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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十二章~戦慄の要塞補給基地~
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第二百二十二話  激突! ジークフリートとジャンヌの猛攻

 C4をセットした直後にジークフリートとジャンヌに見つかってしまったヴリトラ達。彼等はヴリトラ達を仕留める為に戦闘態勢に入り、その中でジャンヌはラピュスと一騎打ちをすると言い出した。ヴリトラ達の前にはジークフリートが立ち塞がり、ラピュスを助ける事はできない。ヴリトラ達は一気に最悪な状態になってしまった。

 ユートピアゲートの装置前でヴリトラ達は目の前に立つ敵を睨み合う。ヴリトラ、ジャバウォック、ジルニトラの三人はジークフリートと、少し離れた所ではラピュスがジャンヌと向かい合っていた。どちらも戦いをまだ始めておらず、緊迫した空気が漂っている。


「どうした?まだ始めないのか?」

「俺達は用心深いんだよ。ましてや相手がブラッド・レクイエムの軍の司令官なら尚更だ。しかもお前は俺達の戦い方を分析済みなんだろう?だけど俺達にはお前の戦術とかは何も知らない。人数に差があっても俺達の方が不利だ」


 挑発するジークフリートにヴリトラは森羅を構えながら言い返す。ジャバウォックとジルニトラもヴリトラの隣で同じように武器を構えて警戒している。


「だがよぉ、ヴリトラ。このままジッとしていたら時間だけが過ぎていく。囮になってくれているジークフリート達も危ねぇぞ?」

「分かってる。だが、迂闊に近づけばやられちまう」

「それは分かるけどよぉ・・・」


 ジャバウォックは時間が無い事をヴリトラに小声で伝えて急ぐ様に話すが、七竜将全員で戦っても傷一つ付けられなかった相手にヴリトラはなかなか攻撃できずにいた。ジルニトラも不安そうな顔で二人の会話を聞いている。

 すると、痺れを切らせたのかジークフリートは三人を見ながら赤い目を光らせ、ゆっくりとバルムンクを上げて切っ先をヴリトラ達に向けた。


「・・・言ったはずだぞ?私は退屈なのがあまり好きではないと?お前達が来ないのなら・・・私から行かせてもらうぞ」


 そう言った瞬間、ジークフリートは地を蹴りヴリトラ達に向かって跳んだ。それを見たヴリトラ達は驚きフッと反応する。


「チッ!散開!」


 ヴリトラの言葉で三人はそれぞれ別々の方へ跳んでバラバラなる。その直後、ジークフリートは三人が立っていた場所に勢いよくバルムンクを振り下ろした。刃が地面に触れた瞬間、地面は轟音を立てて凹み周囲に砕けちった石片が飛び散る。


「な、何てパワーだ!」

「あんなの一撃でも受けたらお終いよ!」


 ジークフリートの怪力に驚くジャバウォックとジルニトラ。ヴリトラもジークフリートの力に目を鋭くしてジークフリートを睨む。ジークフリートはフッとヴリトラの方を見ると素早くバルムンクを上げてヴリトラの方に振った。するとバルムンクの刀身は鞭状となりヴリトラの方へ伸びる。ヴリトラは迫って来る刃を見て舌打ちをすると森羅で刃を弾く。


「フッ、素早いな。なら連続ならどうだ?」


 ヴリトラが自分の一撃を弾いたのを見たジークフリートはバルムンクの柄を引くともう一度勢いよく振る。するとバルムンクの刃は再びヴリトラに迫り、ヴリトラは再びそれを弾く。だがその後にまた刃はヴリトラに向かって行き連続でヴリトラに襲い掛かった。


「クソォ!」


 何度も何度も自分に襲い掛かる刃をヴリトラはひたすら弾いて行く。しかし一撃一撃が重く、弾いている内にヴリトラの顔にも疲れが出始める。ジークフリートはそんなヴリトラの疲労の表情を見て小さな笑い声を出す。その時、ジークフリートの背後からジャバウォックがデュランダルを両手振り上げながら現れた。


「テメェ!いい加減にしろよ、敵はヴリトラだけじゃねぇぉ!」


 ジャバウォックはジークフリートの背中目掛けてデュランダルを振り下ろして攻撃した。しかしジークフリートは振り返ろうともせずにヴリトラの方を向いている。そしてデュランダルの刃がジークフリートの背中に触れようとした次の瞬間、ジークフリートの後ろに六角形の水色の光と板が現れてジャバウォックの斬撃を止めた。


