第十九話 騎士団長 ガバディア・ロンバルト登場!
騎士団依頼所の前にはリンドブルム以外の七竜将とラピュスが立ってリンドブルムが来るのを待っている。既にヴリトラ達が集まってから数分が経っており、ヴリトラ達は辺りを見回してリンドブルムを待っている。
リンドブルムとラランは依頼所の見える所まで来ており、既に集まっているヴリトラ達を見つけて走る速度を上げながら手を振った。
「お~い!」
「・・・あっ!やっと来たなぁ?」
「おせぇぞぉ!もう正午過ぎちまったんだぞ?」
「ゴメンゴメン」
ヴリトラとジャバウォックが走って来るリンドブルムを見つけ、ニーズヘッグ達も待ち草臥れたと言いたそうな顔でリンドブルムを見る。それと同時にリンドブルムの隣を走っていたラランの事にも気づいた。
「あら?ラランも一緒だったの?」
「うん、さっきそこでバッタリ会ってね」
ジルニトラにラランと一緒にいる理由を説明するリンドブルム、その隣ではラランがラピュスの方を向いて先程の一件の事を説明する。
「・・・隊長、さっきそこでコルボロの翼が暴動を起こしてました」
「暴動だと?」
「そう言えば、さっき数人の騎士がリブルとラランちゃんが走ってきた方へ向かって行くのを見たよね?」
「ああ。何かと思えば暴動の鎮圧だったのか・・・」
ファフニールがラピュスの隣で少し前に数人の騎士が依頼所の前を通過した時の事を思い出して話し、ラピュスもその理由を知って納得する。
「確かコルボロの翼はわずか二人の傭兵団だった筈だ・・・」
「二人って・・・二人で傭兵団って言えるのかよ?」
「ハハハ、ヴリトラも僕と同じことを言ったね・・・」
ラピュスの説明を聞いてヴリトラはコルボロの翼が僅か二人で傭兵団を名乗っている事に疑問を抱いて思わず尋ねる。そんなヴリトラをリンドブルムは苦笑いをしながら見ていた。
「いくら傭兵団と言っても性格の悪い男が二人だけだ。騎士達がもう鎮圧して拘束している頃だろう」
「・・・コルボロの翼は私とリンドブルムが倒しました」
「・・・何?」
ラランの言葉の後に僅かな沈黙が生まれ、ラピュスがラランを見下ろして訊き返す。無表情でラピュスを見上げるラランと鼻を擦りながら笑っているリンドブルムの顔がラピュスの目に飛び込んできた。
「お前達が倒したのか?」
「・・・はい。あまり実力はありませんでした」
「凄く弱かったよ?」
表情を変えずに戦った時の事を話す二人。そんな二人を見てニーズヘッグが頭を掻きながら、オロチが腕を組みながらリンドブルムとラランを見下した。
「ソイツ等が弱かったんじゃなくて、お前達が強すぎたんじゃないのか?」
「あり得るな。子供とは言え、機械鎧兵士と姫騎士なのだ。そこら辺のゴロツキなど敵ではない・・・」
「確かにそうね」
「二人とも普通の大人達以上の力を持ってるし、沢山訓練を積んでるんだもんね?」
ニーズヘッグとオロチの納得のいく説明に頷くジルニトラとファフニール。リンドブルムはニヤニヤと笑いながら、ラランは相変わらず無表情のまま四人を見ている。
そんな時、リンドブルムがある事に気付いて今度はラランの方を向き、少しテンションを上げてラランに話しかける。
「そう言えば、ララン、さっきの技は何だったの?」
「・・・技?・・・ああぁ、烈風天馬槍の事?」
「そうそう!それ!どうやって風を起こしたの?」
次第にテンションを上げていくリンドブルムにラランは少し動揺を見せて一歩下がる。話の内容が分からないヴリトラ達は小首を傾げて顔を見合っている。
「おい、リブル。さっきから何の話をしてるんだ?」
話しについて行けず、ヴリトラがリンドブルムに何の話をしているのか尋ねる。リンドブルムはヴリトラ達の方を向いてコルボロの翼との戦いでラランが見せた技の事を話す。話しを聞いている内にヴリトラ達も少しずつ興味を持ち始めたのか依頼所に入る事も忘れてリンドブルムの話しを聞いた。
