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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第十章~誠実と欲望の戦士達~
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第百八十七話  影で動く者 痛みを感じない怪物


 新たなグリードベアが現れる事を警戒して次の日の昼まで様子を窺う事にしたヴリトラ達。だが、二匹のグリードベアを討伐した日の夜、また新たなグリードベアが出現する。しかもそのグリードベアは全身が機械鎧化していた機械鎧怪物となっていた。ヴリトラ達はグリードベアを超える脅威を止める為に迎撃態勢に入る。

 ソルトとラルフがジャバウォックとジルニトラを呼びに村へ向かった後、残ったヴリトラ達は村に向かって走って来るグリードベアを少しでも足止めしようと行動を開始する。


「とにかく、ジャバウォックとジルニトラが来るまで俺達で時間を稼ぐしかない!」

「ああ!」

「ハ、ハイ!」


 ラピュスとアリサは返事をしながら騎士剣を右手に持ち左手にそれぞれハイパワーとベレッタ90を持ち狙いを付け、女性騎士も持っていたMP7を構えた。ヴリトラも森羅を右手に持って左手でオートマグを抜き向かって来るグリードベアを狙う。


「よし、撃ちまくれ!」


 ヴリトラの合図でラピュス達は一斉に引き金を引いて発砲する。放たれた弾丸は真っ直ぐグリードベアの方に飛んで行く。しかし、その殆どがグリードベアの機械鎧化した箇所か足元に命中するなどして全くダメージを与える事ができなかった。命中した弾も急所でない箇所を掠る程度でグリードベアが怯む事はない。


「クソォ、ダメだ!殆どが機械鎧に当たっちまってる。しかもこの暗さじゃあ正確に狙えない」

「どうするんだ、ヴリトラ!?」

「・・・明るい所まで誘い出すしかないだろう」


 ヴリトラはオートマグを素早くホルスターにしまうと森羅を両手で持ち中段構えを取る。


「ラピュス、アイツが近づいて来たら俺が近づいて足止めする。お前達は背後や側面に分かり込んで機械鎧じゃないところを狙って撃ってくれ!」

「分かった!二人もいいな?」

「「ハイ!」」


 アリサと女性騎士はラピュスの方を向いて返事をし、それぞれ銃器を構える。グリードベアは徐々に距離を縮めて行き、ヴリトラ達の約50m手前まで近づいて来た。するとその直後、グリードベアはいきなり高くジャンプをしヴリトラ達を見上げられる高さまで跳び上がる。グリードベアの大ジャンプにヴリトラ達は驚き思わずグリードベアを見上げた。そしてグリードベアはヴリトラ達の真上からもの凄い勢いで落下してくる。それを見てヴリトラの表情が鋭くなった。


「マズイ!皆、散らばれ!」


 周りにいるラピュス達に慌てて声を掛けるヴリトラ。ラピュス達はヴリトラの様子を見て危険だと直感し一斉に四方へ散らばり、ヴリトラも急いでその場から移動した。その直後にヴリトラ達が固まっていた場所にグリードベアが四本足で着地する。あと少し遅かったら全員グリードベアの下敷きになっていたところだった。着地の衝撃で上がった薄い砂煙の中でグリードベアが周囲に散らばったヴリトラ達を見回し唸り声を上げる。


「コ、コイツ、何てジャンプ力だ!6mは跳んだぞ!?」

「普通の熊じゃあの高さまで跳び上がれない。明らかに機械鎧のせいだろうな」


 驚くラピュスとヴリトラは目の前でグリードベアを見ながら武器を構えた。二人の額からは汗が流れ、武器を持つ手にも力が入っている。アリサと女性騎士も驚きのあまり表情を固めてグリードベアを見ていた。


「こんな奴が村に入ったら一瞬で村は血肉と瓦礫の山になっちまう。絶対に村には入れねぇ!」


 ヴリトラは森羅を構え直してグリードベアに向かって走り出す。グリードベアも近づいて来るヴリトラの方を向き、鋭い目で睨みつける。それと同時にグリードベアの額についているリニアレンズが小さく光った。


「グオオオオォ!」


 グリードベアは鳴き声を上げながらヴリトラに向かって突進する。ヴリトラは向かって来たグリードベアの突進をギリギリで右へ跳んで回避する。そのまま素早く森羅でグリードベアの脇腹を斬り付けた。斬られた箇所からは僅かに出血したがグリードベアは鳴き声を上げなかった。

