第百八十九話 新たな強敵 幻影黒騎士団!
グリードベアを操っていた傭兵隊、暁の双爪を追って村の近くの林に入った太陽戦士団だったが、林の中で暁の双爪の二人を殺害したジークフリートの親衛隊の一人、ガルーダと遭遇し襲われてしまう。その直後にヴリトラ達もやって来たガルーダと再会し、変わり果てた太陽戦士団を目にするのだった。
倒れているソルト達の真ん中で無表情に立つガルーダを睨むヴリトラ達。何時でも攻撃ができるように自分達の武器に手を掛けているがガルーダは武器も持たずにただ腕を組んでヴリトラ達を見つめていた。
「・・・ガルーダ、どうしてお前が此処にいる?」
「お前達に話す義理はない・・・」
自分を睨むつけるヴリトラの質問にガルーダは無表情で答え、それを見たヴリトラは徐々に苛立ちを見せていく。
「ソルトさん達を襲ったのはお前なのか?」
「見れば分かるだろう・・・」
「村を近づいて来たあの機械鎧を纏ったグリードベアは何なんだっ!?」
「ほう、アイツと遭遇したのか・・・?」
「クゥッ!」
無表情のまま興味の無さそうな声で答えるガルーダにヴリトラは我慢の限界が来たのか森羅を抜いたガルーダに向かって跳んだ。構えていないガルーダに向かって森羅を振り下ろすが、ガルーダは軽く後ろに跳んでヴリトラの振り下ろしをかわす。ガルーダがその場から移動し、ヴリトラがガルーダの立っていた場所に着地すると周りで倒れている太陽戦士団を見て悔しそうな表情を見せた。
「ヴリトラ!」
突然攻撃を仕掛けたヴリトラに驚き、彼に近づくラピュス達。ヴリトラはそのまま森羅を両手で構えてガルーダを警戒する。ジャバウォックも背負っているデュランダルを抜き、両手で構えながらガルーダを睨んだ。ジルニトラは倒れているソルト達を診て状態を確認する。
「どうだ?ジルニトラ」
「・・・・・・ダメよ、もう息は無いわ」
「クッ・・・」
太陽戦士団が全滅した事を聞いてヴリトラは歯を食いしばる。ヨムリ村に来るまでの間の太陽戦士団の姿が頭に浮かび、ヴリトラは太陽戦士団を殺害したガルーダを再び睨んだ。
「ガルーダ!お前、許さねぇぞ!」
「何だ?お前達の仲間だったのか・・・?」
ガルーダは意外そうな顔をでヴリトラを見つめる。すると今度はジャバウォックがガルーダを睨みながら口を動かした。
「仲間じゃねぇ。だが、もしかすると仲間になるかもしれねぇ存在だった連中だ」
「なら、死んでもお前達が怒りを感じる事はないはずだ・・・」
「・・・確かにそうかもしれねぇ。だが、仲間じゃないとは言え、一緒に仕事をしている同業者を殺されるのは気持ちのいい事じゃないからな」
低い声を出しながらジャバウォックはデュランダルを強く握る。ヴリトラや彼の隣にいるラピュスも騎士剣を抜いて戦闘態勢に入った。ジルニトラもジャバウォックの隣へ移動してサクリファイスを構える。四人が戦闘態勢に入っているにも関わらず、ガルーダは未だに構えない。
ガルーダは武器を構えるヴリトラ達の事を警戒する事なく再び腕時計を見て時間を確認した。
「・・・そろそろ終わる頃だろうな・・・」
「何?」
何を言っているのか分からずにヴリトラは声を出す。すると、ガルーダの耳に付いている黒い小型無線機からコール音が聞こえ、ガルーダは小型無線機のスイッチを入れて応答する。
「私だ・・・・・・そうか・・・お前達はそのまま回収地点へ迎え。私もすぐに向かう」
そう伝えがガルーダは小型無線機のスイッチを切りヴリトラ達の方を向く。ヴリトラ達もガルーダを睨みながら警戒心を向ける。
「悪いが時間切れだ。私はこれで失礼する・・・」
「待て!このまま逃がすと思うか!?」
