第二百三十四話 施設潜入 機械鎧兵士ラピュスの初陣
ブラッド・レクイエム社の施設がある森へやって来たヴリトラ達は装甲車を下りて森の中を進んで行く。既に敵地に足を踏み入れたヴリトラ達は暗闇と静寂に包まれた森を警戒しながら目的地の施設へ向かっていった。
森に入ってから数分が経ち、ヴリトラ達は森の入口が小さく見える位置までやって来た。木と木の間を進みながらヴリトラ達はゆっくりと進んで行く。
「ヴリトラ、方角はこっちであっているのか?」
「ああ、間違いない」
先頭をあるヴリトラにラピュスは少し不安そうな顔で訊ねた。ヴリトラは持っている衛星写真とコンパスを見ながら自分達の位置を分析し後ろを歩くラピュス達を先導していく。その間、ラピュス達は周囲に敵影がいないか武器を握りながら警戒している。
「今のところ敵の姿は見えないね・・・」
「ああ。だが何時姿を現すか分からない。油断するなよ?」
「分かってるって」
ジャバウォックの忠告に軽く返事をするリンドブルム。ジャバウォックは「大丈夫かよ?」と不安そうな顔でリンドブルムを見ていた。森の中は月明かりだけで照らされた非常に視界の悪い状態でいくら視覚や聴覚が常人より鋭い機械鎧兵士でも見難い状況だ。七竜将も久しぶりの地球での仕事にいつも以上に神経を鋭くしている。
「・・・オロチ、何か見えるか?」
ヴリトラが前を見ながら後ろにいるオロチに訊ねるとオロチは目を鋭くして遠くを見つめる。七竜将の偵察兵であるオロチは他のメンバーと比べて視覚や聴覚が鋭く、ヴリトラ達に見えない物をハッキリと見る事ができるのだ。オロチにとっては今の森の暗さも目を凝らせばよく見える状況だった。
「今のところは敵の姿は見えない。ただ数百m行った先に微かな灯りが見える。恐らく例の施設のライトか何かだろう・・・」
「流石オロチ、視力が優れてる上に夜目がきくよね?」
リンドブルムがオロチの方を向いて笑顔で彼女を褒めた。オロチは褒められた事を気にもせずに周囲の確認を続ける。
「他に何か見えないか?」
「ちょっと待て・・・・・・此処からだとまだ見えないな。もう少し近づいてから周りを・・・ん?・・・」
「どうした?」
突然言葉を止めたオロチにヴリトラ達は一斉にオロチの方を向く。オロチはジッと一点を見つめており、やがてバックパックから単眼鏡を取り出して覗き見る。いくら視覚の優れているオロチでもハッキリと確認するには双眼鏡の類を使う時もあるのだ。単眼鏡を覗くオロチは黙り込み、やがて何かを確認したのか単眼鏡を覗くのを止めてヴリトラ達の方を向いた。
「姿勢を低くしろ・・・」
「どうした?」
「誰かがこっちに近づいて来る・・・」
自分達の方へ誰かが近づいて来る、それを聞いたヴリトラ達は咄嗟に姿勢を低くして近くに茂みや岩の陰に隠れた。全員が身を隠すとオロチは再び単眼鏡を覗いてさっき見ていた方向を確認する。そして自分達の方へ歩いて来る二人の傭兵らしき人影を確認した。二人は黄土色の長ズボンに紺色の長袖を着ており、その上にカーキのタクティカルベストを着ていた。顔は口を隠した目だし帽で隠しており、そこにカーキのサバイバルキャップを被っている。そして傭兵達の手にはアサルトライフルの「ステアーAUG」が握られていた。
「どうだ?オロチ」
「敵だ、数は二人。恐らく施設を警備しているトライアングル・セキュリティの兵士だろう・・・」
「マジかよ?」
「ああ。武装はAUGとグロッグ17、そしてグレネード。私達との距離は約200m、真っ直ぐこっちへ歩いて来ている・・・」
オロチは単眼鏡を覗いたまま敵の人数や距離、武装の情報をヴリトラ達に伝える。ヴリトラ達は敵の情報を聞き真剣な表情でオロチの方を見ていた。
「このままなら接触するのにあと一、二分は掛かるだろう・・・」
