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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十三章~姫騎士は異世界を歩む~
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第二百三十五話  機械鎧兵士の奮闘 現れた鎮魂歌の刃


 施設へ潜入したヴリトラ達は二組に分かれて施設の攻略作戦を開始する。ニーズヘッグのチームが情報のロック解除をするまでの間、ヴリトラのチームは攻撃を開始して敵の注意を引き付けるのと同時にユートピアゲートの装置の探索するのだった。

 ヴリトラ達が施設の広場で敵の注意を引き付けている時、ニーズヘッグのチームは倉庫やコンテナの陰に隠れながらブラッド・レクイエム社のコンピューターを探していた。敵に見つからないように最善の注意を払いながらニーズヘッグ達は進んで行く。


「向こうでは随分と派手にやってるな」


 遠くから聞こえてくる爆音や銃声にニーズヘッグはアスカロンを握り、走りながら呟く。その後ろにオロチとファフニールが斬月とギガントパレードを肩に担ぎながら走ってついて来る姿があった。


「今回はタイカベル・リーベルトの武器庫から大量の武器や弾薬を持って来たからな。アイツ等も遠慮無しに銃を撃ちまくって暴れているのだろう・・・」

「それにラピュスも機械鎧兵士になったからね。向かうところ敵無しだよ!」

「だが、それでも油断はできない。アイツ等が敵の注意を引き付けてくれている間に俺達も情報のロック解除と解析を終わらせる!」


 オロチとファフニールの会話を聞いていたニーズヘッグを走りながら後ろを向いて再度自分達の役目を確認する。二人も忘れていないのかニーズヘッグの方を見て頷いた。

 すると三人の向かう先から三人のTS兵が現れてニーズヘッグ達の姿を見た瞬間、驚いてAUGを構えた。


「な、何だアイツ等!?」

「お前達、何者だぁ!」

「チッ!まだこんな所に敵が!」


 出くわしたTS兵達を見て舌打ちをするニーズヘッグ。ヴリトラ達の陽動が始まったのは数分前、まだ全ての敵がヴリトラ達の下へ向かってはいないだろうと予想はしていたが、心ではこのままコンピューターのある建物まで敵と出会わない事を願っていたようだ。

 TS兵達は三人に向かってAUGを発砲。ニーズヘッグ達は自分の持つ武器で敵の銃撃を防ぎながら一気に距離を詰めていく。銃撃を全て防がれた事にTS兵達は驚愕の表情を浮かべる。


「このまま強行突破だ!」


 ニーズヘッグは声を上げながらアスカロンを勢いよく振る。鞭状となって伸びた刀身はTS兵達に向かって行き、彼等が持っていたAUGごと体を切り裂いた。TS兵達はそのまま倒れて動かなくなり、三人はそのままTS兵達の死体の真横を通過し先へ進む。


「ニーズヘッグ、さっきの銃声でこの近くにいる別の敵兵が私達に気付いて集まって来たらどうするの?」

「その心配はないだろう。ヴリトラ達が騒ぎを起こして敵は皆アイツ等の方に意識が向いている。例え銃声が聞こえても敵はヴリトラ達に仕業だと考えて気にも留めないさ」

「でもそうなると本当にこの施設にいる敵が全員ヴリトラ達の方に行っちゃうんでしょう?ヴリトラ達、大丈夫かなぁ?」


 ファフニールが施設の敵全員を相手にする事になるヴリトラ達の事を心配し不安な顔を見せる。するとオロチが前を向いたまま静かに口を動かした。


「心配ない。向こうにいるのは五人の機械鎧兵士がいるんだ。しかも敵は普通の人間、九人でも十分有利に戦える・・・」

「あっ、そっか」

「そして私達の人数が三人だけになっている。人数が少なければ目立たず敵に見つかる可能性も低いという事だ・・・」

「成る程、ヴリトラはそこまで考えてたんだね」

「いや、それはないと思うぞ・・・」


 オロチの説明を聞いて納得し笑顔になるファフニールにニーズヘッグが目を細くしながら言う。ファフニールはそんなニーズヘッグの言葉を気にもせずに笑顔でヴリトラの事を見直したような態度を取っており、オロチは無表情のままどれを黙って見ている。