「思っていない・・・だから、お前達にはコイツ等の相手をしてもらう・・・」
ガルーダはそう言って指をパチンと鳴らした。すると道を挟む左右に茂みから三つの人影が飛び出してガルーダの前に着地する。突然現れた人影に驚くヴリトラ達。その三つの人影はジークフリートの様に黒い全身甲冑を身に纏った騎兵だった。ただ、ジークフリートと違い身長はヴリトラより少し高い位で兜や鎧の形も若干違う。そして三人の黒騎兵全員が騎士剣を腰に納め、左手にアサルトライフルの「M4」を装備している。
「な、何だコイツ等は?」
ラピュスは現れた三人の黒騎兵に驚き、ヴリトラ達も初めて見る敵に警戒心をより強くする。驚く四人を見てガルーダは表情を変える事なく静かに説明を口を動かした。
「コイツ等は我がブラッド・レクイエム社によって生み出された特殊機械鎧兵士の試作体だ。我々は『幻影黒騎士団』と呼んでいる・・・」
「ファントムブラックナイツ・・・?」
「今は試験段階で実戦データを取る為に連れて来ている・・・」
簡単に幻影黒騎士団の事を話したガルーダはヴリトラ達に背を向けて歩き出した。
「私と戦いたければソイツ等を倒してからだ。もっとも、ソイツ等は今までお前達が戦ってきた機械鎧兵士とは違うぞ・・・?」
そう言い残して暗い林の奥へと消えて行ったガルーダ。ヴリトラ達はガルーダの後を追おうとするが、その前に黒騎兵達が立ち塞がる。
「どうやら、コイツ等を倒さないと先へ行かせてくれないみたいだな・・・」
「そうみてぇだな」
ヴリトラとジャバウォックは黒騎兵達を見て構え直す。すると、三人の黒騎兵達は無言で一斉に左手に持つM4をヴリトラ達に向けた。
「・・・ッ!ヤバい!」
危険を感じ取ったヴリトラはラピュスを庇うようにして飛び掛かりそのまま茂みの中へ飛び込む。ジャバウォックとジルニトラもほぼ同時に左右に跳んで茂みの中へ飛び込んだ。その瞬間、黒騎兵達は一斉にM4を乱射する。静かな林の中に銃声が響き、眠っていた鳥達が一斉に飛び立った。
ヴリトラ達はそれぞれ茂みの中で俯せになって隠れている。ヴリトラ、ラピュス、アリサの三人は左脇の茂みに、ジャバウォックは右脇の茂みに身を潜めていた。
「いきなり発砲してきやがった。とんでもねぇ奴等だな、アイツ等・・・」
「しかもM4を左手だけで持って撃ったわよ?」
「多分、鎧に見える腕その物がアイツ等の機械鎧になってるんだろう。じゃないとアサルトライフルを片手で撃つなんて事ができるはずがない」
「腕が機械鎧って事は他の右腕や両足も・・・」
「機械鎧と考えて間違いないだろう・・・」
ジルニトラとヴリトラは甲冑にしか見えない黒騎兵の両腕両脚が機械鎧だと考え、ラピュスは二人の会話を黙って聞いている。すると、二人の小型通信機からコール音が鳴り、二人は素早く応答した。
「こちらジャバウォック。ヴリトラ、ジルニトラ、聞こえるか?」
「ああ、聞こえてるよ。そっちは大丈夫か?」
「大丈夫だ、傷一つねぇ。それよりもこれからどうする?奴等ゆっくりとこっちに近づいて来てるぞ?」
ジャバウォックの言葉を聞いて三人は耳を澄ませる。確かに茂みの外からガシャガシャと甲冑が揺れる音が聞こえ、少しずつ大きくなってくる。黒騎兵達はM4を左手で構えたままゆっくりと歩いて行き、ヴリトラ達が飛び込んだ茂みに近づいて来ていた。
「・・・このままジッとしていてもすぐに見つかっちまう。だからと言ってこのまま逃げる訳にもいかない。もしアイツ等が俺達を見失ったらヨムリ村に向かって村人達を襲う可能性だってある」
「じゃあ、やっぱり・・・」
「ああ、此処で奴等を倒す!」
小声で今後どう動くかを伝えたヴリトラは目の前に転がっている小石を手に取り、俯せのまま黒騎兵達の方を向いた。
