第百七十話 人間VSモンスター! 新たに現れた巨大な影
岩山へ入り調査を始めたヴリトラのチームとジャバウォックのチーム。そんな中、ヴリトラのチームがゴブリンとオークの集団と接触し戦闘を開始する。初めて目にする異世界のモンスターにヴリトラ達は白銀剣士隊と共に挑むのだった。
ヴリトラからの通信でゴブリン達と戦闘を開始すると聞いたジャバウォックのチーム。彼等は既に入口の細道を通過して大きな岩に囲まれた広い道に出ており、小型通信機から聞こえてくるヴリトラやゴブリン達の声を聞いたジャバウォックとファフニールは表情を鋭くし、オロチは無表情のまま聞いていた。アリサや他の騎士達は通信の内容を聞けずに不安そうな顔をしている。
「あ、あの、ジャバウォックさん。隊長達に何か遭ったんですか?」
「ああ、何でも例のゴブリンとオークどもに遭遇したらしい」
「ええっ!?」
アリサは驚きのあまりに声を上げ、周りにいる懲罰隊の騎士達や白銀剣士隊の騎士達も驚きの表情を浮かべている。
「だ、大丈夫なんですか!?」
「落ち着け、ゴブリン達は別に何か厄介な能力とかを持っているって訳じゃないんだろう?」
突然ゴブリンの特性を聞いて来るジャバウォックにアリサはフッと顔を上げてまばたきをした。
「え、ええ、ゴブリンもオークも見た目以外は私達人間と同じで武器や防具などを使い、集団で行動するという事以外はこれと言って・・・」
「なら心配ないさ。何か特殊な力を持っているならまだしも、普通の人間と変わらなければ大丈夫だ」
ヴリトラ達なら心配ない、そう笑いながら前を見て答えるジャバウォックにアリサや懲罰遊撃隊の騎士達はまばたきをする。しかし、白銀剣士隊の者達は七竜将の事が信用しておらず、納得の行かない表情を見せた。
「何を呑気な事を言ってるの!?早く隊長達を助けに行かないと!」
「助けに行くって、アイツ等が何処にいるのかアンタは知ってるのか?」
「うっ!そ、それは・・・」
女性騎士はジャバウォックの問いかけに何も言えず黙り込む。他の兵士達もジージル達の居場所が分からずに黙り込んでいる。
「それに、そんな事を言ってられる状態じゃなさそうだしな・・・」
「えっ?」
ジャバウォックの言葉の意味が理解できずに小首を傾げる女性騎士。ジャバウォックの近くではオロチとファフニールが斬月とギガントパレードを構えて周囲を見回しており、それを見たアリサや懲罰遊撃隊も何かあると察して騎士剣やMP7など自分達の武器を構えて警戒する。すると周りの岩の陰から武器を持った無数のゴブリンとオークが姿を現しジャバウォック達を取り囲んだ。突然のゴブリン達の登場に白銀剣士隊は驚き慌てて剣や弓を構える。
「な、何だコイツ等!何時の間に取り囲んだんだ!?」
「俺達がさっきの細道を出たあたりから気配はしていたな」
「何?どうしてその時に知らせなかった?」
「気配は分かっても敵意があるかまでは分からんからな」
自分達を取り囲み武器を構えるゴブリン達に注意しながら背負っているデュランダルを抜いて構えるジャバウォック。ゴブリンとオークも戦闘態勢に入ったジャバウォック達を見て鳴き声を上げるなりして威嚇する。騎士達が警戒心を強くする中、ジャバウォック達七竜将は表情を変えずにモンスター達を見つめていた。
「さて、ヴリトラ達を助けに行く前にこの状況を何とかする事が先になった訳だ」
「うん・・・でも、結構な数がいるよ?」
「向こうの世界ではこれ以上の数を相手にしていただろう?この程度で驚くな・・・」
「驚いていないよぉ~」
クールな口調のオロチにファフニールはブーブーと頬を膨らませて言い返す。そんな二人にジャバウォックは敵の方を見たまま注意する。
「お前達、お喋りはそれぐらいにしておけ。敵さんはそろそろ戦いを始めたい様子だ」
「ハァ~イ」