 ヴリトラから反撃を受けたグリードベアは急停止してヴリトラの方を向く。斬られた脇腹の傷に全く気付いていないような様子でヴリトラを睨み唸るグリードベア。ヴリトラはそんなグリードベアに違和感を感じる。


(コイツ、斬られたのに全く痛がっている様子を見せない?どうなってるんだ?いくら体を機械鎧化したとしても痛みを感じないなんて事はあり得ない・・・)


 心の中で痛みを感じていないグリードベアの姿を見てヴリトラは不気味さを感じ始める。ヴリトラとグリードベアが睨み合っているとラピュス達が背後や側面に分かり込んで一斉に銃器を発砲する。今度は周りが明るく標的が近くにいるので確実に狙う事ができた。弾丸の殆どがグリードベアの機械鎧化していない生身の箇所に命中、だが、グリードベアは少し反応を見せるだけで痛みを感じている様子はない。


「な、何だコイツは?鳴き声を上げない?」

「まるで痛みを感じていないみたいです・・・」


 ラピュスとアリサもグリードベアが痛みを感じていない事に気付き、ヴリトラの様に違和感と不気味さを感じ始める。グリードベアは唸り声を上げたまま自分を取り囲むヴリトラ達を見回す。すると、グリードベアの背中の装甲の一部が上開きに動き、その下から六つの穴が姿を現した。


「ん?何だ?」


 背中の装甲が動きだした事に気付いたヴリトラは森羅を強く握り警戒する。すると突然装甲の下の穴から小型ミサイルは六発打ち上げられた。空に上がって行った小型ミサイルは向きを変えてヴリトラ達目掛けて降下して行く。


「ゲッ!ミサイルだとぉ!?」


 突如空から向かって来る小型ミサイルにヴリトラは声を上げる。ラピュス達も自分達の真上から飛んで来る小型ミサイルを見てすぐに危険だと感じ取った。


「皆、逃げろぉ!」


 ヴリトラがラピュス達に向かって叫び、四人は急いでその場から移動しグリードベアから距離を離れる。六発の小型ミサイルはヴリトラ達が立っていた場所やその近くに落下して爆発し、その爆発と衝撃でヴリトラ達は態勢を崩して倒れた。


「な、何だあれは!?」

「ヴリトラさん達が使っていたマイクロ弾っている武器に似てますね・・・」


 互いの近くにいたラピュスとアリサは小型ミサイルが爆破した方向を向いて驚きの表情を受けべる。二人から離れた位置でヴリトラと女性騎士も倒れたまま爆発を見ており、その中心でグリードベアが大きな鳴き声を上げた。

 その頃、村に戻ったソルトとラルフはジャバウォックとジルニトラに機械鎧化したグリードベアの事を伝えていた。モンスターが機械鎧を纏っている事にジャバウォックとジルニトラも驚き、周りにいるキッド達や村人達も動揺を見せている。そしてグリードベアの小型ミサイルによって起きた爆発もジャバウォック達の耳に入り、村中がざわめき始めた。


「今の爆発、機械鎧の内蔵兵器ね・・・」

「ああ、しかも爆発は六回起きた。ヴリトラの機械鎧の内蔵兵器じゃねぇな・・・」

「・・・と言うと事は」

「その機械鎧を纏ったグリードベアのだ!」


 爆発の回数からグリードベアの仕業だと気付くジャバウォックとジルニトラはデュランダルとサクリファイスを手に取る。二人の前にいるソルト達太陽戦士団も緊迫した様子で二人を見ていた。


