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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十六章~静かな森の妖精達~
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第二百七十二話  ダベルトの森へ エリスとの複雑な関係

 ティムタームの北西にある森、ダベルトの森で幻の種族と言われたエルフが発見された。パティーラムはブラッド・レクイエム社との激戦に備えて彼等と同盟を結ぶ為に七竜将に第二王女エリスの同行を依頼する。それを引き受けたヴリトラ達は共に森へ行く事になったアリサ、そして聖賢竜のジーニアスと再会した。そこにエリスもやって来て複雑な彼女の性格に呆然としながらダベルトの森へ出発する。

 ダベルトの森へ出発する者が全員揃うとエリスはヴリトラ達の方を向きながら自分達の目的の再確認を始める。ヴリトラ達も今回の任務の指揮を執るエリスに注目しながら黙って話を聞いた。


「では、全員揃ったところで今回の目的を確認するぞ?今回、私達は此処から北西になるダベルトの森へ向かい、調査隊が遭遇したダークエルフの探して接触。彼等の集落へ向かいダークエルフの長と会い、ブラッド・レクイエムとコラール帝国の事を話し同盟を申し立てる事だ。此処から森までは二日は掛かる。森へ向かう途中にある村や町などで休息も取るつもりだ。だが、敵が何時本格的に攻めて来るか分からない。その為にも急ぎ森へ向かう。休息は殆どないと考えてくれ」


 真剣な顔で目的と今後の予定を話すエリス。ヴリトラ達はそんな熱く語るエリスを見てますます彼女の性格が分からなくなった。自分達の事をパティーラムから聞いて信頼しているのかと思いきや軽く接してくる。冷たい性格かと思いきや熱く物事を語る。全員がエリスのコロコロ変わる性格に混乱していた。


「此処までで何か聞きたい事はあるか?」


 ヴリトラ達はそんな風に混乱しているとエリスが自分を見ているヴリトラ達を見回して質問があるか問いかけて来る。するとラピュスが軽く手を挙げた。


「姫様、よろしいですか?」

「何だ、フォーネ?」

「我々がこれから向かうダベルトの森には褐色で銀髪のエルフがいると聞きました。つまり、我々が会うのはダークエルフという事になります」

「ああ」

「その森にはダークエルフの他にライトエルフも住んでいるのでしょうか?」

「いや、調査隊が遭遇したのはダークエルフだけだ。ライトエルフの姿は確認されていない。恐らくダベルトの森にはダークエルフしか住んでいないのだろう」

「しかし、もしかすると我々との接触をダークエルフがライトエルフに伝えて身を隠しているのでは・・・」

「考え難いな。ダークエルフとライトエルフは敵対関係にある。互いに協力し合っている可能性は低い」

「そうですか・・・」

「まぁ、敵対と言ってもライトエルフが一方的にダークエルフを軽蔑し手嫌いしているだけだ。ダークエルフの殆どはライトエルフともめ事を起こそうとは考えていないだろう」


 エリスはライトエルフとダークエルフと歴史を話し、それを聞いて二つの種族が手を結んでいる事は無いと聞いたラピュスは納得したの難しい顔をして小さく俯く。すると今度はヴリトラが小さく手を挙げて質問をしてきた。


「すんません・・・」

「何だ?」

「もし、ダークエルフが俺達人間と同盟を結ぶ事を拒んだらどうするつもりですか?」

「・・・拒む事は無い。陛下は協力してくれる代わりにダークエルフ達に謝礼を用意すると仰っておられている。金銭や土地、食料など彼等が望む物は全て与えるとな」

「・・・果たしてそれだけで彼等が動くかな?」

「どういう意味だ?」


 ヴリトラの意味深な言葉にエリスは鋭い視線をヴリトラに向ける。ヴリトラは腕を組み、目を閉じると静かに口を開き話し始めた。


「エルフは過去に人間達から酷い仕打ちを受けています。奴隷の様に扱われ、自分達の力を戦争に利用した人間が同盟を結んでもすんなりと受け入れるとは思えません」

「確かに、いくら人間の血が流れているダークエルフ達でも人間を憎んでいないとは思えない」

「僕もそう思います」

 

