳になったんだよ」

「それじゃあ、ギルダルネさんがダークエルフでは最年長なのか?」

「うん、でもお爺様のお父さんは七百歳まで生きたって言ってた」

「な、七百・・・」


 エルフの想像以上に長い寿命にヴリトラはまばたきをしながら驚く。ラピュス達も苦笑いをしながら話を聞いていた。ヴリトラ達がエルフの寿命について一通り話をすると、ラランが前に出てヴリトラ達が進む道の先を指差す。

 

「・・・そろそろ行く。ダークエルフ達がリーユがいなくなった事に気付いて騒ぎ出すかもしれない」

「ああぁ、もし騒ぎになった状態でリーユを連れて集落へ行ったらややこしい事になるかもしれないな・・・」

「・・・急ぐ」

「分かってる。皆、行こう」


 ダークエルフ達が何や誤解するかもしれないと考えたヴリトラは急いで集落へ戻る為にラピュス達に急ぐよう話す。ラピュス達も急いだほうがいいと考えたのか話を止めて再び歩き出した。集落に着いたらどうやって話を聞いてもらえるようにするのか、その事も考えながらヴリトラ達は歩いて行く。

 十五分後、ようやく集落のあった広場が見えて来た。だが、なぜか結界魔法が解かれており、300mほど離れた所にいるヴリトラ達からもハッキリと集落が見えていた。結界魔法が解かれて集落が丸見えの状態を見てヴリトラ達は不思議そうな顔をする。


「どうして結界魔法が解かれてるんだ?」

「リーユちゃんが集落から出た時に結界を解いたんじゃないの?」


 ヴリトラとリンドブルムが集落を見ながら話しているとリーユが遠くに見える集落を見て首を横に振った。


「私は何もしてない。結界を消して外に出たら誰かが集落の外に出たって気付かれてリーユが外に出たのもバレちゃうもん。それに結界魔法は外から入る事や見る事はできないけど、外に出る時は結界を掛けたままでも出られるもん」

「つまり、わざわざ結界を解く必要はないって事だな?」

「うん」

「それじゃあ、どうして・・・」


 結界が解かれている理由が分からずに難しい顔で考え込むヴリトラ。そこへ単眼鏡を覗いたラピュスがヴリトラの肩に手を乗せながら話しかけた。


「ヴリトラ、集落の前に何人か立っているぞ?」

「何?」


 ヴリトラはラピュスから単眼鏡を借りて集落の入口前を確認する。確かに集落の前には五人のダークエルフが立っており、その内の三人はギルダルネとレーユでもう一人は腰に立派な剣を収めたツインテールの女性ダークエルフだった。彼等の前には金髪で白肌をしたエルフが四人向かい合いように立っている。

 その光景を見たヴリトラは目を鋭くして単眼鏡を目から離したてラピュスに単眼鏡を返した。


「ダークエルフが五人、その内の二人はギルダルネさんとレーユさんだ」

「ああぁ、そしてギルダルネ殿達と向かい合っているのは・・・ライトエルフだな」

「ライトエルフ?」


 ラピュスの言葉を聞いたリーユはフッとラピュスを見上げながら驚く。リーユの反応を見たヴリトラ達は不思議そうに彼女を見下ろした。


「どうした?何か知ってるのか?」

「・・・もしかして」


 集落の方を向いたリーユの顔に僅かに緊張が走る。それを見たヴリトラ達は何かあると考えて真剣な顔で集落の方を向いた。

 集落前ではギルダルネとレーユ、ツインテールの女性ダークエルフに二人の男性ダークエルフが真剣な表情で立って目の前のライトエルフ達を見つめている。一方でライトエルフ達は清々しい顔でギルダルネ達を見ていた。その内の一人は若い青年のライトエルフで肩まである長い金髪と白い肌、そして貴族が着る様な服を着ている。その後ろには彼の部下らしい三人の若いライトエルフが立っていた。


