第二百四十一話 反撃の始まり! ラランが勝利の鍵!?
ニーズヘッグからケルピーの機械鎧が相手に暗示を掛ける性能があると聞かされて驚くヴリトラ達。どのようにしてケルピーと戦うか考えている中、ニーズヘッグがある作戦を説明する。その作戦が吉と出るか凶と出るか、今のヴリトラ達には全く分からなかった。
倉庫でニーズヘッグから作戦を聞いた後、ヴリトラ達はすぐに行動を開始した。あまり時間を掛けるとケルピーに有利な状況を作ってしまうと判断したからだ。ヴリトラはリンドブルム、ジャバウォック、ジルニトラ、ラランを連れて倉庫を出ると遮蔽物に隠れながらケルピーを探し始める。だがラピュスの姿は無かった。
「皆、周囲、特に見渡の良さそうなところには気を付けろ?いつケルピーが狙撃して来るか分からないからな」
コンテナの陰から顔を出して周囲を見渡しながら後ろにいるリンドブルム達に忠告をするヴリトラ。リンドブルム達は言われたとおり周囲を見回してケルピーがいないか探している。
「・・・ねぇヴリトラ、よかったの?」
「・・・ラピュスの事か?」
「うん・・・」
「仕方ないだろう?ニーズヘッグ達が巨兵機械鎧とか言う兵器に苦戦しているんだ。誰かを救援に向かわせないとニーズヘッグ達が危ない」
「でも此処は敵の施設の中なんだよ?一人で行かせるのは危険なんじゃ・・・」
「そうよ、せめてもう一人誰かが一緒に行った方がよかったんじゃない?」
リンドブルムの後ろで話を聞いてたジルニトラが意見する。実はラピュスはニーズヘッグ達の救援に向かう為にヴリトラ達と別行動を取っているのだ。ニーズヘッグから作戦を聞いた後、彼等の詳しい位置を説明してそこへ向かいニーズヘッグ達と共に巨兵機械鎧と戦う事になった。しかし、リンドブルムとジルニトラはその救援にラピュスを一人で行かせる事が納得できないでいたのだ。
不満そうな顔でヴリトラを見つめるリンドブルムとジルニトラ。するとヴリトラは二人の方を向いて静かに口を動かした。
「一人の方がいいんだよ」
「どうして?」
「一人の方が却って目立たないから敵に発見される可能性が低い。敵兵は殆ど倒しちまったから遭遇する事もないし、今のラピュスなら簡単に倒せるはずだ」
「そ、それはそうかもしれないけど・・・」
「何より、ケルピーはずっと俺達の事を監視して攻撃する機会を窺っている。もし二人以上が突然減ったら逆に怪しまれてラピュス達を探しに行き狙われる危険性がある。一人抜けたくらいならアイツもすぐには気付かないだろう?」
「つまり、ケルピーの注意をあたし達に向ける為にわざとラピュスを一人で向かわせたって事?」
「そう言う事だ。それにラピュスは俺達が倉庫を出てから五分後に動くように言っておいた。俺達がそれまでにケルピーと接触して注意をこちらに向ければラピュスはケルピーの攻撃を受ける事はない」
「成る程、陽動って事だね?」
ヴリトラの考えを理解したリンドブルムが納得の表情を浮かべる。ジルニトラやラランも同じ様な反応を見せており、自分の考えを分かってもらったヴリトラはニッと笑う。
「それはそうと、これからどうするんだヴリトラ?」
ラピュスが単独行動をする意味について三人が話していると、ジャバウォックが会話に参加して来た。
「ケルピーを見つけてもアイツの声を聞いて暗示に掛かっちまったら俺達は上手く戦えないぞ?」
「だからニーズヘッグの言った作戦を取るんじゃないか」
「大丈夫なのかよ?」
「今はそれしか方法がないんだから、賭けてみるしかないだろう」
不安そうな顔をするジャバウォックと複雑な顔をするヴリトラ。二人はゆっくりとラランの方を向き、二人の会話を聞いていたリンドブルムとジルニトラもラランの方を見る。全員に見られてラランは緊張した様な顔でまばたきをした。
「・・・やっぱり緊張する?」