「・・・今の状況で敵に見つかるのはマズイ。ヴリトラ、一先ずここは隠れてやり過ごした方がいい」
「だな。敵が近づいて来たところを背後から捕まえて情報を聞き出すっていうのもありだが・・・奴等は警備関係が主業務だ、常に連絡し合って情報を確認しているだろう。仲間からの連絡が途絶えればすぐに警戒を強くする。まずは施設の近くまで行ってからにしよう」
ニーズヘッグの提案にヴリトラは賛成し、ブラッド・レクイエム社の施設へ向かう事にした。ラピュス達もそれに賛成なのか黙ってヴリトラの方を見ている。
「このまま真っ直ぐ進めが敵に見つかる。回り込む様に遠回りしながら灯りの見えた方へ進むぞ」
ラピュス達に指示を出し、ヴリトラは姿勢を低くしながら移動を開始する。ラピュス達もその後に続いて近づいて来るTSの兵士達から静かに離れていき、オロチの見た灯りの見えた方角へ進んで行く。それからヴリトラ達は何度も森の中でTS兵達を見掛けるも、見つかる事なく森の奥へと進んで行った。
数分後、ヴリトラ達は目的の施設の前までやって来た。姿勢を低くし、施設の出入口から十数m離れた所にある大きな木の陰に身を隠して施設の様子を窺う。施設の周りにはフェンスが張られて外から侵入する事はできないようになっており、フェンスの上には有刺鉄線が張られている。そのへんはファムステミリアにあった補給基地と同じだった。出入口であるゲートの前には四人のTS兵達が配備されており、ゲートの近くには照明灯が立っている。その様子を見たヴリトラは顎に手を当てながら難しい顔をした。
「出入口の警備はそれほど堅くは無さそうだ。だけど施設内がどんな状況になっているかはまだ分からない・・・」
「となると、補給基地に潜入した時の様に警備の薄い所から入って施設内の状況を確認した方がいいな」
「なら、装甲車で話した通り、基地の出入口のある方とは正反対にある基地の裏から潜入してみるか」
「そうだな」
ヴリトラとニーズヘッグは施設の裏側へ向かう為に敵に見つからないよう注意しながらラピュス達を連れて再び移動を開始する。そして十数分後、施設の裏側に到着し、近くにある茂みの中から周囲の様子を窺う。読み通り、施設の裏側には見張り台が無く、警備のTS兵もいない。極めて潜入しやすい場所だった。
「よし、読み通りだな」
「それで、潜入した後はどうするんだ?」
周辺を確認しているヴリトラの隣でラピュスは潜入した後の事を訊ねるとヴリトラはラピュス達の方を向いて説明を始めた。
「俺達の目的はこの施設にあると思われるユートピアゲートの装置を確保する事。そして装置が無かった時の事を考えてこの施設にあるブラッド・レクイエムのコンピューターを使い例の情報のロックを解除する事だ」
「情報のロック解除は俺がやろう」
「任せたぜ?ニーズヘッグ」
「ああ」
ユートピアゲートの設計図の入ったフラッシュメモリーを見せて小さく笑いながら頷くニーズヘッグ。そこへファフニールが小さく手を上げてヴリトラに声を掛ける。
「私達はどうすればいいの?」
「二人はニーズヘッグについて行き、残りは装置の捜索と敵の排除につく。オロチ、ファフニール、二人はニーズヘッグと一緒にロックの解除を頼む。ロックの解除が終ったらそのまま敵の殲滅に移ってくれ」
「分かった・・・」
「了解!」
「残りは敵を倒しながら装置を探す。いいな?」
ラピュス達の方を向いてヴリトラが確認するとニーズヘッグ、オロチ、ファフニール以外の者は黙って頷く。
最終確認をしたヴリトラ達は茂みからゆっくりと出てフェンスの前までやって来る。ヴリトラは森羅でフェンスを切り、一同は穴を開けて施設内へ潜入した。潜入したヴリトラ達は近くにある大きな倉庫の陰から施設内を見回して敵がいないかを確認する。