「とにかく、俺達は自分達のやるべき事をやるんだ。それが終ったらすぐにヴリトラ達と合流し、装置の確保と施設の制圧に移る。いいな?」

「「了解!」」


 声を揃えて返事をするオロチとファフニール。ニーズヘッグ達は一番近くの建物に向かって走り、ブラッド・レクイエム社のコンピューターを探し始めるのだった。

 その頃、ヴリトラ達は施設中から集まって来て大勢のTS兵達の相手をしていた。ヴリトラとラピュスは銃撃を森羅とアゾットで防ぎながら距離を詰めて行き、一人ずつTS兵達を倒していく。ジャバウォックはデュランダルと機械鎧に内蔵されている火炎放射器を使い分けて大勢の敵を倒して行き、リンドブルムは愛銃のライトソドム、ダークゴモラを使ってジャバウォックの援護をしている。そしてジルニトラとラランはコンテナの陰に隠れながらTS兵達と銃の撃ち合いをしていた。


「ラピュス、大丈夫か?」

「ああ、なんとかな!」


 お互いに背中を合わせて自分達を取り囲む十数人のTS兵を睨みながら会話をするヴリトラとラピュス。既に二人は数人のTS兵を倒しており、二人の近くには斬られて動かなくなったTS兵の死体が転がっている。TS兵達はたった二人で多くの仲間を倒した二人の機械鎧兵士を恐ろしく思っているのか銃を向けながら身構えてヴリトラとラピュスを睨んでいた。


「敵さん達も相当ビビってるみたいだな・・・それにしても、戦いが始まってまだ殆ど時間が経っていないって言うのにもう機械鎧の使い方に慣れるとは、流石は優秀な姫騎士様だな?」

「茶化すな。それに、私はもう姫騎士ではない」

「いいや、お前は立派な姫騎士だよ。右腕を失い、機械鎧兵士になってしまったとしても、な」

「・・・フッ」


 ヴリトラの言葉にラピュスは目を閉じて小さく笑う。そんな二人の会話を見ていたTS兵達は一斉に二人銃口を向けて引き金を引く。無数の弾丸がヴリトラとラピュスに向かって飛んで行き、二人は素早くジャンプして銃撃を回避する。弾丸は二人には当たらずに向かいに立っている別のTS兵達に命中し同士討ちという形になった。仲間同士で撃ち合い全滅したTS兵達を空中から見下ろしていたヴリトラとラピュスはそのまま元いた位置に着地して周囲を見回す。


「同士討ちで全滅とは、哀れな死に方だな・・・」

「銃撃をかわした私達にそんな事を言う資格は無いだろう?」

「ハハハ、確かに・・・」


 苦笑いをしながら答えるヴリトラとTS兵達の死体をジッと見つめるラピュス。するとそこへまた別のTS兵達が現れ、ヴリトラとラピュスに向けてAUGを構える。


「おっと、敵の増援だ。ラピュス、まだ敵は多い。油断するなよ?」

「お互い様だ」

「フッ、そうだな!」


 軽口を叩き合いながらヴリトラとラピュスは森羅とアゾットを両手で握りながらTS兵達に向かって走り出す。TS兵達も自分達に向かって走って来る二人を見て驚きながらAUGを乱射するのだった。

 ヴリトラとラピュスから数十m離れた所にある大きなコンテナではジルニトラとラランがコンテナの陰に隠れながら銃の弾倉マガジンを交換していた。


「これで・・・よしっと!」


 コンテナにもたれながら座っているジルニトラは自分の愛銃であるサクリファイスに弾薬の入った新しいヘリカルマガジンを叩き込みコンテナの陰から敵の様子を窺う。するとジルニトラが顔を出した瞬間にコンテナに弾痕が生まれ、ジルニトラは咄嗟に顔を引っ込める。ジルニトラとラランが隠れているコンテナから20mほど離れた所にある木箱の陰からは数人のTS兵達がAUGで銃撃してくる姿があった。