「了解した・・・」
注意された二人はそれぞれ目の前にいるゴブリンやオークを見て自分の武器を構える。アリサ達も騎士剣やMP7を構えて一番近くにいるゴブリン達に集中する。白銀剣士隊の隊員達もいつでも攻撃できる態勢に入っていた。
「白銀剣士隊、アンタ達は殆どが弓を使う遠距離戦の戦士ばかりだ。アンタ達は真ん中にいろ」
「なっ、何を言うの!私達は白銀剣士隊の騎士、こんな奴等に負けるはずがないでしょう!?何より、傭兵である貴方達に守ってもらう義理なんてないわ!」
「奴等は全員が棍棒や手斧、木の槍を持っているんだ。接近戦に持ち込まれたら危険だぞ、そんな事も分かんねぇのか?」
「ぐっ!」
「俺達が前線で戦う。アンタ達は後方で援護射撃をしてくれ」
「・・・・・・分かったわ」
正論に言い返せない女性騎士は渋々言うとおりにした。そして白銀剣士隊を囲む形で七竜将と懲罰遊撃隊は円陣を組み、自分達を取り囲むゴブリン達と向かい合う。
「よし、始めるぞ!」
ジャバウォックの合図と共に、ファフニール達は一斉にゴブリンとオークに向かって走り出す。アリサや一部の騎士達も騎士剣を持ってゴブリン達に向かって行き、MP7を持つ者達も銃撃を開始した。
同時刻、ヴリトラ達も遭遇したゴブリンやオーク達と戦闘を繰り広げていた。ジージル達白銀剣士隊の放つ矢がゴブリンとオークの体に刺さり一体ずつ確実に倒して行く。だが中には矢を受けずに近づいて来る者達もいるが、それらはヴリトラ達や懲罰遊撃隊が素早く倒して行った。
「しっかり狙って撃ちなさい!頭とか急所に当たらなくてもいい、とにかく命中させて少しでも動きを止めるのよ!」
「「「「「ハイ!」」」」」
ジージルの指示を聞いた白銀剣士隊の弓兵達が一斉に返事をして矢を放つ。彼等も弓矢を得意とする白銀剣士隊と言うだけあって、放った矢の殆どがゴブリン達に命中していた。頭や心臓を射抜かれたゴブリンやオークはその場に倒れ、足や腕を射抜かれた者は矢が刺さったまま向かって来る。そんなゴブリン達を剣や槍を持った兵士達が迎え撃ち、一人ずつ倒して行く。
「へぇ~、流石は白銀剣士隊と言うべきか。いくら隊長の性格が悪くても優秀なのは確かって事だな」
「ヴリトラ、もしジージルさんの耳に入ったらヴリトラが頭を射抜かれるよ?」
「おっと、そりゃ嫌だな」
白銀剣士隊の戦いを眺めながら会話をするヴリトラとリンドブルム。そこへ棍棒と手斧を持ったゴブリンが二匹、二人に向かって走って来る。だがヴリトラとリンドブルムは白銀剣士隊の方を向いたまま襲って来たゴブリン達を斬り捨て、額を撃ち抜く。ゴブリン達は二人の傷を負わせる事なくその場に俯せに倒れた。
「俺達も、アイツ等を見てないで戦いに集中しよう。適当にやっていたらラピュスに叱られちまう」
「そだね」
前を向いて目の前にいる三匹のゴブリンと四匹のオークを見ながら森羅とライトソドム、ダークゴモラを構えるヴリトラとリンドブルム。そんな二人を見て三匹のゴブリンが一斉に襲い掛かってくる。リンドブルムは二丁の愛銃でゴブリン達の額や左胸を一発で撃ち抜き確実に仕留めて行く。ゴブリンが全員倒れるとヴリトラは森羅を構えながら横一列に並ぶオーク達に向かって走り出す。素早く左端にいるオークの目の前にまで移動したヴリトラはオークに袈裟切りを放ち、一匹目をアッサリと倒した。
「フゴォーーッ!」
仲間を殺されて怒るオークは真横にいるヴリトラに向かって棍棒を振り上げる。だが、ヴリトラは攻撃される前に姿勢を低くしながら森羅で横切りを放つ。オークは胴体から真っ二つにされ、赤い血を吹き出しながら倒れた。二匹目のオークも倒れ、残った二匹のオークはヴリトラの恐れを感じたのかゆっくりと後ろに下がり出す。その内の一匹の頭をリンドブルムは撃ち抜き、三匹目も仰向け倒れる。最後の一匹はヴリトラとリンドブルムの二人を交互に見て驚いていた。
