第二百六十六話 機械鎧兵士の登城 近づく戦いの準備
ザーバットに頼まれて新人の騎士達に稽古をつけていたヴリトラとラピュス。一通り稽古をつけ終わった後に訓練所にジャバウォック達がやって来て王城へ向かうように言われる。二人はとりあえず登城する為に王城へ向かうのだった。
訓練場でクリスティアとザーバットの二人と別れたヴリトラとラピュスはジャバウォックとリンドブルムに連れられて用意されていた迎えの馬車に乗り込む。ジャバウォックの話では既にほかのメンバーとラランは王城へ向かっているため、残っているのはヴリトラ達だけのようだ。
王城へ向かう馬車の中で向かい合うように座るヴリトラ、ラピュス、リンドブルム、ジャバウォックの四人。ヴァルボルトが自分達を呼びだす理由が分からずに四人はずっと考え込んでいた。
「・・・陛下は何で俺達を城へ呼んだんだ?」
「さぁな?」
「もしかして、ティムタームに戻ってから一度も王様に挨拶してないから呼んだんじゃないの?」
「あっ!それはあり得るかもしれねぇな」
リンドブルムが口にする呼び出しの理由を聞いてジャバウォックは納得する。それを聞いたヴリトラはラピュスは少し焦った様な顔で隣に座る相手の方を向いた。
「おいおい、だとしたらちょっとヤバくねぇか?本当ならこっちに戻って来て最初に挨拶するべきなのに挨拶もせずにいたから怒って呼び出したのかも・・・」
「そ、それはマズイな。今まで何度も陛下にお世話になっておきながら戻ってきた事を知らせないなんて・・・」
ヴァルボルトを怒らせてしまったんではないかと焦るヴリトラとラピュス。リンドブルムとジャバウォックも二人を見て少し不安そうな顔になる。すると馬車は王城の門を潜り、入口前静かに停まった。
馬車が停まると扉が開き、衛兵や王城で働くメイド達が四人を出迎える。ヴリトラ達は馬車を降り、衛兵に案内されながら王城の中へと入っていく。
王城に入り、衛兵に案内されながら長い廊下をしばらく進んでいくと一つの部屋の前で止まる。衛兵が扉を開け、ヴリトラ達が中を見るとそこには先に来ていた七竜将のメンバーやララン、アリサの姿があった。
「よぉ、遅かったな?」
「ワリィ、ちょっと事情があってな」
「事情?」
「まぁ、それは後で話すよ」
ニーズヘッグは遅れて来たヴリトラ達を見て不思議そうな顔をした。遅れて来た四人は部屋に入り、近くにあるアンティークな椅子やソファーに座ったり壁にもたれたりなどする。
衛兵は全員が揃ったのを確認すると姿勢を正してヴリトラ達を見て軽く頭を下げた。
「では、謁見の準備が整うまでもうしばらくこちらでお待ちください」
そう言って衛兵は静かに扉を閉める。衛兵が去るとヴリトラ達は少し落ち着いたのか体の力を抜いて仲間達の方を向く。
「フゥ、やっぱりお城は何度来ても落ち着かないわねぇ?」
「ああ、全くだ。どうやら俺達にはこういった高貴な場所は似合わないみたいだ」
「そうだな・・・」
「・・・それは、私達に似合わないって事なのか?」
「・・・納得できない」
傭兵である自分達には王族の様な高貴な存在が住む場所には相応しくないと考えるニーズヘッグとそれに同意するオロチ。そんな二人をジト目で見ながら納得できない様な顔を見せるラピュスとララン。二人は平民上がりとは言え、一応貴族の称号を与えられた存在だ。自分達が場違いな存在だと言われた事が若干気に入らなかったのだろう。
そんな二人の視線を無視してニーズヘッグは遅れて来たヴリトラ達の方を向いた。
「それで?遅れて来た理由っていうのは何なんだ?」
「ん?・・・ああぁ、それか。実はな・・・」
ヴリトラは先に来ていたニーズヘッグ達にザーバットとクリスティアに再会した事と新人の騎士達に稽古をつけていた事を話した。ブラッド・レクイエム社とコラール帝国との戦いに備えて新たな騎士を育成している事を聞かされ、ニーズヘッグ達は真面目な顔でヴリトラを見つめている。