「それで、ラランの突撃槍の穂の部分に風が集まり出してその男を吹き飛ばしたっていう事だな?」
「そう。僕、最初にそれを見た時に魔法かと思ってビックリしちゃったよ」
「えっ?魔法!?」
リンドブルムの説明を聞いているヴリトラの後ろからファフニールが顔を出して目を輝かせる。ファンタジー好きなファフニールなら必ず食い付く話題だ。だがそんな時、ニーズヘッグが以前ラピュス達から聞いた話を思い出した。
「ちょっと待てよ?確か魔法は数十年前に消えて今では使う奴がいないって言ってなかったか?」
「そう言えば、そんな事言ってたな・・・」
ニーズヘッグの話しを聞いたジャバウォックも思い出したのか腕を組んで考え込む。他の七竜将も不思議そうな顔をしてラランの起こした風の事を考えていると、ラピュスが話しに加わり説明し始める。
「それは魔法ではなく、『気』の力で起こした突風だ」
「気の力?」
考え込んでいたヴリトラがラピュスの方を向き訊き返す。他の七竜将も一斉にラピュスの方を向く。ラピュスは頷いてラランの隣まで来ると、彼女の肩にそっと手を置いて更に細かく説明をし始めた。
「騎士達は訓練学校で騎士の戦い方を学ぶのと同時に気の使い方も学ぶのだ。騎士達は訓練の中で気を操るコツを掴み、戦いの中で次第に気を自由に操れるようになる。気の力はそれぞれ火、水、風、土の四系統になっており、武器や鎧にその気を纏わせて攻撃や防御にも使える。因みにラランは風の気を使える」
「それでさっき突風を巻き起こして男を吹き飛ばしたんだね?」
「・・・うん」
騎士達の操る気の力を聞いていた七竜将は傭兵として、そしてファンタジーを知っている者として興味が湧いたのか真剣にラピュスの話しを聞いていた。
「でもよぉ、自然の力を自由に操れるっていうなら、やっぱり魔法なんじゃねぇのか?」
ジャバウォックが騎士の気を操る力はやはり魔法と呼ぶべきではないのかと話すが、ラピュスはジャバウォックの方を向いて首を横に振った。
「いや、魔法は如何なる状況でも自由に使え、もっと複雑な事が出来る。だが気の力は気を使う条件を揃える必要がある。例えばラランの風を操る気は風が吹いていたり、風の吹く場所でないと使えないのだ。つまり、風がないと使う事は出来ないという事だ。洞窟や建物の中ではまず使えない」
「気で操れる物がないと力は使えないって事か。火の気は火がないと、水の気は水がないと、土の気は土がないといけない。意外と使い方が難しいんだな?」
「まぁ、確かにな・・・」
気の力の短所を知って難しそうな顔を見せるヴリトラ。そんなヴリトラの言葉にラピュスは小さく苦笑いをして答えるしかなかった。気の説明を一通り終えて一同はふと何か大事な事を忘れている事に気付いた。
「・・・あれ?そう言えば俺達、何が大事な事を忘れているような気がするんだけど・・・」
「そう言えば・・・」
ヴリトラの言葉にリンドブルムも同意してその忘れた何かを思い出そうとする。ジャバウォック、ニーズヘッグは腕を組み、ジルニトラ、ファフニールは小首を傾げて考える。そして珍しくラピュスも忘れてしまったのか考え込んでいた。
ヴリトラ達が考えていると、オロチとラランがヴリトラ達を見て低い声を出して言った。
「王国騎士団の団長と会うのだろう・・・?」
「・・・忘れてたの?」
「「「「・・・あっ!」」」」
「「「そうだった・・・」」」
ヴリトラ達男衆が間抜けな声をだし、ラピュス達女集が思い出して目を丸くしながら呟く。一同は肝心な事を忘れていた事に一斉に苦笑いをしてごまかし、そんなヴリトラ達をラランとオロチはジト目で見ている。
