表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十四章~竜達の帰還~
250/333

第二百四十八話  爆戦! 七竜将の快進撃


 いよいよテロリストの制圧作戦が始まった。ヴリトラとラピュスが先陣を切り正面入口前を見張っている敵達を次々に倒していく。そこへジャバウォック達も合流し、ラランも崖の上から援護狙撃をする。合流した事で戦力が増したヴリトラ達は一気に制圧する為にテロリストのアジトへ走り出すのだった。

 正面入口前の遮蔽物に隠れているテロリスト達がAK101を撃ってヴリトラ達を迎え撃つ。だが正面からの銃撃がヴリトラ達に当たるはずも無く全て超振動の武器で弾かれたり回避されてしまう。銃撃を凌ぎながらヴリトラ達は距離を縮めていきテロリスト達に反撃する。


「・・・たくぅ、なんて数なんだっ!」


 ニーズヘッグは周りにいるテロリストの数を見て面倒そうな顔をしながらアスカロンを鞭状にし離れた所にいるテロリストをAK101ごと斬り捨てる。そのまま腕を大きく横に振り、自分を取り囲む様に立っている五人のテロリストをまとめて倒した。テロリスト達はニーズヘッグの攻撃に驚きの表情を浮かべながら後ろへ下がる。


「な、何なんだよ、あの変な剣は?」

「もしかしてあれが蛇腹剣ってやつじゃねぇのか?遠くにいる敵も斬る事ができるっている・・・」

「バ、バカな!どうして傭兵なんかがそんな物騒な武器を持ってるんだよ!?」

「俺が知るか!」


 蛇腹剣を始めてみたテロリスト達は動揺し戦いどころではなくなっていた。そんな隙だらけのテロリスト達にオロチが斬月を頭上で振り回しながら向かって行く。

 オロチの存在に気付いた三人のテロリストが応戦しようとするがもう手遅れ、オロチが振り回す斬月の刃の餌食となり三人はその場に倒れた。オロチは斬月を回すのをやめて倒れているテロリスト達を冷たい目で見つめる。


「戦場で冷静さを失った者は死ぬ。どんな敵を前にしても取り乱さないようにしろ・・・」

 

 既に死んでいるテロリスト達にオロチは低い声で忠告をする。そんなオロチに数m離れた所にある見張り台からテロリストが銃撃して来た。だがオロチはまるで見えているかの様に死んだテロリスト達を見下ろしたまま斬月も刃で銃撃を防ぐ。そんなオロチを見て見張り台のテロリストは驚きのあまり言葉を失う。

 オロチはフッと見張り台の上のテロリストを睨むと斬月を片手に持ち見張り台に向かって勢いよく投げつける。斬月は回転しながらテロリストに向かって行き、テロリストは逃げる間もなく斬月に斬られた。見張り台も粉々になり、斬月はブーメランの様にオロチの手の中に戻る。

 周囲に素早く見回したオロチは両足のジェットブースターを使って高く飛び上がった。そしてテロリスト達を見渡せる位置まで上昇すると廃工場の二階から地上にいるヴリトラ達を狙っている三人のテロリストを見つけ、両足の機械鎧から三連式マイクロ弾を発射しテロリストを攻撃する。テロリスト達がオロチの存在に気付いた時は既にマイクロ弾は彼等の2m手前まで近づいて来ており、テロリスト達は撃ち落とす事もできずにマイクロ弾を受けた。

 マイクロ弾の爆発に地上で戦っていたヴリトラ達やテロリスト達は一斉に廃工場の二階を見上げる。ヴリトラ達は空を飛んでいるオロチを見て何をしたのか理解し小さく笑う。


「いきなり派手なのぶち込んでくれるな、オロチの奴」

「ああ、だがもう少し控えて攻撃してもらいたいぜ。あまり派手にやると工場が壊れちまう」


 オロチを見上げながら話し合うヴリトラとジャバウォック。そこへAK101を持ったテロリスト二人とソードオフされているショットガンの「イサカM37」を持ったテロリスト二人の計四人がやって来てヴリトラとジャバウォックに銃口を向ける。それを見た二人は素早く移動してテロリスト達の側面へ回り込んだ。ヴリトラは左、ジャバウォックは右に移動して四人のテロリストを挟む。

