第二百四十七話 始まった制圧作戦 竜達の剣の舞
遂にテロリスト制圧作戦が始まり、七竜将が敵の戦力を削る為に先陣を切る。ヴリトラの考えた無茶な作戦にラピュス達は苦い顔を見せるが彼の考える無茶苦茶な作戦に既に慣れているラピュス達は文句を言う事無く作戦に移った。
倉庫の陰から飛び出したヴリトラとラピュスは積まれている木箱の山や自動車の陰に隠れながら少しずつ廃工場の正面に回り込んでいく。その間、何人もの敵を見掛けたが二人にとっては何の問題もなかった。
ヴリトラとラピュスは廃工場の正面入口から100m程離れた所に停まっているトラックの陰から顔を出し正面入口の様子を窺う。正面入口前には三人のテロリストの姿ありAK101を持って周囲を見回している姿があった。ヴリトラはそれを見て目を鋭くする。
「入口前に三人、その両側に機銃が二つとテロリストが二人ずつ、合計五人か・・・」
「どうする?」
「ジャバウォック達もすぐにこっちに来るはずだから外にいる奴等を倒した後に全員で工場内へ突入する。それまでは俺達で敵の相手をしてやろうぜ」
「了解した」
「じゃあ、早速行きますか!」
そう言ってヴリトラはトラックの陰から飛び出して正面入口の前まで走る。ラピュスは「やれやれ」と言いたそうな顔でその後を追った。
入口前に立っていたテロリスト達が周囲を見張っていると遠くに立っているヴリトラとラピュスの姿を見つけて一斉に目を鋭くして二人を見つめる。服装からして自分達の仲間ではない事がすぐに分かった。
「・・・おい、何だあの二人は?」
「俺達の仲間じゃねぇ事は間違いないな」
「しかも二人ともまだガキだぞ。しかも一人は女だ」
「へぇ?結構いい女じゃねぇか・・・どうする?」
「此処に来たって事は只のガキじゃねぇな。とりあえず捕まえろ。ゆっくりと話を聞く事にしようぜ」
「そうだな、警察の回し者って可能性もある。このまま帰す訳にもいかねぇ、と言うかこの場所を知った奴を帰すつもりもねぇがな?」
「ならよぉ、男の方は情報を得た後に殺すとして、女の方は生かしておこうぜ?色々楽しめそうだしよぉ?」
「・・・勝手にしろ」
正面入口を警備している三人のテロリストがヴリトラとラピュスをどうするか話し合いをし両脇で控えている四人のテロリストに合図を送る。「もしおかしな真似をしたら撃ち殺せ」、と伝えたのかその合図を見てテロリスト達は頷き機銃を握りヴリトラとラピュスを狙う。
機銃が二人に向けられたのを確認した三人のテロリストはヴリトラとラピュスの方へ歩いて行く。二人は近づいて来るテロリストをジッと見つめているだけで動こうとしない。するとテロリストの一人が歩きながらAK101を二人に向けた。
「おい!お前等、何モンだ?警察に雇われた傭兵か?」
「・・・・・・」
テロリストの質問にヴリトラは何も答えず黙っている。
「動くなよ?少しでも動いたら蜂の巣にするぞ!」
銃口を二人に向けながら徐々に距離を縮めて行くテロリスト達。ヴリトラとラピュスは近づいて来るテロリスト達を見ても顔色一つ変えずにジッとし続けたままだった。
ヴリトラは視線だけを動かして近づいて来るテロリスト達や自分達を狙っている機銃の位置を確認しこの後どう動くかを計算していく。やがてテロリスト達は二人の前にやって来てAK101を突きつける。
「お前等、どうして此処に来た?一体何の用だ?」
「う~ん・・・道に迷ったって言えば、信じてくれる?」
ヴリトラがニッと笑いながら訊き返すとテロリストの一人がヴリトラを睨みながらAK101の銃口を彼の顔に近づける。