周りを見て、遠くに建っている時計台を見ると既に正午を十分も過ぎていた。完全に遅刻してしまった事にヴリトラ達は汗を掻く。そして一斉に依頼所の中へ急ぎ足で入る。ラランとオロチが慌てるヴリトラ達の背中を見てゆっくりと後をついて行くように依頼所の入っていった。
依頼所の中に入ると、町の住民や騎士は少なく、受付もラピュスの友人であるメディムと二人の受付嬢しかいなかった。ラピュスは慌ててメディムのいる受付へいき顔をのり出しメディムに顔を近づける。
「メ、メディム!」
「うわあぁっ!ど、どうしたのよラピュス・・・」
「団長はいらっしゃるか?」
「え、ええ・・・。奥の部屋で待ってるけど?」
「ありがとう!皆、こっちだ」
ラピュスは後ろにいる七竜将を呼んで奥にある待合室の様な部屋へ早足で向かって行く。その後ろをラランとオロチはゆっくりとついて行った。突然やって来て奥の方へ行ってしまったラピュス達を見てメディムはただポカーンとその姿を見ていた。
奥にある待合室に入ると、中には長いテーブルがあり、その奥にある椅子に一人の銀色の鎧を着た老人が座っていた。外見はスキンヘッドに左目には古い切傷の痕。ガッシリとした体に座ってはいるが身長はジャバウォックと同じで180cm位はあるのが分かる。歳は見た目からして六十代後半といったところだ。彼こそがレヴァート騎士団の団長である老将、ガバディア・ロンバルトだ。
「・・・遅いぞ、フォーネ?どれだけ待たせるつもりなのだ」
「すいません、団長!」
入室して来たラピュスを見て少し低い声を出すガバディアにラピュスは慌てて頭を下げながら謝罪する。そんな二人の会話を七竜将とラランはただ黙って二人を見ていた。
ラピュスはガバディアに謝罪した後に後ろに立っているヴリトラ達を紹介し始める。
「団長、この者達が以前お話した傭兵隊、七竜将です。そして彼が七竜将の団長であるヴリトラです。
「ヴリトラです。よろしく」
「ああ、フォーネから話は聞いている。王国騎士団長のガバディアだ。よろしく」
前に出たヴリトラと立ち上がったガバディアは同時に右手を出して軽く握手を交わした。それからヴリトラはリンドブルム達を簡単に紹介し、リンドブルム達も挨拶をする。それからラピュスはリンドブルムとラランがコルボロの翼から女の子の事を助けた事で時間に遅れた事をガバディアに説明した。
一通り紹介が終ると、ヴリトラとガバディアは席に着き、テーブルを挟んでお互いを見つめ合う。ラピュスとラランは部屋の隅に控え、リンドブルム達は座っているヴリトラの後ろに立った。
「ガバディア団長が俺達に話があるとラピュスから聞いたのですが?」
「ああ、その通りだ。あの大規模な盗賊団、クレイジーファングを倒し、クリスティアを打ち負かしたと聞いてな、どんな傭兵達なのか是非この目で見たくなったのだ」
「そうですか」
「聞けば君達は我々が見た事の無い武器などを使いクレイジーファングを一掃したそうじゃないか?」
「ん?・・・おいラピュス、俺達の事はあまり話さないでくれと言ったはずだぞ?」
壁側に控えているラピュスの方を向いてヴリトラは目を細くしながら言った。そんなヴリトラにラピュスは目を閉じて小さな笑みを浮かべる。
「私はお前達の武器の事を話しただけで、それ以外は何も話していないぞ?」
「何の事だ?君達の事をあまり話すなと言うのは?」
ヴリトラとラピュスの会話を聞いていたガバディアが訊ねる。ヴリトラは間接的に自分達に秘密がある事を暴露してしまい、思わず表情を変える。ラピュスはヴリトラが失敗したのが楽しいのか彼に気付かれない様に笑う。
それを見ていたニーズヘッグは一度溜め息をつき、ヴリトラの肩を軽く数回叩いた。
「ヴリトラ、この際団長さんには話しておいた方がいいんじゃないのか?彼は騎士団の束ねる存在だし話しておいた方が何かと俺達にも都合が良い。それに今此処に居るのはラピュス達三人だけだしな?」