二人から離れた所ではラピュスが自分の騎士剣を強く握りながら二人の戦いを見ていた。
「やはり、あの二人は凄いな。息もピッタリで全く隙を見せていない」
ラピュスは二人の息の良さに改めて感心し小さく微笑む。そこへ一匹のオークが木の槍を構えてラピュスに突っ込んできた。それに気づいたラピュスは素早く体を横へ反らしてオークの槍をかわし、騎士剣を振り下ろして木の槍ごとオークを斬る。オークは鳴き声を上げながら倒れ、ラピュスは他のゴブリン達を見て騎士剣を構え直した。
「まだかなりの数がいるな・・・」
まだ遠くに十匹以上いるゴブリン達を見ながら騎士剣を握る手に力を入れるラピュス。すると、懲罰遊撃隊の騎士達がMP7やベレッタ90を撃ちながら遠くのゴブリンやオークを攻撃する。ゴブリン達は弾丸を体中に受けて倒れて行き少しだけ数が減った。
「隊長、援護します!」
「すまない!」
仲間達が合流し、ラピュスは騎士剣を構えてゴブリン達に向かって走り出し、五人の騎士の内、三人が援護射撃を続け、二人は騎士剣を抜いてラピュスに続く。その姿をヴリトラとリンドブルムが遠くから見ていた。
「あっ!アイツ等、援護射撃があるからって突っ込んで!」
「たった三人じゃ危ないよ、僕達も行こう!」
「当然!」
援護する為に二人はラピュス達の下へ走り出す。その間、自分達に向かって来るゴブリンやオークは全て倒して行き、ヴリトラとラピュスは一度も立ち止まる事なく走り続けた。
ゴブリン達の中で一匹ずつゴブリンとオークを倒して行くラピュスと二人の男性騎士。仲間達の援護射撃もあって押されている様子はないが、ゴブリン達は徐々にラピュス達の下へ集まり包囲した行く。
「隊長、少しずつ敵が集まって来ています。一度後退しましょう!」
「ああ、分かっている!」
目の前のオークを斬り捨てながら後退しようとするラピュス達。だがそこへ、一匹のゴブリンが手斧を持ってラピュスに飛び掛かる。油断していたラピュスは反応が遅れてしまい防御態勢に入れなかった。ゴブリンの手斧の刃がラピュスの顔の迫って来た、その時、銃声と共にゴブリンのこめかみが撃ち抜かれ、ゴブリンは地面に俯せに倒れて息絶える。
突然の銃撃でゴブリンが死んだ事に驚くラピュス。そこへ別のゴブリンがラピュスに向かって行くがヴリトラの斬撃を受けて何もする事なく倒れた。
「ヴリトラ!リンドブルム!」
合流して来た二人を見ながら名を口にするラピュス。ヴリトラはラピュスの隣まで来ると森羅を構えて周囲を警戒し、リンドブルムも二人の騎士達の下へ向かい彼等の背を守った。
「銃があるからって無暗に敵に突っ込むな。敵に四方から囲まれたらいくら銃を使ってもお終いだぞ?」
「す、すまない」
ヴリトラに注意され、ラピュスは周りの警戒をより強くしながら騎士剣を構える。ヴリトラ達も目の前にいるゴブリンとオークを見て相手がどう動くかを様子を見るのだった。
ゴブリン達を倒しながらヴリトラ達の戦いを見るジージルと白銀剣士隊の兵士達。ヴリトラ達の戦い方と力を見て目を見張りながら驚きを見せた。
「あれが噂の銃・・・遠くのゴブリンやオークが一撃で倒れるなんて、どんな仕掛けなのよ・・・」
「もしかすると、魔法の一種なのでは?」
「そんなはずないわ。魔法に関する技術や情報は何十年も前に消えているのよ?そんな状態で魔法を蘇らせるなんて不可能だわ。増してやあんな傭兵達が魔法の知識を持っているはずがないもの・・・」
「じゃあ、あれは一体・・・」
初めて見る銃器の威力と構造に驚くジージルと女性騎士、既に白銀剣士隊の近くにいたゴブリンやオークは殆ど倒されて、残っているのは数えるくらいのゴブリンだけだった。ゴブリン達も目の前で倒れている仲間達を見て恐れを出したのか後退し始めている。