「何!?電磁シールド?」

「セメリト王国の城で使ったのを忘れたか?」


 前を向いたままジャバウォックに訊ねたジークフリートはバルムンクを元に戻し、振り返りながら横に振り後ろにいるジャバウォックに反撃した。ジャバウォックは素早く後ろへ跳んで斬撃をギリギリで回避する。すると今度はジルニトラがジークフリートの右数m位置からサクリファイスを撃つ。ジークフリートはバルムンクで飛んで来る弾丸を全て弾き落し、ジルニトラの銃撃を防いだ。ジルニトラはサクリファイスを撃ちながら全ての弾丸を弾き落とすジークフリートを見て眉間にしわを寄せる。


「クゥ、やっぱり普通の銃撃は通用しないか・・・それなら、グレネードを!」


 ジルニトラは一旦銃撃を止めてサクリファイスに取り付けられているグレネードの銃身を前にスライドさせて素早くグレネード弾を装填する。装填が終るとジルニトラはもう一度ジークフリートに狙いを付けた。


「これならどう!?」


 声を上げながらジルニトラはグレネードの引き金を引いた。銃口から吐き出されたグレネード弾はジークフリートに向かって真っ直ぐ飛んで行く。だがジークフリートは高くジャンプしてグレネード弾を回避する。かわされたグレネード弾は飛んだ先にあるコンテナに命中し爆発した。


「かわされた・・・でも、これでアイツはグレネード弾は回避するしかないという事が分かったわ」


 攻略の糸口を見つけて少し希望が見えて来た事に小さく笑うジルニトラはそのままジャンプしたジークフリートを目で追った。跳び上がったジークフリートは空中からジルニトラを見下ろしており、ジルニトラはグレネード弾の再装填リロード、空中のジークフリートに狙う。


「空中じゃ避けられないでしょう!」

「・・・いいや」


 そうジークフリートが口にした瞬間、ジークフリートの両足の裏から炎が吹き出し、なんとジークフリートはそのまま空中を移動した。そう、ジークフリートの両足もオロチと同じロケットブースターが内蔵された機械鎧だったのだ。

 いきなり空を飛んだジークフリートにジルニトラは勿論、ヴリトラとジャバウォックも驚く。


「と、飛んだ!?アイツもオロチみたいに空が飛べたの?」

「まぁ、ブラッド・レクイエムの機械鎧部隊の司令官ならおかしくないか・・・だけど、ヤバいな・・・」

「戦いでは制空権を手にした方が有利だ。俺達は空を飛べない、ますます面倒な事になった・・・」


 驚くジルニトラと戦況が悪くなった事に危機感を感じ始めるヴリトラとジャバウォック。ジークフリートはそんな三人を空から見下ろし、アーメットの下から笑い声を出す。


「フフフフフ、私はお前達と違いほぼ全身に機械鎧を纏っている。この全身甲冑フルプレートアーマーに見える姿も全ては機械鎧、言わば私は全身機械鎧兵士フルマシンメイルソルジャーなのだ」

「フルマシンメイルソルジャー・・・」

「そして、私の機械鎧には・・・」


 ジークフリートの言葉が途中で途切れると鎧の両肩部分の装甲が動き、中から内蔵機銃が姿を見せてヴリトラ達に銃口を向ける。


「大量の武器が内蔵されている!」


 そう言った瞬間、二つの機銃が同時に火を吹いた。銃口から無数の銃弾が吐き出されてヴリトラ達に向かって飛んで行く。しかもその機銃は自動で動いており、バラバラに立っている三人を均等に撃っていた。

 ヴリトラとジャバウォックは飛んで来る銃弾を森羅とデュランダルで弾き、ジルニトラは物陰に隠れて銃撃を凌いだ


「クソォ!全身が機械鎧で大量の武器が内蔵されているだと!?」

「まさに歩く武器庫だな。大したもんだよ!」

「感心してどうするのよ!」


 銃撃を防ぎながら上空のジークフリートを睨むジャバウォックに森羅で銃弾を弾きながら感心するヴリトラ、そして物陰に隠れながらヴリトラにツッコミを入れるジルニトラ。さっきまで攻撃をしていた三人はあっという間に守りの態勢に入ってしまい、そんな三人をシークフリートは空から嘲笑っていた。