「・・・何時か来るコラール帝国との戦いに備えての戦力強化か。確かにこの大陸でもっとも大きな国であるコラール帝国と互角に渡り合うにはもっと戦力が必要だな」
「しかもコラール帝国はオラクル共和国との戦争に勝ってその領土と人材までも手に入れたんでしょう?」
「一番大きい国が二番目に大きい国を手に入れちゃったって事は・・・」
「この大陸に住む人間の半分以上が我々の敵になるという事だ・・・」
難しい顔で考えるニーズヘッグに続き、ジルニトラ、ファフニール、オロチがそれぞれ自分達の考えを口にし、それを聞いたヴリトラ達も表情を鋭くする。
「このレヴァート王国と同盟国であるストラスタ公国、セメリト王国の領土と人材を合わせても今の帝国には遠く及ばない。このままの状態で戦争に入れば確実に俺達は負ける。だから急いで帝国と戦えるだけの戦力を手に入れないといけない、という事だ」
「その為に陛下は新しい騎士達を育成して戦いの準備を進めている。勿論、他の同盟国でも同じように新しい騎士と兵士の育成をしている」
椅子に座って俯きながら喋るヴリトラとラピュス。それを聞いてリンドブルムとラランも真剣な顔で頷いた。すると壁にもたれているジャバウォックが腕を組みながら会話に参加してくる。
「だけどよぉ、いくら新しい騎士を訓練しても実戦で出せなければ何の意味もないぞ?今の段階で実戦に出せるのか?」
ジャバウォックがヴリトラに新人の騎士達が実戦に出せるのか訪ねる。するとヴリトラとラピュスはジャバウォックの方を向いて少し不安そうな顔を見せた。
「・・・さっき稽古をつけていた時に見てたが、殆どの騎士や兵士は戦いの訓練に入ってまだ日が浅いって感じだ。多分、いや、間違いなく実戦経験はゼロだな」
「私も騎士になってからは半年以上訓練を受けていた。その訓練が全て終わってようやく危険の少ない町の警備任務に就いたぐらいだ」
「じゃあ、町の外に出る任務や他の騎士隊の救援任務に出られるようになったのは何時頃なんだ?」
「確か・・・警備任務に就いてから半年後だったはずだ」
「・・・私もそうだった」
「私もです」
ラピュスが実戦が多くなる危険な任務に就くまでの時間を話すとラランとアリサも同じぐらいだと話す。新人の騎士が本格的な実戦に出れるまで一年近く掛かると知ったヴリトラ達は複雑そうな顔を見せる。
「まいったなぁ・・・・・・ニーズヘッグ、コラール帝国が宣戦布告してくるとしたら何時頃になると思う?」
「・・・奴等はオラクル共和国との戦争を終えたばかりだ。軍や国が落ち着くまで派手に動く事はないだろう・・・・・・少なくとも二ヶ月以上は大人しいはずだ」
「つまり、二ヶ月後には何時宣戦布告してきてもおかしくないって事だな?」
「あくまでも俺の推測だがな・・・」
ニーズヘッグの推測を聞いたヴリトラは頭を掻きながら椅子にもたれる。そして疲れた様な顔で溜め息をついた。
「確か、ザーバットさんの話ではあの新人達は各騎士隊に配属されてからまだ日が浅いって言っていた。果たして彼等が実戦に出られるかどうか・・・」
「難しいところだな・・・」
「では、彼等が帝国との戦いに参加できない場合はどうするんだ?これじゃあ折角の募兵も意味がないぞ?」
「意味がない事はない。安全な任務から少しずつ慣れてもらって実戦経験を積めばいいんだ。まぁ、多少時間は掛かるけどな」
新人の騎士達をいきなり帝国との戦いに出すのは危ないと考えるヴリトラ。他の七竜将のメンバーも同じ気持ちなのか「ウンウン」と頷く。