 ニーズヘッグとリンドブルムがヴリトラの考えに同意し、難しい顔を見せる。そんな三人を見たエリスはゆっくりとヴリトラ達に背を向けて空を見上げた。


「・・・分かっている。我々の先祖がエルフ達を弄び、自分達の道具の様にしていたいうのは陛下や先王、お爺様から何度も聞かされた。だが、今の人間は違う。二度とエルフを自分達の都合のいいように利用したりなどしない。少なくとも我々(レヴァート)はそうだ」

「果たしてそれを聞いたエルフ達がすんなりと信用するだろうか・・・」


 今度はオロチが低い声を出しながらエリスの背中を見つめて呟く。それを聞いたエリスはフッと振り返りオロチを見つめる。二人の目を鋭くまるで睨み合っている様に見えた。任務の前からいきなり気まずい空気になっている事にラピュス達騎士は動揺し始める。

 すると、まるでその重い雰囲気を壊すかのようにファフニールが明るい声を出してきた。


「でもさぁ?ダークエルフの中にもきっと私達を信じてくれる人達もいるはずだよ。まずは会って話をしてみよう?」

「・・・まぁ、確かにそうだな。俺達をどう思っているかはまずエルフ達に会ってみないと分かんねぇしな」


 自分の考えよりファフニールの考えている事が正しいと感じたのかファフニールを見ながらコクコクと頷くヴリトラ。周りにいる他の七竜将のメンバーもファフニールの話を聞き彼女を見つめていた。

 確かにダークエルフの全てが人間を憎んでいるとも考えられない。それが本当なのかはダベルトの森へ向かって彼等に会い確かめるしかなかった。その事を考えたエリスはオロチと向かい合うのをやめて小さく息を吐く。


「フゥ・・・とりえあず、ダベルトの森へ向かうぞ。全員出発の準備をしろ」


 そうヴリトラ達に言ってエリスは自分が乗って来た馬に乗る。するとラピュスやリンドブルム達が装甲車に乗り込んでいる中、ヴリトラがエリスの下へ歩いていった。


「エリス様、馬よりも俺達の装甲車に乗っていきませんか?」

「何?」

「急いでエルフ達と同盟を結ばなければいけないのでしょう?俺達の装甲車なら馬よりも遥かに早く森へ着けます。だったらこっちに乗ってください」

「・・・その鉄の乗り物にか?」


 未知の乗り物を前に疑うような様子のエリス。七竜将の事はパティーラムから聞かされているし、彼等が今まで王国の為に尽くしてきた事は彼女も知っていた。だから彼等を信頼できるという事も分かっている。だが実際に見た事のない鉄の塊に乗れと言われるとどうしても躊躇してしまうのだ。

 目を細くしながら装甲車を見つめるエリス。するとファフニールがエリスの隣までやって来て彼女の顔を覗き込む。ファフニールは瞬きをしながらエリスの顔をジッと見つめた。


「・・・エリス様、もしかして、装甲車に乗るのが怖いんですか?」

「なっ!?な、何を言う!私がこんな鉄の塊を怖がる訳がないだろう!」

「?」


 動揺するエリスを見てファフニールは小首を傾げる。二人がそんな会話をしているとオロチとラランが後部ハッチから車内へ入ろうとし、チラッとエリスの方を向いた。


「なら、早く乗ったらどうだ・・・?」

「・・・姫様、お早く」


 静かな声で話したオロチとラランはそのまま装甲車へ乗り込んだ。二人が乗り込んだ姿を見たエリスはまるで馬鹿にされた様な気分になり、ギリギリと歯ぎしりをする。エリスの姿を見て隣のファフニールや周りにいるヴリトラ達は微量の汗を掻いた。


「アイツ等、エリス様を挑発するようなこと言って・・・」

「何を考えてるんだ・・・」


 オロチとラランの態度にヴリトラとラランは困り果てた。この二人が何を考えて行動するのか、隊長のヴリトラとラピュスでも分からなくなる時がある。勿論、他の七竜将や白竜遊撃隊も同じだった。

 エリスはオロチとラランに負けてられるかと言わんばかりに装甲車に乗り込む。中に入ると見た事のない作りの車内をしばらく見回しており、奥の席で座っているオロチとラランの向かいの席に座り彼女達と向き合う。


