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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十五章~一年間の空白~
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第二百六十八話  静かなる戦慄 謁見の間の混乱


 ジークフリートから渡されたコラール帝国の親書に書かれた宣戦布告の文字。それが謁見の間にいるヴリトラ達の体に衝撃を走らせる。ジークフリートが謁見の間を去ろうとするのを止める七竜将だったが、新たにブリュンヒルデと言う機械鎧兵士が現れて事態は更に混乱し始めた。

 七竜将に囲まれているジークフリートの前に立ち、彼を守るように周囲を警戒するブリュンヒルデ。その美しい外見には到底似合わない様な鋭い視線に七竜将の体に緊張が走る。目の前の機械鎧兵士を見てラピュス達はすぐに気づいた。彼女は強いと。


「姫騎士、だと?」


 ヴリトラはジークフリートの紹介を聞き、低い声で訊き返した。ブラッド・レクイエム社のこれまでのやり口からこの世界の人間を機械鎧兵士にするのに幻影黒騎士団の様に自我を消したりせず、自我や理性をそのまま残しておくなど考えられなかったからだ。他の七竜将のメンバーもその事に驚いていたのか黙ってブリュンヒルデを見ている。

 ジークフリートは振り返り、自分の後ろで森羅を構えながら警戒しているヴリトラを見た。


「そう、彼女はコラール帝国の中でも五本の指に入るほどの実力を持った姫騎士だ。機械鎧兵士になる前の状態で我が社の機械鎧兵士三人を一度に相手にし、僅か二分で全滅させた。その強さをに惚れ込んだ女王が彼女をスカウトしたのだ」

「おいおい、マジかよ・・・」


 ブリュンヒルデの予想外の力に驚き声を漏らすニーズヘッグ。周りにいるリンドブルム達も信じられない事に目を見開きながら黙り込む。

 自分の事の様にブリュンヒルデを自慢するジークフリートのブリュンヒルデは小さく溜め息をつきながらチラッと彼を見る。


「・・・ジークフリート様、その内容は大袈裟すぎます。私はブラッド・レクイエムの兵士を倒すのに五分掛かりました」

「大して変わらんだろう。少しぐらいカッコつけてもバチは当たらん」

「別に私はカッコつけたいわけではないのですが・・・」


 ジークフリートとブリュンヒルデの会話を聞いてヴリトラは更に表情を鋭くする。本当は五分掛かったとしても普通の姫騎士が三人のBL兵を五分で倒すなど考えられないからだ。それだけブリュンヒルデが強大な力を持っているという事をヴリトラ達は再認識した。

 七竜将が取り囲む二人の機械鎧兵士をヴァルボルト達は黙って見つめている。微量の汗を掻きながらジークフリートとブリュンヒルデを見ているヴァルボルトの隣でパティーラムはブリュンヒルデをジッと見つめていた。すると、突然目を見開き驚いた様な顔になる。


「・・・思い出しました!」

「ムッ?どうしたパティーラム?」


 突然隣で声を上げるパティーラムにヴァルボルトやアンナ、エリスの王族達が一斉の彼女を見る。パティーラムはブリュンヒルデを見ながら汗を流す。


「彼女の顔、何処かで見覚えがあると思いましたが・・・間違いありません」

「どういう事じゃ?」

「ちゃんと説明しろ」


 パティーラムの言っている事が分からず、アンナとエリスは尋ねる。パティーラムはブリュンヒルデを指差して口を開いた。


「彼女はグリセルダ、『グリセルダ・ラクノス・コラール』です!」

「グリセルダじゃと!?」


 パティーラムが口にするブリュンヒルデの本名を聞いたアンナが驚きの顔で訊き返した。周りにいるヴァルボルト達もその名前を聞いて思わずパティーラムの方を向く。だがヴリトラ達、七竜将は初めて聞くグリセルダという名前に小首を傾げていた。

