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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十四章~竜達の帰還~
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第二百四十九話  終わりへ近づく戦い 動き出すテロリストの切り札


 七竜将全員がテロリストのアジトに侵入し戦いは更に激しさを増していく。だがヴリトラ達はまだテロリストのアジトの構造や武装を完全に把握していない。戦いはこれからが本番だった。

 廃工場の三階にあるリーダーの部屋では七竜将全員が一階の広場に侵入した事を聞かされたリーダーは驚愕の顔を浮かべている。僅か八人で自分達のアジトに侵入して何十人もの仲間が倒されたのだから無理もなかった。


「な・・・何だと・・・」


 リーダーは報告に来たテロリストを見つめながら固まる。一緒にいた二人の警護のテロリストも同じように固まって驚いていた。


「一階の広場に侵入されて既に二十人以上がやられちまった・・・車両や武器も殆どがブッ壊すされちまって・・・」

「おい、何なんだよ七竜将って・・・?」

「本当に俺達と同じ人間なのか・・・?」


 報告を聞き、警護のテロリスト二人が小声で話す。二十人近くの仲間が倒され、今もアジトの一階を制圧しようとしていると聞かされれば弱気になるのも無理はない。知らせに来たテロリストも勝ち目が無いと感じているのか俯いたまま暗い顔をしている。


「お前等、何をビクビクしてやがる!」


 テロリスト達を見たリーダーは徐々に苛立ちを感じ、自分の近くにあるテーブルを強く手で叩いた。その衝撃でテーブルに乗っている酒瓶は倒れてテーブルを転がり、床に落ちて大きな音を立てて割れる。そんなリーダーの喝にテロリスト達はビクッと驚く。

 

「たった八人の侵入者にビビってるんじゃねぇ!このアジトにいる奴等を全員一階の広場へ向かわせろ!全力で奴等を始末するんだ!」

「えっ・・・だ、だけどよぉ・・・」

「いいからさっさと行けぇ!」

「お、おう!」


 知らせに来たテロリストは慌てて部屋から出て行く。テロリストが出て行くとリーダーは再びテーブルを強く叩いて苛立ちを露わにし、警護の二人はそんなリーダーを黙って見ている。


「クソォ~!何が七竜将だ、たった数人の傭兵ごときが調子に乗りやがってぇ・・・・」

「な、なぁリーダー、もう逃げた方がいいんじゃねぇか?」

「そ、そうだ、俺達じゃ勝ち目ねぇよ!」


 警護の二人がアジトから逃げ出す事を提案するとリーダーは二人をキッと睨みつける。


「お前等は俺に臆病者らしく逃げろって言うのか!?退却するのは七竜将を始末してからだと言っただろうが!」

「だ、だけどよぉ、アイツ等は全員が機械鎧兵士だって噂じゃねぇか。機械鎧兵士と言えば一人で十人以上の戦力になるって言われてるんだぞ?そんな奴等が八人もいるんじゃ敵いっこねぇよ」

