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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十一章~新たな同志を求めて~
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第二百八話  反撃開始! 姫騎士の連携と覚悟の騎士剣


 何らかの方法でブラッド・レクイエム社に操られラピュス達を攻撃するビビット。ブラッド・レクイエム社の道具として利用される彼女を解放する為にビビットと戦う事を決意するラピュス達。そしてレレットも姉を助ける為に戦いに参加する。

 ビビットを囲み武器を構えるラピュス達。それぞれ自分の得物を強く握ってビビットに意識を集中させる。一方でビビットは光の無い目で目の前にいるラピュス、ララン、レレットの三人をジッと見つめている。しかし超振動騎士剣を下ろしたままで明らかに無防備状態だった。


「・・・構えもせずに私達を見てる」

「ああ、どう見ても隙だらけだ・・・」


 ラランとラピュスはただ突っ立っているだけのビビットをジッと見つめながら口を動かして騎士剣と突撃槍をゆっくりと構え直す。そんな彼女達の額からは微量の汗が流れていた。無防備状態にもかかわらず、なぜか攻撃できなかったのだ。


「・・・なぜだ?どうして無防備な敵を目にして自分が追い込まれている様な感じがするのだ・・・?」

「多分、本能ね・・・」


 攻撃できない理由を考えているラピュスにレレットが騎士剣を構えながら言った。


「本能?」

「戦士としての本能が相手の強さを感じ取り、迂闊に攻め込んだら危ないと体に知らせているのよ。嘗ての姉さんだったら立っているだけで敵を怯ませるなんて事はできなかったはずだけど・・・」

「・・・機械鎧兵士になったせい?」

「それは分かんないわ・・・」


 自分の姉が姿だけでなく戦士としての強さまで変わった事にレレットは驚き、同時に姉を変えてしまったブラッド・レクイエム社に対する怒りを感じる。レレットは騎士剣を強く握りながら歯を噛みしめた。


「・・・姉さんは立っているだけで恐怖をまき散らす存在に変えたブラッド・レクイエムを私は許せない・・・必ずその報いを受けさせてやるわ」

「レレット殿・・・」

「でもその前に、まずは姉さんを解放し、この町を救う事が先よ」

「・・・ハイ!」


 レレットが騎士としての自分を、やるべき事を見失っていない事を確認しラピュスは少し安心する。ラピュス達は再びビビットに意識を集中させてビビットの出方を待った。

 しばらくラピュス達はビビットが動くのをジッと待っていたが、まったく動く気配がない。まるでラピュス達が攻撃して来るのを待っているかのようだった。


「・・・姫様、何時までこんな状態が続くんです?」


 ビビットの右斜め後ろに立つヴィクティがパリーエに問いかける。パリーエはビビットの左側面に立ったまま騎士剣を握ってジッとしていた。


「まあ待て。彼女はわらわ達にとって未知の相手、そんな相手に無暗に突っ込んで行ったら返り討ちに遭うのが関の山だ。ここか戦闘経験のあるラピュス殿達に任せよう」

「うぅ~・・・」


 ラピュス達に全てを任せないといけない事が納得できないらしく、ヴィクティは不服そうな顔を見せる。そんな二人の会話を見ていたラピュスも難しい顔をしていた。


(・・・ヴィクティ殿の言うとおり、このままじゃ何時まで経っても状況は変わらない。とにかく動いてそこから攻略の糸口を見つけないと・・・)


 このまま何もせずに時間だけが過ぎていくだけではいけないと考えたラピュスは右手で騎士剣を持ち、左手でハイパワーを手に取る。


「・・・ビビット殿、私達はこの町を、そして陛下達をお守りする為に貴方を倒します・・・許してください!」


 ラピュスはビビットに謝罪するのと同時にハイパワーのビビットに向けて引き金を引く。銃口から吐き出された無数の弾丸はビビットに向かって飛んで行くが、ビビットは素早く超振動騎士剣で弾丸は弾き落した。それを見たラランは素早く移動してパリーエの隣まで移動し突撃槍を構える。