 ブリュンヒルデはパティーラムを見つめており、パティーラムもブリュンヒルデを指している手をゆっくりと下ろして彼女を見つめる。


「間違いありません。彼女はコラール帝国第三皇女、グリセルダ姫です」

「なんと、彼女があの『帝国の殲滅姫』と言われる・・・」

「その呼び方、あまり好きではないのでやめて頂けますか?」


 アンナの口にする二つ名を聞き、若干表情を鋭くするブリュンヒルデ。それを見たパティーラムやアンナの様な王族達は一瞬驚き一歩下がった。

 ブリュンヒルデがパティーラム達の方を見ていると、ブリュンヒルデを見ていたファフニールが隣になっているアリサにそっと声をかける。


「アリサさん、あの人ってそんなに有名なんですか?」

「あ、ハイ。帝国の中でもかなりの実力者と言われている方です。昔、一人の貴族とその私兵部隊が帝国に反旗を翻したんです。彼女は十数人の騎士を連れてその貴族達の鎮圧に向かいました・・・戦いが始まって僅か二時間、彼女は貴族とその私兵部隊を半数以上を一人で処刑したと言われています」

「その私兵部隊は結構な人数だったんですか?」

「ええ、聞いた話では少なくても三十人以上はいたとか・・・」

「えっ!?」


 アリサの話を聞いたファフニールは驚き目を丸くする。二人の会話を近くで聞いていたオロチは黙って二人を見ていた。


「三十人の半数以上って事は、少なくとも十五人を一人で倒しちゃったんですか?」

「ハイ、しかもその私兵部隊は皆が凄腕の騎士や兵士ばかりだったらしいですよ」

「それを一人で・・・」


 ブリュンヒルデの正体とその力の大きさに驚き続けるファフニール。だが、オロチは興味の無さそうな顔をしていた。彼女からしてみればたった三十人で帝国に反旗を翻そうとした愚かが貴族の考えの方に興味があったのだ。

 ファフニールとアリサがそんな会話をしていると今まで黙ってブリュンヒルデを見ていたラピュスが彼女を見つめながら口を開く。


「・・・なぜ帝国第三皇女が寄りにもよってブラッド・レクイエムの機械鎧兵士などに?」

「それは先程ジークフリート様が仰ったはずだ。ジャンヌ様が私の力を認めて機械鎧兵士へ生まれ変わらせてくれたのだ」

「機械鎧兵士になる為に体の一部を失う事に抵抗は無かったのか?」

「・・・無い。より強い力を手に入れる為なら腕の一本や二本、失う事など怖くない」


 ラピュスは迷いのないブリュンヒルデの顔を見て返す言葉が見つからなかった。彼女に目には体の一部を失った事に対する後悔や恐怖などは一切感じられなかった。ただ強い力を手に入れ、その力で敵を捻じ伏せるという威圧感だけが感じられ、ラピュスはブリュンヒルデの目を見て一瞬寒気を感じる。

 ブリュンヒルデは自分を見てアゾットを構えているラピュスを見て彼女の機械鎧化している右腕に気付く。


「お前も右手を機械鎧に変えたのか・・・」

「変えたのではなく、変えさせられたのだ。ジャンヌによってな・・・」

「・・・そうか、ジャンヌ様が仰っていた七竜将と共に行動している姫騎士とはお前の事だったのか」


 ブリュンヒルデは目の前にいるラピュスがブラッド・レクイエム社で話題になっている姫騎士である事を知り意外そうな顔を見せる。ジャンヌやジークフリートが一目置く姫騎士が自分と殆ど年齢差のない若い女である事に少し驚いた様だ。

 そんなブリュンヒルデを見てジークフリートは赤い目を光らせて彼女に話しかけた。


「ブリュンヒルデ、そろそろ行くぞ。これ以上長居すると面倒な事になる」

「承知しました」


 返事をしたブリュンヒルデは静かに槍を下す。ブリュンヒルデが武器を下すのを確認するとジークフリートは右腕の前前腕部に付いている小さなスイッチをヴリトラ達に気付かれないように素早く押した。振り向いてヴリトラと玉座に座っているヴァルボルトを見る。