 驚いたテロリスト達は二人に銃器を向けるがヴリトラとジャバウォックは撃たれる前にテロリスト達を全員斬った。斬られたテロリスト達はその場に崩れるように倒れて動かなくなる。


「コイツ等、ショットガンまで持ってやがったのか・・・」

「こりゃあもしかすると工場内にはもっと凄い武器とかがあるかもしれねぇな」


 テロリスト達の武装を見てヴリトラとジャバウォックはテロリストが様々な武器を持っていると考えて鋭い目をする。そんな二人を廃工場の渡り廊下の上からRPGで狙っているテロリストの姿があった。


「化け物どもめ・・・コイツで粉々にしてやる!」


 固定サイトから二人を狙い引き金をゆっくりと引こうとするテロリスト。だがそんなテロリストを崖の上にいるラランがSR9で狙いを付けている。ラランは深呼吸してリラックスするとテロリストではなくRPGの弾頭に照準を付けてグリップを握り直した。

 

「・・・ドカーン」


 そう呟いたラランはSR9の引き金を引く。銃口から吐き出された弾丸は真っ直ぐテロリストの持つRPGの弾頭目掛けて飛んで行き、弾頭のど真ん中に命中する。その瞬間、弾頭は爆発してテロリストを吹き飛ばす。テロリストは何が起きたのか理解する事も無く渡り廊下から地上へ真っ逆さまに落ちた。

 再び聞こえてきた爆音に今度はラピュスとジルニトラが反応して爆発の起きた渡り廊下を見上げる。二人は遮蔽物に隠れてテロリストの銃撃を凌いでいた。敵の数は四人で全員がAK101を装備している。

 ジルニトラは遮蔽物の陰から顔を出し、チラッとテロリストの様子を窺う。人数と装備を確認すると余裕の表情を浮かべて顔を引っ込めた。


「大した事無いわね。グレネードランチャーでまとめて吹き飛ばしてやるわ」

「待て、グレネードランチャーの弾数には限りがある。何か遭った時の備えて取っておいた方がいい」

「そう?・・・なら普通にサクリファイスを撃って倒しましょうか」

「いや、此処は私が対処する」


 ラピュスがアゾットを握って遮蔽物の陰から飛び出そうとすると突如ジルニトラがラピュスの腕を掴んでそれを止めた。


「とととっ・・・何だ?」

「そうアンタばっかりに動いて見せ場を取られちゃうのも納得できないわ。やっぱりあたしが行く」

「み、見せ場って・・・何を呑気な事を言っている?」

「いいからあたしに任せて」


 そう言ってジルニトラはラピュスを座らせてサクリファイスを握り再び遮蔽物から顔を出して敵の位置と様子を確認した。するとジルニトラはチラッとラピュスの方を向いて小さく笑い出す。


「アンタはヴリトラと一緒に先陣を切ってくれたんだもの。大変だったんだから少しは休みなさい?」

「いや、私は別に大変だったなどとは・・・」

「そうやってあんまり自分に厳しくしない方がいいわよ。前にヴリトラが言ってたでしょう?『少しぐらい仲間に甘えてもバチは当たらない』ってね♪」


 最後にニッと笑うジルニトラは遮蔽物から飛び出して走り出す。そんなジルニトラの姿を見て最初は少し驚いた顔をしていたラピュスだったがすぐに微笑を浮かべてジルニトラの姿を見つめていた。

 飛び出したジルニトラはジグザグに走りながら銃撃を回避していきテロリスト達に近づいて行く。そしてテロリストの4m程前までやって来ると高くジャンプする。右手にサクリファイスを持ち空いている左手を顔の前まで持ってくると左手の甲の装甲が動き、中からリニアレンズが姿を見せた。そしてジルニトラがリニアレンズをテロリスト達に向けた瞬間に赤いレーザーが放たれ、ジルニトラは左腕を大きく横に振る。レーザーはテロリスト四人の体を真っ二つにしてあっという間にテロリスト達を倒した。