「確実に倒す為に奴等の戦力を分断する。それぞれ一人ずつ奴等を倒すんだ。俺はラピュスと一緒に戦う」
「分かった」
「了解よ」
ヴリトラからの指示を聞いた二人は小型通信機のスイッチを切る。そしてヴリトラは持っていた小石を空に向かって高く投げた。黒騎兵達は小石に気付いて一斉に小石に向かってM4を撃つ。小石は粉々に砕け散り、その隙にジルニトラとジャバウォックは立ち上がってワザと気付かれる様に音を立てて走り出す。二人に気付いて黒騎兵達は走る二人に向かって発砲するも当らず、後を追う為に走り出す。その速さはとても鎧を着た者が出せる速さではなかった。
二人の黒騎兵がジャバウォックとジルニトラの後を追い、残ったもう一人も後を追おうとする。すると茂みからヴリトラとラピュスが姿を見せ、黒騎兵の背後で森羅と騎士剣を構える。
「待ちなよ、お前の相手は俺達だ」
ヴリトラの声を聞いた黒騎兵は姿を現した二人を倒そうと振り向きざまにM4を撃った。ヴリトラは素早くラピュスの前に来て森羅で弾丸は全て弾き落す。驚きたラピュスはヴリトラの背中に身を隠し、森羅で弾かれた弾丸は地面に落ちる。
やがてM4の弾が切れたのが銃撃が止み、その隙にヴリトラは距離を詰めて森羅で横切りを放つ。黒騎兵は後ろに跳んで斬撃をかわすも、M4は森羅によって真っ二つにされてバラバラになる。使えなくなったM4を見た黒騎兵は黙ってM4の残骸を捨てて腰の騎士剣を抜いて構えた。
「M4が無くなった。これでようやく安心して剣で戦えるぜ」
「油断するなよ?ガルーダという男は今までの機械鎧兵士とは違うと言っていたのだから」
「分かってるよ」
ラピュスの忠告を小さく笑いながら聞いたヴリトラは黒騎兵に意識を戻す。黒騎兵はゆっくりと騎士剣を上段構えに持ち、柄を強く握った。林の中では静かな風が吹き、草木が揺れる。そんな中、突然風が黒騎兵の握る騎士剣に吸い寄せられるように集まりだし、騎士剣の刀身に風が纏われた。その光景を目にしたヴリトラとラピュスは驚きのあまり目を見張る。
「な、何だありゃあ!?」
「剣の刀身に風が・・・まるで私達の使う気の力の様だ・・・」
「確かに前に見たのに似てる・・・・・・んんっ?」
ヴリトラは黒騎兵を見つめながらラピュスの言葉をもう一度思い出して考えた。そしてヴリトラの頭の中にとんでもない答えが浮かび上がる。
「まさか・・・本当に気の力を使ってるんじゃ・・・」
「何だと!?」
ラピュスは驚き思わず大きな声を出す。そこへ黒騎兵はヴリトラとラピュスに向かって勢いよく騎士剣を振り下ろし攻撃して来た。二人は咄嗟に後ろへ跳んで騎士剣を回避するが、その直後にもの凄い突風が吹いてヴリトラとラピュスは後方へ吹き飛ばす。
「のわああああぁ!?」
「うあああああぁ!」
声を上げながら飛ばされた二人は仰向けに地面に叩きつけられ、倒れたまま遠くで騎士剣を軽く振る黒騎兵を見つめた。
「い、今の突風は・・・」
「やっぱりアイツ、気の力が使えるんだ・・・」
「そんなバカな、ブラッド・レクイエムに私達と同じように気の力を使える者がいるなんて・・・」
「ああ、『ブラッド・レクイエムには』そんな人間はいないはずだ」
「え?」
ヴリトラの意味深な言葉にラピュスは声を出す。ヴリトラはゆっくりと立ち上がり、森羅を構えながら遠くにいる黒騎兵を睨んだ。
「恐らく・・・いや、間違いないだろうな。気の力を使える騎士が奴等の仲間になってるんだ」
「そ、そんなバカな!」
何処かの国の騎士がブラッド・レクイエム社の寝返った、ラピュスはヴリトラの言葉に耳を疑い、黒騎兵を見つめる。黒騎兵はゆっくりと騎士剣を構えながらヴリトラとラピュスに近づいて行く。