ジルニトラが訊ねるとラランは黙って頷く。
「まぁ、無理もないよね?ケルピーを倒せるかどうかはラランにかかってるんだから・・・」
「おい、あまりラランにプレッシャーを掛けるなよ?」
「あっ、ゴメン・・・」
ジャバウォックに注意されて謝るリンドブルム。緊張するラランの頭をジルニトラはそっと撫でて落ち着かせた。
「大丈夫よ、もっと力を抜いて?」
「・・・うん」
少しだけ緊張が和らいだのかラランは静かに深呼吸をする。それを見たヴリトラは周りにいるリンドブルム達を見て作戦の確認を始める。
「それじゃあ、もう一度チェックするぞ?ニーズヘッグの調べではケルピーの暗示は聴覚の鋭い者ほど掛かりやすいという事が分かった。ナノマシンで聴覚が強化された俺達機械鎧兵士にとっては相性の悪い相手だ。だが、それは普通の人間の方がアイツの暗示に掛かり難いという事になる」
ヴリトラは倉庫でニーズヘッグが説明した作戦の内容を再確認しながら話し、リンドブルム達もそれを黙って聞く。
「暗示に掛かってしまう以上、俺達では攻撃を当てる事は愚か、思うように動く事もできない。しかもどんなに離れた所から攻撃してもアイツのスピーカーで遠くにいる者にも声が届いちまう。そこでラランの出番という事だ」
そう言ってヴリトラは再びラランの方を向き、リンドブルム達も一斉にラランを見つめる。
「俺達四人でケルピーの注意を引いている間にラランは離れた位置からケルピーの位置を特定してスナイパ―ライフルで狙撃する。普通の人間であるラランならケルピーの声を聞いても暗示に掛かる可能性は低いから攻撃も当られるはずだ」
「・・・自信が無い」
「大丈夫よ。アンタならできるわ」
「・・・何を根拠に・・・」
「根拠ならあるわ。アンタは今日まであたし達と一緒に戦って銃器の使う時の感覚を完全に身に付けた。そんなラランならスナイパ―ライフルを使っても上手くやれるってあたし達は思ってるもの」
「・・・・・・」
ジルニトラの励ましを聞いても不安そうな顔のままのララン。するとリンドブルムがM24を持ってラランの前までやって来るとそっとM24を差し出した。
「さっきプレッシャーを掛けた僕が言うのも変だけど、あまり深く考えないでやればいいよ。絶対に上手くやらないといけないって思うと却って失敗する可能性が高くなるから、落ち着いてやればいいんだよ」
「・・・落ち着いて?」
「そう。失敗した時の事を考えずにフツーにやればいいんだよ」
「・・・うん、分かった」
少しだけ気が楽になったのか、ラランはM24を受け取って頷き、リンドブルムはニッと笑う。ヴリトラ、ジャバウォック、ジルニトラの三人は重要な役割なのに失敗した時の事を考えるなと言うリンドブルムの発言にジト目でリンドブルムを見つめるが、ラランにプレシャーを与えないようにする為に三人は何も言わずに黙っていた。
リンドブルムはラランにM24の使い方や注意点を説明し、ラランもそれを黙って聞いている。そんな二人の様子を見ていたジャバウォックはある事に気付く。
「ところでヴリトラ、ラランにはケルピーを狙撃してもらうとして、コイツには先に狙撃ポイントへ移動してもらうのか?もしそうなると少し面倒だぞ?ラピュスが別行動を取っているから一人足りない状態でラランまでも別行動を取ったら人数は俺達四人だけになって流石にケルピーにも怪しまれるんじゃねぇか?」
「言われてみればそうよね?ケルピーに警戒されない為にラピュスを一人で行かせたのに、そんな状態でラランまであたし達と別れて行動したら・・・」
「勿論分かってるさ。だからケルピーを見つけるまではラランには俺達と一緒に行動してもらう。そしてケルピーとの戦闘が始まったらラランには俺達と別れて狙撃ポイントへ移動してもらう。それならケルピーもラランが隠れて俺達の近くにいると思い込むはずだ」
