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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第九章~力を秘めた鉱石~
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第百七十四話  ヴリトラの作戦 ガスで賊の燻り出し?


 獅子王の牙を見張っていたヴリトラ達は彼等はどう行動するのかを探る為に泳がせる事にする。しかし、デガルベル鉱石を欲の為に悪用するという話を聞いたヴリトラは泳がせる事をやめて盗賊達を攻撃、挑発してしまう。盗賊達を一網打尽にする為のこのヴリトラの行動が吉と出るか凶と出るか、それは天のみが知っている。

 岩山の西側の偵察を終えて戻って来たヴリトラ達はラピュス達やジャバウォック達に何があったのかを説明する。リンドブルムの言っていた通り、勝手に獅子王の牙を一網打尽にするという事を聞いたラピュス達は目を丸くしながら驚き、ジャバウォックも怒っていた。


「まったく!一体何を考えてるんだ!?」

「いやぁ、ワリィワリィ。デガルベル鉱石を悪用するって聞いてついカチンと来てな・・・」


 小型通信機から聞こえてくるジャバウォックの怒鳴り声を聞きながら苦笑いをして謝るヴリトラ。周りではラピュスやリンドブルムが「やれやれ」と首を横に振り、ジージル達白銀剣士隊や懲罰遊撃隊の隊員達が呆れ顔でヴリトラを見ている。


「お前は時々後先考えずに行動する事があるがあるからそれが一番困るんだ」

「アンタがそういう事を嫌っているのは知ってるけど、もう少し落ち着いて状況を確認してから動きなさいよね?」

「まったくだ・・・」


 ジャバウォックに続いてジルニトラとオロチも小型通信機を通してヴリトラに注意をし、それを聞いたヴリトラは頬を指で掻きながら苦笑いし続けている。


「あ~あ、やっぱり怒られちゃった・・・」

「お前もだぞ?リンドブルム!」


 他人事の様に眺めていたリンドブルムの小型無線機からジャバウォックの声が聞こえ、リンドブルムは思わず反応する。


「お前は七竜将おれたちの中で一番ヴリトラと付き合いが長いんだ、ヴリトラが何を考えるのか一番想像がつくんだからマズイ事をしようとしたら止めるのが普通だろう!」

「ぼ、僕はちゃんと止めたよ・・・?」

「ウソつけ、俺が盗賊達を誘き寄せようとした時、『僕は別にいいけど』って言ったじゃねぇか」

「ちょっ!余計な事言わないでよぉ!」


 ウソをばらしたヴリトラにリンドブルムは慌てて言い返す。それを小型通信機で聞いていたジャバウォックの顔は次第に赤くなっていき、怒りが込み上がって来ているのが一目で分かった。そんなジャバウォックを見ていたファフニールやアリサ、同行している懲罰遊撃隊や白銀剣士隊は驚いて静かにジャバウォックから離れていく。

 我慢の限界が来たジャバウォックがヴリトラとリンドブルムに怒鳴り付けようとした時、小型無線機からニーズヘッグの声が聞こえてきた。


「そこまでだ。済んでしまった事は仕方がない、もめるよりもこの後どうするかを考えるのが重要なはずだ」

「そうだよ、喧嘩はやめよう?」


 冷静にヴリトラ達を落ち着かせるニーズヘッグに続いてファフニールが止めに入る。それを聞いたヴリトラとリンドブルムは落ち着く為に静かに深呼吸をし、ジャバウォックも怒りを鎮めて冷静になる。


「確かに、お前等を叱ったところで戻った時間が戻ってくる訳じゃねぇしな」

「そうそう、まずは盗賊をどうするかを考えようぜ?」

「・・・ヴリトラ、調子に乗るなよ?」

「・・・ハイ」


 ジャバウォックの低い声を聞いて静かになるヴリトラ。リンドブルム達も二人の会話を聞いて小さく溜め息をつく。


「それはそうと、これからどうするつもりなんだ?ヴリトラの話ではいずれ獅子王の牙の盗賊達が一斉にこの岩山に来るのだろう?」

「そうよ!この岩山の事はアイツ等の方が詳しいのよ?そんな状態でどうやって戦うつもり?」


 ラピュスとジージルが今後どうするかをヴリトラに訊ねると、ヴリトラはさっきまでの苦笑いから真剣な表情に変わり、小型無線機に指を当てながらゆっくりと二人の方を向く。


「・・・奴等はこの岩山のあちこちにある隠し通路を使ってゴブリン達に見つからない様に岩山を調べていたはずだ。隠し通路を広くて、岩山のあちこちに繋がっている。奴等は間違いなくその隠し通路を使って俺達の隙を突きながら攻撃して来るだろう」