 レーザーが消え、地上に下り立ったジルニトラはサクリファイスを構え直して周囲を警戒する。それを見たラピュスももう出ても大丈夫だと判断しジルニトラの下へ向かい合流した。ラピュスはアゾットを構えながらジルニトラに背を向けて彼女の背後を守る様に周囲を見回す。


「大丈夫か?」

「当然、あたしを誰だと思ってるの?」

「・・・ハァ、もう少し慎重に行動したらどうだ?お前は七竜将の衛生兵なのだからできるだけ前線には出ないようにしてくれ」

「ハイハイ。それにしても最近のアンタ、何だか母親みたいに感じがするわね?」

「母親?」

「ええ、やんちゃな子供に振り回されてそれを注意する母親みたいな・・・」


 笑いながら言うジルニトラを見てラピュスは照れているのか目を逸らしながら頬を赤くする。そんなやり取りをしているとまた新しいテロリストが大勢現れ、二人は気持ちを切り替えてテロリスト達の方を向く。


「今度は随分大勢出て来たわね・・・」

「ジルニトラ、今度は私も一緒に戦う。さっきも言ったようにもう少し慎重に動けよ?」

「分かってるわよ。そっちこそ無茶しないでね?」

「ああ」


 お互いに相手の心配をし合うラピュスとジルニトラ。そんな二人にテロリスト達はAK101とM37を構える。二人は話を済ませるとテロリスト達を睨み、同時にテロリスト達に向かって走り出す。テロリスト達は突っ込んでくるラピュスとジルニトラに驚きながら銃器を撃って応戦した。

 ヴリトラ達の攻撃は激しくテロリスト達はまるで歯が立たず、僅か六人の機械鎧兵士達によって正面入口前のテロリスト達が全滅したのはヴリトラとラピュスがジャバウォック達と合流してから十五分後の事だった。

 その頃、テロリスト達のアジトである廃工場の中は慌ただしくなっていた。一階の工場内の広場では大勢のテロリストが武器を持って走り回っており、武器や弾薬のチェック、そして工場内に停めてあるブルドーザーやジープのエンジンを掛けている姿がある。全員が外の状況を知って七竜将を迎え撃つ為の準備をしていたのだ。


「急げ!奴等が来る前に準備を終わらせるんだ!」

「そっちの武器は奥へ運べ!準備が終った奴から順番に持ち場に付け!」


 テロリスト達が仲間に指示を出して少しずつ戦いの準備を進めていった。彼等の顔には緊張と恐怖が宿っており、廃工場の中で冷静な者は一人もいない。それもそのはずだ、今自分達のアジトを攻めて来ているのは噂の七竜将なのだから。

 廃工場の三階にある個室、そこには大きなソファーに座っている若い男とAK101を持つテロリストと二人の姿がある。どうやらソファーに座っている男がテロリスト達のリーダーのようだ。


「クソォ、何でよりにもよって七竜将が・・・」


 リーダーはソファーから立ちあがって窓から外の様子を窺う。正面入口前の方からは煙が上がり、激しい戦闘が起こっているのを物語っている。それを見たリーダーは緊迫した表情を浮かべて歯を噛みしめた。すると部屋に一人のテロリストが飛び込んでくる。リーダーと近くにいる二人のテロリストがフッと部屋に入って来てテロリストの方を向く。


「リーダー!外で戦っていた連中の一人が戻って来た。もう殆どやられちまって、このままじゃ七竜将の連中がアジトにに入って来ちまうって!」

「何だと!?」


 報告を聞いたリーダーは驚きのあまり声を上げ、一緒にいたテロリスト達も驚きの顔を見せる。


「どうするんだ?このままじゃ俺達、皆やられちまうよ・・・」

「何をビビってるんだ!数ならこっちの方が有利なんだ。奴等が工場に入って来る前に準備を終わらせろ。そして入って来たところを四方から叩け!」

「あ、ああ・・・」

「それから脱出の準備も忘れるな?きっと奴等の背後にはサツがいるはずだ。奴等を倒した後にすぐに脱出できるようにしておけ」

「わ、分かった!」


 指示を聞いたテロリストは部屋を出て仲間達下へ向かう。リーダーは苛立った顔で再び窓から正面入口の方を見つめる。ドイツでも一二を争う程の力を持つ自分の組織が数人の傭兵によって窮地に追いやられているのだから苛立つのも無理はなかった。

