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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十五章~一年間の空白~
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第二百六十五話  訓練依頼? レヴァートの若い戦士達


 一年ぶりにクリスティアとザーバッタの二人と再会したヴリトラとラピュス。二人は心身ともに強くなっており、それぞれ白銀剣士隊の隊員、青銅戦士隊の総隊長へと昇進していた。そしてヴリトラとラピュスはザーバットから頼みがあると言われ話を聞く事にした。

 ザーバットはとりあえず騎士団の訓練場に行くのでついて来てほしいと話し、二人は理由も分からずにザーバットに連れられて訓練場に向かう。クリスティアもザーバットの頼み事とやらが気になるのか三人の後をついて行く。


「・・・ザーバットさん、さっきのお願いって何なんですか?」


 まだ頼み事の内容が分からずヴリトラは前をあるとザーバットに訊ねる。ラピュスとクリスティアも気になるのか黙ってザーバットの背中を見ていた。するとザーバットは歩きながら振り返り、三人を見ながら口を動かす。


「それを説明する前に、君達はブラッド・レクイエムがコラール帝国と契約を交わした事を大陸中に発表した事は知っているか?」

「・・・ええ、昨日パティーラム様とガバディア団長から話を聞きました」

「そうか、それなら話が早い・・・」


 ヴリトラの言葉を聞いたザーバットは真剣な顔で再び前を向いて話を続けた。


「その発表があった直後から王国ではブラッド・レクイエムとの戦いに備えて戦力を強化する事になったんだ。募兵によって国中から集められた人材を騎士団へ入団させ、騎士や兵士として訓練させている」

「募兵、ですか・・・」

「最初、元老院の方々の中には徴兵制度によって国民を兵士にしようと考えていた方もいた。だが、陛下や姫様達が強制的に兵役に付かせる事に反対され、結果募兵によって少しずつ人材を集める事になったんだ」

「それがいいですよ。戦いたくもない人を無理矢理軍に入れるよりは戦う覚悟のある人を少しずつ集めた方が・・・」

「戦いたくない者をどれだけ訓練させても強くなりません。そんな状態で戦場に出れば命を落しに行くようなものですからね・・・」


 ザーバットから徴兵制度の話を聞かされたヴリトラとラピュスは静かに自分達の考えを口にする。戦いたくない者を戦場へ送り、もし死んでしまったら残された家族や友を悲しませるだけ。そうなれば徴兵制度を出した王国に対し民衆は不満を覚えるだろう。それなら、国の為に命を賭けて戦う覚悟のある者だけを集めた方がいい。戦場に出るべきはそのような強い意志を持つ者達の方が良いと二人はそう考えていた。

 二人の意見を聞いたザーバットは前を見ながら微笑む。ヴリトラとラピュスならそう言うだろうと思っていたのだろう。クリスティアは二人の後ろを歩きながら「何カッコつけてるのよ」と言いたそうに小さく笑っている。二人の考えを聞いたザーバットはそのまま話を続けた。


「その後、募兵によって集められた人材を訓練し一般の兵士や騎士に分けて各部隊に配属された」

「そう言えばラランから聞きましたが白竜遊撃隊にも見た事の無い騎士が大勢いたとか・・・」

「ああ、白竜遊撃隊にも何人か若い騎士が配属になったそうだ。あの部隊は王国騎士団の中で遊撃隊でありながら白銀剣士隊に並ぶ優秀な部隊。その噂は一年前から国中に広がり、騎士団に入った者達の殆どが白竜遊撃隊への配属を志願しているそうだ」

「まぁ、当然ですね?ただの遊撃隊からパティーラム様や団長の御眼鏡に叶う様な優秀な部隊になり、この大陸には存在しない銃なんて未知の武器を使っているんですもの。興味を持たない方がおかしいですわ」


 新人の騎士達が白竜遊撃隊への配属を志願する理由を後ろにいたクリスティアが説明する。表情は普通だが、心の中では多くの騎士達に注目されている白竜遊撃隊を羨ましく思っていた。


