第二百六十一話 感動連続! 姫と母への新たな誓い
ラピュスと別行動を取っていたラランはアリサと白竜遊撃隊に再会した。ラランからラピュスと七竜将が生きていたという事を知らせれたアリサ達も笑みを浮かべる。この時、アリサ達は一年前に失った心の底から笑えるという感情を取り戻した。
ラピュスとラランがそれぞれ大切な家族や友人と再会を果たした頃、町を一通り見回って戻って来た七竜将はボロボロになっていたズィーベン・ドラゴンの掃除を行っていた。パティーラムから許可を得てから始めるつもりだったが、ガバディアが「家具を出して掃除をするくらいなら大丈夫だろう」と言ったのでとりあえずできるところまでやる事にしたのだ。幸い屋根の一部が傷んだり、部屋の隅に草が生えている程度で家具などは十分使える状態にある。ヴリトラ達は取り合えず改築するまでの間、自分達が暮らせる程度に簡単な修理をするのだった。
「よっこらせっと・・・」
ヴリトラは中から木製のテーブルを出して庭に置いた。ひとまず埃まみれの床を綺麗にする為に邪魔な家具を全て外に出す事にした一同は全員で椅子や戸棚などを運び出す。
食器の入った戸棚は食器が落ちないよう戸が開かない様にしてそのまま運ぶ。食器は全て木製なので落ちても壊れる心配はない。ジャバウォックとニーズヘッグは二人で大きな食器棚を横にし玄関から外に出した。
「もう少し低くしてくれ」
「こうか?」
「ああ、それぐらいだ」
玄関にぶつからない様に慎重に高さを調整しながら扉を潜って行くジャバウォックとニーズヘッグ。周りではリンドブルムが窓拭き、ファフニールとオロチが床を掃き、その後に雑巾がけをしている姿がある。その光景はまるで大晦日に大掃除をしている様だった。
庭に並べて家具の数と状態をチェックするヴリトラはふとズィーベン・ドラゴンとその周りで作業をするリンドブルム達を見て小さく溜め息をつく。
「しっかし、これじゃあまるで引っ越し屋だな」
「ハハハ、確かにな」
「まぁ、あれだけ汚かったんだからこれぐらいはしないと気持ちよく暮らせないさ」
ジャバウォックとニーズヘッグはゆっくりと食器棚を降ろしながらヴリトラの方を見て言う。食器棚の中は横にしたせいか全ての食器がゴチャゴチャになっており、それを見たヴリトラは目を丸くして驚く。
「おいおいおいおい!何だよこれ、中の食器が滅茶苦茶じゃねぇか。中をそのままにして運んだのかよ?」
「・・・俺も出した方がいいって言ったんだけど、ジャバウォックが・・・」
ニーズヘッグが呆れ顔でチラッとジャバウォックの方を見る。ジャバウォックは笑いながらヴリトラの肩をポンポンと軽く叩く。
「ハハハハハッ!まぁ、いいじゃねぇか。どうせ食器は全部木で出来てるんだから、割れる事はねぇよ」
「そりゃあ、割れる事はないかもしれないけど、後で片づけるのが面倒になるじゃねぇか・・・」
「男がそんな細かい事、いちいち気にしてどうする?たまには手を抜いたり、大雑把にやるのも大切だぜ?」
「そんなもんかねぇ・・・」
笑うジャバウォックを見てジト目になるヴリトラとその隣で呆れ顔のままジャバウォックを見ているニーズヘッグ。ジャバウォックは七竜将の中では最年長でヴリトラ達を引っ張っていく父親的な存在だが、時々いい加減な一面を見せる時がありヴリトラ達も困る時があった。
ニーズヘッグは食器棚の戸を開け、中で散乱している食器を手に取り、一枚ずつ同じ種類に集める。そんな作業をしながらチラッとジャバウォックを呆れ顔で見た。