「まぁ、敵にはコラール帝国だけじゃなくてそのバックにいるブラッド・レクイエム社も含まれているんだ。ソイツ等に対抗する為にアレクシアさんが向こうの世界で準備を進めてくれている。タイカベル・リーベルトの部隊がこっちに来るまでは俺達だけで何とかするしかない」
今も地球で準備をしているアレクシア達の事を考えるニーズヘッグ。ヴリトラ達もブラッド・レクイエム社と唯一互角に戦える強い味方の事を考えながらニーズヘッグを見ていた。
ヴリトラ達が新人騎士達の事、タイカベル・リーベルト社の事を話していると入口の扉をノックする音が聞こえ、ヴリトラ達は一斉に扉の方を向いた。
「失礼します。謁見の準備が整いましたので謁見の間までいらっしゃってください」
「分かった」
そこから聞こえてくる衛兵に返事をするラピュス。座っている者達は一斉に立ち上がり壁にもたれている者達も姿勢を直す。一同は部屋を出て再び大きな廊下を歩き謁見の間まで向かった。、
しばらく歩き、ヴリトラ達は謁見の間の前まで来て大きな二枚扉を見上げた。
「此処に来るのも一年ぶりか・・・」
「陛下や他の方々はお元気だろうか?」
「大丈夫さ。パティーラム様が元気だったんだから」
ヴァルボルトを心配するラピュスの肩にそっと手を置いて安心させるヴリトラ。二人の後ろではリンドブルム達が黙って目の前の大きな扉を見上げている。
「七竜将の皆さま、白竜遊撃隊の皆さま、御入来!」
扉の向こうから聞こえてくる衛兵の声を聞き、ヴリトラ達は気持ちを切り替える。大きな二枚扉がゆっくりと開き、ヴリトラ達は謁見の間へ入っていく。広い部屋の中では大勢の貴族や衛兵が入室してきたヴリトラ達を黙って見つめ取り、奥にある玉座には一年前と変わっていないヴァルボルトが座っている。その右脇にはパティーラム、アンナ、エリス達王女の姿があり、左脇にはガバディア、黄金近衛隊のザクセンと姫騎士のレレットの姿があった。皆、一年前と姿は殆ど変わっておらず、その姿を見てヴリトラ達は懐かしく思っていた。
真っ直ぐ歩いて玉座の数m前まで来たヴリトラ達は静かにその場に膝まづく。膝まづいたヴリトラ達は見てヴァルボルトは静かに口を開いた。
「七竜将、フォーネ、アーナリア、よく戻ったな」
「ハッ!」
「・・・あ、あの、陛下」
「ん?何だ?ヴリトラ」
声をかけて来たヴリトラを見るヴァルボルト。ヴリトラはどこか落ち着かない様子でヴァルボルトから目をそらしている。
「そのぉ・・・ご挨拶が遅れてすみませんでした」
「ん?」
「本当ならティムタームに戻ったらすぐに陛下に挨拶するべきだったんですが、色々忙しくて・・・結局今日までご挨拶できずにいました・・・すみません」
ヴリトラは今日まで登城せずにいた事を申し訳なく思いヴァルボルトに謝罪した。するとそれを見たヴァルボルトは大きく口を開けて笑い出す。
「ハハハハハッ!そのような事か。気にするな、お主達にも都合があるだろう。それに儂はお主達が無事なのを知る事ができれば満足なのだ」
「は、はぁ・・・」
意外な展開にヴリトラは呆然とする。ラピュスや他の七竜将のメンバーも同じだった。
ヴァルボルトの脇に控えているパティーラムも笑っており、長女のアンナもクスクスと笑い、次女のエリスはヴァルボルトを呆れ顔で見つめている。するとエリスは呆れ顔のままヴァルボルトに声をかけた。
「・・・陛下、とりあえず今しなくてはならない事を先に・・・」
「ん?おおぉ、そうか」
エリスの方を見て髭を整えながら頷くヴァルボルト。エリスはヴァルボルトの軽い態度に溜め息をつき、そんなエリスをパティーラムとアンナは苦笑いをしながら見ている。
気持ちを切り替えたヴァルボルトが真面目な顔でヴリトラ達を見るとヴリトラ達も真剣な顔でヴァルボルトを見つめる。
「・・・一年前にコラール帝国がオラクル共和国に宣戦布告し、三ヵ月前に戦争で勝利した事はお主達も知っておるな?」