「そ、そなた・・・」

「・・・王女様、私が先に行って攻撃します。動きを止めている隙に・・・」


 ラランはそう言ってビビットに向かって突っ込んで行く。残されたパリーエはラランの後ろ姿を見て真剣な表情を見せた。彼女はラランの言葉から「自分が相手の動きを止めている隙に攻撃しろ」という指示を理解したのだ。


「・・・あの者、幼いのにしっかりしておる」


 パリーエのラランの勇姿を見て少し見直したのか小さく微笑んでラランの後を追う様に走り出した。

 ビビットに急接近したラランは突撃槍を両手で握りながら勢いよく突きを放つ。ビビットはラピュスの銃撃を超振動騎士剣で防いでおり完全に動きを封じられていた。完全に無防備状態の左側から槍先がビビットに近づいて行く。だが次の瞬間、ビビットの左腕が素早く動きラランと突撃槍を掴み止めてしまう。


「!」


 銃撃を防いだまま自分の突きを止めたビビットにラランは驚く。だがこれでビビットは両手を塞がれて動けなくなった。そこへパリーエが素早くビビットの背後に回り込み、がら空きの背中に騎士剣で突きを放つ。ビビットは甲冑で全身を守られている為、騎士剣で大ダメージを与えるのなら守りの薄い箇所を攻撃するしかない。パリーエは鎧と鎧の間にある僅かな隙間に向かって騎士剣を突く。だが、ビビットは視線を動かして背後にいるパリーエに意識を向ける。そして左手でラランの突撃槍を強く握り、ラランごと突撃槍を背後にいるパリーエに向かって投げ飛ばす。


「!?」

「な、何!?」


 片手で自分を飛ばした事に驚くラランと自分の方を向かずに自分にラランを投げて迎撃してきた事に驚くパリーエ。投げ飛ばされたラランはそのままパリーエに激突し、大きく後ろに飛ばされてしまう。二人は地面に仰向けに倒れ、突撃槍と騎士剣は宙を舞い地面に刺さる。


「ララン!」

「姫様!」


 二人を見てラピュスとヴィクティは思わず叫ぶ。それと同時にラピュスは銃撃は止まり、ビビットはその瞬間にラピュスに向かって跳んで行き距離を詰める。


「しまった!」


 一瞬の隙を突かれて接近を許してしまったラピュスは目の前のビビットを見て表情を固める。超振動騎士剣を振り上げるビビットを見てラピュスは騎士剣で防ごうとしたが間に合わない。ビビットが超振動騎士剣を振り下ろした瞬間、レレットが騎士剣でビビットの振り下ろしを止めてラピュスを守った。レレットの騎士剣とビビットの超振動騎士剣の刃が触れ合い火花が飛び散る。


「レレット殿!」

「迂闊よ!?」


 ビビットの超振動騎士剣を払い反撃するレレット。ビビットは表情を変える事無く超振動騎士剣でレレットの斬撃を防いでいる。体勢を整えたラピュスはハイパワーをしまい騎士剣を両手でしっかりと握った。

 レレットはビビットに連続で斬撃を放つもビビットは全ての攻撃を軽々と防いでいる。ラピュスの目の前では同じ顔を持つ二人の騎士の激しい攻防が繰り広げられていた。そんな中、レレットは無表情のビビットの顔を見つめながら静かに口を動かした。


「姉さん、私は貴方との訓練試合で一度も勝てた事はなかった。同じ日に生まれた双子でありながら貴方は私よりも強く、仲間からも信頼されており、私もそんな姉さんを誇りに思っていた。そして、それと同時にいつかは超えたいと思う目標でもあったわ。でも、貴方は私が超える前に逝ってしまった・・・。だからせめて、今この戦いで貴方を倒し、貴方を解放するのと同時に、貴方を超えて見せる!」


 届くはずのない言葉をビビットに向けるレレット。信頼する姉であるのと同時に超えるべき目標だったビビットを彼女が生きている間に超えたかった。その思いが果たす為、そして姉を救う為にレレットは操り人形と化したビビットに剣を向ける。