「まったく、戦場に出ている時はしっかりしてるのにどうして普通に生活している時はそうだらしない一面を見せるんだ、アンタは?」
「おいおい、それは酷くねぇか?それを言うんだったらヴリトラの方が俺よりももっといい加減なところがあるじゃねぇか」
「ヴリトラはそういう奴なんだよ。今更何を言っても無駄さ」
「ああぁ、そう確かにそうだな」
「ガアァッ!」
さり気なく貶してくる二人にヴリトラは思わずズッコケた。しかし全て事実である為。ヴリトラは何も言い返せず恨めしそうな目で二人を見つめていた。
三人の会話が聞こえたのかズィーベン・ドラゴンの中にいたリンドブルム、ファフニール、オロチが顔を出して三人の方を見ている。リンドブルムは呆れ顔、ファフニールはまばたきをしながら不思議そうな顔、そしてオロチはくだらなそうな顔をしていた。
「何やってるんだろうね、あの三人・・・」
「さぁ?またくだらない事で喧嘩してるんじゃない?」
「ああ、そうだな・・・」
三人の会話の内容が気になるファフニールと三人を見ながら若干低い声を出すリンドブルムとオロチ。三人にそんな風に見られている事に気付かずにヴリトラ達は子供の言い合いの様なやり取りを続けた。
そんな騒がしい庭に自宅へ行っていたラピュスと彼女について行ったジルニトラがやって来る。その後にラランとアリサ、そして数人の白竜遊撃隊の騎士達が庭に入って来た。
「おーい!今戻ったぞ!」
ラピュスが掃除をしているヴリトラ達に向かって手を振りながら声を掛ける。それを聞いたヴリトラ達は一斉にラピュスの方を向いた。ヴリトラはラピュス達と一緒にいるアリサと騎士達を見るとニッと笑って手を振り挨拶をする。
「アリサ、久しぶりだなぁ!」
「ヴリトラさん、皆さん!無事だったんですね!」
「ああ、見ての通りだ」
駆け寄って来るアリサを見てヴリトラや隣にいるジャバウォック、ニーズヘッグも自然と笑みを浮かべる。リンドブルムとファフニールもアリサの顔を見るとズィーベン・ドラゴンのから出て彼女の下へ向かう。オロチは遅れてゆっくりと出てきた。
近づいて来たヴリトラやリンドブルム達を見てアリサは笑いながら握手を交わす。
「本当に良かったぁ!あの爆発で皆さんが死んでしまったのとばかり思って・・・」
「まぁ、普通はそう考えるよな」
「皆さんはこの一年の間、何処にいらっしゃったんですか?」
「・・・俺達の世界さ」
「え?」
ヴリトラの言葉にアリサは思わず訊き返す。そしてその後ろにいた七竜将を知っている騎士達も同じ様な反応を見せる。
「俺達はあの爆発で俺達の世界に飛ばされたんだよ」
「ヴリトラさん達の世界と言うと・・・地球、と言う所ですか?」
「ああ・・・」
「本当はすぐに戻ろうとしたのだが、こっちに戻る為に使うユートピアゲートの装置の準備に一年も掛かってしまってな。今日ようやく戻って来たんだ」
ヴリトラの隣で話を聞いていたラピュスが彼の変わってすぐに戻れなかった理由を話す。
アリサ達はラピュスの話を聞いて理解できているのかいないのか分からないが、とりあえず「そうだったのか」と言う様な顔を見せている。
「そう言えばラピュス、お母さんはどうだった?」
リンドブルムがリターナの事をラピュスに訊ねるとラピュスは小さく笑ってリンドブルムの方を見た。
「ああ、大丈夫だ。ちょっと体の具合が悪いだけで問題は無いと医者の先生が言っていた」
「ラピュスが死んだと思ってショックのあまり寝たきりになっちゃったみたいよ」
