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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十四章~竜達の帰還~
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第二百五十七話  砦制圧開始! 神風盗賊団壊滅


 村を襲撃しに来たホークレイド達を倒したリンドブルム達。それと同時にヴリトラ達も砦に突入し、捕らえられたモモを救出する為に行動を開始するのだった。

 先に砦へ突入したヴリトラ、ラピュス、オロチはそれぞれ一階の正面入口と屋上から制圧を開始する。途中で砦にいたホークレイド達と出くわすも次々と倒していき少しずつ砦の奥へと向かって行った。

 砦の二階の奥にある部屋では一人の男のホークレイドが椅子にふんぞり返りながら酒を飲んでいた。身長はジャバウォック程ではないが少し大柄でガッシリとした筋肉の体をしている。黒い長髪に口周りに髭を生やした四十代前半位の顔、そして背中には大きな翼を生やし、腰にはハンドアックスをぶら下げていた。実は彼こそがホークレイド達の族長で神風盗賊団の団長なのだ。


「・・・何だか騒がしいな。何が起きてる?」

「さぁ?また酒に酔った連中が喧嘩してるんじゃないの?」


 砦の中が騒がしい事に気付く族長に隣で一緒に酒を飲んでいた女ホークレイドが酒を飲みながら言う。それを聞いた族長は「何だそうか」と言いたそうな顔をして再び酒を飲み始めた。

 すると一人のホークレイドが勢いよく扉を開けて部屋に入って来る。その表情には驚きと焦りが見られた。


「族長!!」

「うるせぇなぁ、どうした?」

「大変だ、砦に侵入者が!」

「何?」


 慌てるホークレイドを見て族長は酒の入った木製のコップを隣にあるテーブルに置くと椅子に座ったまま体を前に乗り出した。


「侵入者だと?見張りは何をしてやがったんだ?」

「分からねぇよ!奴等、突然現れやがったんだ!」

「ケッ!だらしねぇ奴等だ!」


 ヴリトラ達の侵入を許した部下に不機嫌な態度を見せる族長。隣にいる女ホークレイドも「情けないねぇ」と言いたそうに呆れ顔を見せている。

 族長はゆっくりと立ち上がり、腰にぶら下げているハンドアックスを取ると刃に映る自分の顔を見ながら舌打ちをした。


「・・・チッ、ジャルーヌ村の襲撃の為に半分近くが外に出てる時に何てタイミングの悪い。だが仕方ねぇ、俺達で侵入者どもを消すしかねぇな・・・それで、人数は?それだけ慌ててるって事は、かなりの人数なんだろうな?」

「そ、それが・・・」


 ホークレイドは族長の顔を見て言っていいのかどうか分からないのか不安そうな顔で俯く。族長はそんなホークレイドの顔を見て小首を傾げた。


「どうした?」

「その侵入者なんだけどよ・・・」

「一体何人なんだ、ハッキリと言え!」

「・・・・・・三人なんだ」

「・・・・・・は?」


 族長はホークレイドが口にした侵入者の人数に耳を疑う。隣にいる女ホークレイドもキョトンとした顔でホークレイドを見ている。

 数秒間の沈黙の中、俯いたまま顔を上げようとしないホークレイド。すると族長がホークレイドに近づき、服の胸倉を掴むとホークレイドの顔を上げさせてギロリと睨みつける。


「・・・お前、ふざけてんのか?」

「ヒッ!」

「三人だと?・・・アジトへの侵入を許しただけでなく、人数がたった三人だと馬鹿げた事を口にするとは、死にたいのか?」

「ふ、ふざけてなんかいねぇよ!本当だ!」

「だったら尚更、許せねぇな。たった三人の侵入者に何人も殺されたって言うなら、お前等はホークレイドの面汚しだ。此処で俺がぶっ殺してやるよ」


 族長は持っているハンドアックスの刃をホークレイドの首に近づける。ホークレイドはこれを見て恐怖に支配され、必死になって族長を説得した。


「ま、待ってくれ族長!どうもソイツ等、普通じゃねぇみたいなんだ!」

「普通じゃない・・・?」

「ああぁ、見た目は人間なんだが、見た事の無い格好で変な武器を使う連中なんだよ。人間では考えられない位の力を持ってて空を飛んだりする事も出来るんだ。多分、アイツ等がさっき帰って来た連中が遭遇したおかしな連中だと思うぜ?」


