第二百六十七話 ジークフリートとの再会 宣戦布告と漆黒の戦乙女
ヴァルボルトと再会した七竜将は再びレヴァート王国、ヴァルトレイズ大陸の平和の為に共に戦う事を誓う。だがその直後、突然ジークフリートが現れて謁見の間の空気が一瞬にして張り詰めた。七竜将も一年ぶりに見たジークフリートの姿に緊張を隠せないでいる。
謁見の間の中央で堂々と立っているジークフリートを睨むヴリトラ達。騎士や衛兵達も王族や貴族を守りながらジークフリートを警戒している。一方でジークフリートは敵に囲まれているのも関わらず余裕の態度を見せていた。
「・・・お初にお目にかかる。私は傭兵派遣会社ブラッド・レクイエム社軍事総責任者にして機械鎧兵士部隊総司令官ジークフリートと申す。以後お見知りおきを、レヴァート王国の王族の皆さん・・・」
ゆっくりと頭を下げながら礼儀正しく挨拶をするジークフリート。そんな彼のヴァルボルトは鋭い目で見つめていた。ヴァルボルトは目の前にいる黒騎士が只者ではない事に気付いていたのだ。パティーラム達王女やガバディア達騎士も初めて見る敵司令官の姿に緊張を隠せない出る。
ジークフリートはヴァルボルトを守るように立ち、自分を睨みながら森羅を抜く体制のヴリトラを見てアーメットの隙間から見える赤い目を光らせた。
「久しぶりだな、ヴリトラ。やはり生きていたか」
「・・・ああ、運良く生き延びる事ができたよ」
「フフッ、それは何よりだ」
ヴリトラが生きていた事が嬉しいのかジークフリートは低い声で笑う。すると今度はヴリトラから離れた所で自分を睨んでいるラピュスは他の七竜将の方を向く。
「お前達も無事だったか」
「ヴリトラが生きているんだから僕達が生きてても不思議じゃないでしょう?」
「それとも、俺達が生きている事が意外だったか?」
ジークフリートを睨みながら話すリンドブルムとジャバウォック。ジークフリートは二人を見た後に他の七竜将のメンバーも黙って一度ずつ見る。するとその中で右腕が機械鎧化しているラピュスに気付く。
「ほぉ?ラピュス・フォーネ、右腕が機械鎧になっているではないか?」
「・・・貴様のところの大将のせいで右腕が使い物にならなくなってしまったのだ」
一年前にジャンヌによって右腕を破壊された時の事を思い出したラピュスは低い声を出しながらジークフリートに言い放つ。あの時の悔しさと怒りを思い出したラピュスは険しい顔でジークフリートを睨む。
ラピュスの険しい顔を見たジークフリートは腕を組みながら笑い出す。
「フフフフ、あの時のか。女王も酷い事をする。若い娘から腕一本を奪ってしまうとはな・・・」
「何を他人事のように言っている?貴様も同罪である事を忘れるな!」
「フッ、それもそうだな・・・」
ジークフリートはラピュスの言った事をアッサリと認めて組んでいた腕を下した。そんなジークフリートを見てラピュスやリンドブルム達は自分の武器を強く握る。そんな何時戦闘が起きてもおかしくない空気の中で余裕の態度で話をするジークフリートを見ていたヴリトラはお決まりの質問をする。
「ところで、何をしに来たんだ?と言うか、どうやってこの謁見の間まで来た?此処はレヴァート王国の中でも最も警戒が厳重な場所、容易く侵入できるはずがない」
「どうやって来たか?・・・勿論正面から入って来た」
「テキトーな事を言うな!大勢いる衛兵に見つからずに・・・・・・ッ!」
ヴリトラが鋭い目でジークフリートを睨みつけながら言い返そうとした時、彼はある事に気付く。過去にジークフリートが誰にも見つからずにティムタームに侵入してきた事、セメリト王国の首都レイグリーザの王城で現れた時の事、それらがヴリトラの頭をよぎった時、一つの答えが出た。
「・・・タクティカルファントム迷彩か」
「その通りだ。透明になれば衛兵が何人いようが関係ないからな」
「チッ!」
「・・・ただ、この迷彩も万能ではない。長時間起動していれば当然透明化は自動的に解除されてしまう。つまり、姿が見えるようになってしまうという事だ」
「・・・・・・」
「実はここに来る途中でも一度透明化が解けてしまってな。近くにいた数人の衛兵に見つかってしまったんだ」
「!」
ジークフリートの話を聞いたヴリトラは何かに気付いて目を見張る。それはヴリトラ達にとって悪い内容だった。
「・・・その衛兵達はどうしたんだ?」
「当然、殺した。我々の存在を知られると面倒だからな」
「テメェ・・・」
アッサリと殺したと口にするジークフリートにヴリトラは歯を噛みしめる。人の命を奪っても平然としていられるブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士にヴリトラは改めて苛立ちを感じた。
険しい顔のヴリトラとアーメットで顔を隠しているジークフリートが睨み合う中、二人の姿を見ていたラピュスはジークフリートの言葉を思い出した。
(ちょっと待て・・・あの男、確か『我々』と言ったな。という事は、ジークフリート以外にこの城に侵入している者がいるという事か?)