 ヴリトラ達がジークフリートと戦っている光景をラピュスは驚きながら見ており、ジャンヌも楽しそうに見物している。どうやらこちらはまだ戦いが始まっていないようだ。


「ヴリトラ、ジルニトラ、ジャバウォック・・・」


 押されている三人を見て思わず名を口にするラピュス。そんな彼女の方を見てジャンヌは笑っていた。


「フフフ、お前の仲間達が危ないな?」

「クウゥ!」


 楽しそうに挑発して来るジャンヌにラピュスは歯を噛みしめながらジャンヌの方を振り向く。ジャンヌはラピュスの方を向いて笑いながら右手の人差し指を立てて「来い」という様に曲げる。


「さっさと私に傷をつけないとあの三人が殺されるぞ?」

「貴様ぁ・・・!」


 ラピュスはジャンヌを睨みながら騎士剣とハイパワーを構え直す。それを見たジャンヌは右手をゆっくりと下ろして全ての指を真っ直ぐ伸ばした。すると腕の機械鎧の指が突然伸びだし、先端の鋭いブレード状に変わる。右手が突然刀身へ変わったのを見てラピュスは驚いた。ジャンヌは刀身に変わった自分の右手を見て微笑む。


「私は戦う時には右手、もしくは左手を剣に変えて戦う。丸腰だと敵を油断させたところで剣を出し一気に奇襲を掛ける。しかもこの剣は超振動剣、どんなに敵が鎧などで身を守っても鎧ごと敵を切り裂く事ができるのだ」

「・・・ブラッド・レクイエムの首領のくせに随分と卑劣な戦い方をするのだな?」

「これも立派な作戦だ。お前が卑怯と思うのならそう思ってくれても構わない」


 ラピュスの挑発に乗る事無く余裕の態度のままのジャンヌ。ラピュスは改めて目の前にいる少女の姿をした機械鎧兵士が数多くの戦場を生き延びた歴戦の戦士だと感じる。ラピュスがそんな風に考えているとジャンヌはチラッとラプスの方を向き、ブレード状になった右手を下ろした。


「・・・さて、そろそろ始めよう。私もジークフリートと同じで退屈なのが嫌いでな」

「!」


 いよいよ戦いが始まる。ラピュスの表情には更に鋭さが増し、全身に緊張は走る。それに引き替え、ジャンヌは全く緊張している様子も見せずに余裕の表情のままだった。二人はしばらくの間、目の前の敵を見つめて出方を待つ。そして、最初に動いたのはラピュスだった。


「・・・ッ!」


 ラピュスは左手に持つハイパワーをジャンヌに向けて引き金を連続で引いた。放たれた弾丸は真っ直ぐジャンヌに向かって飛んで行く。だがジャンヌはその場から一歩も動かずに右手の超振動剣で弾丸を簡単に弾き落した。


「き、効かない・・・!」

「フッ、甘く見られたものだ。機械鎧兵士に正面からの銃撃が効くはずないだろう。そんな事は今までの戦いで理解しているはずだが?」

「クッ!」


 弾丸を弾きながら笑って挑発するジャンヌを見てラピュスは目を鋭くする。銃器が効かない為、ラピュスはもう剣で戦うしかない。だが、相手はブラッド・レクイエム社の社長で多くの戦場を生き延びてきた元軍人の機械鎧兵士。今までの相手と違い下手に近づく事は自殺行為だった。ラピュスは両手で騎士剣を握りながらジャンヌを警戒する。するとジャンヌは再び攻撃せずに警戒に入ったラピュスを見て呆れた顔を見せた。


「ハァ・・・また警戒か?さっきも言っただろう、私は退屈が好きではないと?」

「敵の大将と戦うのだ、警戒して戦うのは当然だろう」

「お前の場合は警戒しているというよりも私を恐れていると言った方がいいかもしれないがな」

「クッ、言いたい事を・・・!」

「文句があるのなら掛かって来い。私もそれを望んでいるのだからな!」


 ジャンヌは地を蹴り、いきなりラピュスに向かって跳んで来た。突然自分に向かって跳んで来るジャンヌに驚くラピュスは驚いて目を見張る。そんなラピュスにジャンヌは右手の超振動剣をラピュスに向かって振り下ろした。ラピュスは騎士剣を横にしてジャンヌの振り下ろしを何とか防いだ。刃と刃が重なり火花と金属が削れる音が周囲に広がる。


「フフフフ・・・」

「ううっ!な、何て重さだ!」


 笑みを浮かべるジャンヌとジャンヌの一撃を防いで表情を歪めるラピュス。ジャンヌの振り下ろしが予想以上に重く、ラピュスは腕を震わせながら必死にジャンヌの攻撃を防いでいる。するとジャンヌは騎士剣から超振動剣を放すとそのままラピュスに連撃を放った。