「よし、今のところ敵は見当たらないな」
「まぁ、百人程度しかいないんだ、すぐには出くわさないだろう」
ジャバウォックが背負っているデュランダルを握りながら辺りを見回して呟く。他のメンバーも自分達の武器を握りいつでも戦える態勢に入っていた。
ヴリトラも森羅を鞘に戻さずに右手でしっかりと握りながら周りにあるコンテナや積まれている木箱の山を見て敵の気配を探している。
「・・・ロックを解除するコンピューターはきっと建物の中だろう。三人が建物に入りやすくする為にまずは俺達が先に動いて敵の注意を引き付けるんだ」
「囮って事ね?」
ジルニトラはサクリファイスを握りながら確認するとヴリトラはジルニトラの方をチラッと見て頷く。
「ニーズヘッグ、俺達が先に出てトライアングル・セキュリティの連中の相手をする。お前達は俺達が出てしばらくしてから俺達の出た方向とは反対の方へ移動しろ。その後に建物の中に入ってコンピューターを探し、ロックを解除するんだ」
「了解・・・気を付けろよ?」
「お前達もな?」
互いに相手を見ながらヴリトラとニーズヘッグは小さく笑う。軽く笑い合った後、ヴリトラはラピュス達の方を一度見てから再び倉庫の陰から顔を出す。
「さて、それじゃあ、行きますか!」
若干大きな声を出してヴリトラは飛び出して走り出す。ラピュス、リンドブルム、ジャバウォック、ジルニトラ、ラランもそれに続いて倉庫の陰から出てヴリトラの後を追った。残ったニーズヘッグ、オロチ、ファフニールはその場に残り姿勢を低くして動く時を待った。
ニーズヘッグ達と別れたヴリトラ達は隠れる場所の無い広場へ出て周囲を見回す。コンテナや木箱、ジープなどは無く、すぐに敵に見つかってもおかしくないくらい場所だった。だが、ヴリトラ達にとっては自分達の存在が敵にすぐに知られるため都合がいいと言える。
「さてさて、早速暴れますかぁ~!」
「ヴリトラ、暴れると言っても一体何をするんだ?」
「言った通りだよ。とにかく敵に俺達の事を知られるように派手に暴れればいいんだ。こんな風にな」
そう言ってヴリトラは新しい機械鎧の左腕を突き出す。すると機械鎧の後前腕部の装甲が開き、中から小型のマイクロ弾が出てきた。だが今までのとは違い二連式ではなく一発だけの単発式だった。
「今までの二連式とは違うな?」
「ああ、Dr.GGの話では二連式じゃない代わりに一発が強力で装弾数も多くしたらしい。早速試し撃ちをさせてもらおう」
そう言ってヴリトラは遠くに立っている照明灯に狙いをつけ、マイクロ弾を発射した。マイクロ弾は真っ直ぐ照明灯に向かって飛んで行き、弾頭が照明灯に当たった瞬間に大爆発を起こして照明灯を倒す。その爆発は今までの二連式マイクロ弾と違い明らかに大きかった。
「おおぉ~、大した威力だな」
「これなら前の二連式で壊せなかった物も簡単に壊せるわね」
新しい単発式のマイクロ弾の破壊力に感心するヴリトラとジルニトラ。すると敵が爆発に気付いたのか施設内に警報が響き渡る。そしてすぐにヴリトラ達の周りにTS兵達が集まって来た。
「今の爆発音はこれが原因が!?」
「何でこんな所で爆発が・・・・・・おい、あれを見ろ!」
「ん?・・・何だあの連中は?」
TS兵達がヴリトラ達を見つけて一斉に彼等に注目する。既にヴリトラ達の周囲には十数人のTS兵が集まっていた。
ヴリトラ達は自分達を囲む様に集まっている敵を見て余裕の表情で自分達の得物を構え直す。だがラピュスとラランは緊張した様子だった。
「さて、敵さんも集まって来たし、おっぱじめますか!」
「OK!」
「あまり調子に乗り過ぎるなよ?」
笑いながら敵を見ているヴリトラとリンドブルムにジャバウォックが忠告する。三人の後ろではアゾットを構えるラピュスがおり、その隣ではジルニトラが突撃槍を構えているラランに近寄って小声で何かを話し掛けていた。