先程のジークフリートがヴリトラに言った言葉を思い出したラピュスは疑問を抱く。いくらジークフリートがブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士部隊の総司令官と言えど、一人で潜入するとは考えられない。ラピュスは謁見の間を見回して隠れているかもしれないジークフリートの仲間を探し出す。
ヴリトラとジークフリートが黙って相手を見つめているとヴァルボルトの脇に控えているレレットが突如騎士剣を抜いてジークフリートに飛び掛かった。
「ハァーーーッ!」
「!?」
いきなり攻撃を仕掛けるレレットにヴリトラや周りにいた者達は驚きの表情を浮かべる。だが、ジークフリートは冷静なまま飛んで来るレレットの方を向く。そんなジーフリートにレレットは騎士剣を振り下ろして攻撃した。しかしジークフリートはレレットの振り下ろしを右手で簡単に受け止めてしまう。
「残念・・・」
「き、貴様ぁ!」
余裕の態度のジークフリートにレレットは歯を強く噛みしめて睨み付ける。ジークフリートが騎士剣を掴んでいる手を軽く押しながら放すとレレットは後ろに押され、床に足が付くのと同時に構え直す。
「ジークフリート!貴様は私が斬る。姉の敵討ちだ!」
「姉?何の話だ?」
「とぼけるな!一年前、ティムタームで開催された武術大会でお前が殺した私の双子の姉だ!」
「一年前?・・・ああぁ、あの小娘か。成る程、お前の姉だったか。どおりで見覚えのある顔だと思った」
ビビットの事を覚えていたのかジークフリートは懐かしそうな声を出す。レレットはジークフリートは睨みながら騎士剣を握るよう手に力を入れた。
「まぁ、あの小娘には感謝している。奴が無様に負けたおかげで幻影黒騎士団の改善点が分かったのだからな」
「クッ!貴様ぁ!」
死んだ自分の姉を侮辱するジークフリートに再び斬りかかろうとするレレット。するとそんな彼女をザクセンが後ろから肩を掴んで止める。
「よせ、レレット」
「隊長、放してください!」
「憎しみで敵と戦うな」
「し、しかし・・・」
納得のできないレレットをザクセンは黙って見つめる。そんなザクセンの顔を見たレレットは私情を持ち込んではいけないというザクセンの意思を感じ取ったのか、仕方なく騎士剣を鞘に納めた。
レレットが落ち着き、後ろに下がるのを見たヴリトラとヴァルボルトは小さく深呼吸をして落ち着く。ヴリトラはジークフリートの方を向いて鋭い目で彼を見つめる。
「・・・話を戻そう。一体何しに来たんだ?」
「・・・なに、お前達七竜将がこっちに戻ってきたという知らせを受けて挨拶に来たんだ」
「何だと!?」
ヴリトラはジークフリートの言葉に耳を疑った。勿論ラピュスや他の七竜将のメンバーも同じだ。
七竜将がファムステミリアに戻って来たのは昨日、他の国に自分達の存在が知られるような大きな動きはしておらず、ブラッド・レクイエム社と繋がりのある者とも接触もしていない。それなのにブラッド・レクイエム社が七竜将がファムステミリアに戻ってきた事を知る事ができるなどあり得ない事だった。
ジークフリートがなぜ自分達がファムステミリアに戻って来たのを知っているのか、それを考えた時、七竜将の頭の中に最悪の答えが浮かび上がった。
「・・・まさか」
ラピュスは汗を垂らしながらゆっくりと口を動かす。彼女の声を聞いたジークフリートはチラッとラピュスの方を向く。
「まさか・・・この国にお前達が送り込んで密偵がいるのか?」