「チッ、また数が増えてるわ・・・ララン、そっちはどう?」


 ジルニトラがコンテナの反対側で同じようにコンテナの陰から敵の様子を窺っているラランに訊ねる。姿勢を低くしているラランの手にはスコーピオンと無数の薬莢、そして空になった弾倉が落ちていた。相当の数の弾を乱射したようだ。


「・・・こっちも同じ、凄い敵の数」

「どうやら敵は女同士でペアを組んでるあたし達を狙って来てるみたいね。さっきと比べで敵の数が明らかに増えてるわ」

「・・・どうして私達?」

「さっきも言ったようにあたし達が女同士でペアを組んでるからよ。女の敵の方が倒しやすいと考えてるんでしょうね。しかも残りの二つのペアは全員が機械鎧兵士、こっちはあたしが機械鎧兵士でもアンタは普通の人間、明らかに戦力が他の二組と比べて弱いからよ」

「・・・不愉快」

「それはあたしも同じ!


 不機嫌そうな声で呟くラランと同じように不機嫌な顔でサクリファイスを構えながら敵の様子を窺うジルニトラ。そんな二人の隠れているコンテナの周りには既に二十人以上のTS兵達が集まりコンテナを取り囲もうとしている。


「でもね、ララン!これはいいチャンスかもしれないわよ!?」

「・・・チャンス?」

「もしここであたし達があの大勢の敵兵を倒す事ができたらあたし達は取り囲まれた状態にありながらたった二人に大勢の敵兵を倒した強者って事を証明できるって事よ!」

「・・・強者」

「アイツ等を見返してやりましょう!」

「・・・うん!」


 敵を見返す、それがラランのやる気に火を付け、ラランはスコーピオンやマイクロウージーを持って立ち上がりジルニトラの方を向く。ジルニトラは闘争心を燃やすラランを見てニッと笑う。そして二人はコンテナの陰から飛び出すと持っていた銃をTS兵達に向けて撃ちまくった。

 リンドブルムとジャバウォックも遠くで大勢のTS兵達を相手に奮闘している。ジャバウォックはデュランダルを大きく横に振って数人のTS兵を一度に腹部から真っ二つにし、背後に回り込んだ相手には内蔵火炎放射器で応戦する。リンドブルムも愛銃二丁を交互に撃ちTS兵達の額や心臓など急所を一発で撃ち抜き、一人ずつ倒して行った。


「まったく、次から次へて出て来るぜ。コイツ等本当に百人しかいねぇのかよ」

「百人っていうのは予想であって実際はもっと大勢いるかもしれないって話だよ」

「まぁ、これだけデカい施設だ、百人以上いると考えるのが自然だわな」


 デュランダルを両手で構えながら自分を囲むTS兵達を見るジャバウォック。リンドブルムもジャバウォックの隣まで移動してライトソドムとダークゴモラを構えている。TS兵達は接近するのは危険と判断したのかゆっくりと後退しながらAUGを撃って来た。ジャバウォックはデュランダルの刀身を盾代わりにして銃撃を防ぎ、リンドブルムも素早く横へ跳んで銃撃をかわす。


「敵が離れていくよ!」

「今頃になって後退するとは、トライアングル・セキュリティの連中も結構トンマな奴が多いな!」


 優秀なトライアングル・セキュリティの兵士なら生身で機械鎧兵士と戦うのがどれだけ危険なのか分かっているだろうと考えていたリンドブルムとジャバウォックだったが、多くの仲間が殺されてようやく距離を取るという行動に二人は内心呆れていた。

 後退するTS兵達を見てリンドブルムはライトソドムとダークゴモラを構え直し、遠くにいるジャバウォックに声を掛けた。


「これ以上時間を掛けると敵に僕達の情報が広がって戦い難くなっちゃう!さっさと終わらせよう!」

「ああ、分かってる!俺が突っ込んで一気に叩く。リンドブルム、お前は援護しろ!」

「了解!」


 ジャバウォックはデュランダルを構え、後退するTS兵達に向かった走り出し、リンドブルムもそれに合わせて援護射撃を始めた。走って自分達に向かって来るジャバウォックを見てTS兵達は動揺を見せながら銃を乱射する。しかしジャバウォックには一発も当らず、それから僅か十数秒後にTS兵達は全滅したのだった。