「ここは退散して別の拠点に避難しようぜ?このままじゃ本当に全滅しちまう!」

「まだこっちには何十人もいるんだぞ!いくら機械鎧兵士でも俺等全員が相手なれば勝ち目はあるはずだろうが!」

「だがよぉ・・・」


 警護の一人が何とかリーダーを説得しようと意見する。するとリーダーは懐から拳銃を取り出して意見するテロリストに銃口を向けた。

 突然銃を突きつけられたテロリストは驚き、もう一人も目を見開いてリーダーを見ている。


「・・・俺に撃ち殺されたくなかったら言うとおりにしろ。リーダーは俺だぞ?」

「うう・・・」

「俺達はこのドイツで最強の組織だ。あんな機械鎧に頼っている少数の傭兵隊に負ける訳にはいかねぇんだよ」


 リーダーの睨みつけに怯える警護達は何も言い返せずに黙り込む。二人が黙るとリーダーは拳銃を懐にしまい窓の外を見下ろした。


「・・・おい、『アレ』の準備をしておけ」

「アレ?・・・・ッ!まさか、もうあれを使うのか?」


 警護達の表情が急変し、驚きの顔でリーダーを見つめる。リーダーは警護達を鋭い目で見ながら床を指差す。


「今だからこそ使うんだろうが!奴等を葬るにはアレを使うしかないんだ!」

「だ、だけどよぉ、アレはまだ整備中で・・・」

「だったらすぐに整備を終わらせろ!俺自らアレを使って連中を皆殺しにしてやる!奴等にやられたくなかったらさっさと行け!」

「わ、分かった・・・おい、行くぞ」

「お、おう!」


 指示を受けた警護達は部屋を後にして何処かへ向かう。一人残ったリーダーは手を強く握り歯を噛みしめながら七竜将への怒りを露わにする。


「見てろよ、傭兵どもが・・・俺のアジトをメチャクチャにした事をタップリと後悔させてやるからなぁ!」


 そう言ってリーダーも部屋を後にして何処かへ向かった。彼等は一体何処へ向かったのか、そしてアレとは一体何なのだろうか。

 その頃、一階広場ではテロリスト達を倒して周囲を警戒しているヴリトラ達の姿があった。ヴリトラ達の周りには大勢のテロリストの死体が転がっており、その殆どが一撃で死亡する様な大きな傷や深い傷を負っている。一方でヴリトラ達は体中に掠り傷の様な小さな傷だけを負っているという殆ど無傷の状態でいた。それは七竜将とテロリスト達の力の差を物語っている。

 倒れているテロリストの死体を見た後に周囲を見回すヴリトラ。森羅の峰で自分の肩を軽く叩きながら他に敵がいないか探している。


「粗方片付いたみたいだな?」

「ああ」


 ヴリトラの隣でニーズヘッグが同じように周囲を見回して敵がいないか確認しながら返事をする。二人の近くにはラピュスとジャバウォックもおりアゾットとデュランダルを構えていた。


「しっかし、とんでもねぇ数だな。ドイツでも最大級の組織と言うだけはある」

「此処で私達が倒したテロリストだけでも軽く二十人から三十人はいたな」

「ああ、だけどそれでも半分程度しかいねぇだろう。まだこの廃工場には大勢いるはずだ」

「これでまだ半分ほどか・・・・・・ヴリトラ、これからどうする?」


 ラピュスがヴリトラにこの後どう動くかを訊くとヴリトラはもう一度周囲を確認してからラピュス達の方を向いた。ヴリトラの近くにいるラピュス、ジャバウォック、ニーズヘッグはヴリトラの方を向き、遠くにいるリンドブルム、ジルニトラ、オロチ、ファフニールもヴリトラ達の下に集まってくる。

 全員が集まったのを確認したヴリトラは今後の事を全員に話し始めた。


「とりあえず敵の半数を倒したから外にいるテュポーンに連絡を入れて森の外にいる警察に森へ突入するよう伝えてもらう。連絡を入れたら俺達はアジトの制圧を続ける。警察が来る前に少しでも敵の戦力を削っておくんだ」

「それでどう動くの?」


 ジルニトラが訊ねるとヴリトラはラピュス達を見ながら天井を指差す。


「とりあえず一階は制圧できたから次は二階の制圧に取り掛かる。今度は二手に分かれて行動しよう。片方が二階の制圧、もう片方は一階の確保だ。警察が来る前にテロリスト共がまたこの一階に集まったら面倒だからな」

「そうね。それで戦力はどう分けるの?」

「二階の制圧には火力のデカい奴を行くべきだ。ジャバウォック、ニーズヘッグ、ジルニトラ、オロチ、ファフニールは二階の制圧に向かってくれ」

「了解だ」

「任せて!」


 ニーズヘッグとファフニールが指示を聞いて返事をし、ジャバウォック、ジル二トラ、オロチも頷く。二階にはまだ数十人のテロリストが残っているはず。それを制圧する為に現在の戦力の半分以上を二階へ行かせるべきだとヴリトラは考えた。