ラピュスについて行ったジルニトラがリターナの状態を説明し、ヴリトラ達はついて行っていないラランが心配そうな顔を見せる。そんな彼等にジルニトラは小さく笑いながら言った。
「心配ないわよ。ラピュスが生きていたって事を知ってまた生きる気力が戻って来たんでしょうね。寝たきりから抜け出す為に治療や運動を頑張るって言ってたわ」
「そうか。ところでラピュス・・・リターナさんはお前が生きていると知った後、何か言ってたか?」
「何かとは?」
「そのぉ・・・なんだ・・・もう騎士を辞めてくれとか・・・」
「ああぁ・・・」
何処か不安そうな顔のヴリトラを見たラピュスは「成る程」と言う様な反応を見せて数回頷く。
普通、たった一人の家族である娘が仕事で死ぬほど危険な目に遭い、それを知ってショックを受けた母親は今の仕事を辞めろと娘に言うはずだ。リターナも、もう二度とこんな思いをしない為にもラピュスに騎士を辞めてほしいと言ったのではないかとヴリトラは考えていた。
ヴリトラの言葉にラピュスは目を閉じると静かに微笑みを浮かべる。
「いいや、母様はそんな事は言わなかった・・・」
「え?」
「言ってないの?」
リターナの出した予想外の答えにヴリトラとリンドブルム、周りの七竜将のメンバーは一斉に驚く。ラピュスは目を開けるとヴリトラ達を見ながら屋敷でリターナと話した事を説明し始める。
「・・・確かに私がこれからも戦士として戦場へ行くと言った時、母様は不服そうな顔をしておられた。だけど、私の夢が父様の様な立派な騎士となってこの国の為に尽くす事を知っているのか、いきなり取り乱して反対する様な事はしなかったよ。それから私がブラッド・レクイエムをこのままにしておいたらこの大陸がどうなってしまうのか、そして彼等を止められるのが私達や七竜将だけだと話したら母様は静かにこう言われた。『貴方があの人の意思を継ぐ為に騎士になろうとしている事は知っているわ。その為ならどんな危険な敵や困難にも立ち向かうという事も。だから貴方の夢や意思を奪おうなどとはしない。でも、これだけは約束して、自分の身をもっと大切にすると。そして、死ぬと分かって前に進むなんて無茶をしないと』とな・・・」
ラピュスは話すリターナの気持ちを知ったヴリトラ達は真剣な顔で彼女を見つめている。ラランやアリサ達も同じように黙ってラピュスを見ていた。
「・・・騎士として生きる道を歩み続けるなら、続けてもいい。だけど、周りの人達を悲しませるような行いや無茶はするな、と言いたかったんだな、リターナさんは・・・」
「多分、そうでしょうね・・・」
静かに呟くヴリトラとジルニトラ。二人の話を聞き、ラピュスは改めて母に辛い思いをさせてしまったと罪悪感を感じる。ヴリトラ達も自分達のせいでラピュスを危険な目に遭わせ、リターナを悲しませてしまったと感じ、申し訳なさそうな顔を見せた。
そんな暗い空気の中、ジャバウォックとニーズヘッグが空気を変えようと力の入った声を出した。
「しかし、リターナさんも強いよな?普通は二度とそんな思いをしない為に娘を危険な所には二度と行かせねぇぞ?」
「・・・ああ、本当は行かせたくないんだろうな。だけど、娘が選んだ道を自分の意思だけで決め付けるのは良くないと考え、自分の辛さを押し殺してラピュスが姫騎士であり続ける事を許したんだろう」
「まったく、母親の鏡だよ。あの人は・・・」