「今、何と仰いましたか?」


 ギルダルネは真剣な表情のまま目の前に立つ青年のライトエルフに尋ねる。するとライトエルフは笑いながら自分の髪をなびかせた。


「ですから、我らライトエルフの長は先日亡くなりまして、私が新しい長となったのですよ。よって貴方のお孫さんであるレーユ殿は私の妻として迎えさせていただきます」

「お断りします!以前来られた時も言いましたが私は政略結婚の為にライトエルフに嫁ぐつもりはありません!」

「おやおや、頑固な方だ。いいですか?貴方が私の妻になればライトエルフとダークエルフは同盟を結びエルフの未来は約束されるのです。そうなれば貴方がたも今以上に楽な生活ができるのですよ?何を拒む必要があるのですか?」

「だからと言って私は昨日の今日で長になったばかりの男性の妻になる気はありません」

「ハハハハ!我儘な方だ。貴方は自分の将来の為にダークエルフ全員の未来を捨てる仰るのですね?」

「私にだって将来の夫を決める権利はあります!」

「ですが貴方のお爺様である長老は今回の婚姻を認められているのですよ。それでも嫌だと仰るので?」

「クッ!」


 ライトエルフの笑顔をレーユは睨み付ける。本当なら今すぐにでも追い返してやりたいが、そんな事をすればライトエルフとの関係が悪くなり、最悪戦争になりかねない。レーユは悔しさのあまり強く手を握る。すると後ろに立っていたツインテールのダークエルフがレーユの肩にそっと手を置いた。


「レーユ、落ち着け」

「リーニョお姉様・・・」


 レーユはツインテールのダークエルフの方を向きながら名前を口にする。実はこのツインテールの女性ダークエルフこそ、レーユとリーユの姉であるリーニョなのだ。彼女はダベルトの森の警備隊長を務めており、普段は部下を連れて森の中を見回っている。因みに森の調査に訪れていたレヴァート王国騎士隊と遭遇したのも彼女の部隊だったのだ。

 リーニョは少し興奮しているレーユを落ち着かせると彼女の耳元で囁いた。


「お前の腹の立つ気持ちは分かる。だが、このまま追い返してしまえば奴等は力尽くでお前を妻にしようとするだろう。もし戦争になれば私達に勝ち目は無い。此処は冷静に対応するんだ」

「ですが・・・」


 二人が小声で話をしている姿を見たライトエルフの青年は勝ち誇った様な笑みを浮かべている。何をやっても無駄だと言いたそうな表情だった。そして青年は笑いながらギルダルネの方を向く。


「さぁ、ギルダルネ殿、すぐにレーユ殿とこの私、『ゾックス』の式の話し合いを始めましょう」

「・・・・・・」


 自分をゾックスと名乗る青年はギルダルネにレーユとの結婚式の手続きをしようと話す。ギルダルネは目を閉じながら黙って考え込む。やがてゆっくりと目を開いたギルダルネはゾックスをジッと見つめて口を開いた。


「ゾックス殿・・・」

「ハイ?」

「申し訳ないが、今回の話、無かった事にさせてもらいたい」

「・・・・・・は?」

「「!?」」


 ギルダルネの口から出た意外な言葉にゾックスは耳を疑う。それはレーユとリーニョ、周りにいる他のダークエルフやライトエルフも同じだった。


「い、いきなり何を仰るんですか?」

「私はレーユを前の長殿、つまり貴方の兄君と結婚させライトエルフとダークエルフの争い合う関係を無くし、両一族の暮らしを良くしようと考えておりました・・・ですが、私がレーユを嫁がせようとしたのは一族の為だけではありません。彼が本当にレーユを心から愛しているという気持ちが伝わって来たからなのです。そして、レーユが自分の妻になる事をどうしても受け入れられない場合は表向きだけ結婚したという形にし、密かに婚姻を取り消そうとまで言っておりました」

「え?」


 レーユはギルダルネの口から聞かされた真実に驚きギルダルネを見つめる。ギルダルネはレーユの視線を気にせずに話を続けた。



「彼も自分の事を愛していないレーユを妻にするのは心苦しかったのでしょう。だが、普通に同盟を結びだけでは両一族の者達が相手側を受け入れる事ができないだろうと考え、婚姻の話を出されたのです」

「兄が、そんな事を・・・?」

「ハイ。ですから私はライトエルフでありながらダークエルフの事を考えてくれる彼になら孫娘を嫁がせてもいいと考えました・・・ですが、その長が亡くなられたとなれば、この件は無かった事にするしかありません」