 同時刻、施設の中で最も大きな建物の一室にある司令室ではトライアングル・セキュリティのオペレーター達がモニターに映る基地内の映像を見て愕然としていた。基地の広場で大勢のTS兵達を相手にたったの六人で激しい戦いを繰り広げているヴリトラ達。しかも自分達が不利な戦況にある事がオペレーター達に更なるショックを与えていた。


「な、何なんだあの侵入者達は・・・」


 一人の男性オペレーターがモニターに映るヴリトラ達の戦う姿を見て目を見張って驚く。既にTS兵は五十人近く倒されており、生き残ったTS兵達の中にはヴリトラ達の力を前に戦意を失っている姿もある。


「お、おい、こちらの戦力はどんな状態だ!?」


 大勢いるオペレーターの後ろでは戦況を確認させている一人の日本人男性の姿があった。三十代後半ぐらいで黒い短髪に無精髭を生やした男でトライアングル・セキュリティの制服を着ている。どうやら彼がこの施設の司令官を任されているようだ。オペレーターは司令官の指示を受けて戦力の確認を急ぐ。


「A分隊からD分隊が既に全滅し、E分隊からG分隊が敵と交戦中。そちらも既に多くの隊員がやられており、全滅寸前の状態です!」

「無傷の戦力は!?」

「我々のいるこの本当を警備している警備小隊が残っているだけで・・・」

「全員現場に向かわせろ!それと本社に救援要請をするんだ!」

「ハ、ハイ!」


 司令官に指示されてオペレーターは急いで目の前のコンピューターの操作をする。司令官は自分の席に戻り、椅子に座ると頭を抱えだした。


「どうしてこんな森の中の施設に侵入者が来たんだ?この辺り一帯はブラッド・レクイエム社が所有してから誰も近寄らなくなったはず・・・何としてもこの施設を死守しなくては、さもないと私も首が危ない・・・」


 ブラッド・レクイエム社に此処の管理を任されている司令官は何かあれば自分が全ての責任を取らされると考えて表情を曇らせて。しかも相手は悪名高い傭兵会社、下手をすれば殺される可能性だったある。

 司令官が頭を抱えながら俯いていると突然司令官の後ろにある司令室の自動ドアが開いた。


「なになに?何の騒ぎ?」

「ケ、『ケルピー』殿!」

「『坂口』司令、これは何の騒ぎなの?」


 坂口と呼ばれた司令官は突然部屋に入って来て呑気そうな声を出す少女をケルピーと呼ぶ。ケルピーは十代後半ぐらいの若さですみれ色のツインテールをしている。だが一番目立つのは彼女が黒と赤の特殊スーツを着ており、首にくろがねの首輪の様な機械を付けている。そして特殊スーツの左腕の部分にはブラッド・レクイエム社のマークが描かれてあった。そう、彼女はブラッド・レクイエム社の人間なのだ。

 司令室に入って来たケルピーを見て坂口やオペレーター達の顔に緊張が走る。ケルピーは目の前の大きなモニターを意外そうな顔で見上げた。


「あら?もしかして侵入者?」

「え、あ・・・ハイ・・・」

「フゥ~ン・・・随分手こずってるようだけど・・・?」


 チラッと坂口の方を見るケルピー。その表情には怒りなどは感じられない無表情であったが、坂口はその顔を見た瞬間に背筋を凍らせた。目の前にいる少女がブラッド・レクイエム社の人間であるという事だけでトライアングル・セキュリティの人間達には十分な威圧になっていたのだ。


「どうなの?」

「も、申し訳ありません!どうやら敵の中に機械鎧兵士がいるらしく手間取っておりまして・・・」

「へぇ?機械鎧兵士かぁ~。それじゃあ君達じゃ手に負えないよねぇ」


 トライアングル・セキュリティを見下すような言い方でモニターを見続けるケルピー。するとオペレーターの隣まで移動して何やら指示を出した。


「悪いんだけど侵入者の映像を見せてくれる?」

「ハ、ハイ」


 男性オペレーターは言われたとおり機械を操作してモニターにヴリトラ達の映像を映した。モンターの中心に大きく映るヴリトラ、ラピュスの姿を見たケルピーはフッと反応し少し驚いているのような顔になった。