「ん~、まぁ、ニーズヘッグが言うならそうするか・・・」
隠しても仕方がない、何より誤魔化すのが難しいと感じたヴリトラは腹をくくった。
「秘密は守ろう、何か事情がありそうだしな?」
「お願いします。出来ればこの事は此処にいる人以外には内密に・・・」
「分かっている」
「では、お話します・・・」
内密にすると言うガバディアにヴリトラは自分達の事を細かく説明した。自分達がファムステミリアとは違う世界から来た事、自分達が普通の人間ではない機械鎧兵士であると言うこと、そして元の世界に戻る方法を探している事など全てをガバディアに話した。
話を全て聞いたガバディアは椅子にもたれながら信じられないような顔を見せる。しかしそれは無理もない事だった。ラピュス達とは違い、ヴリトラ達の力や武器をその目で見た訳では何のだから、いきなりそんな事を言われても直ぐに信じられる筈がない。
「・・・まったく別の世界から来た傭兵隊、か。・・・信じられん話だ」
「確かにそうでしょうね。ですが、今話した事は全て事実です。どうか信じてくれませんか?」
「う~む」
「団長、私も最初は信じられませんでしたが彼等の戦いを見ている内に彼等の言った事は全て本当だと感じました。どうか彼等を信じてもらえませんか?」
腕を組み考え込むガバディアに自分の見た事を説明してなんとか信じてもらおうとするラピュス。しかし、いくら同じ騎士団の人間であるラピュスの言葉でも、目で見た事を口で説明するだけでは納得できない。
「話を聞き、今までの君達の行いから推測すると少なくとも君達七竜将が危険な存在ではないという事は分かった」
「団長、では・・・」
「だが、だからと言って何もせずにこのままにしておく訳にはいかん。そこでだ、明日から一週間、君達の見張りの騎士をつけさせてもらう。それで一週間、君達がおかしな行動を取らなかったら見張りを外そう。その後は我々騎士団も出来る限り君達に協力する」
「いいですよ、それで。仕方がない事です」
「では、明日からな?・・・今日は突然すまなかった」
しばらく見張りをつけられて監視される、その話を承諾したヴリトラ。後ろにいるリンドブルム達も仕方がないと納得するが、表情はやはり納得できない様に見える。ラピュス達も団長であるガバディアの言う事にはよほどの事がない限り反論できない。騎士として仕方がなかった。
話しが終り、ヴリトラとガバディアが立ち上がった時、待合室のドアをノックする音が聞こえた。待合室内にいた一同は一斉にドアの方を向く。
「どうした?」
「団長、ちょっとよろしいですか?」
「何だ?」
「お孫さんがお見えになりました。団長に会わせてほしいと仰いましたので・・・」
「おおぉ来たか!今話が終ったところだ、通してやってくれ」
「はっ!」
ドアの向こうから聞こえてきた男性騎士の声にヴリトラ達は不思議そうな顔を見せる。そのままガバディアの方を向くと、ガバディアは何処か照れるような表情を見せていた。
「いやぁ、すまないな。どうやら孫が此処に来てしまったらしくてな」
「お孫さんですか?」
「ああ。実は今日は儂の勤続四十年目の日なのだ。それで孫が儂にプレゼントをしたと言ってきてな。まったく、家で待っておれと言ったのに・・・」
そう言いながらも何処か嬉しそうなガバディアを見てヴリトラ達はガバディアも騎士団長である以前に一人の祖父である事を知る。
そこへドアが開き、一人の小さな子供が入って来た。
「お爺ちゃん!」
「おおぉ、来たかぁ」
笑いながら入って来た子供を見るガバディア。すると、その子供を見たリンドブルムとラランに表情が変わった。
「ああっ!君は!」
「・・・ターニャ」
「え?・・・ああぁ!リンドブルムお兄ちゃんとラランお姉ちゃん!」