「・・・どうですか?」

「あ、ああ・・・確かに見た事のない作りをしている。こんな物はヴァルトレイズ大陸では見た事が無い・・・」

「・・・これらを作る為の材料も技術も今の大陸にはありません。七竜将かれらはそんな未知の技術を使ってこの国の為に尽くしてくれました」


 珍しくよく喋るラランに隣で座っているオロチは意外に思ったのか少し驚いた様な顔でチラッと彼女を黙って見ている。そんなラランを見ながらエリスは彼女が持っているSR9に注目した。


「お前の持っているその奇妙な物も七竜将が来たという別の大陸の技術で作られた物なのか?」

「・・・ハイ、そうです」


 ラランは自分が持っている狙撃銃をエリスに見せながら返事をする。エリスが口にする七竜将が別の大陸から来たという設定を聞いたラランは七竜将が別の世界から来たという事をバレないように注意しながら話を進めた。


「・・・遠くにいる敵を攻撃する事ができる狙撃銃という武器。弓矢よりも遠くを狙えます」

「こ、これも銃か・・・七竜将やブラッド・レクイエムが使っている物とは随分違うのだな・・・」

「・・・銃にも色々な種類があります。これはその一つです」


 SR9を見せながら銃には色々な種類がある事を話すララン。エリスはそんなラランの話を興味津々に聞いている。

 装甲車の外ではラランとエリスが会話する姿を見てヴリトラ達がポカーンとしている。さっきまでの緊迫した空気は無くなり、まるで友達同士の会話を見ている様だった。


「ひ、姫様・・・」

「・・・ラピュスの言う通り、自分の興味がある事には目を輝かせる子供の様な性格だな」


 目を丸くするラピュスの隣でヴリトラがエリスには聞こえないように小さな声でラピュスに話す。それを聞いたラピュスはハハハと苦笑いを浮かべた。二人が話をしているとまだ乗っていない七竜将のメンバーは次々と装甲車に乗り込み、ニーズヘッグも運転席に乗る。残ったのはヴリトラとラピュスだけで、二人は装甲車の後ろに座っているジーニアスの背中に乗ったアリサと男性騎士達を見上げた。


「それじゃあ、俺達は先に行くからお前達は空を飛んでついてきてくれ」

「分かりましたぁ!」

「ジーニアス、いくら自動車が速くても空を飛んでいるお前と比べたら遅いからあまり速度を上げないでゆっくりと飛んでくれよ?」

「分かったのだ」

「あと、くれぐれも五人を落とさないようにな?」

「失礼なのだ、そんな失敗はしないのだ!」

「ハハハハ、ゴメンゴメン」


 からかわれて少しムッとするジーニアスに笑いながら謝るヴリトラ。そんなヴリトラとジーニアスの会話にラピュスとアリサ達は微笑みを浮かべた。

 話が済むとヴリトラは助手席に乗り、ラピュスも後部ハッチから車内に入る。ラピュスが乗り込むと後部のハッチが閉じ出発の準備が整う。全員が乗ったのを確認したヴリトラはニーズヘッグの方を向いて「大丈夫だ」と頷く。それを見たニーズヘッグはハンドルを強く握った。


「よし、出発するぞ」


 ニーズヘッグはアクセルを踏み装甲車を走らせる。すでに町の入口である正門は開いている為、装甲車がそのまま真っ直ぐ走り町を出た。ジーニアスも背中のアリサ達がしっかり乗っているかを確認すると大きな竜翼を広げて飛翔し、装甲車の後を追う様に飛んだ。町の城壁を飛び越えて装甲車の真上を飛ぶジーニアスは真下を走る装甲車を追い越さないようゆっくり飛び続けた。

 町を出ると装甲車は一本道を真っ直ぐ進んでいき、ジーニアスはその十数メートル上空を飛んでいた。アリサ達はジーニアスの上から辺り一帯に広がる草原を眺めており、とても気分のよさそうな顔をしている。一方でエリスは初めて乗る自動車の中で揺れる車内に落ち着かない様子を見せていた。そんなエリスを見てラピュスやジルニトラは苦笑いを浮かべる。