「そんなはずがない!この大陸、いやこの世界を脅かすブラッド・レクイエムの仲間になる騎士がいるはずがない」
「ああ、少なくともレヴァート王国の騎士にはいないだろう。だけど、他の国の騎士達は分からないぞ?」
「ま、まさか、他の国の騎士達が・・・?」
「・・・それは奴を倒して調べてみれば。どの道、向こうさんは俺達を殺す気満々なんだ、殺らないとこっちが殺られる・・・」
ヴリトラの言葉にラピュスは黒騎兵を見ながらゆっくりと立ち上がり、落ちている騎士剣を拾って構えた。彼女も真実を知る為に黒騎兵と戦う事を決意する。
二人が武器を構えるのを見た黒騎兵は地を蹴り、二人に向かって跳んだ。ヴリトラはいきなり跳んだ来る黒騎兵に一瞬驚きながらも冷静に対応し、森羅を構え直す。そこへ黒騎兵が騎士剣だ袈裟切りを放ち、森羅と騎士剣の刃がぶつかる。周囲に火花と金属が削れる音が響き、その中でヴリトラは目の前の黒騎兵を睨んでいた。
「ぐうぅ!何て重い攻撃だ!」
予想以上に重い一撃に表情が歪むヴリトラ。押されている様子のヴリトラを見てラピュスは素早く黒騎兵の右側面へ回り込んで騎士剣で攻撃する。しかし、黒騎兵は左手で騎士剣を持ち、ラピュスの斬撃を右腕の前腕部分で簡単に止めてしまう。
「ちぃ!」
攻撃をアッサリと止められて悔しがるラピュス。黒騎兵は右腕で止めているラピュスの騎士剣を軽く払い、素早くラピュスの胸倉を掴むと勢いよく反対側へ投げ飛ばした。
「うわああぁ!」
ラピュスはヴリトラと黒騎兵の真上を通過し、投げ飛ばされた先にある木に叩きつけられ、そのまま地面に潰せに倒れる。
「ラピュス!」
思わず声を上げてラピュスの方へ意識を向けてしまうヴリトラ。黒騎兵はその隙を逃さず、素早く騎士剣を両手で持ち直し一気のヴリトラを押した。集中力が途切れた為、黒騎兵の押しを押さえられなくなったヴリトラは一瞬態勢を崩してしまう。そこへ黒騎兵の強烈な斬撃は放たれた。
「ヤベッ!」
黒騎兵の攻撃を見たヴリトラは咄嗟に森羅で攻撃を防ごうとするも、態勢が崩れた状態で斬撃を止めた為、衝撃を抑えきれずにそのまま後ろへ飛ばされてしまう。仰向けに倒れたヴリトラに騎士剣を持った黒騎兵がゆっくりと近づいて行く。立ち上がって反撃しようにも森羅はさっき攻撃を防いだ時に弾かれてしまいヴリトラから遠く離れた所に落ちており攻撃もできない状態にある。体を起こしたヴリトラは近づいて来る黒騎兵を見て微量の汗を流した。
「クソ、丸腰になっちまったか。どうすれば・・・ん?」
ふとヴリトラは落ちている一本の剣を見つけて手に取った。それはソルトが使っていた物で森羅と比べて重く頑丈そうな物だ。ソルトの剣を見たヴリトラは立ち上がって騎士剣を両手で構える。
「森羅を拾うまでこれで何とかするしかないか・・・ソルトさん、ちょっと借りますよ」
死んだソルトにそう伝えたヴリトラは黒騎兵を睨む。黒騎兵はヴリトラが自分を睨んだ直後に走り出してヴリトラに向かて行き、勢いよく騎士剣を振り下ろした。ヴリトラは剣を横にして黒騎兵と斬撃を何とか止める。すると、剣と騎士剣が触れ合う箇所から火花と金属が削れる音が広がった。それを見たヴリトラに再び驚きの表情が浮かぶ。
「火花が出てる!?・・・と言う事はコイツの剣は超振動剣なのか?」
なんと黒騎兵の使っている騎士剣は超振動剣だったのだ。ヴリトラは驚きのあまり目を見張ったまま表情を固める。
そもそも、超振動剣が金属と触れて火花と金属が削れる音を出すのは剣に組み込まれている小型のメトリクスハートによって出される高周波振動によるもの。その振動によって剣は切れ味を高めて鉄でも切れるようになるのだ。今回の場合、ソルトの使っていた剣は普通の物、つまり、騎士剣とソルトの剣がぶつかって火花と音が出るのは騎士剣が超振動剣に改造されているからと考えられる。