 ホークレイドはヨヨを浚おうとして失敗し帰って来た三人の話を思い出して族長に説明する。それを聞いた族長はしばらく黙り込み、やがてゆっくりと胸倉を掴んでいた手を離す。

 胸倉を放された事でホークレイドはホッとしたのか汗を拭い、服を整えると族長の方を見る。族長は持っているハンドアックスの柄を強く握りながら歯を噛みしめた。そして顔を上げて部屋の扉を見ると勢いよくハンドアックスを振り下ろし、近くにあるテーブルを真っ二つにする。その光景を目にしたホークレイドと女ホークレイドは驚き目を見張った。


「俺達の仕事の邪魔をした輩がこの砦を襲撃しに来たとは・・・随分とナメた真似をしてくれるじゃねぇか。それなら、俺自らお礼をしないといけねぇな・・・」

「族長、まさかアンタ自身が出るつもりかい?」

「当たり前だ!部下を殺されて黙っていられるか!」


 女ホークレイドの問いかけに大声で答える族長。彼は静かに扉の方へ歩いて行き、前に立っていたホークレイドは慌てて移動し道を開ける。扉を潜って廊下へ出た族長は二人の方を向くと鋭い視線を向かながら口を動かした。


「お前等も武器を持ってこい。この砦にいる連中が少ない以上、動ける奴等は全員動いてもらうからな」

「わ、分かった!」

「あいよ」


 族長の指示を聞いたホークレイドは腰の短剣を抜き、女ホークレイドも壁に立て掛けてある槍を手に取る。族長の後を追う様に部屋から出ると族長は二人を連れてヴリトラ達の対処へ向かった。この時既に砦のいたホークレイドの半分が倒されていたが彼等はまだ気づいていない。

 その頃、ヴリトラとラピュスは一階の粗方制圧し、二階へ続く階段を上がっていた。その途中でホークレイドと遭遇するも二人はアッサリと倒して先へ進んで行く。

 二人が階段を上がり切って二階へ出ると屋上から階段を下りて来たオロチとバッタリと会った。


「ヴリトラ、ラピュス、無事だったか・・・」

「ああ、何人かホークレイドと遭遇したけど大丈夫だ」

「まぁ、お前達なら問題ないだろうな・・・」

「褒め言葉として受け取っておくよ。それより、ヨヨの妹は見つかったか?」

「いや、屋上にはこの階段以外は何も無かった。恐らくこの二階か一階の何処かに閉じ込められているんだろう・・・」

「そうか・・・だけど一階には牢屋みたいに閉じ込めておく様な部屋は無かったぞ?」

「全ての部屋を調べたのか・・・?」

「勿論」


 一階にある全ての部屋を探したがモモの姿は無かった。それを聞いたオロチは難しい顔をして何処にモモがいるのかを考える。ヴリトラとラピュスも同じように難しい顔で考え始めた。すると廊下の奥から族長の二人のホークレイドが姿を現し、それに気づいたヴリトラ達はフッと族長たちの方を向く。

