第百六十九話 調査任務開始! 現れた小人と亜人のモンスター
目的地の岩山に到着したヴリトラ達と白銀剣士隊。岩山の周囲を地図で確認しゴブリン達の住処、盗賊達の隠れ家の位置などを調べた後に作戦を全員に話し、いよいよ岩山の調査任務が始まった。
南側にある岩山の入口の前に立つヴリトラ、ラピュス、リンドブルムの三人と五人の懲罰遊撃隊の騎士。そして彼等の隣にはジージルと数人の白銀剣士隊の隊員達の姿がある。彼等の前には岩山の入口、左右には森、そして背後には自分達が通って来た一本道があった。
「近くで見ると思ってた以上に凸凹した道だな」
「うん、この先は歩いて行くいかないみたいだね」
ヴリトラとリンドブルムは岩山の入口を見回しながら周囲状況を確認する。入口やその周りは岩や石だらけで所々に木も生えているがその殆どが枯れていた。何者かが出入りした形跡はあるが、ヴリトラ達はそれがゴブリンやオークのものだとすぐに気付く。
「やっぱりゴブリン達は此処から岩山に入ったらしいな」
「ああ、しかも形跡からして岩山に入ってからまだ一日と経っていない。つまり、今日この岩山に奴等が入ったという事になる」
ヴリトラの隣に立っているラピュスは形跡を見てゴブリン達が何時岩山に入ったのかを推理しながら周囲にゴブリンやオークがいないかを見回す。入口の奥、森の中、そして背後、何処からゴブリン達が襲って来るのか分からない以上、ヴリトラ達は常に警戒していた。
そんな中、ヴリトラ達の隣ではジージルが腕を組みながら目を細くしてヴリトラ達を見ている。
「・・・それで、この後はどうするのよ?」
「まずは最初に見つけた鉱石の洞窟へ行ってどんな状況か確認しよう。それから周囲を調べて他の鉱石の洞窟があるか探すんだ」
「あっそ・・・」
訊いておきながら興味の無さそうな反応を見せるジージル。他の白銀剣士隊の隊員達もいまいち信用できない様な表情でヴリトラ達を見ていた。
「とにかく先へ進もうぜ。分かってるとは思うけど、岩山に入ればゴブリンやオークで遭遇する可能性が高くなる。一瞬たりとも気を抜くんじゃないぞ?」
「ああ、分かってる」
「了解」
「・・・フン、アンタなんかに言われなくても分かってるわよ」
ヴリトラの方を向いて頷き返事をするラピュスとリンドブルム、余計なお世話た言いたそうにソッポ向くジージル。懲罰遊撃隊の騎士や白銀剣士隊の隊員達も黙ってヴリトラ達の方を見ている。此処からは道が複雑な為、馬では先へ進めず、入口の隅に置いて行くことになった。一同は岩山の見上げながらゆっくりと入口を通って岩山へと入って行く。
「・・・そう言えば、他の皆はどうしてるかな?」
「アイツ等なら心配ないさ。少なくとも俺達よりは安全だと思うぜ」
他の仲間達の事を心配するリンドブルムにヴリトラは声を掛ける。ラピュスやジージルも仲間の事が少し気になるのか歩きながら仲間達の事を考えていた。
「・・・ヴリトラ、北東の入口の方はどうなんだ?確か道が細くて崖とかもあるんだろう?」
「確かに危険なところも少しはあるけど、慎重に進めば大丈夫なはずだ。作戦前にオロチが偵察に行って確認して来たから間違いないだろう」
「それならいいのだが・・・」
オロチの偵察内容を疑っている訳ではないが、やはり心配なのかラピュスは表情を曇らせた。
同時刻、北東の入口前ではジャバウォック、オロチ、ファフニール、アリサの四人と懲罰隊の騎士が四人。そして白銀剣士隊の女性騎士と数人の白銀剣士隊の隊員の姿があった。彼等の後ろのはバンと騎士達が乗って来た馬が停まっている。ジャバウォック達も自動車はバンでは岩山を登れないと判断し、歩いて先へ進むつもりのようだ。
「・・・クシュン!」
「大丈夫か?アリサ」
「あっ、ハイ。大丈夫です・・・」
クシャミをするアリサを心配するジャバウォックにアリサは笑いながら頷く。鼻を軽く擦りながらアリサは不思議そうな顔で岩山を見た。
「風邪でも引いたのかなぁ?」
「誰かが噂をしてるんじゃないですか?」
「噂?」
ファフニールが微笑みながらアリサの方を向いて言う。そんなファフニールの方を見てアリサは小首を傾げた。
「おい、お前達、お喋りはそれぐらいにしておけ?そろそろ出発するぞ」
「ハ~イ」
「分かりました」
ジャバウォックに言われて二人は返事をする。オロチは岩山の入口を見ながら斬月で自分の肩をトントンと軽く叩いていた。
「此処は左右を岩壁に挟まれて一本道だ。もしも上から岩などが落ちてきたら私達に逃げ道はない・・・」