「あれは・・・七竜将のヴリトラじゃない」

「えっ、七竜将!?」


 ケルピーの口から出た言葉に坂口は耳を疑い思わず聞き返す。オペレーター達も同じように反応してケルピーの方を見る。


「七竜将、あの噂になっている七人の傭兵隊ですか?」

「うん、間違いないわ。本社のコンピューターで写真を見た事あるもの」


 以前見た七竜将の写真の事を思い出したケルピーは腕を組みながらモニターに映るヴリトラとラピュス、離れた所で戦闘を行っているリンドブルム達の姿を見つめる。


(でも確か七竜将はジークフリートさんの指示で異世界のファムステミリアに連れて行かれたはずなのにどうしてこっちにいるの?それに数日前から向こうにいる女王クイーン達とも連絡が取れないし、ノーティンク大森林とかいう森にある補給基地の部隊からも連絡が無い・・・此処にあるユートピアゲートの出口になっているその基地で何か遭ったのかしら?)


 ケルピーは心の中で七竜将がなぜこちらの世界にいるのか、なぜファムステミリアにいるジャンヌ達と連絡が取れないのかを考える。そしてファムステミリアの補給基地にあるユートピアゲートにも何が遭ったのだと感じていた。


(・・・もしかすると、七竜将がこっちにいる理由と補給基地と連絡が取れない理由は繋がってるのかも。それなら、アイツ等を捕まえて色々と話を聞き出すべきね)


 七竜将がこっちの世界にいる事とジャンヌ達と連絡が取れない事は繋がっていると考えたケルピーは振り返り司令室の出口の方へ歩き出す。


「ケ、ケルピー殿、どちらへ?」

「君達じゃ彼等に勝つのは難しいから私が行って七竜将を捕まえて来る。君達は此処に残って仕事を続けてて」

「ハ、ハイ・・・」


 指示を聞いたオペレーターは頷いて返事をし、坂口もそんなケルピーを黙って見ていた。すると歩いていたケルピーは突然足を止めて坂口の方を向く。


「あっ、坂口司令は僕と一緒に来て」

「え?」

「あのモニターに映っていた七竜将は四人だけ。七竜将は全部で七人だから残りの三人が彼等とは別行動でこの施設の何処かにいるはずだから、君はそっちの三人の始末をお願い」

「む、無理です!私は普通の人間なのですよ?機械鎧兵士とどうやって戦えばいいのですか!?」

「『アレ』を使ってもいいからさ?」

「ええっ!?ア、アレを、ですか・・・?」

「普通の人間が機械鎧兵士と互角に戦うにはあれを使うしかないでしょう。好きに使っていいからさ」

「・・・・・・わ、分かりました」

「多分その三人はこの施設にあるユートピアゲートの装置を探していると思うからそっちの方を調べてみて」

「りょ、了解です」


 そう言って話を終えるとケルピーは司令室を出て行き、坂口のその後に続く。やはりこの施設にはユートピアゲートの装置があるようだ。そしてそのユートピアゲートの出口はヴリトラ達はファムステミリアの補給基地で破壊したものと繋がっていた。今回の作戦はヴリトラ達にとってはある意味ピッタリな作戦と言える。


「さてさて、有名な七竜将の実力、どれ程のものが見せてもらよ。プッフフフフ」


 ケルピーはツインテールを揺らしながら楽しそうに廊下を歩いて行きヴリトラ達の下へ向かう。その後ろを坂口が不安そうな顔でついて行くのだった。

 作戦は順調に進んでいる。だがヴリトラ達の知らない所でブラッド・レクイエム社の戦士であるケルピーが動いている事に彼等はまだ気づいていない。ヴリトラ達を捕らえる為にケルピーは坂口を連れて戦場へと向かう。そしてヴリトラ達は予想にしていなかった敵を前に苦戦を強いられることになる。


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