「ララン、ここでは槍は使わない方がいいわ」
「・・・でも、私はこれが一番使い易い」
「そうかもしれないけど、ここはファムステミリアじゃないの。それに今回は敵を殲滅させる事が目的なんだからアンタにも手伝ってもらわないといけないといけない。でも機械鎧兵士でないアンタが接近戦用の武器なんかで戦ったら敵を殲滅する前にアンタがやられちゃう」
「・・・どうすればいいの?」
自分の得意な戦いができない事に不服そうな顔で訊ねるララン。ジルニトラは持って来ていたバッグの中から何かを取り出してそれをラランに渡す。ジルニトラが渡したのはなんとサブマシンガンの「Vz61スコーピオン」とジャバウォックも使っているマイクロウージーだった。
「・・・これは?」
「今回はアンタは持って来た銃を使って戦いなさい。たんまり持って来たから滅茶苦茶に撃ちまくっても大丈夫よ」
「・・・使い方、分からない」
「ただ撃てばいいだけよ。弾が出なくなったら新しいのを使いなさい」
ジルニトラはサクリファイスを構えながら周りにいる敵を狙いながらラランに指示を出す。ラランは戸惑いながらもスコーピオンを両手で構えながら敵を狙う。そうしている間に敵はどんどん集まって来た。
「よし、皆行くぞ。バラバラになるな?二人一組になって行動しろ!」
ヴリトラの指示を聞いてラピュス達の表情に鋭さが増す。そして遂に戦いは始まった。
TS兵達は持っているAUGをヴリトラ達に向かって一斉に発砲する。ヴリトラ達は武器で弾丸を弾いたり、回避したりなどして敵の攻撃を防ぎながらTS兵達に向かって走り出す。敵は銃撃を避けながら自分達に迫って来るヴリトラ達に驚きながらも銃撃を続けたがヴリトラ達には通用しなかった。
「そんな単純な銃撃が機械鎧兵士に効くと思ってるのかよ!」
ヴリトラは自分に向かってAUGを撃つ二人のTS兵達に向かって走りながら大きな声で言い放つ。その後ろをラピュスがアゾットを握りヴリトラの陰に隠れる様に走ってついて行った。
TS兵達にある程度近づくとヴリトラは森羅を右手に持ち、力強く地を蹴りTS兵達に向かって跳ぶ。そしてTS兵達とすれ違い様に森羅でTS兵達の素早く斬り、TS兵達は何が起きたのか分からないまま倒れて動かなくなる。敵を倒したヴリトラを見てラピュスは足を止めた。
「相変わらずの実力だな・・・」
ラピュスが感心していると彼女の右数m先から一人のTS兵が現れてAUGでラピュスを狙う。それに気づいたラピュスは驚きの表情を浮かべる。そしてTS兵は引き金を引きラピュスに向かって銃を撃つ。銃口から弾丸が吐き出され、ラピュスは「もうダメだ」と言い倒すに顔を歪めた。だがその瞬間、ラピュスにとって驚くべき事が起きた。飛んで来る弾丸が目で確認できる速さで飛んで来るのが見えたのだ。
(えっ?た、弾が・・・見える・・・)
今まで見えなかっ弾丸が今はハッキリと見える。その事に驚きを隠せないラピュス。だが状況を思い出して飛んで来る弾丸をかわし、かわせない弾丸はアゾットで防いだりなどして敵の攻撃を凌いだ。自分の銃撃が効かないのを見てTS兵は驚いている。だが、一番驚いていたのはラピュス本人だった。
(今まで見えなかった銃の弾がハッキリと見えてかわす事ができた・・・これがナノマシンの力なのか?・・・それじゃあ・・・)
弾丸が見える程の動体視力が鋭くなった事を知り、ラピュスは他にも何か変化が起きたと考えてアゾットを強く握りTS兵の方を向くと両足に力を入れてTS兵に向かって跳んだ。すると少し力を入れただけなのにラピュスは一瞬にしてTS兵の目の前まで移動した。
(体が軽い!まるで羽の様だ・・・!)