「い、岩が落ちるって、大丈夫なんですか?」
「心配ない、さっき調べたら崩れそうな脆い所は無かった。だが、念の為にさっさと通過した方がいいだろう・・・」
怖い事を静かにハッキリと言うオロチにアリサは目を点にして固まる。懲罰遊撃隊や白銀剣士隊も同じように驚いていた。
「んじゃ、そろそろ行くとするか」
ジャバウォックが荷物の入ったリュックサックを持って入口の方へ歩いて行き、オロチとファフニールも小さな革製の袋を持ってついて行く。
「あっ、待ってください!」
先に行くジャバウォック達の後を慌てて追いかけるアリサと懲罰遊撃隊の騎士達。その後ろ姿を白銀剣士隊の女性騎士は見つめている。
「・・・あの者達について行って本当に大丈夫なのか?隊長や他の者達も無事だといいのだが」
「あ、あの、彼等、どんどん先へ行ってしまいますが・・・?」
女性騎士の後ろにいた兵士が声を掛け、それを聞いた女性騎士はふと前を見る。既にジャバウォック達は十数m先まで進んでおり、それを見た女性騎士は慌てて走り出し後を追う。兵士達も遅れて後を追い入口の一本道を進んで岩山へ入って行った。
ヴリトラ達のチームとジャバウォック達のチームがそれぞれの入口から岩山へ入って行った頃、岩山から500m程離れた所にある平原の高台の上ではララン、ニーズヘッグ、ジルニトラの三人がジープの上で双眼鏡を覗き込みながら岩山を見張っている。その隣には懲罰遊撃隊の残りの騎士達や白銀剣士隊の男性騎士と数人の兵士の姿があった。彼等はどちらかのチームに何か遭ったり、予想外の事が起きた時にすぐ駆けつけられるよう高台で待機しているのだ。
「今頃、両チームとも岩山に入った頃だろうな」
「そうね」
「・・・私達は何時まで此処にいるの?」
「何も問題が起きなければずっとこのままね」
「・・・つまらない」
ただ待機しているだけという自分達の立場にラランは双眼鏡を目から離し、納得ができないのか低い声を出してジルニトラの方を見る。相変わらず無表情だが、その顔からは明らかに不機嫌さが感じられた。ジルニトラは双眼鏡を覗くのやめてラランの方を見ながら呆れ顔を見える。
「つまらないって、戦う事が無ければそれでいいじゃないの。戦えないから此処にいるのがイヤって言ったらただの戦闘マニアよ?」
「・・・マニア?何それ?」
「自分の専門分野に熱狂的な情熱を注ぐ人の事よ。戦闘マニアって言うのは、戦闘に強い熱意を燃やす人、戦闘狂、戦闘バカとも言うわね」
「・・・私、戦闘狂じゃない」
若干表情を鋭くしてジルニトラを見つめるララン。ジルニトラは一度小さく息を吐いてラランの方を見る。
「だったら、戦えないからつまらないなんて事は口にしないようにしなさい?戦って相手を傷つける事が無ければそれが一番なんだから」
「・・・・・・分かった」
ジルニトラの話を聞き、納得したラランは表情を和らげて頷き、再び双眼鏡で岩山の方を覗き見る。ニーズヘッグは双眼鏡で岩山を覗きながら二人の話を聞いており、懲罰遊撃隊の騎士達もラランとジルニトラの話を聞きながら何時戦いが起きてもいい様に準備をしていた。
ララン達が岩山を見張っていると、ジープの隣に白銀剣士隊の男性騎士がやって来て自分の持っている遠眼鏡、つまり望遠鏡を覗いて同じように岩山を覗き見る。やって来て男性騎士に気付いたニーズヘッグが一度双眼鏡を目から離して男性騎士を確認すると、再び双眼鏡を覗き込んだ。
「・・・アンタ達の立てた作戦、本当に上手くいくんだろうな?」
「それは分からないな」
「何だと?」
男性騎士がニーズヘッグの口から出た言葉に思わず望遠鏡を覗くのをやめてニーズヘッグの方を向く。
「おい、今更それは無いだろう。隊長も我々もお前達の作戦が必ず上手くいくと聞いたから乗ったのだぞ?」
「必ず上手くいくと言ったのはラピュスだ。俺達は一言も言っていない」
「な、何だと?何と無責任な・・・」
「そもそも100%成功する作戦が本当にあると思っているのか?」
「何・・・?」
ニーズヘッグの言葉に男性騎士は思わず聞き返した。ニーズヘッグは双眼鏡を目から離し、男性騎士を真剣な目で見る。
「どんな作戦でも敵の妨害が起きれば作戦の成功率は必ず変わる。天候、作戦を行う場所、仲間達の体調、その内にどれかが少しでも変化すればそれだけで作戦の流れは大きく変わるんだ。結局、作戦が上手くいくかは仲間達が力を合わせて作戦を成功させよとする意志と技術、そして運だ!」