 ヴリトラ達の姿を見つけた族長はハンドアックスを握りながらゆっくりとヴリトラ達の近づいて行く。そして三人の顔を見ると呆れた様な顔を浮かべた。


「何だ、たった三人で攻め込んで来たからどんな連中かと思ったら、まだガキじゃねぇか。しかもその内の二人は女とは・・・」

「・・・何だアイツ?」

「恐らくホークレイド達の族長だろう」


 近づいて来る族長を見ながら小声で話すヴリトラとラピュス。二人はジッと族長を見つめながら森羅とアゾットを握り、オロチも斬月を握って族長を睨む。

 族長はヴリトラ達の5m前まで近づくと静かに立ち止まり三人を睨みつける。族長の後ろではホークレイドと女ホークレイドが付き従い同じようにヴリトラ達を睨んだ。


「お前等か、俺のアジトに入り込んで暴れまくっている礼儀知らずな奴等は?」

「盗賊のアンタ達に礼儀知らずなんて言われたくないんだけどなぁ」

「黙れ!お前等が何者で何で此処に来たかは知らねぇが、俺のアジトに入った以上はこのまま帰す訳にはいかねぇ!」

「あっそ・・・それじゃあ、一応俺達が此処に来た理由を言っておくぜ?この砦にモモって言う女の子がいるはずだ。その子を渡してくれ」

「あぁ?」


 ヴリトラの要求に族長は睨みつけながら訊き返す。


「俺達はジャルーヌ村のヨヨって人から妹を助けてくれって依頼されたんだ。その子がお前等に捕まってこの砦にいるって事も知ってる」

「・・・何の事だか分からねぇな」

「とぼけるな!」


 白を切る族長にラピュスが怒鳴り付ける。そんなラピュスに族長と一緒にいたホークレイドと女ホークレイドが一瞬驚きピクリと反応した。

 ラピュスはアゾットの切っ先を族長に向けながら話を続ける。


「お前達がヨヨを襲ったのは約一時間前、彼女はその時に妹のモモと一緒にいたところをホークレイドに襲われた。そしてその時にお前の部下がモモを連れ去ったんだ。連れ去ってからまだ一時間しか経っていないのなら奴隷商などに売り渡す事も出来ない、つまりまだこの砦の中にいるという事だ!」

「・・・チッ!」


 族長をラピュスの推理を聞くと目を逸らしながら小さく舌打ちをする。どうやら図星のようだ。

 その反応を見たヴリトラ達はまだモモがいる事を確信し、族長を睨みながらそれぞれ武器を構える。すると三人の小型通信機からコール音が鳴り、三人は一斉にスイッチを入れて応答した。


「こちらニーズヘッグ、聞こえるか?」

「来たか。ラランも一緒か?」

「ああ、さっき合流して今一階の入口前にいる。それにしても随分派手にやったようだな?殆どのホークレイドが倒れてるじゃねぇか」

「あっちがいきなり襲って来たからな」


 小型通信機を通して会話をするヴリトラとニーズヘッグ。ラピュスとオロチは小型通信機から聞こえる二人の会話を黙って聞いており、族長達は突然独り言を言い出すヴリトラを見て呆然としている。

 ヴリトラはそんな族長達をチラッと見て彼等を警戒しながらニーズヘッグと会話を続けた。


「今俺達は二階で敵の大将と睨み合ってるところだ」

「そうか。俺達もそっちへ行った方がいいか?」

「いや、俺達だけで十分だ。それよりもお前達は一階の方を隈なく調べてくれ。何処かに捕まえた人達を閉じ込めておく牢屋があるはずだ」

「牢屋が?」

「最初に俺とラピュスで調べたんだけど見つける事ができなかった。隠し扉か何かがあるかもしれない」

「・・・分かった。こっちは俺とラランで調べる」

「頼むぞ?あと、まだ敵が一階に残ってるかもしれないから油断はするなよ?」

「了解だ」

「・・・了解」


 ニーズヘッグとラランの返事が聞こえ、その直後にヴリトラ達は小型通信機のスイッチを切る。

 通信が終るとヴリトラ達は族長達の方を向き武器を構え直す。族長はハンドアックスを握りながらヴリトラ達を睨んでおり、その表情からは何処か不機嫌な様子が見られた。


「さっきから独り言をブツブツ言いやがって、頭でもおかしいのか?お前」

「いたって正常だけど?」

「そうか、なら・・・俺達を倒すのも三人で十分って言うのも正常な状態で言ってるって事だよな?」

「そうだけど?」


 無表情でそう答えるヴリトラを見て族長の表情は更に険しくなった。ヴリトラの発言は族長を簡単に倒せると言っている様なものだ。それを聞いて族長本人が頭に来ないはずがない。

 族長はハンドアックスをヴリトラに向けてその刃をギラリと光らせた。


「人間ごときがホークレイドの族長である俺を倒すなど、随分と自惚れてるじゃねぇか?お前等が何者かは知らねぇが、人間がホークレイドに勝てると本気で思ってるのかぁ!?」

「思ってるぜ?・・・と言うか、此処に来るまでにアンタの部下であるホークレイドを大勢倒して来たんだ。その時点で人間でもホークレイドに勝てるって事を証明してる事になってるんじゃねぇの?」