「勿論、青銅戦士隊や白銀剣士隊への配属を志願する者も大勢いる。しかし白竜遊撃隊と比べると少ない方だ」

「成る程・・・ところで、俺とラピュスに頼みたい事と言うのはその新人の騎士達が関係している事なんですか?」

「ああ」


 ヴリトラの問いかけにザーバットは頷く。すると四人はいつの間にか訓練場の前まで来ており、ザーバットは訓練場の入口前で一度立ち止まりヴリトラとラピュスの方を向いた。


「頼みと言うのは、その入って来たばかりの新しい騎士達の稽古をつけてやってほしいという事なんだ」

「稽古を?」

「そうだ。優秀な傭兵隊である七竜将の隊長や白竜遊撃隊の元隊長である君達に鍛えてもらえれば彼等も強くなる。それにヴリトラ殿の剣は今まで見た事の無いもの、未知の剣術を知る事は良い勉強にもなる」


 新人の騎士達を鍛えてほしいというザーバットの頼みにヴリトラとラピュスはお互いの顔を見合い「どうする?」と目で相談し合う。この先、いつ始まる訪れるか分からないブラッド・レクイエム社とコラール帝国との戦い。その戦いからレヴァート王国や国民を守る為には強い戦士達が必要となる。その為なら騎士達を成長に協力するべきだと考えた二人はお互いの顔を見ながら頷く。


「分かりました。引き受けましょう」

「私達に教えられる範囲の事だけですが」

「ありがとう!君達ならそう言ってくれると思っていたよ」

「よく言いますね?訓練場の前まで連れて来ている時点で無理にでもお願いするつもりだったんでしょう?」

「ハハハハ、バレていたか」


 ニヤリと笑うヴリトラを見てザーバットは誤魔化す事無く苦笑いを浮かべる。二人の楽しそうな会話をラピュスは笑いながら見守り、クリスティアは「やれやれ」と言いたげな顔を浮かべていた。

 話がまとまるとヴリトラとラピュスはザーバットに連れられて訓練場に入って行く。クリスティアは面白そうだと考えているのかそのまま三人の後をついて行った。

 訓練場の中では大勢の騎士達が木剣で素振りをしたり、木製の人形を木剣で何度も打ったりなどして訓練をしている。勿論、騎士同士が木剣を交えて練習試合をしている姿もある。ヴリトラにはその光景は非常に広い体育館で剣道の練習をしている風景に見えた。


「結構いるんですね?」

「この時間は遊撃隊と青銅戦士隊が合同で訓練をする時間だからな。中には違う部隊の騎士や兵士同士が練習試合をする事もある」

「成る程・・・それで新人の騎士達は何処にいるんです?」

「あそこで素振りをしたり人形を木剣で打っている者達だ」

「あれかぁ・・・意外と多いな」


 ヴリトラは遠くで訓練をしている大勢の騎士と兵士達を眺めながら意外そうな顔を見せる。あまり人数は多くないと思っていたのだが、予想していたよりも大勢いる事にヴリトラと隣にいるラピュスは驚いた。


「あの中には私の部隊の騎士達もいるので、ビシバシと鍛えてやってくれ」

「分かりました。とりあえず、彼等のところへ行きましょう」


 四人は新人達の下へ向かう為に訓練場の中を歩いて行く。ヴリトラ達が歩いている姿を見た騎士や兵士達は見慣れないヴリトラとラピュスの姿をチラチラと見ながら訓練をしており、特に特殊スーツ姿のヴリトラを怪しむような目で見ていた。

 素振りをしている青銅戦士隊の騎士達が近づいて来るヴリトラ達の姿を見て木剣を振る手を止める。新人達が自分達の存在に気付くのを見たザーバットは大きく手を振った。


「お前達!一旦訓練を止めてこっちに集まってくれ!」


 総隊長のザーバットが呼ぶのを見た新人の騎士や兵士達は一斉にヴリトラ達の下に集まって来る。ヴリトラ達の下に集まった新人の人数は二十数人ほどで騎士と兵士はほぼ半分ずつ。そしてその殆どが十代半ばから二十代前半くらいの若者ばかりだった。

 新人達は青銅戦士隊の総隊長であるザーバットや精鋭の白銀剣士隊の姫騎士であるクリスティアの姿を見て少し興奮しているのか小声で話しをしている。それを見たザーバットは手を二回叩いて新人達に声を掛けた。