「とにかく、俺とジルニトラはヴリトラ達の救援に行って来る。お前達は村の人達を村長の家や大きな倉庫などに避難させてくれ」

「わ、分かりました!」

「避難が終わり次第、俺達も助けに行くぜ!」

「ああ。その前に片付くのが一番いいんだけどな」


 ジャバウォックとジルニトラは村人の避難を太陽戦士団に任せてヴリトラ達の下へ向かった。残った太陽戦士団も周りにいる村人達に声を掛けて行動を開始する。


「皆さん!とりあえず村長の家や頑丈な倉庫などに避難してください!」

「落ち着いてゆっくり行けよ」


 ソルトとキッドの声を聞いて村人達は言われたとおり村長の家や倉庫の方へ向かって歩き出した。太陽戦士団も村人達の後をついて行き警護に付く。

 避難する村人とそれを守る太陽戦士団、その光景は離れた所にある民家の屋根から見ている二つの人影があった。一人は二十代後半くらいでオレンジの短髪をした男性、茶色い革製の鎧を身に付け、背中に片刃の大剣を背負っている。もう一人は二十代前半で長髪で頭にバンダナを巻いている女性だ。男性と同じで髪はオレンジ色で革製の鎧を付け弓矢を持っている。何より、二人の服にはオークの顔が彫られた傭兵組合のメダルが付いていた。二人を遠くにいるソルト達を見ながらニッと笑っている。


「あそこに村人が集められてるみたいだな・・・」

「フフ、なら今の内に金目の物を全部頂いちまおうぜ、兄貴?」


 ソルト達の動きを観察している男性とその隣で男性を兄貴と呼ぶ男口調の女性。男性は女性の方をチラッと見て口を動かした。


「慌てるな『シシル』。あの警護に付いている傭兵達を何とかしてからじゃないと安心して仕事ができないだろう?」

「へ~きだって、村人達が避難し終わったらアイツ等もあのグリードベアの所に行くだろうしさ」


 シシルと呼ばれた女性が笑いながら男性にグリードベアの事を話す。どうやらこの二人は機械鎧化したグリードベアと関係があるようだ。


「・・・確かにあれだけ強力なグリードベアが相手なんだから、動ける戦力が全て向かっても不思議じゃないか」

「だろう?だからさっさと仕事に移ろうぜ?」

「ああ・・・」


 二人は静かに民家の屋根から降りて地面に着地する。そして周囲を気にしながら窓などが開いている民家を見つけて忍び込んだ。


「それにしても、あのグリードベアはスゲェなぁ。全身が鉄になってて、俺と兄貴の言う事を聞いてくれるんだし」

「ああ、突然ブラッド・レクイエムと名乗る連中が現れてグリードベアを出された時には信じられなかったけどな・・・」


 なんとこの二人はブラッド・レクイエム社と繋がりを持っており、二人があの機械鎧化したグリードベアを操っていたのだ。二人は遠くから聞こえる爆発音やグリードベアの鳴き声を聞きながらタンスや机の引き出しをあさり金目の物を探した。


「とにかく、アイツが傭兵達の注意を引き付けてくれている内に仕事を終わらせちまおう」

「分かってるって!」


 男性とシシルはグリードベアが囮になっている間に貴金属類などを盗み出して行く。ヴリトラ達はそんな事を知らずにグリードベアに気を取られてしまっていたのだった。

 ヴリトラ達はあれから何度も小型ミサイルを発射して攻撃して来るグリードベアに苦戦していた。空からの攻撃を回避し、反撃しようとしているがなかなか近づけず苦戦を強いられている。


「クッソォ、これじゃあ近づく事すらできない。と言うか、アイツ体に何発のミサイルを仕込んでるんだよ!?」


 ヴリトラはオートマグを連射して応戦するがグリードベアは銃撃を受けても怯む事無く鳴き声を上げながらヴリトラに向かって突進してきた。


「また来やがったか!」


 グリードベアを睨み再びオートマグを撃とうとするヴリトラだったが、引き金を引いても弾は出なかった。


「ゲッ!弾切れかよ?」


 残弾数がゼロになった事にヴリトラは驚き目を見張る。グリードベアはそんなヴリトラに構う事なく突進していき、ヴリトラは咄嗟に横へ跳んで突進をかわした。


「ヤベェ、早く再装填リロードしねぇと!」


 グリードベアがまた襲って来る前に弾倉マガジンを交換しようとするヴリトラは素早く態勢を直し、森羅を口で咥えながら空いた右手で新しい弾倉を取り出しオートマグに入れようとする。だが、グリードベアは予想以上の速さで方向転換し、またヴリトラに向かって突進して来た。


「なっ!?ちょちょ、ちょっと待て!」


 ヴリトラは向かって来るグリードベアを見て少し慌てた様な態度を見せる。急いで弾倉をオートマグに入れ、咥えている森羅を手に取ったヴリトラはグリードベアの方を向く。しかしすでにグリードベアはヴリトラの数m前まで近づいて来ていた。