「そっか、戦闘が始まった時にラランがいなかったら別行動を取ってると思い込むけど、最初に姿を確認させておけば僕達と一緒に戦っていると思い込むもんね」
「そう・・・今度は俺達がアイツに暗示を掛ける番だ」
先程の戦闘で自分達が受けた戦術を今度はケルピーにお返しすると考えるヴリトラは小さく笑いながら右手を握る。リンドブルムも面白そうと考えたのかニッと笑ってヴリトラを見ていた。
「よし、それじゃあ早速ケルピーを探しに行きますか」
「探しに行く、と言うよりも見つかりに行くと言った方が正しいけどね?」
「どっちでもいいよ。とにかくまずはケルピーと接触する事だ。行くぞ」
作戦の確認を終えたヴリトラ達は姿勢を低くし、遮蔽物に隠れながら移動しケルピーを探しに向かう。狙撃手から狙われている立場にいるはずの彼等は狙撃手を狙う為の行動を取っていたのだった。
それからしばらくコンテナやジープの陰に隠れながら広場を移動するヴリトラ達。だが未だにケルピーの姿を見つける事はできないでいた。
「いないね・・・」
「まぁ、スナイパーは敵に気付かれないように攻撃するもんだからな。見つかっちまったら意味ねぇさ」
コンテナの陰から周囲を警戒しながらケルピーを探すリンドブルムとジャバウォック。ヴリトラ達も自分の銃器を構えながら遠くにある建造物の屋上や見張り台を見てケルピーの姿を探している。
「気を付けろよ、皆?ああいうタイプの人間は俺達が予想もしないような事をやってくるからな。少しでも気を抜いたらアウトだぞ・・・」
「分かってるわよ。でも、今回は向こうの機械鎧の性能や攻撃方法を知っているわ。油断はしない」
笑いながらヴリトラの忠告を聞いて返事をするジルニトラ。その隣ではラランがM24を抱きかかえながら真面目な顔でヴリトラの方を見ていた。
ヴリトラ達がケルピーを探していると、彼等が隠れているコンテナから200m離れた所に停車しているトラックの荷台の上ではヴリトラ達が探しているケルピーがM700のスコープを使って彼等を覗き見ている姿があった。彼女は引き金に指を掛けて何時でも発砲できる状態にある。しかし彼女は引き金を引こうとせず、楽しそうな顔でヴリトラ達を観察していた。
「フフフフ、探してる探してる♪こんな近くにいるのに気づかないなんて、結構間抜けな人たちだよねぇ。全員いるね、え~っと・・・ヴリトラ、リンドブルム、ジャバウォック、ジルニトラ、あとはあの小さい女の子に・・・あれ?あの綺麗な女の人がいないなぁ?何処行ったんだろう?」
ケルピーはラピュスの姿が見えない事に気付いてヴリトラ達の周囲にある遮蔽物を見回す。だがラピュスの姿は無くケルピーは不思議そうな顔をした。
「何処にもいないなぁ。もしかして逃げちゃった?・・・う~ん、でもあの七竜将と一緒にいるのに一人だけ逃げるっていうのは考え難いし・・・何処かに隠れているのか、それともさっきみたいに別行動を取って私の隙を突こうとしているのか・・・」
スコープから目を離しラピュスが何をしているのかを考えるケルピー。しかしラピュスはニーズヘッグ達の下へ向かっている為、ケルピーが想像している様な行動は取っていない。そしてケルピーはその事に気付いていなかった。
しばらく難しい顔をして考えていたケルピーだったが、めんどくさくなったのか考えるのをやめて再びスコープを覗き込みヴリトラ達に狙いを付ける。
「まぁ、何を企んでるか知らないけど、私の前ではどんな作戦を通用しないよ。君達は気付かないうちに私の手の上で踊る人形になってるんだからね」
ヴリトラ達を嘲笑いながらゆっくりと引き金に掛けてある指に力を入れるケルピー。そしてコンテナから顔を出しているヴリトラに狙いをつけて引き金を引こうとした。だがケルピーは突然狙いをヴリトラの頭部からヴリトラの足元に変えて素早く引き金を引く。それと同時に銃口から弾丸は吐き出されて小さな銃声が鳴る。