「姫様、大丈夫ですか?」

「なんだか凄く顔色悪そうですけど・・・」

「い、いや・・・どうもガタガタと揺らされるのは落ち着かなくてな・・・」

「まぁ、この辺りは道が凸凹してるからね・・・」


 ジルニトラは窓から外の道を見ながら呟く。地球では道路の上を走っているので車体が大きく揺れる事は無い。だがファムステミリアには道路など存在しない為、道を走れば必ず揺れてしまう。こればかりは七竜将にはどうする事も出来ない。


「・・・お前達は平気なのか?こんなに大きく揺れているのに・・・」

「まぁ、あたし達は長いこと乗っていますからね。とっくに慣れました」

「そ、そうなのか・・・」

「そう言えば、ラピュス達も最初に車に乗った時はかなり動揺してたよなぁ?」


 ジャバウォックがエリスの落ち着かない顔を見てラピュスやラランが最初に自動車に乗った時の事を思い出して楽しそうな顔を見せる。


「ジャ、ジャバウォック、別に今その話をしなくても・・・」

「いいじゃねぇか、別に恥じるようなことじゃねぇんだからよ」

「そ、それはそうだが・・・」


 どうも納得できないのか少々不服そうな顔を見せるラピュス。ラランは相変わらず無表情のままで黙ってジャバウォックの方を見ていた。


「ラピュスとララン、あとアリサも初めて車に乗った時はかなり驚いていたな。長い間、車に揺られていたせいで途中で気分が悪くなったりもしたしな」

「あっ、あったわねそんな事」


 ジルニトラもジャバウォックの話を思い出し懐かしそうな顔を見せる。その一方で自分の過去を話されて少し顔を赤くするラピュス。ジャバウォックは恥じるようなことは無いと言っていたが、彼女は恥ずかしがっている。エリスはそんなラピュスの顔を見た後にジャバウォックの方を見た。


「誰だって初めて車に乗った時は驚いたり落ち着かなかったりするものだ。だからあまり恥ずかしがらなくてもいいですよ?エリス様」

「わ、私は別に恥ずかしがってなどおらん!」

「ハハハハ、そうですが。すんませんでした」


 顔を赤くしながら怒るエリスにジャバウォックは笑いながら謝る。この会話のおかげかエリスはスッカリ落ち着いた様子を見せ、もう装甲車の揺れを気にしなくなっていた。それからエリスは七竜将から彼等の詳しい事や未知の技術や兵器の事を聞き、その間エリスは子供の様に楽しそうな顔で会話をしたのだったという。

 それから更に二時間が経過し、ヴリトラ達は一旦休憩を取る為に道の端にある丘の近くに装甲車を止めた。降車した一同は丘で腰を下ろすと簡単な水分補給をする。アリサ達も長い間ジーニアスの背中に乗っていたので背筋を伸ばすなどし、ジーニアスもファフニールからペットボトルの水を飲ませてもらっていた。


「今は丁度この辺りだ。今のところは順調に来てるな」

「ああ、でもこのペースで行っても目的地の森に着くのは夜中になるだろう」


 装甲車の近くで座り込み地図を見て位置を確認するニーズヘッグと彼の後ろからペットボトルの水を飲みながら地図を覗き込むヴリトラ。二人の近くではラピュスがエリスにペットボトルの水を渡しながら二人の会話を聞いており、エリスも水を飲みながらヴリトラとニーズヘッグを姿を見ていた。


「馬で行くと二日以上、装甲車でも丸一日掛かるか・・・」

「休憩とかも入れるからな、その時間を入れるとやっぱりそれぐらいになっちまうよ」

「どうする?ヴリトラ」

「夜に森へ到着してそのまま入るのは危険すぎる。夜になったら森の近くで休もう。森へがいるのは翌朝だ」

「その方がいいな」


 到着時間には日も沈む暗くなっている為、ヴリトラは森へ入るのは明るくなってからにしようと考え、ニーズヘッグもそれに同意する。そこへ話を聞いていたラピュスとエリスが近づいてきた。


「ヴリトラ、森に入るのは翌朝と言っていたが、到着してすぐには入らないのか?」

「ああ、一度も入った事のない森に視界の悪い夜に入るのは危険すぎる。しかもそこにはダークエルフが住んでるんだぞ?森に入って来た調査隊を攻撃するくらいだ、躊躇せずに攻撃してくるだろう」