「ぐうぅ!こぉのぉ~~!」


 ヴリトラの挑発に族長の怒りは上昇していき、いつ噴火してもおかしくない状態だった。族長の脇に控えているホークレイドと女ホークレイドも族長の顔を見て思わず後ろに下がる。近くにいれば自分達もとばっちりを受けると思ったのだろう。

 二人のホークレイドが族長から離れるのを見たヴリトラは族長の方を見て森羅を鞘に戻した。


「これ以上戦ってもそっちに犠牲者が出るだけだ。投降してあの村には手を出さないと約束してくれないか?そうすればこれ以上アンタ達に危害を加えないと約束するよ」

「ふざけるな!ここまで好き勝手させておいて投降したら族長の名折れだ!アジトを滅茶苦茶にした分はしっかりとお前等の体で償ってもらうぞ!?」

「償うって・・・まさか、一生タダ働きでもさせるつもり?」

「テ、テメェ、どこまで俺を馬鹿にする気だぁーーーっ!!」


 ヴリトラのおとぼけな返答に遂に族長の堪忍袋の緒が切れた。族長は大きな翼を広げてヴリトラに突っ込んで行く。そんな族長を見てラピュスとオロチはヴリトラから離れ、ヴリトラは左手で森羅の鞘を軽く持ち、右手で森羅に柄を握った。ゆっくりと構えて突っ込んでくる族長を見つめるヴリトラは鋭い目で族長を見つめる。


「皆藤流剣術壱式、煉獄居合!」


 族長が間合に入った瞬間、勢いよく抜刀するヴリトラ。族長は険しい表情のままヴリトラの真横を通過する。その直後、族長の背中に大きな切傷が生まれてそこから鮮血が広がり、族長は叩きつけられる様に床に倒れて動かなくなった。

 一撃で族長が倒された事に驚くを隠せないホークレイド達。ヴリトラは森羅を振り、刃に付着している血を払い落とすとふと驚いている二人を見る。それを見たホークレイド達は武器を捨てて声を上げながら逃げ出す。結局ヴリトラは僅か数秒で族長を倒してしまい神風盗賊団は崩壊した。


「はぁ・・・族長って言うから強いと思ったけど、こんなにもアッサリとやられちまうとはな・・・」

「お前が強すぎるんじゃないのか?」

「そうかねぇ・・・」


 ラピュスの方を見ながら森羅を鞘に納めるヴリトラ。すると小型通信機からコール音が鳴り、三人は同時にスイッチを入れて応答した。


「こちらニーズヘッグ。ヴリトラ、捕まっていた人達を発見したぞ」

「本当か?」

「ああ、一階の倉庫に地下へ続く隠し通路があってな、そこを下りて行ったら捕まった人達が牢屋の中で震えているのを見つけた。その殆どがジャルーヌや他の村の住人らしい人ばっかりだった」

「そうか・・・それでヨヨの妹さんは?」

「無事だよ。今ラランがそばにいて落ち着かせてるところだ」


 ニーズヘッグは小型通信機に指を当てながらチラッと牢屋の方を向くと牢屋の中でヨヨと顔立ちが似ている少女を落ち着かせているラランの姿があり、他の村人達は一人ずつ順番に牢屋から出ている姿がある。

 村人が全員出るとラランもモモを連れて牢屋から出てニーズヘッグの下へやって来る。それを確認したニーズヘッグは地下室の壁に貼り付けてある円盤状の小さな機械を見つめた。


「地下と一階の壁に爆弾をセットした。全員脱出したら爆弾を爆破させる。お前等も急いで砦を出ろ」

「爆弾を仕掛けたのか?」

「この砦がある限りまた何処かの盗賊団が此処をアジトにして悪事を働くはずだ。だったらアジトになりそうな所は一つでも破壊しておいた方がいい。幸い此処はもう王国騎士団は使ってない所だからな」