「その隠し通路を見つけて何とかしないと私達は圧倒的に不利だという訳だな?」

「ああ、だからまずはその隠し通路を使えなくして盗賊達を外に出す」

「外に出すと簡単に言うが、何処に隠し通路の入口があるのかも分からないのにどうやって探すんだ?」


 ラピュスが隠し通路をどうやって見つけるのかをヴリトラに訊ねるとそれを聞いていたリンドブルムが西側で見つけた隠し通路を思い出した。


「あの隠し通路は使えない?戻って来る前に使えないようにしてきちゃったけど、あそこを上手く使えば・・・」

「いや、あの入口はあのままにしておく。奴等も俺達があそこに隠し通路があると知って使えなくしていると考えているだろうから、もう近づかないはずだ。あそこに何かを仕掛けても意味はない」

「なら、その入り口から侵入して隠し通路の作りや入口の場所を調べればいいじゃない?」


 ジージルが隠し通路に入るという事を提案するとヴリトラは首を横に振る。


「隠し通路は盗賊達が作ったんだ。そこに入っても迷うだけだし、もし隠し通路で敵と遭遇したら明らかに不利な状態になっちまう。入るの勧められない」

「じゃあ、どうすんのよ?」


 いい案が無く、若干不機嫌な様子を見せるジージル。ヴリトラは岩山を見上げながら作戦を考える。しばらくすると、何かを思いついたのか表情が一瞬変化した。


「おい、ニースヘッグ。そこから西の森までどれくらいで着く?」

「ん?・・・此処からなら十五分程度で着くが?」

「そうか・・・」

「何だ?・・・・・・もしかしてお前、俺達待機チームに森へ行って盗賊のアジトを叩けとか言うんじゃないだろうな?」

「違う違う、確かに森には行ってもらうけど、戦ってもらうつもりはねぇよ」

「どういう事だ?」


 ヴリトラの言っている事が理解できないニーズヘッグや他の七竜将は難しい顔でヴリトラの声を聞いている。ラピュス達もどんな話をしているのか分からずに小首を傾げていた。


「ニーズヘッグ、確か今回盗賊を捕まえる為に『クロロスプレッシャー』を持って来てたよな?」

「クロロスプレッシャー?・・・ああ、今此処にあるぞ?」

「なら、何とかなるな」


 クロロスプレッシャーを言う物がある事を確認してニッとヴリトラは笑みを浮かべた。


「おい、ヴリトラ。そのクロロスプレッシャーとは何なんだ?」


 ラピュスが訊ねるとヴリトラの代わりにリンドブルムがその質問に答えた。


「クロロスプレッシャーはニーズヘッグが作った催涙ガス散布装置だよ」

「サイルイガス、サンプソウチ?」

「何よそれ?」


 理解できずにまばたきをするラピュスとジージル。リンドブルムは説明しようにも自分では説明するのが難しくて困り顔を見せていた。そんなラピュス達の事を気にせずにヴリトラ達は話を進めている。


「それで、クロロスプレッシャーをどうするつもりなんだ?」

「盗賊達を隠し通路から出すのと関係があるのかよ?」

「勿論だ、上手く使えば奴等を全員隠し通路からいぶり出す事ができる」


 ニーズヘッグとジャバウォックの問いかけにヴリトラは答え、それを聞いたラピュス達や他の七竜将も気になるのか耳を傾けた。


「いいか、計画はこうだ・・・」


 ヴリトラはどうやって盗賊達を隠し通路から出すのか、クロロスプレッシャーをどう使うのかを全員に説明する。そしてそれはとても単純な作戦だった。

 一方、西の森に砦ではヴリトラの攻撃を受けた盗賊達が砦に戻り、頭に事情を説明していた。


「何だとぉ?七竜将ぉ?」

「ハ、ハイ、最近噂になっているその傭兵隊が騎士達と同行している様で・・・」

「デガルベル鉱石が欲しかったら、俺達に勝ってみろと・・・」

「ぐぅ~~!ナメやがってぇ!俺達獅子王の牙を敵に回すとは、とんでもねぇバカどもだな」

 