「皆、静かに。実は今日、お前達を鍛える為にこの二人がわざわざ訓練場に来てくれた。紹介しよう、傭兵隊七竜将の隊長であるヴリトラ殿と元白竜遊撃隊の隊長をされていたラピュス・フォーネ殿だ」


 新人達は目の前にいる二人を見て驚きの表情を浮かべる。あの有名な白竜遊撃隊の元隊長である姫騎士が目の前にいる事が信じられないのだろう。騎士達、特に女性騎士達は目を光らせながらラピュスを見ている。一方で傭兵隊の隊長であるヴリトラは疑う様な視線で見られている。これに気付いたヴリトラは複雑そうな表情を浮かべていた。


「・・・何か俺だけ不服そうな目で見られている気がするんだけど?」

「彼等は新人とは言え王国の戦士だからな。王国の戦士が傭兵に鍛えられるという事に納得できないんだろう」

「それは分かるけどさぁ、いくらなんでもお前と俺とで表情に違いがありすぎじゃね?」


 小声で自分達を見ながら話し合うヴリトラとラピュス。確かに騎士や兵士達の殆どがヴリトラをジーっと細い目で見つめており、一方でラピュスの方は憧れの目で見ていた。

 あまりの視線の違いにラピュスも苦笑いを浮かべる。


「ま、まぁ、お前の実力を見ればきっと皆も納得するだろう・・・」

「だといいんだけどねぇ・・・・」


 若干不安そうな顔をするヴリトラにラピュスは苦笑いを続けながら見た。

 二人が小声で会話をする姿を見たザーバットは会話の内容を察したのか新人達の方を向いて助け船を出す。


「・・・実はこの二人は我がレヴァート王国第三王女であるパティーラム様とガバディア団長から絶大な信頼を得ており、実力もかなりのものなのだ」


 ザーバットの話を聞いた新人達は驚き再び小声で騒ぎ出す。その光景を見ていたクリスティアは新人達の前に出て後ろに立っているヴリトラとラピュスを親指で指す。


「信じられないのでしたら、どなたかこのお二人と手合せしてみてはいかがですか?話を聞くより直接戦った方が理解して頂けると思いますので・・・」


 クリスティアの言葉に新人達は一斉の彼女の方を向く。そして心の中で「確かにそうだ」と考え誰が最初に手合せするかを話し始める。

 女性騎士達は噂に聞いていた元白竜遊撃隊の隊長であるラピュスと手合せできると知り、誰が一番に相手をするかと話し合っている。そんな女性騎士達をラピュスはまばたきをしながら見ていた。


「ラピュス、スゲェ人気だな?」

「あ、ああ・・・」


 二人がラピュスの想像以上の人気に呆然としていると一人の男性騎士が近づいて来た。茶色い短髪に青銅色の鎧を着た十代後半ぐらいの若い男性騎士、どうやら青銅戦士隊の新人のようだ。


「アンタ、ヴリトラっていうのか?」

「ん?ああ、そうだ」

「姫様から信頼を得ているか何だか知らないが、金で動く傭兵であるアンタが俺達騎士よりも強いなんて、信じられねぇな?」

「あらそう?・・・・・・それじゃあ、試してみる?」

「フッ、いいぜ?」


 ヴリトラと男性騎士の会話を聞いてザーバットやクリスティア、他の新人達は僅かに緊迫した空気の中、練習試合を始めようとする二人を見て緊張を走らせる。だがラピュスだけはジッとヴリトラを黙って見つめていた。

 ラピュス達から少し離れた所でまで移動したヴリトラと男性騎士は5mほどの間隔を開けて向かい合う。男性騎士は持っていた木剣を構え、ヴリトラもザーバットに渡された木剣を手に取り構えた。そんな時、ザーバットがヴリトラの耳元に顔を近づけて小声で話し掛けて来る。


「すまない、ヴリトラ殿。隊員が失礼な事をしてしまった・・・」

「いいですよ、慣れっこですから」

「彼は傭兵の事を金で動くだけの醜い存在だと間違った考え方をしているのだ。どうか、お仕置きも兼ねて彼を心身ともに鍛えてやってくれ」

「分かりました・・・」


 話が終るとザーバットはヴリトラから離れていく。ザーバットがラピュス達に元に戻るとヴリトラと男性騎士は木剣を構えて相手をジッと見つめる。


「傭兵の実力、見せてもらうぞ?」

「・・・・・・」


 挑発的な態度を取る男性騎士をヴリトラは黙って見つめる。男性騎士は両手で木剣を握りながら上段構えを取り、ヴリトラも木剣を握りながら中段構えを取った。両者が睨む合う姿を黙って見守るラピュス達。そんな中、遂に二人の試合が始まる。