「残念だがそろそろ時間だ。我々はこれで失礼する」

「言っただろう?逃がすつもりはないって!」


 ヴリトラは逃げようとするジークフリートを睨みながら森羅を構え直す。ラピュスや他の七竜将もそれぞれ武器を構えてジークフリートとブリュンヒルデを取り囲みながら睨む。勿論、衛兵達も同じだった。

 ジークフリートは相変わらず敵に囲まれがらも冷静さを保っており、腕を組んで小さく俯きながら笑う。


「フフフフ、私も言ったはずだぞ?一人で敵国に乗り込んでくると思ったかとな」


 そう言った直後、突如謁見の間の入口の扉が開き、一人の衛兵が慌てた様子で駆け込んできた。

 突然やって来た衛兵にヴリトラ達は一斉に衛兵の方を向く。衛兵は持っていた槍を落とし、両手両膝を床につけながら息を乱してヴァルボルトの方を見る。


「へ、陛下!大変です!」

「一体何事だ?」

「ま、町の南南西から無数の黒い物体が町に向かって飛んできます!」

「何?飛んで来るだと?モンスターか?」

「い、いえ、見た目は以前白竜遊撃隊の報告にあった空飛ぶ鉄の怪物に似ております!」

「何っ!?」


 衛兵の報告を聞いたヴリトラは驚き声を上げる。ラピュス達も驚きの表情を浮かべ、ヴァルボルトや貴族達も突然の出来事に戸惑いだした。ヴァルボルト達が騒ぐ中、ヴリトラはキッとジークフリートとブリュンヒルデを睨む。


「ジークフリート!お前、まさか!」

「フフフ、先程町の外に待機させておいた空中戦闘部隊に連絡を入れた。あと数分でこの町に到着するだろう」

「くうぅ!」

「早く何とかした方がいいぞ?奴等には町に到着次第、攻撃を仕掛けるよう指示を出してある」

「貴様ぁ!」


 ラピュスはジークフリートを睨みながらアゾットを構えて走り出す。背中を向けているジークフリートに斬りかかろうとする。そこへブリュンヒルデが割り込みラピュスの正面に立つと持っている槍で突き攻撃して来た。ラピュスは咄嗟に足を止めてブリュンヒルデの突きをアゾットで払い反撃する。アゾットを勢いよく振り下ろすがその振り下ろしをブリュンヒルデは槍を横にし柄の部分で止めた。

 アゾットの刃と槍の柄が触れ合い、そこから高い音と火花が飛び散る。それを見たラピュスは歯を噛みしめ、ブリュンヒルデは少し驚いた顔を見せた。


「お前のその剣、超振動剣か・・・まぁ機械鎧兵士なら持ってても不思議ではないな」

「超振動の武器まで知っているとは、ブラッド・レクエムから色々な事を教えてもらったようだな!」

「ええ、今の私はブラッド・レクイエムの幹部なのだから、組織の事はジークフリート様やジャンヌ様から色々な事を教わった。七竜将やお前の事もな」


 お互いに相手を睨みながら話し合うラピュスとブリュンヒルデ。姫騎士であり機械鎧兵士である二人には共通するところが多くあり、二人は無意識に心の中で目の前の女とは戦う運命にあると感じていた。

 ブリュンヒルデは両手に力を入れて槍を押し、ラピュスは後ろへ押し戻す。距離を取って相手を睨み合うラピュスとブリュンヒルデ、それを見たジークフリートはブリュンヒルデの肩に手を置く。


「ブリュンヒルデ、その女との戦いは次の機会にしろ」

「・・・ハイ」


 ジークフリートの言葉にブリュンヒルデは低い声で返事をする。

 騒がしくなっている謁見の間を簡単に見回した後、ジークフリートとブリュンヒルデは高く跳び上がり出入口の扉の前に着地した。ラピュス達は自分を飛び越えた二人に驚くもすぐに二人の方を向き武器を構え直す。ヴリトラとラピュス達と合流し、並んでジークフリートとブリュンヒルデを睨む。