「ブラッド・レクイエムの連中、この世界の剣まで超振動剣に改造してやがったのか!」
ブラッド・レクイエム社の武器改造を知り表情が鋭くなるヴリトラ。そんな彼の事を気にせずに黒騎兵は超振動剣で連続攻撃をする。ヴリトラは剣でその連撃を全て防ぎ、少しずつ落ちている森羅の方へ近づいて行った。そして一定の距離まで近づくと素早く森羅の落ちている所へ跳んで森羅を拾い上げる。右手に森羅を持ち、左手にはソルトの剣が持たれている。よく見ると、ソルトの剣の刃は所々が欠けておりパラパラと刃が崩れていた。
「クッ、完全に刃こぼれしちまってる。ソルトさん、すみません・・・」
ソルトに謝罪したヴリトラはそっとソルトの剣を地面に置き、再び森羅を両手で構える。黒騎兵は超振動剣を構えて再び攻撃しようとヴリトラを見つめて足位置を変えた。すると、突如黒騎兵の背後から銃声が聞こえ、黒騎兵の背中にカンカンと弾丸が当たる。ヴリトラはフッと黒騎兵の後ろを覗くとそこには右手でハイパワーを握り、左手に騎士剣を持って立っているラピュスの姿があった。
「ヴリトラ、大丈夫か?」
「ラピュス!・・・ああ、俺は平気だ。そう言うお前はどうなんだ?」
「背中を少し痛いぐらいだ。問題ない」
木に叩きつけられた背中の痛みに耐えながらラピュスはヴリトラを安心させる。ヴリトラもラピュスの態度を見て問題ないと感じたのか小さく笑って頷いた。すると黒騎兵は背後から撃って来たラピュスの方を向いて右腕をラピュスに向ける。すると、右腕の後前腕部の装甲が動いて中から機械が出てきた。
「やっぱりアイツ等の着ている鎧自体が機械鎧だったのか。だとすると、両手両足だけじゃなく、あの胴体も機械鎧である可能性が・・・」
ヴリトラが黒騎兵達の甲冑その物が機械鎧であると確信し、更に強く警戒する。
黒騎兵の右腕から機械に続いて小型のミサイルが姿を現し、ラピュスに狙いを付けた。それを見たラピュスは素早くその場から移動、その瞬間に小型ミサイルは発射されて飛んで行った先にある木に命中し爆発する。その爆風でラピュスはタオ性を崩してその場に俯せになって倒れた。
「う、うう・・・ミ、ミサイルまで・・・」
ラピュスは黒騎兵の機械鎧に仕組まれている内蔵兵器に驚きながら黒騎兵の方を向く。黒騎兵は超振動剣を握ってラピュスへ近づこうとする。だがそこへ、行かせまいとヴリトラが黒騎兵の背後から森羅で攻撃した。しかし黒騎兵は素早く振り返って超振動剣でヴリトラの斬撃を止める。
「チィ!確かに、今までの機械鎧兵士とはレベルが違う・・・」
攻撃を防がれヴリトラは素早くラピュスの下へ移動して彼女と合流する。
「大丈夫か?」
「ああ、平気だ」
ラピュスを立たせて黒騎兵に視線を向けるヴリトラ。ゆっくりと近づいて来る黒騎兵にヴリトラとラピュスは不気味さを感じていた。
「コイツ、まるで意志を持たず、ただ命令に従っているようだ・・・」
「ああ、心を持たない戦士。こりゃあ、ある意味一番厄介な相手だな・・・」
ヴリトラとラピュスはそれぞれ森羅と騎士剣を構えながら近づいて来る黒騎兵を見つめる。黒騎兵はそんな二人を見ながらただゆっくりと近づいて行くのだった。
ガルーダが放ったブラッド・レクイエム社の新たな機械鎧兵士部隊、幻影黒騎士団。漆黒の甲冑に見せた機械鎧と超振動剣、そしてファムステミリアの騎士達が使う気の力、それらを使う敵を相手にヴリトラとラピュスは苦戦を強いられてしまう。二人はそんな未知の敵とどう戦うのだろうか。