 二階に向かう者を選んだ後、ヴリトラは名前を上げていないラピュスとリンドブルムの方を向いて指示を出す。


「俺とティアマット、リンドブルムの三人がこの一階に残る。テロリストが来たら倒し、警察が来たら状況を伝えてその後に二階へ向かう。それでいいな?」

「分かった」

「OK!」


 ラピュスとリンドブルムもヴリトラを見ながら返事をした。広場は制圧してもまだ廃工場の外にテロリストが残っているかもしれない。彼等が一階に来た時の為に広場にも最低限の戦力を残しておいた方がいいとヴリトラは考えたのだ。


「ヴリトラ、テュポーンはどうする・・・?」


 オロチが外で待機しているラランの事を訊ねるとヴリトラは難しそうな顔で廃工場の外を見る。ラランは今GSG9の偵察隊と崖の上で待機している。隊員達に一階の制圧を知らせた後のラランをどうするかヴリトラは腕を組みながら考え出す。


「そうだなぁ・・・・・・偵察隊に知らせればもう崖の上に残す必要も無いし、彼女にも戦いに参加してもらおう」

「なら、二階へ向かう途中で私がテュポーンを拾って行けばいいか・・・?」

「ああ、そうしてくれ」

「了解・・・」


 二階へ向かう途中にラランを迎えに行くことにしたオロチはヴリトラの方を見ながら返事をした。

 とりあえず今後の事を決めた七竜将はそれぞれ自分達の装備品と武器の状態を簡単にチェックし、戦いに支障がでないと判断すると早速行動を開始しする。ヴリトラ、ラピュス、リンドブルム以外のメンバーは二階へ続く階段の方へ走り、オロチだけは廃工場の外に出てラランの迎えに向かう。そのすぐ後にヴリトラは小型通信機でラランに廃工場の一階を制圧した事とオロチが迎えに行く事を伝え、ヴリトラ達は一階広場の確保に取り掛かった。

 二組に分かれたから数分後、早速二階の方が騒がしくなってきた。ジャバウォック達がテロリストと遭遇して戦闘を始めたのだろう。頭上から聞こえてくる銃声や爆音を聞いてヴリトラ達は天井を見上げる。


「早速始まったようだな」

「大丈夫かな皆。上にはまだ大勢のテロリストがいるはずだよ」

「だからこそ一階の確保を俺達三人だけにして残りの戦力を上へ向かわせたんだよ。五人もいればある程度の事態には対応できるからな」


 ヴリトラはジャバウォック達の事を考えて自分達と違い危険な場所へ行くチームの人数を多くした。これは作戦としては当たり前な考え方だが七竜将の隊員一人一人の戦力なら同じ人数にしても十分戦える。だがヴリトラは仲間達の身の安全を考えて自分達のチームよりもジャバウォック達のチームの人数を多くしたのだ。


「ヴリトラ、警察はあとどれくらいでこちらに到着するんだ?」


 ラピュスが警察が自分達のいる廃工場へ到着する予定時間を訊ねる。ヴリトラはラピュスの方を見た後に自分の腕時計をを見て時間を確認した。


「そうだな・・・此処から森の出入口まではかなりの距離があるからな。森の複雑な道のりの事も考えると・・・あと三十分は掛かるだろうな」

「そんなに掛かるのか?」

「俺達のような機械鎧兵士ならともかく、普通の人間にあの森の道は厄介だからな。それにテロリスト達が森の中に罠を仕掛けている可能性だってある。慎重に進むとなるとやっぱりそれぐらいは掛かっちまうのさ」

「三十分も掛かるなら僕達だけで全部片付いちゃうよ?」

「ま、警察が来る前に終わるっていうならその方がいいさ」


 リンドブルムの言葉にヴリトラは小さく笑いながらリンドブルムを見下ろして言った。一方でラピュスは視線を細かく動かして広場に敵の姿がないかを再確認する。警察が来るまでの間、広場が再びテロリストの手に渡ると面倒な事になるからだ。

 三人が広場の中心に集まり、背中を向け合って広場全体を見渡せるようにした。味方に背中を向けている為、背後から奇襲を受ける事も無く、自分が見ていない所も味方が警戒してるので何時何処から敵が現れてもすぐに対応できる。三人は警察が来るまでの間、広場の確保の全力を尽くすのだった。