なんと待合室に入って来たのはついさっきリンドブルムとラランが助けた女の子、ターニャだったのだ。その手にはリンドブルムが手品で上げた青い薔薇が握られていた。三人を見ていたヴリトラ達は状況が理解できずに不思議そうな表情を見せる。
「おい、リブル。お前この子の事を知ってるのか?」
「知ってるも何も、さっきコルボロの翼にからまれていた女の子がこの子なんだよ」
「何だってぇ?」
「な、何と!」
リンドブルムの話しを聞いたヴリトラとガバディアは驚いてターニャの方を向く。ガバディアは姿勢を低くして幼いターニャの頭を撫でながら心配そうな顔を見せた。
「ターニャ、その子の言ってたことは本当なのか?」
「うん。怖いおじさん達にターニャが苛められてたらお兄ちゃんとお姉ちゃんが助けて悪いおじさん達をやっつけてくれたの」
「えぇ?ターニャちゃんって、ガバディア団長のお孫さんだったの?」
「・・・知らなかった」
「ラランも知らなかったの?」
「・・・うん」
笑顔で戸惑うリンドブルムとラランを見ながらガバディアに説明するターニャ。その話を聞いたガバディアは立ち上がり、リンドブルムとラランに近づいて二人の手を取った。
「・・・ターニャを助けてくれたのか。ありがとう、感謝するぞ二人とも」
「あっ、いえいえ。偶然見かけただけですから・・・」
「・・・叫び声を聞いたら全力で走ったくせに」
「ちょ、言わないでよぉ!」
小声で呟くラランに頬を少し赤くしながらツッコムリンドブルム。二人にやり取りを見ていたヴリトラ達も小さく笑っている。ガバディアも二人を見て小さく笑っている。そこへターニャがガバディアの背中に飛びつき、持っていた青い薔薇をガバディアの見せた。
「お爺ちゃん、今日までお疲れ様でした。これ、プレゼント」
「ほぉ~、青い薔薇かぁ、何処でこんな物をみつけたんだ?」
「これ、リンドブルムお兄ちゃんがくれたの。最初に買ったお花は潰れちゃって・・・」
「そうだったのか。何から何まで孫が世話になったようだな?」
「いえいえ・・・」
照れながら首を横に振るリンドブルム。ガバディアはターニャを背中に乗せてゆっくり立ち上がり青い薔薇を見ながらヴリトラ達の方を向いた。
「・・・ヴリトラ、さっき話した見張りをつけると言う話、無かった事にさせてくれ」
「ええっ?どうしてですか?」
いきなりの監視の取り消しに驚くヴリトラ。周りのラピュス達も少し驚いている。ガバディアは笑いながら青い薔薇を鎧の隙間に刺して飾り付けながら言った。
「孫を助けてくれた者達を監視するなど、失礼極まりない。儂は君達を信じる事にする」
「いや、でも、俺達はファムステミリアとは違う世界から来たんですよ?いくらお孫さんを助けたからと言って、そんな簡単に・・・」
「世界が違うなど、そんな事は関係ない。重要なのは君の仲間であるその少年がターニャを助けてくれたという事だ。そしてその少年の仲間である君達を信じる、不思議な事ではないだろう?」
ガバディアの言葉にヴリトラは意外に思ったのか目を丸くして驚く。小さな子供を助けた事で自分達の事を信じてくれる目の前の老将の心の広さに言葉を失ったのだ。
しばらく黙り込んでいたヴリトラは顔を上げて笑いながら自分より背の高いガバディアを見上げた。
「そうですね。ありがとうございます」
「いやいや、礼を言うのはこっちの方だ。孫を助けてくれて感謝する」
「助けたのはリブルとラランですよ」
「ハハハッ、君達も同じだよ。では、改めてよろしく、七竜将」
「こちらこそ」
新たな絆が生まれ、ヴリトラとガバディアはもう一度握手を交わした。今度はお互いに力と心を込めてしっかりと交わしあった。
新たに騎士団長のガバディアという心強い味方を付けた七竜将。彼等の行動が一つの命を救い、一つの絆を生み出したのだ。それは七竜将が歩んできた生き方が作り上げたものでもあった。