「な、何を仰います!私も兄と同じ考えです。もしレーユ殿が私を受け入れられないというのであれば、密かに婚姻の取り消しを・・・」

「それは嘘ですな?」

「は?」

「貴方はレーユにこう言いました。『自分の未来の為にダークエルフ全員の未来を捨てるのか?』と、あれでは自分と結婚しなければダークエルフがどうなるか分からないぞと脅しているようなもの、とてもレーユの事を考えているとは思えません」

「・・・ッ、そ、それは彼女があまりにも我儘な事を仰るので・・・」

「ほぉ、レーユが我儘と?」

「あっ、いや・・・」

「さっきレーユが言ったように彼女にも自分の夫となる者を決める権利がある。それを我儘だと言うような貴方に孫は任せられません!」


 ゾックスの本心を見抜いたギルダルネの鋭い視線にゾックスは思わず一歩下がる。レーユは自分の事を考えてくれていた祖父に感動し微笑みを浮かべた。

 婚姻の話が終わるとギルダルネとレーユの前にリーニョと二人のダークエルフが立ちデックス達ライトエルフを睨み付ける。


「これ以上、貴方がたと話す事はありません。どうぞお引き取りを・・・」


 そう言ってリーニョは腰の剣を握りいつでも抜刀できる体制に入る。それはすぐに引き返さないと攻撃するという警告だった。

 ギルダルネの答えを聞いたデックスは俯き黙り込む。すると、突然ゾックスは俯いたまま体を小さく震わせる。


「・・・フ、フフフフフ・・・フフフ、ハハハハハハハッ!」

「「「「「!?」」」」」


 上を向いて突然狂ったように笑い出すデックスを警戒するリーニョ達。ゾックスは顔を下すとリーニョ達を見て不敵な笑みを見せた。


「ハハハハハッ!馬鹿馬鹿しい!何が裏で婚姻を取り消すだ。あのお人好しの兄はライトエルフの長でありながら他人の事を第一に考えて自分が特になるような事は何もしなかった!野心や欲を持たない者には一族の上に立つ資格などない!

「・・・さっきから何を言っている?」

「フッ、僕にレーユを渡したくなければそれでもいい!だが、その時は我々ライトエルフはお前達ダークエルフに宣戦布告をする。この集落に攻め込み、全てを奪ってくれる。お前達は自由を失い、永遠の我らライトエルフに忠誠を誓うのだぁ!」


 隠していた本性を露わにしたゾックスをリーニョ達は睨み付け、レーユは豹変したゾックスを見て怯えていた。だが、それと同時にリーニョ達はゾックスに対して憐れみを感じる。兄である先代の長とは違い野心と欲に呑まれているゾックスの愚かさ、そして彼に従わなければならないライトエルフ達が気の毒に思えた。

 デックスは笑いながら自分を睨むリーニョ達を指差す。それを見たリーニョ達は更に警戒心の強くした。


「だがっ!僕は寛大だからなぁ、お前達にチャンスをやろう。今から一時間、猶予をやろう。その間に集落の連中とレーユを僕に渡すか相談して来い。もし、レーユを渡さないと言うのなら、我々はお前達ダークエルフに総攻撃を仕掛ける!」

「クッ!貴様・・・」

「それともう一つ、いい事を教えてやろう!僕には強い仲間がいるんだ。ソイツ等を使えばお前達ダークエルフなど一夜で滅ぼす事が可能なのだ!」

「へぇ~?それは聞き捨てならないなぁ?」

「「「!」」」


 突然背後から聞こえてくる言葉にゾックス達ライトエルフは振り返る。そこには自分達を見ながら腕を組むヴリトラ達、そしてヴリトラの陰に隠れているリーユの姿があった。


「み、皆さん!」

「・・・ライトエルフさん、ちょっと話を聞かせてもらうぜ?」


 突然のヴリトラ達の登場に驚くレーユ。ヴリトラはゾックスを睨みながら低い声を出した。

 再び同盟の話し合いをする為に集落へやって来たヴリトラ達はレーユ達と立ち話をしていたライトエルフ達と遭遇する。同盟を結べるのか分からない状態で起きた新たな問題、ヴリトラ達はどう対処するつもりなのだろうか。


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