周囲の見回してケルピーを探すヴリトラ。すると突然彼の足元に弾痕が生まれ、それを見たヴリトラは驚いて素早くコンテナの陰に隠れる。
「どうしたの?」
リンドブルムがヴリトラの方を見て訊ねるとヴリトラは鋭い目でリンドブルム達の方を向く。
「ケルピーだ!いきなり撃ってきやがったよ」
「見つけたの!?」
「いんや、敵さんが自分から居場所を教えてくれたよ。ご丁寧に足元を撃ってな・・・」
「完全に僕達をナメきってるね」
狙撃手が敵を仕留めずに自分の居場所を教えるという行動に若干怒りを覚えるリンドブルム。このケルピーの行為はヴリトラ達を馬鹿にするのと同時に自分を倒して見ろというケルピーからの挑戦状でもあった。
ヴリトラは弾痕の位置からケルピーの居場所を調べながらオートマグを構え、リンドブルム達も自分達の持つ銃器を構えた。ラランはそんな四人をM24を抱きかかえたまま見ている。
「・・・始まる?」
「ええ、いよいよね」
ジル二トラはサクリファイスのグレネードランチャーにグレネード弾を装填するとラランの方を向いて自分の耳にはめてある小型通信機をラランの耳にはめる。
「いい?これからあたし達はケルピーを攻撃してアイツの注意を引くわ。アンタはその間にできるだけあたし達から離れ、安全な所へ移動したらこの通信機を使って連絡を入れて。そしたらケルピーの居場所を教えるからそこからアイツを狙撃する。いいわね?」
「・・・分かった」
「もし外れたらすぐにその場から移動して身を隠すのよ?アンタの使っているスナイパーライフルはサプレッサーが付いていないから銃声でケルピーに居場所がバレちゃうわ」
「・・・うん」
緊張の不安の混ざった様な表情でラランは頷き、ジルニトラはサクリファイスを構えてヴリトラの方を向く。ヴリトラはジルニトラとラランを見てから一度頷き、ゆっくりとコンテナの陰から顔を出す。そして素早くコンテナから飛び出すとそのまま走り出した。するとヴリトラの足元で赤い光の点が動き、ヴリトラの足元に弾痕が生まれる。トラックの荷台の上ではケルピーが走っているヴリトラを狙って狙撃していた。
「まずはヴリトラかぁ・・・フフフ、どれぐらい楽しませてくれるのかなぁ?」
笑いながらボルトハンドルを引いて空薬莢を排出すると再び走っているヴリトラに狙いを付ける。だがヴリトラはスライディングをして走った先に置かれてある小さなコンテナの裏に滑り込み身を隠した。
「ちぇ、隠れちゃった・・・」
仕留め損ねた事に残念そうな顔をするケルピー。するとコンテナから飛び出したジルニトラがサクリファイスをトラックの荷台に向かって乱射する。ケルピーがヴリトラを狙撃している間にジルニトラ達はケルピーの居場所を特定して銃撃して来たのだ。
トラックに銃弾が当たり、それに驚いたケルピーは姿勢を低くして荷台の裏に隠れる。
「よし!今だよララン!」
「・・・うん!」
ケルピーが隠れたのを確認したリンドブルムはラランに移動するように指示を出し、ラランも言われたとおり姿勢を低くし、ケルピーに見つからないように移動した。ラランが行ったのを見たリンドブルムはジルニトラとジャバウォックに「ラランが行った」とアイコンタクトを送る。
「よし、俺達はこのままケルピーに攻撃を続ける。ラランが俺達と別行動する事を悟られないようにするんだ!」
「「「了解!」」」
離れた所からコンテナに隠れているリンドブルム達に静を出すヴリトラと声を揃えて返事をするリンドブルム、ジャバウォック、ジルニトラの三人。ヴリトラは小さなコンテナの陰から顔を出してオートマグで撃つ。リンドブルムもライトソドムを撃ち、ジャバウォックはマイクロウージーを連射する。四人の弾丸はトラックに荷台に当たり、その裏ではケルピーが弾薬を再装填していた。