 リーダーが歯を噛みしめながら外を見ていると後ろに控えていたテロリストの一人が声を掛けて来た。


「なぁ、リーダー、何で脱出の準備までする必要があるんだ?もしあの七竜将を倒す事ができるのならもう俺達に敵は無いって事だろう?それならそのまま警察も叩き潰しちまえば・・・」

「バカかお前はっ!」


 振り返りながらテロリストを怒鳴り付けるリーダー。二人のテロリストは突然の怒鳴り声にビクッと驚き後ろに下がった。

 リーダーはテロリスト達の方を向くと鋭い目で二人を睨みながら窓の外を指差す。


「奴等を倒せてもその時の俺達は多くの戦力を失っちまってるんだぞ?サツが此処に来て俺達を逮捕しようとしているという情報が入ってる、つまり七竜将の背後にはとんでもねぇ数の警官や特殊部隊がいるはずだ。七竜将と戦って戦力が減っている状態でサツとり合って見ろ、俺達は間違いなく負ける!それなら七竜将を倒して奴等が来る前に脱出した方が得策だろうが!?」

「た、確かに・・・」

「とにかく、今はアジトに侵入した七竜将の連中を叩き潰す事だけ考えろ。その後の事は脱出してから考える・・・」

「「ハ、ハイ!」」


 テロリスト達は再び窓から外を眺めるリーダーの後ろ姿を見て返事をする。今アジトがどんな状況でどれ程の被害が出ているのか全く情報が掴めていない。そんな混乱の中、テロリスト達は自分達が今戦っている敵の事だけしか考えられない状態にあった。それが今の彼等にできる精一杯の事なのだろう。

 リーダー達が三階の個室で話をしている事、一階の広場ではテロリスト達が順調に準備を進めていた。だが既に正面入口前の守りからの連絡が取れなくなっており、テロリスト達に更なる緊張が広がっていた。


「おい、そっちの準備は終わったか?」

「ああ、弾薬も運び終わった。あとは武器を持っていない奴等に配るだけだ」

「こっちも準備はもう少しで終わる。これなら奴等が入って来る前に準備が整いそうだ」


 武器のチェックや車両の整備をしながら状況を確認し合うテロリスト達。既に武器を持ったテロリスト達は正面入口の扉の前にバリケードを張り、遮蔽物の陰に隠れながら扉を見つめ、いつでもヴリトラ達が入って来てもすぐに攻撃できるよう臨戦態勢に入っていた。だがそれでも人数は十人弱、ヴリトラ達と対等に戦うには戦力が少なすぎる。テロリスト達は作業の速度を更に上げ、急いで準備を続けた。

 一階広場の中央でテロリスト達が戦いの準備をしている中、広場の一番奥にある司令室の様な部屋ではAK101を持ったテロリスト二人の姿があり、コンピューターを操作して何らかの作業をしている姿がある。一人がコンピューターのモニターを見ながらキーボードの様な物を使ってコンピューターを操作し、もう一人がAK101を持って周囲を見回していた。コンピューターのモニターには廃工場の色んな場所が映し出されており、その中には正面入口前の映像がある。どうやらモニターに映っているのは廃工場中に設置されている監視カメラの映像のようだ。


「おいおい、マジかよ・・・」

「どうした?」


 モニターを見て驚きの表情を浮かべているテロリストにもう一人が話し掛ける。もう一人がモニターに映っている映像を見ると、正面入口前の映像が映し出されており、その中で自分の仲間達を殆ど倒し入口の扉の前に立つヴリトラ達の姿が映っている。