「信じられねぇな。と言うか、そう言った時点で此処が何処だか分かってて来たと言ってる様なもんだぞ」
「ハハハ、やっぱそう考えるよなぁ」
「ふざけるな!」
ヘラヘラとするヴリトラを見てテロリストは銃口をヴリトラの頬に押し付ける。押し付けられている銃口を見たヴリトラは笑うのをやめてジッとAK101を見つめながら黙り込む。
「お前等が何モンかなんてどうでもいい。どの道此処を見られた以上、お前達をこのまま帰す訳にはいかねぇんだからな」
「・・・あらそう。そりゃあ残念だ」
自分を睨むテロリストの方を見ながらヴリトラは静かに呟く。そんな中、AK101を押し付けているテロリストの隣に立っている別のテロリストはヴリトラの顔と彼の左腕を見て真剣な顔で見せた。
(・・・コイツの顔、何処かで見た様な・・・それにコイツの左腕、随分とゴツイ義手だな・・・)
ヴリトラが七竜将のメンバーである事に気付いていないテロリストは黙ったまま難しい顔を見せる。勿論、難しい顔をして考え込んでいても彼への警戒は解いていなかった。
二人のテロリストがヴリトラを尋問しているともう一人のテロリストはヴリトラの隣で黙っているラピュスをニヤニヤと笑いながら眺めている。だがラピュスはテロリストの厭らしい視線を気にする事無く黙って前を向いていた。
「へっへぇ~、こっちは随分と可愛らしい姉ちゃんだな。どうしてアンタがこんな所に来てるんだよ?」
「・・・・・・」
「ハハハ、怖くて声も出ねぇか?」
(フン、何を勘違いしている?私はお前の様な下賤な男と会話をしたくないだけだ・・・)
心の中でテロリストを嫌悪するラピュス。それは勿論テロリストが怖いからではない。彼等の態度があまりにも不愉快なものだからだ。こっちの世界に来てからラピュスは多くのテロリストや犯罪者を目にしてきた。その為、彼等がどんな事を考えて犯罪を犯しているのかがよく分かる。正義感の強い姫騎士である彼女にとっては忌み嫌う存在と言えるだろう。
黙り込んでいるラピュスをジロジロ見ながらテロリストは持っているAK101の使い彼女の髪を触る。これにはラピュスもカチンと来たのかキッとテロリストを睨んだ。
「おぉ~怖い怖い、そんな顔すんなよ。俺達はアンタの様な気の強い女が好みなんだ・・・どうだ、俺達の仲間にならねぇか?毎日可愛がってやるぜ?」
そう言いながらテロリストはラピュスに左手を伸ばし彼女の肩を掴もうとする。だが次の瞬間、ラピュスの右手がテロリストの左手首をガッシリと掴んで止めた。
「・・・汚い手で私に触るな」
テロリストを睨みつけながら低い声を出すラピュスは右手に力を入れる。ラピュスの機械鎧の右手がテロリストの手首を強く握りミシミシと音を立てた。
「うがっ、うわあああああぁっ!手が、手が千切れるぅーー!」
手首から伝わる激痛にテロリストは右手に持っているAK101を落し、空いた右手でラピュスの右手を離そうとする。だが人間の力程度で機械鎧の手を離す事などできやしない。
仲間が叫び声を聞いて二人のテロリストが驚きの顔で彼の方を向く。
「ど、どうした!?」
「・・・あ~あ、ティアマットを怒らせちまったか・・・」
あまりの痛みに涙目になっているテロリストを気の毒そうに見つめるヴリトラ。残りのテロリスト二人はヴリトラにAK101を向けて再びヴリトラを睨みつける。
「お、お前等!一体何のつもりだ!?すぐに手を離せ!」
「それは俺じゃなくて彼女に言ってくれ。と言うか、ティアマットを怒らせてソイツの自業自得だろう?」