 ラピュスは後退しながらジャンヌの連続攻撃を騎士剣で防ぎ続ける。しかし、ジャンヌの細腕からは想像もできない程の重い攻撃を何度も防ぎ、その度にラピュスの両手に衝撃が走った。ラピュスの顔の歪みは徐々に酷くなり、それを見ているジャンヌはとても楽しそうな顔をしている。


「どうした?メリュジーヌを倒したのだろう?それにしては随分と手応えが無いな。お前の勝利はまぐれだったのか?」

「そんなの・・・まぐれに決まっているだろう!機械鎧兵士でもない私が敵の幹部に勝てたのは運がよかったからだ」


 ジャンヌの連撃が止まり、二人は剣を交差させながら目の前に相手と向かい合い会話をする。火花が目の前で飛び散る中、ラピュスはジャンヌを睨み、ジャンヌは余裕の笑みでラピュスを見つめた。


「ほぉ?自分に力が無い事を認めるか。どうやら自分の力を過信している訳ではないようだな」

「当たり前だ。私は騎士、常に相手が私よりも強者であると考えて戦っている。自分の力に溺れれば、お前達と同じだ!」

「言うな?ならその力に溺れる者に倒されたら、どんな気持ちになる?」


 そう言った直後、ジャンヌは左手の指を真っ直ぐ伸ばす。その瞬間、ジャンヌの左手の指も伸びて右手と同じ様にブレード状に変わった。そしてジャンヌはそのまま左手の超振動剣を勢いよく横に振り攻撃する。

 ラピュスは真横から迫って来る別の刃に驚き咄嗟に後ろへ跳び、超振動剣の刃はラピュスがさっきまで経っていた場所を通過する。幸い刃はラピュスの鎧を掠っただけでラピュス自身に怪我は無かった。ラピュスは態勢を立て直し、両手を超振動剣に変えて笑っているジャンヌを睨む。


「ハァ・・・まさか、左手も剣に変わるとは思わなかったぞ」

「私は接近戦が得意だからな、機械鎧に内蔵されている兵器も殆どが近接戦闘用の物になっている。私は接近戦では無敵よ」


 両手に超振動剣を交差させながらしばらくラピュスを見つめるジャンヌ。ラピュスは二刀流となったジャンヌを見て彼女のバトルパターンが多く存在する事に危機感を感じている。パターンが多けれ相手の動きも読み難くなり自分が更に不利になってしまったからだ。だがジャンヌはそんなラピュスの都合などお構い無しに戦いを続ける。

 ジャンヌは交差させていた両手の超振動剣を横へ伸ばしラピュスに向かって走り出し、再びラピュスに連撃を撃ち込んだ。ラピュスは騎士剣でラピュスの連続切りを何とは防ぐが全てを防御する事はできず、腕や脚、脇腹などに無数の切傷が生まれる。


「ううっ!」


 体中から伝わる痛みに表情は歪み、苦痛の声を漏らすラピュス。ジャンヌはそんなラピュスを見ると、さっきまで楽しそうに笑っていたのに今度はガッカリした様な顔を見せる。


「・・・本当にお前がメリュジーヌを倒したのか?ここまで弱いとそれも疑わしくなってきたな」

(クウゥ、コロコロと表情を変える女だな・・・でも、まったく攻撃の力は変わらない。表情を変えながら力を維持し続けるとは、何て器用な女だ・・・)


 メリュジーヌを倒したのはラピュスではないかと考え始めるジャンヌと表情を変えながら力をコントロールするジャンヌに心の中で驚くラピュス。余裕で戦うジャンヌに必死に抵抗するラピュス、二人の戦況はまさに正反対だった。

 防戦一方のラピュスの顔には少しずつ疲労の色が見え始め、だんだん騎士剣の動きも鈍くなってきている。そんなラピュスに一瞬の隙ができた瞬間にジャンヌはラピュスの腹部にキックを撃ち込んだ。


「うわああぁ!」


 腹部から伝わる痛みに声を上げるラピュスはそのまま後ろに飛ばされて行き、仰向けに倒れてしまう。持っていた騎士剣も手から離れて少し離れた所に落ちた。ジャンヌは倒れているラピュスを見て左手の超振動剣を手の形に戻して頭を掻く。