「そんな状態で夜の森に入れば俺達はお終いだ。だから明るくなった朝に入るのが一番安全なんだ」

「成る程・・・」


 ヴリトラとニーズヘッグの話を聞いて納得するラピュス。エリスも確かにその方が安全だと感じたのかラピュスの隣で頷いている。


「という訳でエリス様、森へ入るのは明日の朝という事で構いませんね?」

「ああ、構わない」


 エリスの許可を得てヴリトラとニーズヘッグは地図をしまい立ち上がると自分達のペットボトルの水を一気に飲み干した。それからしばらく休憩したヴリトラ達は再びダベルトの森へ向かって装甲車を走らせ、ジーニアスもアリス達を背中に乗せて丘を出発するのだった。


――――――


 同時刻、神聖コラール帝国の領内。コラール帝国の帝都『エクセリオン』から北に約6K行った所に巨大な要塞が建っていた。それはファムステミリアの技術で作られたものではない。5mはある頑丈そうな城壁によって囲まれ、その壁の近くには多くの見張り台が建てられている。しかもその見張り台には重機関銃のブローニングM2は付いており、その近くでは双眼鏡を使って周囲を警戒しているBL兵の姿があった。そう、ここはブラッド・レクイエム社の要塞だったのだ。

 中央には四階建ての大きな中央棟が建っており、その周りに三階建て、二階建ての建物が囲むように建てられ、その周りや建物の間には道路や歩道が作られている。その上をBL兵の乗ったジープ、歩きながら周囲を見回すBL兵達。そして空には何機ものアパッチが飛び回っている。更に要塞のあちこちにM1戦車が停車しており、要塞の守りは完璧と言えた。

 要塞の中心である中央棟の一室では窓から空を眺めているジークフリートの姿があった。その後ろのは金色の長髪に黒と赤のドレスを着た美女の姿がある。その美女は両腕が機械鎧になっており、ジークフリートを見つめながら立っていた。実は彼女こそが先日ジークフリートが連れていたコラール帝国の第三皇女グリセルダことブリュンヒルデなのだ。今の彼女はティムタームの王城の時の様にギブソンタックではなく、本来の長い金髪という髪型だった。


「・・・そうか、ライトエルフ達はこちらの取引に応じなかったか」

「ハイ。ライトエルフの全員が我々に力を貸す事を拒んでおります。やはり、過去の人間の過ちで人間を相当憎んでいる様です」


 ブリュンヒルデからの報告を聞いたジークフリートは外を眺めながら腕を組む。話の内容からどうやらブラッド・レクイエム社もエルフに協力するよう要請をしている様だ。


「ライトエルフは純潔ゆえにそれだけプライドが高いのだろう。どれだけこちらがエルフ達が喜ぶような条件を出しても決して首を縦には振らないだろう・・・」

「いかがいたしますか?この際、集落を襲撃し力尽くで言う事を聞かせては?」

「それもあるが、まだダークエルフが残っている。ダークエルフに要請する前にライトエルフの集落を襲撃しダークエルフから警戒されるのは面倒だ」

「ハイ・・・」

「・・・だが、これ以上我々の話に耳を貸さないと言うのであれば、それも仕方がない・・・・・・『バロン』と『アダンダラ』の部隊はまだ集落の近くにいるな?」

「ハイ、現在はライトエルフの様子を見ながら待機中との事です」

「奴らに伝えておけ、もしライトエルフがこちらの取引に応じないのなら、お前達の判断で襲撃し手構わない、と」

「分かりました」

「くれぐれも皆殺しにはするなと伝えておけ・・・半殺し、もしくは半分殺すくらいなら許可すると」

「ハイ」


 最後に恐ろしい言葉を口にするジークフリート。ブリュンヒルデも無表情のまま返事をして部屋から出て行く。一人残ったジークフリートは中央棟の外の景色を見たままアーメットの隙間から赤い目を光らせるのだった。

 ダベルトの森へ向けて出発したヴリトラ達。エリスと少しずつ打ち解け合いながら目的地へ向かっていくが、彼等はブラッド・レクイエム社が今度の一件に関わっている事をまだ知らなかった。


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