「隊長、ゴブリン達が後退し始めています!」
「一気に畳み掛けるわ!弓兵隊、逃がすんじゃないわよ!」
「「「「ハイ!」」」」」
命令を聞いた弓兵達は隙を見せているゴブリン達に向かって矢を放つ。ゴブリン達は完全に戦意を失い、背を向けて逃げ出し始めた。
「ヴリトラ、向こうのゴブリン達が逃げ出したぞ」
「こっちも戦意を無くして後退してるよ」
「じゃあ、こっちもこのまま押し切るぞ!」
ジージル達と戦っていたゴブリン達が後退していくのを見てヴリトラ達も目の前にいるゴブリンとオークへの攻撃を再開した。斬撃と銃撃で次々と倒れて行くゴブリン達は武器を捨てて自分達が来た方角へ走り出す。その時、ゴブリンとオークが現れた岩山の上へと続く道から突如大きな人影が姿を現した。その人影を見たゴブリン達は足を止め、驚きの表情で見上げる。追撃を掛けていたヴリトラ達も攻撃をやめてその人影を見ていた。
「何だ、あのデカい影が?」
「分からない。だがゴブリンやオーク達も怯えているようだ」
「少なくともゴブリン達の味方じゃなさそうだね」
リンドブルムの予想は当たっていた。人影は突如大きな腕を振って目の前にいるゴブリンやオーク達を薙ぎ払った。殴り飛ばされたゴブリン達は崖の方へ飛ばされてそのまま真下にある森へ落ちて行く。人影やゆっくりと歩き出してヴリトラ達の前にその姿を見せた。鉛色の肌をし、ゴブリンと似た顔を持つモンスター。身長はジャバウォックよりも大きく、約3mはある巨体。上半身裸で革製のパンツだけという格好をしており、その手にはゴブリン達が使っていた物とは比べものにならない大きな棍棒が握られていた。
「あ、あれはオーガ!?」
「オーガ?」
モンスターの姿を見てオーガと声を上げるラピュスは驚きの表情を見せ、隣にいたヴリトラは訊き返した。
「ちょっとぉ!オーガがいるなんて聞いてないわよ!調査隊は何やってたのよぉ!?」
ジージルもオーガの姿を見て驚きながらその場にいない調査隊に文句を言う。オーガはジージル達から逃げていたゴブリン達も棍棒で攻撃し、岩壁に叩きつけたり崖から落すなどして排除していく。平地の掃除が終わると、オーガはヴリトラ達の方を向いて静かに見つめる。するとオーガの陰から別のオーガが二匹姿を見せ、三匹のオーガがヴリトラ達の前に現れた。
予想外のモンスターの登場に動揺を隠せないラピュス達懲罰遊撃隊とジージル達白銀剣士隊。だがヴリトラとリンドブルムは少し驚くだけで動揺している様子はなかった。
「おい、ラピュス、あのバカデカイのは何なんだよ?」
「あれはオーガだ。ゴブリンやオークと同じ人に似た姿をしたモンスターだが、その大きさと怪力から騎士団や傭兵達からも恐れられているモンスターの一匹。オーガ一匹を倒すのに白銀剣士隊でも重装備で挑まないと危険だと言われているくらいだ・・・」
「そんなに危ないの?」
「ああ。あれは流石にマズイ、今の戦力じゃ勝つのは難しいだろう・・・」
弱気になっているラピュスを見たヴリトラとラピュスはゆっくりと視線をオーガ達に向ける。オーガ達はヴリトラ達を見てゴブリンやオークの仲間だと思ったのか、横一列に並びながらヴリトラ達に向かって歩き出した。
近づいて来るオーガ達を見てジージルは危険を感じたのか弓矢を構えて後ろにいる仲間に指示を出す。
「皆、流石にオーガが相手だとマズイわ!攻撃しながら後退するわよ!体や腕に矢が刺さってもアイツ等には殆どダメージが無い、頭を集中的に狙いなさい!」
「ハ、ハイ!」
ジージルの指示を聞いた女性騎士や弓兵達は弓を構えてオーガ達の頭を狙う。そんな中、ヴリトラは森羅を右手に持ち、縦にクルクルと回しながらオーガ達に向かって歩いて行く姿が見えた。その後ろにはリンドブルムも続き、それを見たジージル達や近くにいるラピュス達は驚き彼等を見つめる。