 正面入口が完全に制圧されたのを知った二人のテロリストは青ざめてモニターから顔を離した。


「バ、バカな・・・正面の守りが全滅・・・?」

「ありえねぇよ!奴等が攻めて来てからまだ三十分ぐらいしか経ってねぇんだぞ!?」

「このままじゃ侵入されちまう!急いで皆にこの事を・・・」


 テロリスト達が司令室を出て仲間達に正面入口前の状況を伝えようとしたその時、突如二人の後ろにある壁が破壊され、二人のテロリストはコンピューターに叩きつけられそのまま気を失う。

 広場にいたテロリスト全員が司令室からの大きな音に気付いて一斉に司令室の方を向く。壁に開けられた穴から二人の人物が司令室の中に入り、そのまま司令室の外へ出て広場に出る。廃工場内に侵入した二人組はライトソドムとダークゴモラを握るリンドブルムとギガントパレードを担いだファフニールだった。

 リンドブルムとファフニールは広場に出ると周りにいる敵の事を気にせずに工場内を見回して状況を確認する。二人には緊張は見られず、余裕の表情を浮かべていた。


「おっ?いきなり広い所に出たね」

「でも周りには沢山の敵がいるけど・・・壊す壁を間違えちゃったかな?」

「いいんじゃない?どうせ中には行っちゃえば敵と戦う事になるんだからさ」

「まぁそれもそうだね」


 敵を前にして呑気に会話をする二人。テロリスト達は突然現れて二人の子供に最初は戸惑いを見せるが二人の姿を見てすぐに七竜将と関係ある物と気付いて銃口を向ける。


「このガキ共も七竜将の仲間か。裏から壁を破って来るなんてナメた事を!」

「おい、本当にこの二人も七竜将の仲間なのか?只のガキにしか見えねぇが・・・」

「バカ野郎!あんなバカデカイハンマーを担いでいる奴が只のガキ名訳ねぇだろうが。それに七竜将のメンバーには二人のガキがいる、間違いなくコイツ等だ!」


 AK101を持つ一人のテロリストがギガントパレードを担いでいるファフニールを睨みながら隣にいる仲間に七竜将の隊員の情報を話す。周りにいるテロリスト達も二人の会話を聞いてリンドブルムとファフニールを七竜将の隊員と判断し警戒しながら銃を構えた。

 周りにいるテロリスト達が自分達に銃口を向けているのを見たリンドブルムとファフニールはチラッと隣にいる相手を見ると素早く左右に別れて走り出す。リンドブルムは左へ、ファフニールは右へ走り出しテロリスト達は二人に向かって一斉に銃撃を開始した。

 リンドブルムは銃弾が飛び交う中を全力で走り、目の前にある大きな木箱の陰に飛び込む。素早く態勢を直すとライトソドムとダークゴモラを強く握り、木箱の陰から出て反撃する。リンドブルムは自分を狙っている八人のテロリストの内、二人を倒し再び木箱の陰に隠れて反撃の隙を窺う。その間、リンドブルムは敵の位置を確認してどのタイミングで攻撃すればいいのかを分析した。


「・・・今僕の近くにいる敵は七人、そのその内五人がAK101を持って、残りの二人はM37のショットガンを持っている・・・ショットガン持ちに接近されると面倒だから先にそっちを片づけちゃおう!」


 次にどう動くかを考えたリンドブルムは木箱の陰から飛び出して再び走りだす。姿を見せたリンドブルムをテロリスト達は再び銃撃、だがリンドブルムは体を反らしたりジャンプしたりなどして銃撃を軽々とかわしていく。そして隙ができればM37を持っているテロリストを銃撃して倒していく。

 目の前の小さな少年の強さに大の大人達は完全に動揺し、リンドブルムが恐ろしくなったのは静かに後退していった。するとテロリスト達の背後から突如爆発が起き、全員が爆発の起きた方角を向く。

 爆発は広場の隅に置かれていた液体燃料の入ったドラム缶から起きたものでその近くには倒れて動かなくなっているテロリストの姿がある。そしてそのすぐ隣にはギガントパレードを両手でしっかりと握りながら構えているファフニールの姿があった。そんなファフニールをAK101を持つテロリスト六人が取り囲んでいる。