「チイィ!」


 予想以上に近づけてしまった事に悔しそうな顔を見せるヴリトラは森羅とオートマグを構え直して一か八かグリードベアを迎え撃とうとする。すると突如無数の銃声と共にグリードベアの右側面に無数の銃創ができた。その内の一発がグリードベアの右後足に命中、グリードベアの右後足がガクッと折れて大きな音を立てながらグリードベアはその場に倒れる。

 その光景を見て驚いたヴリトラはフッと銃声のした方を向く。そこにはハイパワーとMP7を構えているラピュスと女性騎士の姿があった。


「大丈夫か!?」

「・・・ああ、助かったぜ」


 ラピュスに礼を言ってヴリトラは倒れているグリードベアを警戒しながらラピュス達の下へ移動する。三人は倒れているグリードベアに意識を集中させて警戒した。


「・・・死んだのか?」

「いや、あれだけ銃撃を受けてもピンピンしていた奴があれぐらいで死んだとも思えない・・・」


 ヴリトラの予想は当たった。三人が話しているとグリードベアはゆっくりと起き上がりヴリトラ達の方を向いて唸り声を上げる。


「あ、あれだけの攻撃を受けてもまだ生きているのか・・・?」

「ですが隊長、アイツはさっきの攻撃で膝を折って倒れましたよ?攻撃は効いているのでは・・・」


 女性騎士の言葉にラピュスは難しい顔を見せる。その隣にいるヴリトラはジッとグリードベアを見ながら考えていた。


「・・・きっとアイツは痛みを感じないだけなんだろう。もし本当に攻撃を受けてもなんともないのなら足を撃たれた時に倒れたりしないはずだ」

「つまり、攻撃をしていれば、いつかはアイツの体が動かなくなると?」

「多分な・・・」


 ヴリトラの言葉を聞いてラピュスと女性騎士はまだ希望はあると考えてグリードベアに銃口を向ける。すると、グリードベアは四本の足に力を入れて勢いよくヴリトラ達に向かって跳んで来た。まるでウサギに跳ぶその姿にヴリトラ達は思わず目を疑う。


「アイツ、あんな風に跳ぶ事もできるのかよ!?」

「完全に別のモンスターになっている!」


 機械鎧を纏った事でグリードベアが別の存在に変わった事に驚きの威圧感を感じるヴリトラとラピュスは銃器を発砲し、その斜め後ろでは女性騎士がMP7を連射している。だがやはりグリードベアは出血はしても痛みを感じている様子はない。勢いは収まる事なくヴリトラ達の下へ向かって行く。ヴリトラ達も回避しないと危険だと思い動こうとした、その時、突然ヴリトラ達とグリードベアの間に誰かが割り込んできた。よく見るとそれはデュランダルを持ったジャバウォックだったのだ。ジャバウォックはデュランダルを横にして跳んで来たグリードベアをギリギリで止める。


「ジャバウォック!」

「来てくれたのか!」

「遅くなって悪かったな?」


 ジャバウォックが来てくれたことに安心するヴリトラと笑みを浮かべるラピュス。ジャバウォックは右手でデュランダルの柄を握り、左手で刀身の平らな部分を押す様にしグリードベアを押さえ込む。デュランダルの刃とグリードベアの鋼鉄の爪が触れ合い火花と金属音を周囲に広げる。昼間とは違い、機械鎧化しているグリードベアの力は強く、ジャバウォックも全力で抑え込んでいた。


「俺がコイツを押さえている内に一気に攻撃を仕掛けろ!」

「分かった!」


 ヴリトラはジャバウォックの作ってくれた好機を無駄にしない為に素早くグリードベアの右側面へ回り込み、ラピュスも左側面へ回り込んだ。二人は森羅と騎士剣を構え、少し離れた所では合流したジルニトラとアリサがサクリファイスとベレッタ90でグリードベアの背中を狙っていた。それに気づいたヴリトラは周りにいる仲間達を見て大声を出す。