「テ、テメェ!」
ふざけた態度を取るヴリトラにテロリストは銃口をヴリトラの顔に向けて引き金を引こうとする。すると、さっきヴリトラの顔と左腕の機械鎧に見覚えがあったテロリストがハッとした顔でヴリトラを見つめた。そして驚きの顔をしながら一歩後ろに下がってAK101を構え直す。
「お、おい!ソイツ等から離れろ!」
「あ?何だよいきなり?」
「ソ、ソイツ等は七人の機械鎧兵士で構成された傭兵部隊、七竜将だ!」
「・・・・・・はぁ!?」
七竜将の名を聞いた途端、AK101を構えていたテロリストとラピュスに手首を掴まれているテロリストは二人の顔を見て驚愕の顔を浮かべる。彼等もテロリストである為、世界中で名を轟かせている七竜将の事は勿論知っていた。当然その実力も。
「マ、マジかよ・・・本当にコイツ等があの七竜将なのか?」
「ああ、その男の顔と左腕の義手、何処かで見覚えがあると思ったんだ。まさかあの七竜将だなんて・・・」
驚きを隠せない三人のテロリストを見てラピュスは掴んでいたテロリストの手首を離す。もの凄い力握られた為、テロリストの手首は内出血を起こして真っ赤になっている。テロリストは座り込みながら後ろに下がり距離を取った。
ヴリトラとラピュスはそんな驚く三人を黙って見つめていたが、ヴリトラがその沈黙を破る様に口を動かし右手で森羅を握る。
「・・・気付くのが遅すぎるぜ?あと・・・」
テロリスト達に小さな声で話し掛けるヴリトラは素早く森羅を鞘から抜き、目にも止まらぬ速さで森羅を連続で振る。そして森羅を振った後にゆっくりと下ろすと二人のテロリストが持っていたAK101がバラバラになってテロリスト達の足元に落ちた。あの一瞬の間にヴリトラはテロリスト達の持つアサルトライフルだけを粉々に切ったのだ。
いつの間にか自分達のアサルトライフルがバラバラになっていた事に言葉を失う二人のテロリスト。ヴリトラはそんな二人を見て再び口を動かす。
「あと・・・まだ俺の間合の中だぜ?」
そう告げた直後にヴリトラは目の前に立っているテロリストの一人を袈裟切りで斬り捨てた。斬られたテロリストは何が起きたのか理解できないまま仰向けに倒れて動かなくなる。それを見たもう一人のテロリストは腰のハンドガンを抜いてヴリトラに向かって発砲した。だが、ヴリトラは森羅で飛んで来た弾丸を弾き、撃って来たテロリストに向かって走り出す。テロリストも驚きながら連続で銃を撃ち応戦するも全て避けられたり弾かれたりなどしてヴリトラには一発も命中しない。
テロリストの前までやって来たヴリトラは森羅でハンドガンは払い飛ばし、丸腰になったテロリストに素早く斬る。斬られたテロリストはゆっくりと膝を地面に付けてそのまま俯せになり倒れた。その様子を見ていた三人目のテロリストは手首の内出血の痛みも忘れるくらい怯えた様子を見せている。そんな彼の前にアゾットを抜いたラピュスが近づきテロリストを睨みつけた。
「どうした?さっきまでと随分態度が違うぞ?」
「ヒ、ヒイィ!」
いきなり話し掛けてきたラピュスにテロリストはビクリと反応しラピュスを見上げる。そこにはさっきまでラピュスを厭らしい目で見ていたテロリストの姿は無く、ただ目の前の敵に怯えるだけの哀れな男の姿しかなかった。
ラピュスは怯えきっているテロリストにアゾットの切っ先を向ける。そんなラピュスの姿を見たテロリストはAK101を地面に置き、素早くその場で土下座をした。
「ま、待ってくれぇ!さっきは悪かった、つい魔が差して。何でもするから命だけは・・・」