密偵、その言葉を口にしたとき、謁見の間にいた王族や貴族達が背筋を凍らせる。この国に自分達が最も恐れている者達の仲間が紛れ込んでいるかもしれないとしれば当然だった。
だがジークフリートはラピュスを見ると小さく鼻で笑う。
「半分正解だ。確かにこのティムタームには我がブラッド・レクイエム社のスパイが昨日まで潜伏していた」
「昨日まで?」
「お前達がこっちに戻って来たという事を報告させた後にそのスパイをすぐに戻らせたのだ」
「なぜだ?」
「私がこの町に来れば、この町にスパイがいるかもしれないと七竜将に感づかれてしまう可能性があるからな。スパイが捕まって我々の情報を喋らせないようにする為に引き返させたのだ」
「成る程、スパイが町からいなくなれば捕まる事もない、つまり俺達がお前達の情報を得る事もなくなるというわけか・・・」
ヴリトラはジークフリートの素早い判断に悔しそうな顔をする。
七竜将がジークフリートをジッと見ているとヴァルボルトがジークフリートを見つめながら口を開いた。
「ジークフリート、と申したな?お主が此処に来たのは本当に七竜将に会う為だけなのか?」
「勿論です、ヴァルボルト王。私にとって重要なのは七竜将とその連れの生死を確認する事なので・・・」
「つ、連れだと・・・」
自分を連れ呼ばわりするジークフリートを見てカチンとくるラピュス。ラランは気にしていないのか無表情のままジークフリートを見つめていた。
「・・・一体いつからこの国にスパイを送り込んでいたんだ?」
「ノーティンク大森林の補給基地が爆発した直後だ。お前達が何時かティムタームに戻った時にすぐ我々に情報が届くようにな。あと、レヴァート王国の情報を得る為でもあった」
「戻った時?・・・まるで俺達が生きていた事を知っていたような言い方だな?」
「最初は死んだと思っていた。だが、補給基地で例の装置が誤作動を起こしたのを見て私はお前達が向こうに飛ばされたのではないかと考えた。その数日後、稲城市にある補給基地に連絡を入れたら一切繋がらなくなっていた。それで確信したのだ、七竜将は生きていると」
「俺達以外の誰かとは思わなかったのか?」
「向こうにいる人間でケルピーと巨兵機械鎧を倒せる存在などいるはずがない」
「だから俺達が向こうに行ったと考えたって事か・・・いけ好かないが頭の切れる奴だぜ」
ジークフリートの洞察力を気に入らなく思いながらも認めるヴリトラ。ラピュスや他の七竜将もジークフリートを見て彼の頭の切れに驚いていた。周りにいる他の者達の中でパティーラムとガバディアは七竜将の正体を知っている為、話の内容はある程度理解できている。だが他の者達は内容が理解できずに困惑していた。
「他に何か聞きたい事はあるか?今日は機嫌がいいからな、答えられる質問にはなんでも答えてやる」
七竜将が生きていた事が嬉しいのかジークフリートは周りを見ながら質問がないか訪ねる。するとヴァルボルトの脇に控えていたパティーラムが一歩前に出て来た。
「では、お伺いします。オラクル共和国との戦争に勝利したあなた方はこれから何をなさるおつもりですか?」
すでにオラクル共和国との戦争は終わり、これからブラッド・レクイエム社が何をするつもりなのか尋ねるパティーラム。ジークフリートはパティーラムの方を向いて赤い目を光らせる。
「それは何とも言えない。私達はコラール帝国と契約を交わしている。つまり、我々がどう動くかは皇帝次第という事になります」
「ギンガム皇帝が我々に宣戦布告をすればあなた方も我が国は他の同盟国にも攻撃を仕掛けてくる、という事ですか?」