 レレットはビビットに勢いよく袈裟切りを放ち攻撃した。ビビットはその袈裟切りを超振動騎士剣で流し、そのまま反撃する。レレットは素早く騎士剣でビビットの攻撃を止めるが予想以上に力が掛かりレレットの表情が若干歪む。


「お、重い!これが機械鎧兵士の力なの・・・?」


 想像以上の機械鎧兵士の力にレレットは思わず声を漏らす。騎士剣を握る彼女の手はあまりの重さと衝撃に震えており、レレットは必死に耐えていた。そんなレレットをビビットは光の無い目で黙って見つめている。二人の騎士剣の刃が触れ合い、火花と金属が削れる様な高い音が響く。レレットがビビットの攻撃を防いでいるとビビットの右側面にラピュスが現れてビビットに袈裟切りを放った。それに気づいたビビットはレレットの騎士剣から超振動騎士剣を放してラピュスの斬撃を防ぐ。


「レレット殿、今です!」


 ラピュスの合図を聞いたレレットは騎士剣を構え直して勢いよく下から騎士剣を振り上げてビビットの超振動騎士剣を弾く。ビビットの超振動騎士剣は宙を舞い、三人から離れた位置で地面に刺さる。


「・・・・・・」


 地面に刺さった超振動騎士剣を黙って見つめるビビット。そこへすかさずラピュスとレレットの攻撃は続く。正面からの二人の斬撃を後ろに跳んで回避したビビットは着地してラピュスとレレットを見つめる。

 ビビットの数m後方では倒れているラランとパリーエ、そしてパリーエを心配して駆け寄ったヴィクティの姿があった。


「ううぅ・・・」

「姫様、大丈夫ですか?」

「あ、ああ、わらわはなんともない・・・ララン殿、そなたは大丈夫か?」

「・・・平気です」


 起き上がり後頭部を擦りながらラランを心配するパリーエと無表情のまま頬を擦るララン。二人を見て大した怪我はないと知ったヴィクティはホッとする。ラランとパリーエは立ち上がり、地面に刺さっている自分達の得物を抜いてビビットの方を向く。


「アイツ、武器を持っていないぞ・・・」

「・・・隊長とレレット殿が剣を弾いた」

「なら、今が攻撃のチャンスではないのか?」


 丸裸でしかも背を向けているビビットを見て攻撃のチャンスと考えるパリーエ。しかしラランはジッとビビットを見つめて首を横に振った。


「・・・機械鎧兵士はそんなに甘くありません。寧ろ、今みたいな状態で無暗に突っ込むのは危険です」

「そ、そうなのか・・・?」


 機械鎧兵士の事に全く無知はパリーエはラランの言葉を聞いて驚く。だが、ヴィクティは慎重すぎる戦いにもう我慢できないのかビビットの背中を見つめながら騎士剣を構えた。


「そんな弱腰でどうする?敵があっちの二人に意識を向けている今がチャンスだ!この隙に一気に叩く!」


 ヴィクティはラランの話も聞かずに背を向けているビビットに向かって走り出した。


「・・・ッ!ダメ!」


 走り出すヴィクティを見て珍しく声を上げるララン。しかし彼女が止めるのも聞かずにヴィクティはビビットに突っ込んで行く。その光景を見たラピュスとレレットもヴィクティも驚いている。そしてヴィクティがビビットの1m手前まで来て騎士剣を振り上げた瞬間、ビビットは視線だけを動かして後ろを見た。そして右腕の後前腕部の装甲を動かし、腕の中から何かが飛び出す様に伸びる。よく見るとそれは黒い両刃を持つ剣だった。そしてビビットは振り返りながら剣を振り、背後にいるヴィクティを斬る。


「がはっ!?」


 予想外の反撃を受けてヴィクティの表情が歪む。ビビットの出した剣は超振動剣だったらしく、ヴィクティの体を鎧ごと切り裂きヴィクティの体から鮮血が吹き出る。


「そ・・・そんな・・・の・・・卑怯・・・だ・・・」


 ビビットの超振動剣を苦痛の表情で見つめながらヴィクティは俯せに倒れ、そのまま息絶えた。


「ヴィクティーーッ!」

「・・・ッ」


 部下が殺され思わず名を叫ぶパリーエと気の毒そうな顔で目を逸らすララン。ラピュスとレレットもラランと同じ様な顔で動かなくなったレレットを見つめている。

 右腕の超振動剣を払い、刃に付いた血を落すとビビットはそのままラランとパリーエに向かって跳んだ行く。向かって来るビビットを見てラランは突撃槍を構え直し応戦する。ビビットはラランに向かって超振動剣を振り下ろして攻撃した。ラランは素早く突撃槍を横にして振り下ろしを止める。