運動能力までもが常人以上になった事に更に驚くラピュス。TS兵の目の前で着地するとラピュスは素早くアゾットで袈裟切りを放ちTS兵を倒す。一瞬で敵の一人を倒し、自分の左手や機械鎧の右腕をジッと見てラピュスはまばたきをする。
「・・・凄い、これが機械鎧兵士の力・・・」
「相当驚いているようだな?」
驚くラピュスの下にヴリトラが歩いて来る。ヴリトラの方を向いた後、ラピュスはアゾットを握る右手の手首を回しながら見つめる。
「機械鎧とナノマシンでここまで変わるなんて思ってもみなかった」
「俺達も最初はそうだった。その力に少しずつ慣れていけば力の加減のしかたも分かって来る」
「そうか・・・」
機械鎧兵士としての力をどれだけ上手く使いこなせるかは自分の技術と感覚次第、ラピュスはそれを自分に言い聞かせながらアゾットの柄を握る右手に力を入れる。
ヴリトラとラピュスがそんな会話をしている間、リンドブルム達も大勢のTS兵達と交戦していた。リンドブルムとジャバウォックは広場の中心で自分達を取り囲むTS兵達と攻防を繰り広げ、ジルニトラとラランはコンテナの陰に隠れながら銃器でTS兵達と撃ち合いをしている。
「俺達も負けてられねぇ。ニーズヘッグ達が作業し易いようにとにかく派手に暴れるんだ!」
「分かった」
リンドブルム達の戦いを見ていたヴリトラとラピュスも一人でも多くの敵を倒す為に気合を入れ直す。そこへジープに乗ったTS兵達がヴリトラとラピュスに向かって走って来るのが見え、ヴリトラとラピュスは走って来るジープを見て構える。
「チッ、今度はジープかよ!」
「・・・ヴリトラ、私の機械鎧の兵器なのだが、どんな物なのか試してもいいか?」
「お前もか?・・・ああ、いいぜ」
ラピュスが自分の機械鎧の内蔵兵器を試してみたいと言い出し、ヴリトラはそれを了承し一歩下がる。ラピュスは走って来るジープを睨みながら右手に持っているアゾットを左手に持ち変えて右腕をジープに向かって突き出し手を広げる。ラピュスも装甲車の中で自分の機械鎧の事が記された書類を見て予習していた為、内蔵兵器の使い方やどんな兵器なのかは知っていた。だが、どれ程の性能なのかは使って見ない事には分からない。その為、今回の戦いで使って見る事にしたのだ。
「ヴリトラ達に文字の意味を教えて貰って何とか理解したが、実際に使って見ない事には理解できない。この兵器の力、どれ程のものかお前達で試させてもらうぞ」
そう言ってラピュスは右手の手の平をジープに向けて開いた。すると手の平の中心に穴が開き、中から大きめのノズルの様な物が飛び出した。ラピュスはノズルをジープに向けて狙いを定める。
「行くぞ、バーナーキャノン!」
ラピュスが内蔵兵器の名前を口にするとノズルから青い炎が一直線に勢いよく噴出されジープに向かって飛んで行く。すると炎はジープのフロント部分に命中し車体をそのまま貫通する。炎が消えた時、フロント部分には大きな穴が開いており、穴に端は赤く焼跡が残っていた。穴からは向こうの風景が見え、ジープに乗っていたTS兵達は訳が分からずに固まっている。そしてジープはTS兵達を乗せたまま爆散した。
あまりの威力にラピュスは目を見張って驚き、ヴリトラも意外に思ったのか若干驚いている。
「バーナーキャノン、高出力の熱線を勢いよく発射する兵器か。しかも見たところ射程は5、6mと長く、貫通力も優れている・・・Dr.GGの奴、スゲェ兵器を作ってくれたな」
ヴリトラはDr.GGのニヤニヤと笑う顔を想像しながら呟く。そしてラピュスも予想外の出来事に自分の右腕を見ながら呆然としていたのだった。
施設攻略作戦が遂に始まった。機械鎧兵士としての初陣に緊張しながらも戦うラピュスは生まれ変わった自分の強さと機械鎧の性能に思わず驚く。そんな状況で施設内の戦いはより激しさを増していくのだった。