「その通りです。まぁ、近いうちに彼は間違いなくあなた方に宣戦布告をするでしょうけどね」
ジークフリートの口から出た言葉に謁見の間にいる貴族や衛兵達は騒ぎ出す。やはりコラール帝国との戦争は避けられないのだという現実に動揺を隠せないようだ。
「静まらんかっ!」
貴族達が騒ぐのを見たヴァルボルト玉座のひじ掛けを強く叩きながら大声を出す。それを聞いた貴族や衛兵達は一瞬にして黙り込んだ。
謁見の間が落ち着いたのを見たヴァルボルトはジークフリートの方を向き鋭い目で彼を見つめる。
「ギンガム皇帝は本当に我々と戦うつもりでおられるのか?」
「ええ、彼はそう言っていました」
「・・・・・・」
ギンガムは自分達と戦うつもりだと聞かされたヴァルボルトは目を閉じて黙り込む。しばらくしてゆっくりと目を開いたヴァルボルトは再びジークフリートの方を向いた。
「我々に戦う意思はない。しかし、帝国やブラッド・レクイエムが我が国に危害を加えるというのであれば、宣戦布告を受け入れ、全力で戦うと心得られよ」
「フフフフ、そう仰ると思っていました」
ヴァルボルトがどんな返答をするのか察していたのかジークフリートは不敵な笑い声を出す。そして丸めてある羊皮紙を取り出してそれをヴァルボルトの前に立っているヴリトラに向かって投げた。
羊皮紙をキャッチしたヴリトラがジークフリートの方を向くとジークフリートは顎を軽く動かして「開いて中を見ろ」と目で伝える。それを見たヴリトラは羊皮紙を広げて中を確認した。するとヴリトラはその驚くべき内容に目を見張って驚く。
「ヴリトラ、どうしたのだ?」
驚くヴリトラの顔を見たヴァルボルトが尋ねる。ラピュス達もヴリトラの顔を見て「どうしたんだ?」と言いたそうな顔を見せていた。ヴリトラは歯を噛みしめながら持っていた羊皮紙をヴァルボルトに見せる。
羊皮紙を受け取ったヴァルボルトは書かれてある文章を読んで内容を確認した。するとヴァルボルトもその内容に目を疑う。
「こ、これは・・・」
「フフフ、ギンガム皇帝からの親書です。もしヴァルボルト王が宣戦布告を受け入れると仰った場合はそれを見せろと・・・」
「な、なんと・・・」
笑いながら話すジークフリートの言葉が聞こえていないのかヴァルボルトは羊皮紙を持つ手を震わせながらジッと内容を何度も確認した。
内容が分からないラピュス達はパティーラム達はただ黙ってヴァルボルトとヴリトラを見ている。ただ、ヴァルボルトの態度から良い事が書かれている分けではないという事は理解していた。
やがてヴァルボルトは周りにいる者達にも書かれてある内容を知らせる為に声に出して書かれてある事を読んでいく。
「・・・『我々神聖コラール帝国はレヴァート王国をヴァルトレイズ大陸の秩序を乱す存在と断定し、この瞬間をもって宣戦布告をする。神聖コラール帝国第十九代皇帝、ギンガム・ヴァルファッツ・コラール』・・・」
「なっ!?」
「何だと・・・」
ヴァルボルトの読み上げた親書の内容にラピュスとガバディアは驚きのあまり声を漏らす。勿論リンドブルム達七竜将やパティーラム達王国関係者も例外ではない。自分達が予想もしていなかった状態でいきなり宣戦布告をされれば誰だって驚くのは当然だった。
再び謁見の間が騒がしくなり、それと同時にジークフリートは右手を前に出して静かに頭を下げる。
「これであなた方と我々は正式に敵対する事になりました。こちらの準備が整い次第、すぐに攻撃を仕掛けさせてもらいます」