「ちょ、ちょっとアンタ達!何するつもりよ!?」
「危ないぞ二人とも!下がれ!」
二人を止めようとするジージルとラピュス。ヴリトラとリンドブルムは足を止めて向かって来るオーガ達を見ながら口を開いた。
「コイツ等は俺とリンドブルムでなんとかする。お前達はできるだけ離れていろ」
「何?」
「ラピュス、もしオーガ達がお前達の方に行ったら銃を撃ちまくれ。全ての弾を使ってもいい」
「だ、だが、いくら銃でもオーガに通用するはずが・・・」
「あまり銃の威力を甘く見ないでよ?ラピュス達が思ってる以上にそれは凄い武器なんだから。ゴブリンは勿論、コイツ等程度なら一発では無理でも、数発撃っていれば必ず倒せるよ」
背を向けながら話すヴリトラとリンドブルムにラピュス達は目を見張っていた。自分達よりも体の大きなオーガを見ても逃げるどころか驚きすらしない二人の姿は信じられなかったのだ。ジージル達も二人の姿を見て思わず黙り込んでしまう。
オーガ達は自分達の前でベラベラと喋っているヴリトラとリンドブルムを見下ろしながら自分達をバカにしていると感じ取ったのか二人を睨みつけて大きな鳴き声を上げる。そして真ん中にいるオーガが持っている棍棒を振り上げて、目の前のヴリトラに向けて勢いよく振り下ろした。ヴリトラはチラッとオーガの方を見た瞬間に森羅を大きく横に振る。すると棍棒はまるで大根を切ったかの様に真ん中から真っ二つに切れてヴリトラの真横に落ちる。
「なっ!」
「ウ、ウソでしょう・・・?」
オーガの棍棒を楽々と切ったヴリトラにラピュスとジージルは目を疑い、他の騎士達も一斉に驚いた。棍棒を切られたオーガも自分の棍棒を見て驚きの表情を浮かべている。彼の足元ではヴリトラは森羅を軽く横に振り、ゆっくりとオーガを見上げた。
「それに俺達は、コイツ等よりもキツイ相手と何度も戦った事がある」
「ある意味で、ブラッド・レクイエムよりも危険な相手とね」
ヴリトラの左斜め後ろでリンドブルムがライトソドムで左側のオーガを狙う。するとライトソドムの銃身にスパークが発生し、リンドブルムはレールガンシステムを使う。エネルギーが溜まるとリンドブルムは引き金を引き、轟音と共に超高速の弾丸を撃つ。弾丸はオーガの体を貫通し大きな風穴を開けた。撃たれたオーガは何が起きたのか理解する事もできずに仰向けに倒れ息絶える。
「あ、あれは武術大会で私と戦った時に使った・・・」
ジージルは武術大会でリンドブルムが使ったレールガンを思い出して更に驚きの反応を見せる。オーガ一匹を簡単に倒したリンドブルムを見てラピュスや懲罰遊撃隊は七竜将の強さを再認識する。
仲間が一匹倒されたのを見て残った残りの二匹は一瞬驚くがすぐにヴリトラとリンドブルムの方を向いて二人を睨みつける。
「何だ?仲間が一撃で倒されたのを見てまだ戦うつもりかよ?」
「普通はあんな光景を見れば驚いて逃げるはずなのに・・・仲間の仇を取るつもりなのかな?」
「はたまた、ゴブリンやオークと同じくらいバカなのか・・・」
ヴリトラとリンドブルムは残りのオーガ二匹を見て自分達の武器を構える。そしてオーガ達も棍棒を持って二人を見下ろしながら威嚇した。
「悪いけど、俺達には大事な仕事があるんだよ!」
「さっさと終わらせるよ!」
そう言って二人はオーガに向かって走り出し、オーガ達もズシズシと足音を立てながらヴリトラとリンドブルムを迎え撃つのだった。
ゴブリンとオークの襲撃を受けたヴリトラ達とジャバウォック達。だが、その後に新たにオーガが現れてラピュス達に襲い掛かろうとするも、ヴリトラとリンドブルムがそれを止める。ラピュス達はオーガを恐れる事も無く向かって行くヴリトラとリンドブルムに更なる驚きと心強さを感じるのだった。