 最初に動いたのは男性騎士の方だった。上段構えのままヴリトラに向かって走り出し、勢いよく木剣を振り下ろして攻撃する。ヴリトラは頭上から迫って来る木剣を右に避けて軽くかわす。そこへ男性騎士の連続攻撃が続いた。振り下ろしや横切り、袈裟切りなど様々な攻撃を繰り出すがヴリトラはその攻撃を全てかわしていく。ヴリトラの回避する姿を見た男性騎士は少し意外そうな顔を見せ、一旦攻撃を止めて後ろへ跳びヴリトラから距離を取る。


「へえ?少しはやるみたいだな。まさかここまで攻撃をかわされるなんて思わなかったぜ」

「そりゃどうも」

「だが、そんな回避が何時までも通用すると思ったら大間違いだ。次で勝負をつけてやるよ」

「そうだな・・・さっさと勝負を付けよう」


 ヴリトラはそう言うと木剣を居合の持ち方に変え、両足に力を入れて勢いよく地を蹴る。ヴリトラは一瞬にして男性騎士の目の前まで近づき、その異常な速さを見て男性騎士は驚きの表情を浮かべた。そして次の瞬間、ヴリトラは男性騎士の持っている木剣を弾き飛ばす。

 男性騎士の手から離れた木剣を宙を舞い二人から離れた所に落下する。男性騎士は突然の出来事に目を丸くしながらその場に座り込み、そんな彼にヴリトラは木剣の切っ先を向けた。


「まだやるか?やるって言うなら、今度はちょっと痛い思いをしてもらう事になるけど?」

「・・・ま、参った」


 木剣を失い、ヴリトラの威圧感に押された男性騎士はアッサリと負けを認める。

 ヴリトラが一撃で勝負を付けた光景を見た他の騎士や兵士達は驚きのあまり声を漏らす。ラピュス達はヴリトラが勝つ事を分かっていた為、驚く事なく彼を見つめている。


「流石ですわね、ヴリトラさん」

「当然です。騎士団に入ったばかりの新人ではヴリトラの相手にすらなりません」

「これで彼等も傭兵の中には騎士を超える力を持つ者がいるという事を理解しただろう。騎士こそが最強の戦士だと思わなくなり、心は強くなる」

「ザーバット殿はそれを彼等の教える為に私とヴリトラの訓練を頼んだのですか?」

「それもありますが、純粋に彼等を鍛えてほしいと言うのが本心です」

「フッ、そうですか」


 ザーバットの本音を聞いたラピュスは小さく笑う。三人がそんな会話をしていると他の新人達が木剣を手に取り前に出てきた。


「よしっ!今度は俺がやるぜ!」

「今度は俺がやる!俺に稽古をつけてくれ!」

「いや、私だ!」

「僕に剣を教えてください!」


 新入りの男性騎士達がヴリトラの強さを見ていきなり手合せしてほしいと前に出て来る。ヴリトラはさっきまでと態度が急変し、いきなり自分を鍛えてほしいと迫って来る大勢の騎士達の呆然とする。その光景を見ていたラピュスは驚くヴリトラが面白いのかクスクスと笑っていた。そんな彼女の下に数人の女性騎士達が集まって来る。