 頭は長椅子から立ち上がり、腰に納めてある剣を抜いて知らせて来た二人の盗賊に切っ先を向ける。突如剣を向けられて驚く盗賊達は一歩後ろに下がった。


「全員に伝えろ!これから岩山へ向かってその生意気な傭兵隊と騎士団を皆殺しにすると!」

「ハ、ハイ!」

「ついでにその七竜将が使うって言われている奇妙な武器も頂くぞ。それでデガルベル鉱石も俺達の物にする!いいなぁ!?」

「ヘイ!」


 盗賊達は仲間達に知らせる為に部屋を出て行く。部屋に残った頭は振り返り、壁にもたれているフード付きマントの女性の方を向いた。


「・・・お前はどう思う?」

「・・・んん~?」


 頭が訊ねると、女性は力の抜けた様な声で訊き返し頭の方を見る。


「七竜将の事だよ」

「ん~、あたしはこの国に来たのは最近だし、よく分かんないのよねぇ~」


 女性はマントの下から紅のガントレットを付けた手を出して指を動かしながら言った。そんな女性を見た後に頭は背を向けて舌打ちをする。


「チッ!騎士団だけならゴブリン達を利用して潰す事ができるが素性の分からない傭兵隊がいるとなると作戦を練り直す必要があるかもしれんな」

「なぁ~に?さっきは『敵に回すとはとんでもねぇバカだ』とか言ってたのに随分弱腰じゃない。もしかして、ソイツ等の事が怖いのぉ~?」

「ふざけんな!俺は慎重に作戦を立てようとしているだけだ。お前の様に敵に突っ込んで殺してお終い、なんてバカげた事はしねぇんだよ!」


 頭は女性の方を向いて怒鳴り付けると、女性は壁にもたれるのをやめて頭の方を向きフードの下からニヤリと不敵な笑みを見せる。その直後、女性は素早く頭の目の前まで移動して左手で頭の服の襟を掴み、右手で短剣をマントの下から出してその刃を頭の喉元にピタリとつけた。


「調子に乗ってんじゃねぇぞ、テメェ~?あたしはアンタ達がミスリルやオリハルコンのような高価な鉱石をくれるって言うから一時的に仲間になってるだけ、もし鉱石が手に入らなかったらあたしは迷わずアンタ達を殺してさよならするからねぇ~」

「グッ・・・お、お前こそ、俺達全員を相手にして勝てると本気で思ってるのかよ・・・?」


 頭は女性の殺意と不敵な笑みに驚きながらも言い返す。女性は笑みを崩さずに短剣を喉元から離し、短剣をクルクルと回しながら眺め始める。


「心配ご無用~♪あたしの実力は騎士隊を軽く全滅させられる程だから、アンタ達なんて簡単に皆殺しにできるのよ・・・知ってるでしょう?あたしがあっちの国で何て呼ばれてたのか?」

「・・・チッ」


 余裕の態度を取る女性に頭はそっぽ向く。それを見た女性は襟を掴んでいる左手を離して短剣をマントの中にしまう。


「その七竜将がどんな傭兵隊かは知らないけど今まで戦ってきた連中とは違い奴等だって言うならあたしは戦ってみたいわぁ~。そ、し、て、なぶり殺してソイツ等の断末魔を聞いてみたいのぉ~♪」


 相手を痛めつける事で快楽を得ているという女性を見て頭は冷や汗を掻く。女性は自分がもたれていた壁の所まで行くと布で包まれて壁に立て掛けてある大きな物を手に取り、部屋の出入口に向かって歩き出す。