「・・・ううっ!」


 両手に掛かる重さに歯を食いしばるララン。後ろへ跳ぶのと同時にベレッタ90を抜いて発砲する。数発の弾丸はビビットに向かって飛んで行くも寸前で超振動剣によって弾き落された。銃撃を防がれたのを見てラランは増やしそうな顔を見せる。そこへパリーエがビビットの左側面へ回り込んで騎士剣で攻撃した。ビビットはパリーエの斬撃を左腕で簡単に止める。


「ぐううぅ!」

「・・・・・・」

「おのれぇ!よくもヴィクティを!」


 仲間を殺されて怒りを露わにするパリーエをビビットは無表情で見つめている。パリーエは騎士剣を握る両手に力を入れるが騎士剣を止めているビビットの腕を全く動かなかった。


「う、動かない・・・これが、機械鎧兵士・・・」


 機械鎧兵士の力を目にして微量の冷汗を掻くパリーエは呟いた。そんなパリーエをジッと見つめていたビビットはがら空きになっている腹部を一瞬チラッと見ると素早く蹴りを入れてパリーエを後方へ蹴り飛ばす。


「ぐあぁ!」


 突然の蹴りに驚くパリーエは騎士剣を落し、数m先へ飛ばされて仰向けに倒れる。ビビットは飛ばされたパリーエの後を追う様に地を蹴ってパリーエに急接近した。そしてパリーエの前まで来ると超振動剣を振り上げて止めを刺そうとする。倒れた状態で騎士剣も手元にないパリーエは抵抗する術を失い覚悟を決めて目を閉じた。その瞬間、ビビットは超振動剣を振り下ろす。


「・・・・・・ん?」


 目を閉じていたパリーエは何も起こらない事を変に思い、ゆっくりと目を開く。すると、目の前にはラピュスとレレットが自分達の騎士剣を交差させてビビットの振り下ろしを止めている光景があった。


「う、うううっ!」

「パリーエ王女、大丈夫、ですか?」

「・・・・・・あ、ああ。すまない」


 ラピュスとレレットは両腕に力を入れてビビットの重い振り下ろしを何とか食い止めている。その光景を見たパリーエは呆然としながら二人を見つめて頷く。

 パリーエの無事を確認した二人はビビットの方を向いて両腕に更に力を入れてビビットの超振動剣を押し上げようとする。


「もう、これ以上・・・」

「誰も死なせる訳にはいかない!」


 ヴィクティを死なせてしまった事で二人の意思は更に強くなり、力を合わせてビビットの超振動剣を押し上げる。押し上げられて体勢を崩したビビットは後ろに下がり、その隙にラピュスは倒れているパリーエを起こし、レレットは騎士剣を両手で強く握った。すると噴水の水が生き物の様に動きだしレレットの騎士剣と刀身を包み込んだ。気の力を水を纏った騎士剣を構えたレレットはビビットに向かって袈裟切りを放つ。


水刃剛撃剣すいじんごうげきけん!」


 レレットは気の力を使った剣技を放ち、水の刃はレレットの漆黒の鎧に命中。鎧の一部が砕けてその下にあるビビットの体に傷を負わせた。


「!?」


 まともに攻撃を受けてビビットの表情が初めて歪んだ。それを見たビビットはピクリと反応を見せて思わず動きを止める。ビビットは後ろに二歩下がって小さく俯く。しばらく動かずにジッとしており、ラピュス達はそんなビビットを黙って見つめていた。