ジャバウォックとニーズヘッグの言葉を聞き、ラピュスは俯きながら自分の機械鎧の右手を見つめる。自分の本心を押し殺してまでラピュスに騎士を続けさせる事を許した母、彼女の気持ちを無駄にしてはいけないと、ラピュスは自分に言い聞かせ、改めてブラッド・レクイエム社を倒す事、そしてもう二度とリターナに辛い思いをさせないと誓うのだった。
決意を固めるラピュスを見てヴリトラは彼女の肩にそっと手を乗せる。
「ラピュス、一年間もお母さんに辛い思いをさせちまったんだ。仕事が無い時はできるだけリターナさんの側にいてやれよ?」
「ああ、分かってる」
「よし!」
「・・・私を心配してくれていたのか?」
「ん?・・・ああぁ、そりゃあ、大切な仲間だからな」
「そうか・・・ありがとう」
ヴリトラを見つめながら微笑むラピュス。そんなラピュスを見たヴリトラは照れているのか頬を少し赤く染めながら視線を逸らし頬を指で掻く。そんなヴリトラを見たオロチ以外の七竜将全員はニヤニヤと悪戯っぽく笑いながら「何照れてるんだよ」と心の中で呟いた。
周りからそんな視線を向けられている事に気付いたヴリトラはむぅっとした表情を見せる。そして話を変える為にリンドブルム達の方を向いて手をパンパンと叩いた。
「さ、さぁ!ちゃっちゃとズィーベン・ドラゴンを綺麗にしちまおうぜ?まだやる事は沢山あるんだから、早くしないと日が暮れちまう!」
「・・・さり気なく話を逸らしたね」
「ああ、逸らしたな」
「逸らしたね」
小声で話し合うリンドブルム、ジャバウォック、ファフニールの三人。ニーズヘッグ、ジルニトラ、オロチはヴリトラを見ながら「やれやれ」と言いたそうな顔を見せている。
ヴリトラ達がズィーベン・ドラゴンの掃除を再開しようと中へ入ろうとする。その時、彼等の背後からガバディアが現れて手を振りながら声を掛けて来た。
「おぉーい!」
「・・・ガバディア団長」
ガバディアが王城から戻って来たのを見てヴリトラ達は一斉に彼の方を向く。そしてガバディアのすぐ後ろに立っている女性の姿を目にする。すみれ色の長髪に白銀のドレスを纏い、頭に黄金のティアラを乗せた女性。ヴリトラ達はその女性の顔に見覚えがある。そう、レヴァート王国第三王女、パティーラム・セム・レヴァートだ。
一年ぶりに見るパティーラムに七竜将は少し驚き、ラピュスとラランは七竜将以上に驚きの顔を浮かべている。アリサと白竜遊撃隊の騎士達はパティーラムの姿を見るや一斉に膝まづき、ガバディアもパティーラムの前から移動して道を開ける。
「・・・皆さん」
生きていたヴリトラ達の姿を見たパティーラムは感激のあまり涙を流し走り出す。そしてヴリトラに強く抱きついた。
「いいぃ!?」
「なっ!?」
「「「「「おおぉ~!」」」」」
突然抱きついて来たパティーラムに驚くヴリトラとラピュス。そしてとんでもない状況にオロチ以外の七竜将が声を揃えてパティーラムを見つめる。
パティーラムは両手に力を入れてヴリトラの存在を確かめる様に抱きつく。
「・・・よかった。ご無事で本当によかった・・・」
「あ、あのぉ、パティーラム様・・・?」
「・・・あっ、ごめんなさい。つい嬉しくて」
状況を思い出したパティーラムは頬を赤くしながらヴリトラから離れ、彼女を見ながらヴリトラも少し照れている顔になる。一方でラピュスはなぜか二人が抱き合っていたのが気に入らず、若干不機嫌そうな顔でヴリトラを睨んでいた。
ヴリトラは隣から感じるラピュスの不機嫌オーラに寒気を感じ、ラピュスを見ながらヴリトラは冷汗を流す。
(な、何だよ、ラピュスの奴・・・何であんな怖い顔をしてるんだよ・・・?)