 ジークフリートはもう一度ヴリトラ達の方を向く楽しそうな声を出す。


「次に会う時はゆっくりと剣を交えたいものだ。それまで死ぬなよ、ヴリトラ。お前と私は戦う運命にあるのだからな?」

「何?」


 意味不明な事を口にするジークフリートにヴリトラは目を細くする。そんなヴリトラを見てジークフリートはただ楽しそうに笑うのだった。

 笑うジークフリートの隣ではブリュンヒルデがヴリトラの隣でアゾットを構えているラピュスをジッと見つめている。


「ラピュス・フォーネ、また何時か何処で会おう・・・」

「・・・・・・」


 いつの日か再会するのを楽しみにしている、と言いたそうなブリュンヒルデをラピュスは黙って睨む。

 ヴリトラ達への別れの挨拶を済ませたジークフリートとブリュンヒルデは素早く謁見の間から出ていき、七竜将は逃げる二人の後を追う。


「アリサ、私達はあの二人を追う。此処は任せたぞ!」

「え?・・・あ、ハイ!」


 いきなりラピュスに任せたと言われて一瞬動揺するアリサだったがすぐに落ち着いて頷く。ラピュスはラランを連れて謁見の間を出ると七竜将の後を追う。残されたアリサは衛兵の報告を聞き混乱状態になっている謁見の間を見て戸惑いを見せる。


「任せたって・・・一体どうすればいいんですかぁ~?」


 混乱している謁見の間を見渡しながらどうすればいいのか分からないアリサは頭を抱えながら情けない声を出すのだった。

 その頃、七竜将は長い廊下を逃走するジークフリートとブリュンヒルデの後を追っていた。二人の走る速度が速くなかなか追いつけない七竜将。やがてジークフリートとブリュンヒルデは廊下の角を曲がり、一つの部屋に飛び込む。七竜将もその後を追い部屋に飛び込み、武器を構えて警戒する。その部屋は来客用の部屋らしく豪華な家具などが置かれてあった。だがジークフリートとブリュンヒルデの姿は見当たらない。


「いない・・・」

「何処へ行きやがった?」

「まさかまた透明になったんじゃ・・・」


 部屋を見回すオロチとジャバウォックの間でサクリファイスを構えながら再びジークフリートがタクティカルファントム迷彩を使ったのではないかとジルニトラは考える。すると一歩前に出て辺りを見回しているニーズヘッグがバルコニーに繋がっている窓が開いている事に気付く。


「おい、ヴリトラ・・・」

「ああ・・・」


 二人はバルコニーに逃げた、ヴリトラとニーズヘッグはそう確信した。他のメンバーも開いている窓を見てそう考え鋭い視線をバルコニーに向ける。ヴリトラ、ジャバウォック、ニーズヘッグ、オロチがバルコニーに出て周囲を警戒、残ったリンドブルム、ジルニトラ、ファフニールが何か遭った時の援護バックアップとして室内で待機する。

 バルコニーには休息のためのテーブルや椅子が置かれているだけで何処にもジークフリートとブリュンヒルデの姿はなかった。ヴリトラ達は警戒しながら二人を探す。


「・・・いない」

「何処に行った?」


 ヴリトラは森羅を構えるのをやめ、ゆっくりとバルコニーの外を覗く。ヴリトラ達がいるのは城の三階のバルコニー、普通の人間では飛び降りるなんて事は出来ないがジークフリートとブリュンヒルデは機械鎧兵士、三階ぐらいなら楽々と飛び降りれる。しかし、ヴリトラ達は二人がバルコニーから飛び降りるとは考えていなかった。なぜなら下には城の中庭がある為、城の外には出られないからだ。