「とりあえずさ?岩山に行ってその傭兵隊と騎士団がどんな奴等か見てみようよぉ~♪アンタ達が作った隠し通路を使えば相手に見つからないんでしょう~?」

「フン、当たり前だ。岩山の色んな所へ行けるように作ったんだからな、必ず奴等の不意を衝ける」

「あっそぉ~。それじゃあ、あたしは先に行って様子を見て来るから、早く来てねぇ~」


 女性はそう言って部屋から出て行った。残った頭は不愉快な顔で自分の剣を鞘に納め、遅れて部屋を出て行く。

 砦を出た盗賊達は岩山の西側の岩壁の前に全員集まった。その数は約三十人ほどで、頭はその三十人の盗賊達を鋭い表情で見ている。


「これで全員か・・・・・・おい、あの女はどうした?」

「あっ、ハイ・・・アイツ等は一足先に隠し通路で岩山の方へ向かいました」

「チッ!勝手に動きやがって・・・!」


 女性の自分勝手な行動に頭は歯を噛みしめて苛立ちを見せる。他の盗賊達もその女性の行動を自由気ままな行動に不信感の様なものを抱いていた。


「とにかく、奴等を倒さねぇと鉱石を手に入れる事は勿論、俺達も只じゃ済まない。必ず奴等を皆殺しにして全ての鉱石を手に入れるぞ!」

「「「「「おぉーー!」」」」」


 頭の言葉に盗賊達は一斉に武器を掲げて声を上げる。


「敵は偵察して来た奴の報告では西側の入口前で傭兵を二人、騎士を二人確認したとの事だ。つまり、その近くに敵の本隊がいる可能性がある。西側にある入口は既に封鎖されているだろう。一番近くにある入口から外に出て敵の本隊を見つけ、奇襲を仕掛ける。既にゴブリン達は奴等のおかげでほぼ全滅状態になっているから騎士団の事だけ考えて戦えばいい!」


 盗賊達は頭の話を聞き、自分達が明らかに有利な対場にあると考えて笑いながら騒いでいた。そんな時、一人の盗賊が頭の前まで来て声をかけてくる。


「お頭、実は敵には別の部隊がいるらしいんです」

「何だと?」

「戦力はデガルベル鉱石の話をしていた敵部隊と同じ位なんですが、そっちの部隊にも例の傭兵隊の仲間らしき人物がいまして・・・」

「またか。それで、ソイツ等の正確な居場所は?」

「確認した奴等の話によると、岩山の東側にいるとか・・・」


 盗賊の言う東側にいる部隊、それはジャバウォック達のチームと考えて間違いないだろう。頭は腕を組みながら難しい顔を見せる。


「東側か、こっちとは正反対の位置だな・・・」

「どうしましょう?放っておきますか?」

「・・・いや、念の為に十人くらい様子を見に行かせろ。それでもし倒せそうなら殺してもいい」

「ヘイ!」


 そう言って盗賊は下がり、準備が整った盗賊達は岩壁の方を向いて表情を鋭くした。


「よぉし!行くぞ野郎ども!盗賊が騎士団などに負けやしないという事を思い知らせてやれぇ!」

「「「「「おぉーー!」」」」」


 声を上げながら盗賊達は岩壁の方へ歩いて行く。そして目の前にある3m程の大きな岩を二人の盗賊が横から押して動かそうとする。すると岩は横へゆっくりと動きだし、岩の後ろから大きな穴が姿を現す。盗賊達はその穴の中へ次々に入って行き、全員が入ると再び岩を動かして穴を隠した。

 その様子を離れた所にある茂みの中で覗いていた三つの人影、ニーズヘッグ、ジルニトラ、ラランの三人だった。


「あそこが隠し通路の入口か・・・」

「アイツ等、あそこを通って岩山の入っていたのね。それにしても、あんな本物と区別のつかないくらいの岩の偽物を作るなんて、この世界の人間もなかなかの技術を持ってるみたいね?」

「・・・違う。あれは岩の中を空洞にして軽くしているだけ、本物の岩を使っている」

「えっ、そうなの?・・・張りぼてみたいね」


 ラランの説明を聞いて意外そうな顔をするジルニトラはまばたきをしながら隠し通路を隠す岩を見つめている。


「二人とも、お喋りはお終いだ。いくぞ」


 ニーズヘッグは二人を呼んで隠し通路のある岩に近づいて行く。二人も茂みから出てニーズヘッグの後を追い、岩の前までやって来た。ニーズヘッグが岩を横から押してゆっくりと動かすと僅かな隙間を作って開けるのをやめた。