「あ、あのぉ、ラピュス・フォーネさん・・・」

「ん?何だ?」

「わ、私に稽古を付けてくれませんか?」

「ん?ああ、構わないぞ」

「ほ、本当ですか!?」

「ああぁ!ちょっとズルいわよ、あたしも稽古付けてほしいんだから!」

「順番よ、順番!」


 ラピュスの方にも剣の稽古を付けてほしいと大勢の若い女性騎士達が集まって来る。その人数にラピュスは思わず戸惑ってしまう。

 ヴリトラとラピュスが大勢の新人の騎士や兵士達に囲まれる姿を見てザーバットとクリスティアも少し驚いた顔で二人を眺めていた。


「す、凄い事になりましたわね・・・」

「ああ、皆がここまで興奮するとは思わなかった・・・」

「・・・ですが、これで彼等も少しは強くなるでしょうね?」

「この国を守る為にも、彼等には一日も早く強くなってもらわなくてはいけない。コラール帝国が我が国や他の同盟国に宣戦布告をする前に・・・」


 いつかは来るコラール帝国と彼等に力を貸しているブラッド・レクイエム社との戦い。現在ヴァルトレイズ大陸で最強の力を持つ彼等と戦う為には今よりも強い力を手に入れないといけない。今のザーバット達にできるのはそれぐらいしなかった。

 それから一時間後、一通り新入りの騎士や兵士達に剣を教えたヴリトラとラピュスは木剣を片づけて新人達の方を向いた。新人の騎士や兵士達は疲れ切っているのかほぼ全員がその場に座り込んでおり、中には仰向けで寝そべっている者もいる。機械鎧兵士のヴリトラとラピュスとは違い彼等は普通の人間である為、若干ハードな訓練で殆どの体力を使ってしまっていた。


「皆、伸びてるな・・・」

「少しきつくやり過ぎたか?」

「俺達は大して疲れてねぇけど・・・」

「私達は機械鎧兵士なのだから普通の人間よりは体力がある。私達には大した事の無い訓練も彼等にとってはかなりのものだと思うが?」

「まぁ、確かに・・・」

「お前はもう少し手加減をしてやれ。皆キツイ訓練に動けなくなってしまってるじゃないか」

「・・・お前だってそのキツイ訓練を張り切ってやってたじゃないか」

「う・・・」


 ヴリトラに痛いところを突かれて黙り込むラピュス。確かに自分も周りの女性騎士から輝く目で見られていた事でかなり張り切って訓練をしていた。その結果多くの騎士達が疲れ切って動けなくなり目を回している。

 全員が立ち上がる事もできないくらい疲れている光景を見てラピュスは苦笑いを浮かべる。そんな彼女をヴリトラはジト目で見つめていた。そこへ訓練を見学していたザーバットとクリスティアが近づいてくる。


「お疲れ様」

「ザーバット殿、すみません。つい張り切ってしまって・・・」

「いえいえ、今まではずっと軽い訓練ばかりだったのでそろそろ厳しい訓練を受けさせようと思っていたんだ。だから気にしないでほしい」

「ザーバットさん、貴方意外と厳しい方なのですね・・・?」


 笑うザーバットを見てクリスティアは少し引く。一方でラピュスとヴリトラはザーバットを見て少しホッとする。自分達のせいで新入りの騎士達が疲労困憊にでもなったら大変だと思っていたのだろう。


「お~い!お前達~!」

「「ん?」」


 ヴリトラ達が疲れ切っている新人達を見ていると訓練場の外からジャバウォックの声が聞こえてきた。ヴリトラ達がふと訓練場の入口の方を見ると手を振っているジャバウォックとリンドブルムの姿が見えた。

 二人の姿を見たヴリトラは入口の方に向かって大きな声を出す。


「二人ともぉ~!どうしたんだぁ~?」

「どうしたじゃねぇ~よ!こんな所で何してんだ?探したんだぞぉ~!」

「だからどうしたんだよぉ~!」


 お互いに遠くにいる相手に向けて叫ぶ様に大きな声を出して会話をし合うヴリトラとジャバウォック。そんな二人を見たラピュス達は「なんで近づかないんだ?」と心の中で思うのだった。


「ヴリトラァ!ラピュスゥ!王様が俺達を呼んでるらしい!すぐに登城してくれとガバディア団長が来たぞぉ~!」

「「!」」


 王であるヴァルボルトから登城しろという知らせがあった事を聞き、ヴリトラとラピュスの表情が鋭くなる。それを聞いたザーバットとクリスティアも真剣な顔でジャバウォックとリンドブルムの方を見た。

 ザーバットに頼まれて新人の稽古をつけていたヴリトラとラピュス。その訓練が終わるとジャバウォックが来て王城へ向かうよう言われた。こちらに来て初めて会う事になるヴァルボルトはヴリトラ達に何の用なのだろうか・・・。


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