「ど、どうしたのだ?」

「分かりません・・・」


 突如動かなくなったビビットを見てパリーエとラピュスはまばたきをする。すると、俯いていたビビットはゆっくりと顔を上げた。


「・・・レ、レレット・・・」

「ッ!?・・・ビ、ビビット姉さん?」


 死んでいるはずのビビットが突然喋った事にレレットは驚き、ラピュス達も目を見張って驚いている。


「姉さん、どうして?姉さんは死んだはずなのに・・・」

「私にも分からない・・・でも、なぜか喋れるようになったの・・・」

「ウソ・・・これは夢なの?」


 ビビットが喋ったという現実が受け止めきれていないのか、レレットは目を丸くしたままビビットを見つめている。勿論ラピュス達も同じだった。


「あの武術大会でジークフリートとか言う男に殺された後、私はコラール帝国に連れていかれた・・・そしてなぜか意識が戻り、気が付いたら私は体を作り変えられて奴等の言いなりに・・・。必死で抵抗しようとしたけど・・・声も出ずに、体も言う事を聞かなくて・・・」



 自分の身に何が遭ったのかを掠れたような声で説明するビビット。レレットやラピュス達はそれを黙って聞いていた。


「それから私は・・・ブラッド・レクイエムによって多くの人々の命を奪った・・・抵抗する事もできない人や、戦意を失った戦士達。私の体は意思とは正反対に目の前の人の命を無慈悲に奪って行った・・・私はただ、言う事を聞かない体の中でそれを見ているだけ・・・・・・私は文字通り、人を殺すだけの悪魔となってしまった・・・」

「姉さん・・・」


 自分の体が勝手に他人の命を奪う、涙を流しながら自分の苦しさを訴えるビビットをレレットも悲しそうな声を出す。


「・・・レレット、お願い、私を殺して。私の意識が残っている内に・・・」

「で、でも・・・」

「今は私の意思でなんとか言う事を聞いてくれてるけど、長くは持たない。またさっきの様に私の言う事を聞かずにアンタ達に襲い掛かってしまう。だから早く・・・!」

「姉さん!」


 必死で言う事の聞かない自分の体を押さえ込むビビット。そんなビビットに涙を流すレレットは俯く。すると騎士剣を構え直して涙を流しながらビビットを見つめた。


「・・・私、もう二度と泣かない。姉さんを超える最高の近衛騎士になって国を守り続ける!・・・・・・だから・・・」


 騎士剣を握る手を震わせるレレット。ビビットは涙を流しながら自分を見ている双子の妹を泣きながら見つめ続ける。


「・・・許して、ビビット!」


 力の入った声でそう言ったレレットはビビットの体を騎士剣で斬る。さっきの一撃で鎧が脆くなっていたせいか普通の斬撃でもビビットを斬る事ができた。斬られたビビットの体は仰向けにゆっくりと倒れていく。だがビビットは涙を流しながら微笑んでいた。


(・・・ゴメンね、自分の姉を殺せなんて言って・・・でも・・・ありがとう、レレット。これで、もう誰も・・・殺さずに・・・済む・・・わ・・・・・・)


 ゆっくりと倒れながら心の中で妹に謝罪と感謝の言葉を告げるビビット。やがて仰向けに倒れたビビットは目を閉じ、笑顔のまま息を引き取った。

 ビビットが息を引き取ったのを見たレレットは騎士剣を落し、ガクッと両膝を曲げて両手を地面に付けて俯き涙を流す。自分の姉を斬る事は覚悟していた。だが、自分の意思を取り戻した姉を斬る事になるとは思ってもいなかった。しかし彼女は王国の為にワズロの町を守る為に心を鬼にし、姫騎士としてビビットを斬ったのだ。


「う、うう・・・」

「レレット殿・・・」


 必死で泣くのを堪えようとするレレットを見てラピュスは呟く。ラランもジッとレレットと倒れたビビットを見つめており、パリーエも自分の部下を殺した黒騎兵が倒されたのに喜ぶ事ができず、逆に気の毒に思っていた。

 長かった姫騎士達の戦いも終わりを告げる。しかし、ヴィクティは戦死し、レレットの心には大きな傷が出来てしまう。しかし、それは彼女がより強い姫騎士になる為の試練であり、新たな決意でもあったのだった。


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