「よし、こんなもんでいいだろう」

「・・・何でこんな隙間しか開けないの?」

「全開したらガスが全部出ちゃうだろう?」

「?」


 話が理解できずに無表情のまま小首を傾げるララン、そこへジルニトラが持っているリュックの中から何かを取り出して地面に置いた。それは高さ15cm程のロードコーンの様な形をした金属製の装置だった。中央で上に伸びている尖った部分の八方には八つのアルミ製の缶が取り付けられており、その間には英文字で何かが書かれてある。

 ジルニトラが取り出した装置を見たラランはまばたきをしながら不思議そうに見つめている。


「・・・何、これ?」

「これがヴリトラの言っていたクロロスプレッシャーよ」

「・・・これが?」


 ヴリトラが話していた催涙ガス散布装置であるクロロスプレッシャーだと聞かされてラランはその場にしゃがみ込む。ジルニトラはクロロスプレッシャーを岩の隙間の近くに移動させ、尖った部分を倒して隙間から洞窟内へ向ける。そして装置についている小さなボタンを押して行き、小さならランプが点灯するとニーズヘッグの方を向いた。


「準備できたわよ」

「よし、後は起動させるだけだな」

「ええ・・・それにしても、ヴリトラがあたし達に西の森へ行って盗賊達を監視しながら隠し通路の入口を見つけろなんて言い出した時は驚いたわよ」

「それで隠し通路の入口を見つけたそこからクロロスプレッシャーで催涙ガスを洞窟内に流して盗賊を燻りだせときたもんな」

「時々アイツの考える作戦ってあたし達の想像を超える事があるからビックリよね・・・」


 ヴリトラの立てた計画、それは西の森にある獅子王の牙の隠れ家である砦を見つけだし、盗賊の人数と岩山に続く隠し通路をニーズヘッグ達待機チームに見つけてもらう事だった。そして隠し通路を見つけた時に催涙ガスで盗賊達を隠し通路から追い出すのが目的だったのだ。その作戦を聞いた時にラピュス達は最初は驚きの表情を浮かべていたか、安全に盗賊達を隠し通路から追い出すにはその方法が一番だと考えて計画に賛成する。今洞窟の前にいるのはニーズヘッグ、ジルニトラ、ラランの三人だけであるが、他の者達は盗賊達の砦へ向かう為に別行動を取っていた。


「・・・その機械はどれぐらいのガスを出せるの?」

「これはニーズヘッグの特製品だからね。八つのアルミ缶に入った液体を全部使えば、少なくても二時間はガスを出し続けられるわ」

「・・・二時間も」

「ええ、それなら岩山の隠し通路の半分を催涙ガスで包み込めるはず」

「しかも、これと同じクロロスプレッシャーをジャバウォック達も持っている。アイツ等が他の隠し通路の入口を見つけて同時に使えば盗賊達も大騒ぎという訳だ」

「・・・凄い」


 七竜将の使う機械の性能にラランは改めて驚く。そんな中でジルニトラはニーズヘッグの方を向き、ニーズヘッグも頷いて合図を送る。


「よし、それじゃあ・・・・・・スイッチオン!」


 そう言ってジルニトラはクロロスプレッシャーのスイッチを押した。すると洞窟に向けられている部分の先端から白いガスが噴出されて洞窟内に入って行く。それを確認したジルニトラはゆっくりと下がりニーズヘッグとラランの隣まで移動した。


「よし、これでOKよ」

「なら、俺達は盗賊達の砦に向かって情報を集めるぞ」

「・・・その後に隊長達の所に行く」

「分かってるわ」


 三人はクロロスプレッシャーを起動させると盗賊達の隠れ家である砦の方へ走って行く。残されたクロロスプレッシャーから噴出される催涙ガスは少しずつ洞窟の奥へ奥へと広がって行った。

 遂に盗賊達が岩山へ入った。その直後に待機していたニーズヘッグ達が隠し通路に催涙ガスを流し込む。ここからヴリトラ達の盗賊殲滅作戦が開始されるのだった。


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