「あ~あ、残念。これじゃあ私に勝つ事は愚か傷をつける事も無理ね。少しでも期待した私はバカだった・・・」

「う、うう・・・」


 予想以上にラピュスが弱かった事にガッカリするジャンヌを見てラピュスは倒れたまま歯を食いしばり悔しそうな顔を見せている。

 離れた所ではヴリトラはジークフリートの銃撃を防ぎながらラピュスの方を見ていた。


「ラピュス!」

「マズイわね、早く助けに行かないと!」


 物陰に隠れていたラピュスは銃撃のタイミングを見計らってラピュスを助けに行こうとする。しかしジークフリートの銃撃の勢いは激しく、なかなか飛び出す事ができなかった。そんなヴリトラ達をジークフリートは空中で見下ろしている。


「フッ、お前達にはあの女が死ぬまでそこでジッとしていてもらうぞ」

「ふざけるな!何時までもテメェ等の思い通りにさせるかよ!」


 そう言ってジャバウォックは機銃の弾丸を弾いた瞬間に走り出してジークフリートの真下へ移動した。真下なら機銃の射程に入らない為、狙われる事はない。ジャバウォックはデュランダルを握りながらジークフリートが飛んでいる高さまで一気に跳び上がった。ジークフリートは目の前に現れたジャバウォックを見て意外そうな声を出す。


「ほぉ?機械鎧でない普通の足でこれ程のジャンプ力とはやるな?」

「そんな余裕の態度もここまでだっ!」


 ジャバウォックはジークフリートに向かって袈裟切りを放った。しかしジークフリートはジェットブースターを器用に動かして後ろに下がりジャバウォックの斬撃を簡単にかわしてしまう。そこへジークフリートは鞭状になったバルムンクでジャバウォックに反撃する。ジャバウォックは咄嗟にデュランダルで刃を防ぐがジャンプしている状態の為、力を押さえられずに地面に向かって飛ばされてしまい、地面に背中から叩きつけられてしまう。


「ぐおおおぉ!?」

「制空権を持つ者が戦場で有利に立つ、お前達ならそれぐらい知ってるはずだ」

「ああ、知ってるさ」


 ジークフリートがジャバウォックを見下ろしながら呟いていると今度はヴリトラは森羅を鞘に納めた状態でジャンプし、ジークフリートの背後から現れる。気付くのが遅れたジークフリートは振り返り反撃しようとするが既に遅かった。


「皆藤流剣術壱式、煉獄居合!」


 ヴリトラは勢いよく鞘から森羅を抜き、ジークフリートに居合切りを放つ。ジークフリートは咄嗟に素早くバルムンクで森羅の刃を止めるがその衝撃までは止められずに地上に向かって押し飛ばされた。


「やったか?」

「・・・チッ」


 初めて攻撃が決まった事に声を上げるヴリトラと気に入らなそうに舌打ちをするジークフリート。ジークフリートは地面に激突する前に空中で一回転して体勢を立て直して着地する。ヴリトラも着地して離れた位置にいるジークフリートを見ながら森羅を構えた。ジルニトラは倒れているジャバウォックの下へ駆け寄り様子を見ていた。


「ジャバウォック、大丈夫?」

「ああ、この程度でくたばるほど軟じゃねぇよ」


 ゆっくりと起き上がるジャバウォックを見てジルニトラはホッとする。


「それより、ジークフリートは俺とヴリトラが何とかするから、お前はラピュスの援護に行け!」

「OK!」


 ジルニトラはジャバウォックの無事を確認し、ラピュスの下へ向かおうとする。だが、いきなりジルニトラの目の前を鞭状になったバルムンクの刃が横ぎり驚いたジルニトラは足を止めた。刃はジークフリートの方へ戻って行き刀身へ姿を戻す。ジルニトラはジークフリートの方を向いてサクリファイスを構えて彼を睨む。


「言ったはずだ。あの女を助けたければ私を倒して行けとな?私も女王に命令された立場なのだ、みすみす通す訳にはいかない」

「チィ、やっぱり簡単には行かせてくれないわよね・・・」


 ジークフリートの隙のない動きに悔しがるジルニトラ。ヴリトラとジャバウォックもジークフリートを見て森羅とデュランダルを両手で強く握った。ラピュスも起き上がりながら近づいて来るジャンヌを見て鋭い視線を向けている。ブラッド・レクイエム社トップ2の力の前にヴリトラ達は瞬く間に防戦一方となってしまう。

 遂にジークフリート、ジャンヌとの戦いが始まった。しかしその強大な力の前にヴリトラ達はあっという間に不利になってしまう。ヴリトラ達には勝機はあるのだろうか、そして無事に基地を脱出できるのだろうか!?


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