「ハイ、パティーラム様とガバディア団長から伺いました」
「ウム・・・戦いに勝利した後もコラール帝国はオラクル領に散らばった共和国軍の敗残兵に対して残党狩りを行った。あのブラッド・レクイエムの力を借りた帝国軍は瞬く間に敗残兵達を見つけ出し、抵抗した者達をその場で処刑し、投降した者達は奴隷として利用しているらしい」
「処刑に奴隷ですか、惨い事をしますね」
「嘗ての帝国ではあり得ない事だ」
目を閉じて低い声を出しながら話すヴァルボルトを見てヴリトラ達や周囲にいるパティーラム達王族、ガバディア達騎士達も深刻な顔でヴァルボルトの話を聞いている。
「・・・嘗ての、という事は前の皇帝はそのような事はしなかったという事なんですか?」
「ああ、その通りだ・・・現在の皇帝、つまりギンガム皇子が皇帝になられてから今のようになったのだ。捕らえた敗残兵に一切慈悲を与えずに処刑、もしくは死よりも過酷な奴隷生活を与えると・・・」
「・・・もはや悪逆皇帝ではなく悪魔皇帝と言うべきですね」
「・・・この謁見の間にいる者の殆どがお主と同じ気持ちだ。もはや今の帝国の姿には目も当てられない。今のままでは何時我が国やストラスタ、セメリトに宣戦布告をしてきてもおかしくない状況にある」
コラール帝国が少しずつ恐ろしい国への変わっていく事にヴァルボルトは疲れた様な表情を浮かべ右手でそっと顔を撫で下ろす。
今のコラール帝国はオラクル共和国の領土と人口を手に入れて更にブラッド・レクイエム社と契約を交わして強大な国となった。そんな敵がもし宣戦布告をしてきた今の自分達では勝ち目がない。それを何とかする為にヴァルボルトはストラスタ公国とセメリト王国と何度も会談を行い、対策を練って来た。そこへ七竜将が生きているという知らせを受け、まだ自分達は神に見捨てられていないと感じたのだ。
「七竜将よ、我々はブラッド・レクイエムと言う未知の組織の力を借りて強大になったコラール帝国と緊張状態にある。このままでは近いうちに必ず奴等は宣戦布告をしてくるだろう。そうなったら我が国は愚か、他の二つの国も終わりだ。どうか、我々に力を貸してもらえないだろうか!?」
ヴァルボルトは玉座に座ったまま頭を下げて頼み込む。その姿を姿を見たヴリトラ達や周りにいる貴族達は驚きてざわつき出す。国王が自分よりも位の下の者に頭を下げるなど考えられない事だから。
そんな誇りもプライドも捨てて頭を下げるヴァルボルトを見たヴリトラは一度深呼吸をして落ち着く。するとヴリトラは立ち上がり頭を下げるヴァルボルトの前まで行くと再び膝まづいた。
「頭を上げてください。ブラッド・レクイエムは俺達と同じ所にいた連中です。ソイツ等がこの大陸で好き勝手やっているん以上、俺達七竜将にはそれを止める責任があります。陛下が頭を下げられる必要はありません」
「ヴリトラ・・・」
「喜んでお力になります」
ニッと笑いながらパティーラムに言ったことと同じことを口にするヴリトラ。そんな彼の顔を見たヴァルボルトは感激のあまり目を見開いた。
ヴリトラとヴァルボルトの会話を見ていたラピュスや他の七竜将は最初はいきなり前に出てヴァルボルトの前まで移動したヴリトラに驚いていたが、二人の話が成立したのを見てホッとした。
七竜将が協力する事が決まるとヴリトラはこの国の兵力の事について話を始める。
「陛下、この国がコラール帝国との戦いに備えて大勢の兵士や騎士を育成していると聞きました」
「おおぉ、もうお主の耳の入っておったか」
「実はその事でちょっとお話が・・・」
「ん?」
「コラール帝国はオラクル共和国の領土と兵士を大量に手に入れました。しかもブラッド・レクイエムの兵士まで加わると例えレヴァート王国が大勢の兵士や騎士を育成し、戦場へ送ったとしても戦力はこちらが不利なままでしょう。俺達七竜将が加わっても焼け石に水です」