「・・・まぁ、確かにそうだな。分かった、こっちも敵の大将を片づけたところだ。これから脱出する」

「了解だ」


 ヴリトラは小型通信機を切るとラピュスとオロチの方を向いて床を指差し「下りるぞ」と目で伝える。それを見てラピュスとオロチも返事をし三人は素早く階段を下りた。

 三人が階段を下りて正面入口のある方へ走って行くと、一階の壁は天井を支える頭に円盤状の爆弾は大量にセットされているのを見つける。その量を見て相当派手な爆発が起きると考えたヴリトラ達は急ぎ砦を後にする。外に出ると森の方で大勢の村人やモモを連れて避難し終えているニーズヘッグとラランの姿を見つけ、三人は急ぎ丘を下って森へ向かって走った。そしてヴリトラ達が砦と森のちょうど中間辺りまで来るとニーズヘッグは手に持っている小型のリモコンのスイッチを押す。すると砦にセットされている爆弾が一斉に小さなランプを赤く光らせ、その直後に全ての爆弾が爆発する。砦の一階の窓は爆発で吹き飛び、そこから大きな煙が上がった。そして壁や柱を爆弾で破壊された砦は一瞬にして崩れ落ち、あっという間に瓦礫の山と化す。

 その光景を森で見ていた村人達は唖然とし、ニーズヘッグとラランはジーっと見つめていた。


「・・・凄い爆発。中にいたホークレイド達はどうなった?」

「さあな?爆発前に逃げたか、逃げられずに瓦礫の下敷きになったか・・・どちらにせよ神風盗賊団はもうお終いだ」

「・・・そう」


 ニーズヘッグの答えに興味の無さそうな反応を見せるララン。そんな二人の下へヴリトラ達が合流した。


「無事だったか?」

「ああ、牢屋にいた村人は全員助け出した。さらわれた奴も俺達が見つけた牢屋にいた連中で全員みたいだしな」

「そうか・・とりあえず、依頼は完遂って事でいいんだよな?」

「ああ」


 盗賊団を壊滅させて村人達を救出する事に成功した七竜将。村人達はたった五人で自分達を助け出してくれた七竜将を見て喜びの表情を浮かべる。

 それからヴリトラ達は村人達を護衛しながらジャルーヌ村へ戻り、村を防衛していたリンドブルム達と合流する。リンドブルム達は砦の方で起きた爆音の原因を聞いて少し呆れ顔を見せたが、村人達が全員無事だという事で良しとした。

 モモも無事にヨヨと再会でき、姉妹は涙を流しながら抱き合った。村長や他の村人達もヴリトラ達に深く頭を下げて礼を言い、七竜将はそんな村人達を見て微笑みを浮かべる。


「本当にありがとうございました」

「いいんですよ、仕事ですから」

「ホークレイド達に捉えられていたのはこの村の住人だけではなく、他の村から連れ去られた者もいたらしく、その者達は私達が何とか住んでいた村へ戻れるようにいたします」

「そうしてくれると助かります」


 村長が捕まった村人達の事を引き受けると聞き、ヴリトラは安心したのかフッとした表情を浮かべる。一年ぶりにファムステミリアに戻って来た彼等では何処にどんな村があるのか全く分からなかった。もし村人達を元の村へ戻してくれと言われたらどうするか悩んでいたのだ。だが幸いにも村長が後はなんとかしてくれる事になり、ヴリトラ達は安心してティムタームへ向かう事ができる。

 話が終るとヴリトラ達は装甲車とトラックに乗り込み、村を出てティムタームへ向けて再出発する。去って行くヴリトラ達を村長やヨヨ、モモ達が手を振って見送り、リンドブルムやファフニールも天井のハッチや窓から顔を出して手を振り返した。


「フゥ・・・ちょっと問題が起きちまったが、これでようやくティムタームへ迎えるな」

「ああ、急いで町へ向かって陛下や団長達が無事なのか確認しなくては!」

「わぁってる、とにかく急ごう!」


 後部座席から顔を出すラピュスの方を見てヴリトラはアクセルを踏んで装甲車の速度を上げる。その後ろをついて行くトラックも速度を上げ、二台の自動車は急ぎティムタームへ向かうのだった。

 神風盗賊団を見事に壊滅させ、捕らえられていた村人達を救出した七竜将。ファムステミリアに戻っていきなり面倒事に巻き込まれてしまったが彼等は本来の目的地であるティムタームへ向かう。果たしてティムタームはどうなっているのだろうか?


今作で十四章、終了です。

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