「・・・見苦しいな。それでもお前は戦士か?」
「俺はボスに仲間になってドイツを解放する手伝いをすればなんでもくれてやるって言われて仲間になっただけなんだぁ。アンタ達に逆らう気なんかねぇんだよぉ!」
「・・・今更そんなウソが通用するとでも?」
「た、頼む!助けてくれぇ!」
無様に頭を下げて命乞いをするテロリストを見てラピュスは呆れ果てる。すると小さく息を吐いてテロリストの横を通過し廃工場の方へ歩き出す。
自分に何もせずに廃工場へ向かうラピュスにテロリストは彼女の背中を見つめて呆然とする。
「た、助けてくれるのか・・・?」
「お前の様な男など殺す価値も無い。さっさと失せろ、私の気が変わらないうちにな」
テロリストに背を向けたまま言い放つラピュスはそのまま歩き続ける。ラピュスとテロリストの会話を見ていたヴリトラも興味が無くなった様な顔を見せ、ラピュスと同じように廃工場へ向かって歩き出した。
すると、さっきまで命乞いをしていたテロリストは落ちているAK101を拾って二人に気付かれない様に静かに立ち上がり背を向けているヴリトラとラピュスに銃口を向ける。
(ハハハハ、とんだ甘ちゃんだぜ!こんな簡単な芝居に引っかかるなんてよぉ!テメェみたいな怪物女、こっちから願い下げだ。背中からテメェもそっちの男も蜂の巣にしてやらぁ!)
心の中でラピュスを嘲笑うテロリストはラピュスに狙いを付けて引き金に指を掛ける。そしてゆっくりと指に力を入れてAK101を撃とうとした、その時、テロリストに背を向けていたラピュスがもの凄い速さでテロリストの真正面に移動しテロリストを睨みつけた。
「・・・へ?」
何が起きたのか分からないテロリストは思わず声を漏らす。そんなテロリストにラピュスはアゾットを勢いよく横に振ってテロリストを斬り捨てる。テロリストの体は胴から真っ二つになり、上半身はゆっくりと後ろに倒れ、下半身は前へ倒れた。切り口からは大量の血が溢れ出て地面を真っ赤に染める。ラピュスは無残な姿になったテロリストをキッと睨む。
「お前の様な男は相手を油断させて背後から攻撃するという姑息な手を使うという事ぐらい想像がつく」
哀れむような目でテロリストの死体に話し掛けたラピュスは振り返り再び廃工場に向かって歩き始める。ヴリトラは自分の隣までやって来たラピュスの横顔を苦笑いで見つめた。
「・・・お前、こっちの世界で仕事をするようになってから敵に容赦しなくなったな?」
「私はちゃんと警告をした。なのにあの男は私の警告を無視しただけでなく背後から攻撃しようとして来た。だから私は反撃しただけだ」
「まぁ、正当防衛って言えば簡単だが・・・お前はファムステミリアに姫騎士なんだぞ?あまり俺達みたいになるなよ?」
「お前達みたいに?」
「騎士道に反するような事はするなって事だよ」
「安心しろ、私は騎士としての生き方に誇りを持っている。騎士の誇りを汚すような事はしない」
「それならいいけど・・・」
二人がそんな話をしていると廃工場の方から無数の弾丸が飛んで来る。フッとヴリトラとラピュスが前を見るとテロリストが正面入口前に設置されている二つの機銃を使って銃撃して来る姿が目に映った。機銃の隣では別のテロリストがAK101を撃ってくる姿もある。
ヴリトラとラピュスは冷静に森羅とアゾットを使って飛んで来る弾丸は弾きながら歩いて行く。二人の視界に入っている敵は正面入口前にいる機銃を使うテロリスト二人とその横でAK101を撃つテロリスト二人の計四人。ヴリトラは状況を分析して隣のラピュスにそっと話し掛ける。