驚くヴァルボルトや貴族達にそう告げたジークフリートは振り向いて謁見の間から出ていこうとする。だが、それを黙って見逃がすほどヴリトラ達は愚かではなかった。
ヴリトラは森羅を抜いてジークフリートの背後の数m離れた所まで移動する。ラピュスもジークフリートの正面に移動して進路を塞いだ。残りに七竜将も素早く移動してジークフリートを取り囲む。
自分を取り囲む七竜将にジークフリートはピタリと足を止める。七竜将の素早い対応に騒いでいた貴族達は一斉に黙り込み、ヴァルボルト達もヴリトラ達を見つめた。
「・・・お前はブラッド・レクイエムの総司令官だ。このまま黙って見逃がすつもりはない!」
「ほぉ?」
「お前があのまま親書を渡さずに帰ればこっちからコラール帝国に宣戦布告をするという形になっちまうから手は出せずにいたが、そっちが宣戦布告をしてくれたおかげで俺達は遠慮なくお前に攻撃できるってもんだ!」
「フフフ、成る程。お前達にとってはラッキーな状況って事か」
「悪いが、このままお前を帰す訳にはいかない」
「私を捕らえるつもりか、それ以前に私に勝てると思っているのか?」
「今の俺達は一年前とは違う!」
一年前にジークフリートに完膚なきまでに叩きのめされた事を思い出すヴリトラはジークフリートに言い放つ。この一年間で七竜将は確かに強くなった。だが、ジークフリートと戦うのがこれが初めて。その為、彼との力の差はまだ分からない。だが、一年前のように一方的に負けることもない。
ジークフリートを取り囲む七竜将達は一斉に武器を構える。ジークフリートは腕を組みながら視線だけを動かしてヴリトラ達の位置を確認した。
「・・・フッ、甘いな」
「何?」
「私が敵陣に一人で来ると本当に思っていたのか?」
「・・・どういう意味――」
ヴリトラが尋ねようとした時、ジークフリートが降りて来たシャンデリアから再び一つの影が飛び出して降りてくる。その影はジークフリートの前に着地し、目の前でアゾットを構えるラピュスと向かい合う形になった。
ジークフリートの前に降り立ったのは一人の若い女性だった。金髪のギブソンタックで頭には黒い天使の翼をモチーフにしたティアラを乗せており、上半身に黒と赤の鎧を纏い、下半身は灰色のロングスカートで隠している。歳はラピュスと同じくらいでその手には先端が鋭く大きな刃を付けた槍が握られていた。そしてよく見ると、その女性に両腕は黒い機械鎧の腕となっている。
新たに現れた機械鎧兵士にヴリトラ達は驚き、謁見の間に更なる緊張が走る。
「・・・ジークフリート様、ご無事ですか?」
「ああ、問題ない」
ジークフリートの安否を確認した女性は持っている槍を軽く振った後に小さく息を吐いた。その女性を見てラピュスはアゾットを構え直し女性を睨む。
「貴様、何者だ!?」
「・・・・・・」
ラピュスの質問に答えずに女性はラピュスを睨み返す。二人が睨み合っているとジークフリートは女性の肩にポンと手を置く。
「紹介が遅れたな。彼女は『ブリュンヒルデ』、私の側近を務める機械鎧兵士、いや、姫騎士だ」
ジークフリートの側近だというブリュンヒルデという姫騎士を見てラピュス達の体に衝撃が走る。もう一人に機械鎧兵士の登場で謁見の間にピリピリとした空気が広がった。
コラール帝国からの親書によりいきなり宣戦布告をされたレヴァート王国。そこへ更にブリュンヒルデという機械鎧兵士である姫騎士が登場し事態はますます混乱する。ヴリトラ達はこの状況にどう対応するのだろうか?