「何と!」
ヴリトラがコラール帝国とブラッド・レクイエム社の戦力を計算し、レヴァート王国、他の同盟国の戦力との差を考えて自分達が不利なままである事を伝え、それを聞いたヴァルボルトは驚く。パティーラム達もヴリトラの口から聞かされたコラール帝国とブラッド・レクイエム社の力の大きさに不安を見せる。だが、ヴリトラはすぐに良い知らせをヴァルボルト達に話す。
「ですが安心してください。俺達七竜将の仲間が近いうちにブラッド・レクイエムと戦う為にやって来ます。彼等が来ればブラッド・レクイエムとの互角に戦えるはずです」
「お主達の仲間?」
「ハイ、まだいつこっちに来るかは分かりませんが必ず来てくれます」
「本当か!」
七竜将の仲間が自分達を助ける為にやって来ると聞いてヴァルボルトや謁見の間のいる貴族達の顔に安心の表情が浮かぶ。
重い空気が消えて明るさが戻って来た謁見の間を見てラピュス達も安心の表情を見せている。
「陛下や貴族の方々も安心されてよかった」
「だけど、アレクシアさん達がこっちに来るまでの間は俺達だけでファムステミリアを守るしかねぇ」
「ああ、気合を入れていくぞ?」
ラピュスの後ろで膝まづいているジャバウォックとニーズヘッグが小声で周りにいるラピュス達に話しかけ、ラピュス達も膝まづいたまま頷く。
タイカベル・リーベルト社の部隊がファムステミリアに来る事は聞いたヴァルボルトは詳しい内容を聞く為にヴリトラに聞こうとする。だがその時・・・。
「・・・ハハハハハッ!」
「「「「「!!」」」」」
突如謁見の間に響く男の笑い声に謁見の間にいた者全員がハッと顔を上げる。ヴリトラやラピュス達は一斉に立ち上がって辺りを警戒し、ガバディアやザクセン達、黄金近衛隊はヴァルボルトやパティーラム達の周りに移動して王族の盾になる。衛兵達も持っている槍を構えて周囲を見回した。
ヴリトラは鞘に納めてある森羅に手をかけていつでも抜刀できるようにしながら辺りを警戒している。ヴリトラの目はいつも以上に鋭くなっており、声の主を必死に探していた。
(・・・さっきの声、間違いない、アイツだ!)
笑い声の主が誰なのかに気付いたヴリトラは神経を研ぎ澄まして声の主が何処にいるのかを探す。すると何かの気配を感じ取ったヴリトラはフッと天井を見上げる。天井には大きなシャンデリアが吊るされており、微かに揺れていた。
ヴリトラがシャンデリアをジッと見つめていると、シャンデリアの揺れが一瞬大きくなり、黒い影がシャンデリアの上から飛び出し降りてくる。ヴリトラはヴァルボルトをかばう様に彼の前に立ち、シャンデリアの揺れと降りてくる影に気付いたラピュス達もシャンデリアから離れて警戒した。
影が謁見の間の中央に降り立つと静かに姿勢を直してヴリトラとヴァルボルトのいる方角を見る。2m近くある長身に漆黒の全身甲冑に牛の角の様な飾りの付いたアーメット。その姿を見たヴリトラとラピュス達は全身に緊張を走らせる。
「久しぶりだな?七竜将」
「お前は・・・ジークフリート!」
ヴリトラ達の前に現れたのはブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士部隊の総司令官にしてヴリトラの宿敵、ジークフリートだった。突然のジークフリートの登場に謁見の間全体にも緊張が走る。突然の侵入者に衛兵達は槍を構えてジークフリートを取り囲んだ。
ヴァルボルトと再会し、再び共に戦う事を誓うヴリトラ。そこへなんとジークフリートが現れて謁見の間の空気が凍り付いてしまう。一体なぜジークフリートはレヴァート王国にいるのか、そしてその目的は!?