「俺は右の機銃とテロリストを叩く。お前は左を叩いてくれ」
「分かった」
「アイツ等を片づけた後も油断するなよ?まだ見張り台や上の方から俺達を狙っているテロリストもいるからな」
「大丈夫だ。お前こそ気を抜くなよ?」
「へへっ、忠告ありがとう!」
そんな軽口を叩き合う二人は素早く分かれてそれぞれ自分が叩く機銃の方は走り出した。
テロリスト達は走って来るヴリトラとラピュスを見ると二人に向かって銃撃し弾幕を張る。ヴリトラとラピュスは銃撃を簡単に回避し当たりそうな弾丸は自分達の武器で弾くなどして無傷のまま一気に距離を縮めて行く。そして機銃が間合に入ると森羅とアゾットで機銃を破壊し、機銃を使っていたテロリストは素早く斬る。そしてすぐに隣でAK101を撃っていたテロリストも斬って倒した。
機銃を片づけて静かになった正面入口前。だが、重責を聞きつけた他のテロリスト達がAK101やRPGを持ってヴリトラとラピュスの周りに集まって来る。二人は一度合流して互いに背を向け、森羅とアゾットを構えながら敵の動きを警戒した。
「チッ、もう集まって来たか」
「どうする、ヴリトラ?パッと見ただけでも十人はいるぞ?」
「・・・仕方ない。機械鎧の内蔵武器を使ってさっさと倒しちまおう」
ヴリトラが内蔵兵器を使い敵を一掃しようと考え、内蔵兵器を使おうとした時、ヴリトラの前になっているテロリストの一人が突然倒れる。周りにいたテロリスト達はいきなり仲間が倒れた事に驚いており、ヴリトラとラピュスも少し驚きの表情を浮かべていた。テロリスト達は目を見張りながら倒れた仲間を見る。倒れたテロリストの背中に一発の銃創ができており、何者かに撃たれたのを知ったテロリスト達は驚いて周囲を見回す。
するとまた別のテロリストが銃撃を受けて倒れた。また一人仲間が撃たれた事でテロリスト達は動揺し始める。
「ヴリトラ、この銃撃は・・・」
「ああ、アイツだよ」
ヴリトラとラピュスはこの銃撃の正体に気付き小さな笑みを浮かべた。そんな話をしている間に次々と二人を取り囲むテロリスト達は倒れて行く。
正面入口から400m離れた所にある崖の上、そこから俯せになりSR9を構えているラランの姿があった。そう、先程の銃撃はラランの狙撃によるものだったのだ。静かに、そして正確に狙いを付けるラランは素早く引き金を引いてテロリスト達を狙撃し倒していく。その隣ではラランの狙撃する姿をGSG9の隊員達が驚きながら見ている姿があった。
「おいおい、マジかよ・・・」
「あんな小さな子がこれほど正確な狙撃を・・・」
「おい、また一人やったぞ」
正面入口前を観察していた隊員が状況を仲間達に伝え、他の隊員達も双眼鏡で正面入口を覗いた。そんな隊員達の事を気にもせずにラランは狙撃を続ける。
「・・・次は、渡り廊下の男」
次の目標を決めるとラランは照準をテロリストに合わせて引き金を引く。銃口から吐き出された弾丸は狙っていた渡り廊下のテロリストのこめかみに命中し、テロリストは渡り廊下から真っ逆さまに落ちた。テロリストを倒した後にラランはすぐ別のテロリストに狙いをつけて同じように狙撃する。
次々に仲間がやられていく光景を目にしたテロリスト達は完全に混乱状態になり慌てて物陰い隠れようとする。そこをヴリトラとラピュスが攻撃して一人ずつテロリスト達を倒して行った。
「クソォ、何処かに狙撃手がいやがるのか!こうなったら!」
混乱の中、一人のテロリストがこのままではマズイと感じ、正面入口の近くに停めてあるブルドーザーに乗り込んだ。エンジンを掛けてブルドーザーを走らせるとヴリトラとラピュスに向かって突っ込んで行く。