「・・・ところでヴリトラ」

「何だよ?」


 ヴリトラの右斜め後ろに立っているリンドブルムが突如声を掛けて来た。ヴリトラは顔を動かさずに返事をする。


「このドイツ救済同盟っていうテロリスト達はどうやってこんなに沢山の武器を手に入れたんだろう?テロリストが調達できる武器の量なんてたかが知れてるでしょう?」

「・・・確かにいくらドイツ最大級のテロ組織がこれだけの武器を所持しているのは変だな・・・」


 リンドブルムの話を聞き、ヴリトラは広場の隅に並べられている大量のAK101やM37、そしてRPGやあらゆる銃器の弾薬を見る。彼等は警察から強く警戒されている組織で動きは常に監視されていた。それなのに警察に嗅ぎ付けられる事無く大量の武器を調達できるなんておかしすぎる。ヴリトラとリンドブルムはそう考えたのだ。

 ヴリトラとリンドブルム、そして二人の話を聞いていたラピュスがどうやってテロリスト達が武器を手に入れているのか考えていると、突如広場に大きな音が響き渡った。その音を聞いた三人はフッと反応し音のした方を向いて武器を構える。三人の視線の先にある広場の壁が再び大きな音が聞こえ突然壁が大きく歪んだ。それはまるで廃工場の外から何者かが壁を壊して広場に入ろうとしている様だった。壁の歪みは徐々に大きくなっていき、遂に壁に大きな穴が開く。


「何だ!?」

「もしかして、警察の人達?」

「広場は俺達が制圧したって報告されてるはずだ。それならわざわざ壁に穴を開ける必要は無いだろう。正面入口から入って来ればいいんだ」

「それじゃあ・・・」

「ああ、警察じゃないな!」


 壁の穴を見ながら大きな声で話すヴリトラとリンドブルム。二人が会話をしていると空いた大きな穴から何かが広場に入って来る。それは青と銀の二色で塗装された丸い鉄製の胴体に四本の大きな鉄の脚を付けたロボットだった。大きさはブルドーザーと同じくらいで胴体の前の方には小さな青い三つのリニアレンズが三角形になるように付いている。そしてリニアレンズのすぐ下には重機関銃が二門取り付けられていた。

 ロボットは大きな脚を動かしながらゆっくりと広場に入り、遠くで武器を構えているヴリトラ達を見つける。そして二門の重機関銃を三人に向けた瞬間に重機関銃は火を吹いた。

 突然の銃撃に驚くヴリトラ達はそれぞれ三方向に跳んで銃撃をかわしてロボットを睨みながら構え直す。ロボットは明らかにヴリトラ達に対して敵意を持っていた。


「な、何んなの、あのロボットは?」

「さぁな。だけど、俺達を攻撃して来るって事は・・・」

「テロリスト、という事だな」


 後を継ぐ様に喋るラピュスにヴリトラは頷く。リンドブルムもテロリストが厄介な物を所有している事にめんどくさそうな表情を浮かべる。

 銃撃を避けられてロボットは再び大きな脚で一歩一歩前に進んで行きヴリトラ達に近づいて行く。近づいて来るロボットにヴリトラ達は警戒心を更に強くした。


「お前等!今までよくもやってくれたな!」

「ん?・・・声が聞こえた・・・?」

「と言う事は、アイツは有人型のロボットか・・・」


 歩いて来るロボットから聞こえてくるロボットの声を聞きヴリトラとリンドブルムが少し驚いた様な顔になる。その声は廃工場の三階にいたテロリスト達のリーダーの声だった。ロボットの中は操縦席になっており、中ではリーダーが操縦かんを握りながらモニターに映るヴリトラ達を睨んでいる。


「お前等のおかげで俺のアジトは滅茶苦茶だ。その落とし前、お前等の命でつけてもらうぞ!」

「俺の、て事はお前がテロリストのリーダーなのか?」

「答える義理があるのかよ!?」

「・・・いや、無いね」


 感情的なリーダーと違い冷静な態度で返事をするヴリトラ。そんな彼の余裕な態度を見てリーダーは更に熱くなり操縦かんを強く握る。どうやらヴリトラの態度が癇に障ったようだ。