「クッソォ、何てガキなんだ!」

「あんなデカいハンマーを軽々と・・・」

「七竜将って言うのは化け物の寄せ集めなのかよ・・・」

「・・・失礼ね!私達は化け物じゃないわよ!」


 自分達を化け物扱いするテロリスト達を睨みつけるファフニールはギガントパレードを振り上げて勢いよく地面を叩く。すると廃工場内が揺れて広場内のテロリスト達がその震動で一斉にふらつく。その隙を突いたファフニールが自分を取り囲んでいる六人とテロリスト達をギガントパレードの大きな頭で殴打する。殴られたテロリスト達は大きく飛ばされて廃工場の壁に叩きつけられそのまま動かなくなった。


「よし、次!」


 目の前の敵を倒したファフニールは次の敵を倒す為に移動を開始する。そしてすぐに自分に向けて銃口を狙っているテロリスト達を見つけると彼等の方に向かって走り出す。

 走って来るファフニールを見てテロリスト達は銃を乱射して応戦するがファフニールの振り回すギガントパレードによって弾丸を全て弾き落されてしまいファフニールに傷を負わせる事はできない。


「あ、あんなデカいハンマーを振り回して走るなんて・・・」

「本当に化け物じゃねぇか・・・」


 銃を撃つテロリスト達の中にはファフニールのパワーを見て弱気になる者も出て来る。中には銃を捨ててその場から逃げ出す者もいた。そんな仲間を見て銃を撃っていたテロリスト達も徐々に後退していく。


「おい、お前等!逃げんじゃねぇよ!こっちの方が数は上なんだ、一斉に攻撃すれば・・・」


 一人のテロリストが逃げ出す仲間を止めようと声を上げた。そんな彼の前に左手にギガントパレードを持つファフニールがやって来てそのテロリストをジッと見つめる。突然目の前にやって来てファフニールにテロリストは驚き、持っているAK101の銃口を向ける。だがファフニールはそんなAK101の銃身を右手の掴みグニャリと曲げた。


「ヒイィ!」

「・・・撃つの、やめてくれる?」

「・・・・・・ハイ」


 ニッコリと笑いながらテロリストに警告するファフニール。テロリストはファフニールの笑顔を見て背筋を凍らせてその場に座り込み戦意を無くす。

 銃身の曲がったAK101を捨てたファフニールは遠くにいる敵を見てギガントパレードを構え直した。すると、正面入口の扉が突然爆発し、テロリスト達は一斉に扉の方を向く。そして外から侵入して来たヴリトラ達の姿を見た。


「あっ、ヴリトラァ~!」

「・・・おぉ、何だよ?お前達はもう入ってたのか」


 廃工場に入って来たヴリトラ達を見てファフニールは手を振り、リンドブルムは小さく笑ってヴリトラ達を見ていた。ヴリトラも二人の姿を見て無事なのを確認し笑いながら手を振った。

 笑って手を振るヴリトラの隣ではラピュスが周りにいる大勢のテロリスト達を見て目を鋭くする。

 

「ヴリトラ、再会の挨拶はそれぐらいにしてさっさと敵を倒した方がいいんじゃないか?」

「・・・ああ、分かってる。ざっとみて三十人はいそうだな・・・ならちゃっちゃと片づけてGSG9を呼ぶとしよう」


 ヴリトラが森羅を構えてテロリスト達を見つめるとラピュス達も一斉に自分達の武器を構える。テロリスト達はヴリトラ達の侵入を許した上に挟まれて逃げ場をなくしてしまった事で完全に冷静さを失ってしまった。今の彼等は何をしでかすか分からない状態になっている。そんなテロリスト達を見てヴリトラの目が鋭くなる。


「敵が冷静さを失った。何をして来るか分からない以上、絶対に気を抜くなよ!」


 周りにいるラピュス達に警告するヴリトラを見てラピュス達も鋭い表情で頷く。そして一同は敵に向かって一斉に走り出した。

 アジトに突入し一気にテロリスト達を追い詰めたヴリトラ達。だが敵のアジトである廃工場にどんな仕掛けがあるのか分からない以上、油断はできない。ヴリトラ達はより警戒心を強くし敵に突っ込む。制圧作戦はまだ始まったばかりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