「ガキども、押し潰してやる!」
「チッ!あんな物まであったのかよ!」
エンジン音を聞いてブルドーザーに気付いたヴリトラはブルドーザーの方を向き森羅を構え、近くにいたラピュスもブルドーザーを見てアゾットをを構えた。流石にブルドーザーが相手だと機械鎧の内蔵兵器を使うしかないと考えたヴリトラとラピュスは内蔵兵器を起動させようとする。だがその時、ブルドーザーの天井に何やら人の形をした影が写る。影に気付いたヴリトラが空を見上げるとブルドーザーの真上からデュランダルを振り上げているジャバウォックが下りて来る姿が目に飛び込んで来た。
「ジャバウォック!」
「ヴリトラ、ティアマット!下がりなぁ!」
崖の上にいたジャバウォックがいつの間にか正面入口前にやって来てブルドーザーの真上に跳び上がっている。その姿を見たヴリトラとラピュスは頼もしく感じて小さく笑みを浮かべながら後ろへ跳んだ。
二人が移動したのを確認するとジャバウォックは両手に力を込め、落下しながらブルドーザーに向かってデュランダルを振り下ろした。
「くらいなぁ、デストロイクラッシュ!」
何やら技の名前らしき言葉を叫ぶジャバウォック。デュランダルの刃はブルドーザーの天井を通過して車体を上から真っ二つにした。運転していたテロリストは一瞬で真っ二つになったブルドーザーに目を丸くする。その直後、ブルドーザーはテロリストを巻き込ん大爆発を起こす。爆発する前にブルドーザーから離れたジャバウォックは爆発に巻き込まれずに済み、離れていたヴリトラとラピュスの方を向いてニッと笑う。
「よぉ、待たせたな」
「別に待ってねぇよ」
ジャバウォックを見てヴリトラもニッと嬉しそうに笑い返す。隣のラピュスも小さく笑ってジャバウォックを見ていた。
「あら、待ってなかったのならもう少しゆっくり来た方がよかったかしら?」
何処からか聞こえてくるジルニトラの声に三人は空を見上げる。空からジルニトラ、ニーズヘッグ、オロチがヴリトラのジャバウォックの間に着地してヴリトラの方を向く。予想以上に早く来てくれた仲間達を見てヴリトラはもう一度ニッと笑う。そんなヴリトラの笑みを見てジルニトラとニーズヘッグも笑い返した。オロチは相変わらず無表情のままだ。
別行動を取っていたジャバウォック達と合流したヴリトラとラピュスは正面入口の周りで遮蔽物に身を隠しているテロリスト達の方を向いてそれぞれ武器を構える。テロリスト達は自分達を見ている七竜将に思わずビクッと反応するもすぐにAK101を構えて迎撃態勢に入った。
「入口前に敵が数人、これなら二、三分で入口を制圧できるな」
「だけど敵がどれ程の戦力を持っているか分からない以上は油断するなよ?さっきのブルドーザーみたいな事があっても不思議じゃないからな」
「ああ、肝に銘じておく」
ニーズヘッグの忠告を聞いて頷きながらヴリトラは返事をした。
二人が話をしているとラピュスがアゾットを両手で強く握りテロリストを見つめて口を動かす。
「・・・よし、皆、行くぞ!」
ラピュスの合図で六人は一斉に正面入口へ向かって走り出した。テロリスト達も走って来るヴリトラ達に向かってAK101を撃ち応戦する。作戦開始から僅か二十分、ヴリトラ達は廃工場内に突入しようとしていた。
遂に始まったテロリスト制圧作戦。先陣を切り次々とテロリストを倒していくヴリトラ達。この後の戦いはどうなるのか、そしてテロリスト達はどれ程の戦力を持っているのだろうか。