「傭兵風情だ、ナメるのもいい加減にしやがれぇ!」


 モニターに映るヴリトラに向かって怒鳴りながら操縦かんのスイッチを押すリーダー。すると再び重機関銃が火を吹いて無数の弾丸を吐き出した。ヴリトラはその場を動かずに森羅で飛んで来る弾丸を全て弾き落す。その隙にラピュスとリンドブルムはロボットの側面へ回り込んでロボットを攻撃した。

 ロボットの右側から近づいたラピュスはアゾットでロボットの前足に袈裟切りを放ち攻撃する。アゾットの刃がロボットの装甲に切傷を付け、そこから僅かに火花がバチバチと飛び出る。ラピュスの存在に気付いたロボットは前足を横に振ってラピュスに反撃するがラピュスは大きく後ろに跳んで攻撃を軽々とかわす。

 反対側ではリンドブルムがライトソドムとダークゴモラを交互に撃ってロボットの胴体に攻撃している。だが普通に撃ってもロボットの装甲には傷が付くだけで決定的なダメージを負わせる事はできていない。リンドブルムは銃撃をやめ、走ってロボットの背後に回り込みながら弱点を探した。


「こんな物まで用意していたなんて、一体何処からこんなロボットを・・・・・・んん?」


 ロボットの背後に回り込んだリンドブルムがロボットの背中にアルファベットのWとDが重なっているマークがペイントされているのを見つける。そしてそのマークを見たリンドブルムは大きく目を見開いた。


「あのマーク・・・『ワールド・ディフェンス社』のマークだ!」


 マークを見て会社の名前を口にするリンドブルム。離れた所でリンドブルムの言葉を聞いたヴリトラとラピュスもピクリと反応した。

 ワールド・デュフェンス社。ドイツ最大手の兵器会社であらゆる武器や兵器を製作している大企業である。ドイツの警察や民間警備会社に武器を提供しており警察からも信頼されている為、多くの契約相手がいるのだ。

 ドイツでも政府に協力的な兵器会社がテロリストにまで兵器を提供しているという事実を知ったヴリトラは鋭い目で目の前のロボットを見つめる。


「おいおい、ドイツでも最高の兵器会社がテロリストと繋がってるなんて、こりゃとんでもないビッグニュースだぞ。こんな事が知れ渡ったらマスコミも黙っちゃいないな・・・」


 とんでもない事実を知ったヴリトラがロボットを見つめていると彼の耳の小型通信機からコール音が鳴り、ヴリトラは素早く応答する。


「こちらリンドブルム。ヴリトラ、このロボット・・・」

「ああ、聞こえたよ。ワールド・ディフェンス社だろう?まさかあの有名な会社が裏では犯罪グループに武器を売っていたとはな。これならテロリストが多くの武器を調達できるのも納得だ」

「どうするの?」

「どうするもこうするも、ワールド・デュフェンス社の事はあとにして、まずはこのロボットを片づけるぞ?」

「分かった」

「俺とラピュスがコイツの動きを封じる。お前は隙を突いてレールガンで胴体の中心を撃ち抜いてくれ」

「了解!」

「ティアマットもそれでいいな?」

「ああ!」


 ヴリトラが小型通信機を使ってラピュスに問いかけるとラピュスの力の入った返事が聞こえてきた。

 指示を出し終えたヴリトラは小型通信機のスイッチを切り、森羅を両手で握りロボットを睨む。ラピュスとリンドブルムも離れた所でロボットを睨んでいた。


「さて、行くぞ!」


 森羅を強く握ったヴリトラは下半身に力を入れ、もの凄い勢いでロボットに向かって走り出した。そんなヴリトラをロボットの目のリニアレンズが見つめている。

 一階広場を制圧した直後、テロリストのリーダーがロボットに乗ってヴリトラ達に襲い掛かってくる。そしてそのロボットはドイツでも最大手の警備会社がテロリストに与えた物。戦いがヒートアップする中、兵器会社の裏の顔が明らかになろうとしていた。


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