「これで終わらせる。全員で攻撃を仕掛けるぞ!」


 周りに声をかけた後に、ヴリトラは森羅を両手で握りグリードベアに向かって走り出す。そしてデュランダルを掴んでいる機械鎧の右前足に向かって勢いよく森羅を振り下ろした。グリードベアの右前足はゆっくりと地面に落ち、前足の一本を切り落とされたグリードベアは驚いて鳴き声を上げた。続いてラピュスが騎士剣を構えてグリードベアの機械鎧化していない部分を狙い騎士剣で袈裟切りを放つ。刃は左前足の近くを切り、そこから血が吹き出て更にグリードベアの動揺を誘う。


「コイツ、いきなり動揺しだしたぞ?どうなってるんだ?」

「多分コイツは今まで自分が痛みを感じていない事から自分は無傷か、足した傷を負っていないと考えていたんだろう。だけど、実際の自分の傷を見てこれだけ大きな傷を負っていながら自分を痛みを感じていない事に恐怖を覚えたんだ」

「動物がそんな事を感じるのか?」

「当然だろう?機械鎧化しているとはいえ、コイツも生きているんだ。痛みを感じないという事はある意味、とても恐ろしい事なんだよ」


 低い声で呟くヴリトラ。すると今度は遠くでグリードベアの背中を狙っているジルニトラとアリサが動き出す。


「いいアリサ?アイツの背中の装甲の真上を狙いなさい。そこがきっと心臓の真後ろよ」

「ハ、ハイ!」


 ジルニトラに指示されて狙いを付けるアリサ。そして二人は同時に引き金を引き攻撃した。銃口から放たれた弾丸はグリードベアの背中の装甲や狙っていた箇所に当たる。ジルニトラの狙い通り、装甲の真上はグリードベアの心臓の真後ろだった為、そこに当たった弾丸は心臓にまで達し、心臓に穴を開けた。それによりグリードベアは体にも異変が起き、動きが鈍くなる。

 デュランダルから左前足を離した後ろに下がり出すグリードベアを見てジャバウォックはチャンスとばかりに笑った。


「これで終わりだ!」


 そう言ったジャバウォックはデュランダルを勢いよく横に振りグリードベアの首をはねた。グリードベアの首は宙を舞い、地面に落ちてバウンドする。頭を失ったグリードベアは大きな音を立てて前へ倒れた。その光景を見てヴリトラ達は深く息を吐く。


「・・・やっと倒れたか」

「流石に首をはねられちゃ生きちゃいないだろう」


 ヴリトラとジャバウォックは動かなくなったグリードベアを見下ろしながら少しだけ気を楽にする。ラピュスやジルニトラ達もグリードベアの下へやって来て動かなくなった死体を見下ろす。


「・・・それにしても動物にまで機械鎧を纏わせるなんて、ブラッド・レクイエムの連中も大きく動いて来たわね・・・」

「向こうの世界じゃ人間だけにしか機械鎧の手術を行った事がなかったからな・・・」

「つまり、コイツは動物に機械鎧を纏わせた第一号って訳か・・・」

機械鎧怪物マシンメイルビーストの第一号・・・」


 七竜将の三人が機械鎧怪物の死体を真剣な表情を浮かべている。その様子を見ていたラピュス達も新たな脅威の出現に緊張を走らせた。


「・・・ヴリトラ、とりあえず村に戻って村長達に終わった事を知らせた方がいいのではないか?」


 ラピュスが空気を変えようとヴリトラに話し掛けると、彼は真剣な表情のままラピュスの方を向く。


「いや、多分この一件はまだ終わってない」

「えっ?」

「機械鎧を纏った猛獣が単独でこの村に来て暴れたとは考えられない。何処かでこのグリードベアを操り観察している奴がいるはずだ」

「確かにあり得るな。あの熊の額に付いているレンズ、あれは多分カメラだろう」


 ジャバウォックが転がっている頭部の額に付いているレンズを見て言う。ヴリトラもジャバウォックの方を向き頷いた。


「俺達がグリードベアの相手をしている内に村に侵入して何かをしようとしている、とも考えられる。急いで村へ戻るぞ!」


 ヴリトラの言葉にラピュス達は頷き、急いで柵を越えて村ね入って行った。ヴリトラ達が立ち去った後、グリードベアの頭部に付けられているレンズが光り、奥にある小型のカメラが動く。

 機械鎧怪物を何とか倒す事に成功したヴリトラ達。急いで村に戻って行くが、この後に彼等に本当の激戦が襲い掛かる事をヴリトラ達は知らない。


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