 城からの脱出を考えている二人がわざわざ中庭に飛び降りるなんて事はしない。ヴリトラはそう考えながら真下にある中庭を見下ろす。


「下に降りていないとなると、何処へ・・・・・・ッ!」


 下を覗いていたヴリトラは何かに気付きフッと振り返り上を見上げる。そして城の屋上から自分達を見下ろしているジークフリートとブリュンヒルデの姿を見つけた。


「あそこだっ!」


 二人を見つけたヴリトラが声を出して周りにいるジャバウォック達に知らせる。ジャバウォック達も上を見て屋上からバルコニーを見下ろしている二人の姿を確認した。


「アイツ等、いつの間にあんな所に!」

「きっと、バルコニーに出た直後にジェットブースターで飛び上がったんだろう・・・」


 オロチはジークフリートが空を飛べる事を思い出して呟く。


「どうする、ヴリトラ?」


 ジャバウォックが尋ねるとヴリトラは難しい顔でジークフリートを見上げる。ジークフリートとブリュンヒルデがいる屋上はヴリトラ達のいるバルコニーから数mも高い所にあった。機械鎧兵士なら駆け上がる事も可能だが、登り切るのに少し時間が掛かる。登り切る前に逃げられたら意味がない。


「・・・オロチ、お前ならすぐにアイツ等の所に行けるだろ?先に行ってアイツ等が逃げないように足止めをしてくれ」

「・・・いや、もう無理だ・・・」

「どういう事だ?」


 オロチの方を向いて尋ねるとオロチはジークフリートとブリュンヒルデを指差す。すると二人の背後からブラッド・レクイエム社のヴェノムが姿を現した。プロペラの風によって砂埃が舞い、ブリュンヒルデの髪が大きく揺れる。

 二人の数m真上でホバリングをするヴェノム。すると側面の扉が開き、一人のBL兵が姿を見せて縄梯子を垂らす。ジークフリートとブリュンヒルデが縄梯子に掴まるとヴェノムはゆっくりと上昇を始めた。


「アイツ等、空から逃げる気だぞ!」

「マズイ!ニーズヘッグ、マイクロ弾でヴェノムを撃てないか!?」

「無茶を言うな。この位置じゃ狙いを付けられない!」


 逃げられる前にヴェノムを撃ち落とそうとするがバルコニーから屋上のヴェノムを狙い撃つには位置が悪すぎた。このままではジークフリートとブリュンヒルデに逃げられてしまうとヴリトラ達が考えているとオロチが斬月を握り、ジェットブースターを点火させて空を飛ぼうとする。

 だが、そこへヴェノムに乗っていたBL兵がMP7を発砲する。BL兵の銃撃にヴリトラ達は咄嗟に部屋に飛び込んで銃撃をかわす。ヴリトラ達が部屋に隠れるのと同時にヴェノムは一気に上昇した。


「私達はこれで失礼する。七竜将、次会う時に戦える事を楽しみにしているぞ!」


 ジークフリートがそう言い残すとヴェノムはティムタームの城から離れていく。そして僅か数秒でヴリトラ達の手の届かない所まで離れてしまった。

 部屋からバルコニーに出たヴリトラはジークフリートに逃げられた事を悔しがりバルコニーの手すりと左手で力一杯叩く。そこへ遅れて来たラピュスとラランも到着した。


「おい、さっき銃声が聞こえたが何があった?」

「・・・ジークフリート達に逃げられた」

「・・・そうか」


 悔しそうな顔のまま低い声で逃げられた事を伝えるヴリトラと同じように悔しそうな顔で俯くラピュス。周りにリンドブルム達も同じような顔をしている。

 そんな中、遠くから大きな爆発音が聞こえ、ヴリトラ達はフッと顔を上げてバルコニーから爆発音の聞こえた方を見る。王城の一部が破壊されて煙が上がり、その上空では一機のアパッチと足のジェットブースターで空を飛んでいる十人の上級BL兵の姿があり、それを見たヴリトラ達は鋭い表情へと変わった。


「・・・悔しがるのは後回しだ。まずはあの空中部隊を何とかするぞ!」

「ああ!」

「行こう!」


 ヴリトラの指示を聞きラピュスとリンドブルムが力強く返事をする。ヴリトラはそれぞれに指示を出し、役割が決まると一同は侵入してきた敵部隊を迎撃する為に一斉に行動を開始した。

 ジークフリートとブリュンヒルデには逃げられてしまった。だが王城にはまだジークフリートの置き土産であるブラッド・レクイエム社の空中部隊が残っている。彼等を倒す為、ヴリトラ達は素早く行動を開始するのだった。


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