ラピュスが不機嫌な理由が分からずに心の中で呟きながら考えるヴリトラ。リンドブルム達は不機嫌そうなラピュスとヴリトラの表情を見た後に心の中で「鈍感だなぁ~」と思いながらヴリトラを呆れ顔で見つめていた。
落ち着きを取り戻したパティーラムは目元の涙を拭い、ドレスを整えると七竜将とラピュス、ラランの方を向き軽く頭を下げる。
「・・・改めてまして、七竜将の皆さん、ラピュスさん、ラランさん、お久しぶりです。そして、ご無事で何よりです」
「お久しぶりです、パティーラム様」
「ご心配をおかけしました」
ヴリトラとラピュスは挨拶するパティーラムを見ると気持ちを切り替え、真剣な顔で頭を下げる。リンドブルム達も何も言いはしないが二人と同じように真面目な顔で一斉にお辞儀をする。
「一年前に亡くなったはずの皆さんが生きていたとガバディア団長から聞かされた時は驚きました。一体どちらにいらっしゃったのですか?」
「・・・俺達はこの一年間、俺達の世界にいたんです。ファムステミリアに戻ろうにも戻れず、こっちに来れるようになるまで一年も掛かってしまいました」
「七竜将の皆さんの世界にですか?」
「ええ」
「そうですか・・・」
ファムステミリアとは違う異世界でヴリトラ達は一年間過ごしていた事を気かされたパティーラムは若干驚きの表情を浮かべていた。普通の人間が聞けば信じられない内容だが、七竜将の正体を知っているパティーラムやガバディア達は疑う事無く信じた。
しばらく目を閉じて考え込んでいたパティーラムはゆっくりと目を開けてヴリトラ達の方を向くと静かに口を開く。
「一年前、皆さんがブラッド・レクイエムの基地で起きた爆発に巻き込まれたと聞かされた時、私を始め、貴方がたを知っている大勢の方々がショックを受けました。貴方がたが亡くなったと思い、私達はどうブラッド・レクイエムに対抗したらよいのか分からず途方に暮れていました。ですが、皆さんがこうして生きておられ、またこの国に戻って来てくださったのであれば、皆も喜び士気も高まります。皆さん、この世界の為、もう一度私達と共に戦って頂けませんか?」
もう一度レヴァート王国と戦ってほしいと頼むパティーラム。真剣な顔で頼む彼女を見たヴリトラは口を動かした。
「・・・アイツ等は俺達と同じ世界から来た連中ですからね。俺達には奴等を止める責任があります。それにこの国やヴァルトレイズ大陸に住む人達には色々と恩がありますから、彼等の為にも力になりますよ」
「・・・ありがとうございます。改めて皆さんに心から感謝いたします」
パティーラムは一年経っても自分達と共に戦うという気持ちを変えていない七竜将に深く頭を下げて感謝する。ガバディアやアリサ達も七竜将の方を向き頭を下げ、無言のまま感謝した。
パティーラムがゆっくりと頭を上げると今度はラピュスとラランの方を向き、二人の前まで近づき微笑む。
「ラピュスさん、ラランさん、ご無事で本当によかったです」
「勿体ないお言葉です。姫様にご心配して頂けるなんて・・・」
「・・・ありがとうございます」
「そんなに謙遜しないでください。私にとってお二人は掛け替えのないお友達なのですから」
「お、お友達?私の様な者が・・・」
平民上がりである自分が王族の友人と言われた事に驚きを隠せないラピュス。ラランもこれには驚いたのは珍しく驚きの表情を浮かべていた。驚く二人を見てパティーラムはクスクスと笑い、今度はゆっくりとアリサの方を向く。
「勿論、貴方もですよ?アリサさん」
「えっ!?そ、そんな・・・」
驚きと戸惑いで動揺を見せるアリサ。そんなアリサを見たガバディアは静かに溜め息をつき「しっかりせんか」と言い倒すに顔に手を当てる。
戸惑うアリサを見てどこか楽しそうな顔を見せるパティーラム。そんな彼女を見てヴリトラ達は「何だか楽しそう」と言いたそうに呆然としている。
パティーラムがアリサからヴリトラ達に視線を戻すと、突然彼女の表情が鋭くなり、それを見たヴリトラ達もフッと真剣な表情になる。
「・・・再会してすぐに申し訳ないのですが、皆さんにお話しなければならない事があります。とても大切な事です」
さっきまでと違い緊張感がピリピリと伝わって来る雰囲気に七竜将やラピュス達は黙ってパティーラムを見つめる。ガバディアやアリサ達も黙ってパティーラムの方を見ており、全身に緊張を走らせていた。
パティーラムと再会を果たしたヴリトラ達。彼女が語ろうとしているのはファムステミリアの現状、そしてブラッド・レクイエム社がなぜレヴァート王国に攻めて来なかったのかという事。そこにはヴリトラ達が想像もしていなかった事実があった。