「フフフ、反撃して来たね。でも200m近く離れた相手に普通の銃やサブマシンガンなんがで当てられるはずないのになぁ~」
ヴリトラ達の攻撃は無駄だと嘲笑うケルピーは隠れたままスピーカーのスイッチを入れてヘッドセットのマイクを口に近づける。
「無駄だよ、七竜将!君達は私から200m近く離れてるんだよ?いくら五感を強化された機械鎧兵士でも拳銃やサブマシンガンで当たられるはずないじゃない!」
「・・・チッ!早速暗示を掛けて来たか・・・」
ケルピーの声を聞いたヴリトラは舌打ちをしてコンテナの陰から顔を出しトラックの荷台を睨む。
「君達と一緒にいたはずのあの女の人が今何をやってるかは知らないけど、私を相手にするのに一人がいなくなる事がどれだけの痛手になるか、後悔する事になるよ?」
ヴリトラ達と一緒にいないラピュスの事を楽しそうに語るケルピー。だがヴリトラ達はそんなケルピーの言葉から彼女はラピュスがヴリトラ達と別れて自分を狙っていると思い込んでいると知り、余裕の表情を浮かべる。作戦に加わっていないラピュスの事で暗示を掛けられても殆ど効果は無く、ヴリトラ達はまだ勝機はあると感じていた。
「奴はラピュスが俺達と一緒に行動していると思い込んでいる。しかもラランが俺達と別れた事にも気付いていない・・・チャンスだぞ」
「ええ、ラピュスとラランを動きやすくする為にも、もっと派手に攻撃しましょう」
「派手にって、どうやって?」
「コイツよ!」
そう言ってジルニトラはサクリファイスに取り付けられているグレネードランチャーで数十m離れた所に停まっているジープを狙い、グレネード弾を発射する。グレネード弾はジープに命中して爆発を起こしジープを粉々に吹き飛ばした。
「おっと?何かを爆発させた?」
爆発に驚いたケルピーが荷台の陰から顔を出して煙を上げているジープを見つめる。
「な~んだ、あんな遠くのジープの爆発だったの。あんな所のジープを壊しても私には関係ないのに・・・それとも、私の注意を自分達に向ける為にわざとあんな派手な事を・・・つまり、それだけ別行動を取っているあのお姉さんに期待してるって事だね。これは用心しないと」
ケルピーはまだラピュスが何処かで自分を狙っていると思い周囲への警戒を強くした。これがラランから意識を外させる為のヴリトラ達の作戦であると彼女はまだ気づいていない。
その頃、ヴリトラ達と別れたラピュスはコンテナやトラックの陰に隠れながらニーズヘッグ達の下へ向かって走っていた。遠くから聞こえる銃声を聞いてヴリトラ達が戦いを始めたと知るラピュスだったが、自分の役目を全うする為に走り続ける。幸いまだ敵兵と遭遇はしておらず順調に進んでいた。
「・・・敵の姿は無いな」
山積みにされている木箱の陰から顔を出して周囲を見回すラピュス。照明灯と月の灯りが照らす施設内をラピュスは一人で進んでいる。だがラピュスの顔には不安な様子は見られなかった。
「ヴリトラの話ではニーズヘッグ達はこの辺りの何処かで巨兵機械鎧と言う敵の兵器と戦っているはずだ。早く見つけて合流しなくてニーズヘッグ達が――」
ラピュスがニーズヘッグ達が戦闘を行っている場所を探していると遠くから爆音が聞こえてラピュスはフッと爆音のした方を向く。
「今のは爆発音!?・・・まさか!」
嫌な予感がしたラピュスは急いで爆音のした方へ走り出す。ラピュスが走って行った方角はニーズヘッグ達がコンピューターを見つけた通信設備のある建物、つまりさっきまで巨兵機械鎧と戦っていた場所がある方角だった。
再びケルピーとの戦いが始まる。ラランは狙撃をする為に、そしてラピュスはニーズヘッグ達の救援に向かう為にそれぞれ動く。二人は自分の役目を全うできるのだろうか、そしてニーズヘッグ達は無事なのだろうか?