力のある声で目の前の男性騎士や周りのララン達に自分の考えを伝えるニーズヘッグ。ララン達は話を聞いて生き残る為には仲間同士力を合わせる事が重要だという事を改めて認識し、近くにいる仲間の顔を見てそれを確かめ合った。男性騎士もニーズヘッグの言葉に何も言い返せずに黙り込む。ニーズヘッグは話し終えると再び双眼鏡を覗き込む。
「アンタ達もこの作戦を成功させ、全員無事でティムタームに戻りたいのなら俺達を嫌ってないで協力しろ。そうしてくれれば作戦の成功確率も上がるし、俺達も全力でアンタ達を守ってやるさ」
一見無愛想な言い方だが、自分達を仲間だと言うニーズヘッグに男性騎士は調子が狂う様な顔で望遠鏡を覗き岩山をチェックする。ほんの少しだが、ニーズヘッグ達と白銀剣士隊の間に小さな絆が生まれた様な感じがした。
その頃、ヴリトラ達のチームは順調に岩山を登っていた。彼等の目に入って来るのは岩や石ばかりでとても殺風景な景色ばかり。時々木や草なども見られるが、それも僅かのもので気分が変化する程ではなかった。
「あ~あ、さっきから似た様ね風景ばかりだね」
「仕方ねぇだろう?ここか岩ばかりで草木なんかは殆ど生えていない。しかもゴブリン達が出入りする様な所だから人も住んでいないんだ」
「あと、獅子王の牙も根城にしている砦があるから、普通の人間は絶対に此処で暮らそうなどとは思わないだろうしな」
「だから誰かが手を加える事もなくこんな殺風景な風景なんだろう」
ヴリトラとラピュスが歩きながらリンドブルムに岩山の風景が酷い理由を話す。ヴリトラ達の後ろでは懲罰遊撃隊の騎士達やジージル達白銀剣士隊が黙って話を聞いていた。
「でも、もしこの岩山にある鉱石の洞窟の事を調べてゴブリンやオーク、獅子王の牙の盗賊達が岩山に侵入できなくなれば此処に鉱石採掘場ができて働く人やふもとに小さな村ができるかもしれない。そうなればこの岩山も少しは長めのいい場所になるかもしれないな」
「そっかぁ。それじゃあ、早く鉱石を調べてゴブリン達を追い出そう!」
「おいおい、私達の目的は調査なんだぞ?村や採掘場を作るというのは私の想像だ、そんなに張り切らなくても・・・」
張り切るリンドブルムを落ち着かせるラピュス。そんな二人を見ながらヴリトラはニヤニヤと笑っていた。
「まったく、何が楽しくてあんなにはしゃいでるのかしら。あの坊やは・・・」
三人の後ろ姿を見ながらジージルは呟く。彼女はゴブリンやオーク、盗賊が近くに棲みついている森が近くにある危険な岩山に人を住めるようにする、そんな考えを心の中でくだらなく思っていた。
「採掘場や砦ならともかく、何で村なんかを作る必要があるのかしら?意味が分からないわ」
「ですが、隊長。採掘場などを作るとすれば採掘した鉱石を首都や近くの町へ運ぶ為の足が必要になります。それを考えると、採掘場で働く者だけでなく、そっちの方を手伝う者も必要ですから近くに村があればそこに住んでいる者達にやらせるのもいいかと・・・」
ジージルの隣を歩いている白銀剣士隊の女性騎士が小声で自分の意見を話す。するとジージルは目を細くして女性騎士の方を向く。
「何言ってるのよ。そんな事するくらいなら採掘場で作業する人間を増やせばいいじゃない。それに、村なんかを作るくらいなら採掘場を守る兵士を配置する為に砦を作った方が危険も無くなるわ。そんな事も分からないの?」
「ハ、ハイ・・・すみません」
女性騎士はジージルの一理ある言葉に女性騎士は何も言い返せずに謝る。ジージルはどこか気に入らなそうな目でヴリトラ達三人、特にリンドブルムの背中をジッと見つめていた。
(何で団長達はあんな金でしか動かない傭兵どもを信用しているのよ?しかもあんな子供の入っている傭兵隊を!金だけで動いて自分達の都合のいい仕事ばかりを選ぶ様な連中よりも国に忠誠を誓った私達騎士団の方がずっと信頼できるはず。そんな傭兵どもと同じ仕事をしないといけないと思うと腹が立つわ!増してや私に屈辱を与えたあのガキと一緒なんてぇ~っ!)
ジージルは武術大会の時に自分に勝つ、敗北と情けという屈辱を与えたリンドブルムを睨みながら心の中で怒りを露わにする。リンドブルム自身は彼女に屈辱を与えたつもりは全くない、自分が見下している傭兵に負けたという時点でジージルはそう感じてしまっているのだろう。今のジージルは傭兵よりも騎士の方が優秀である事を証明しようという事で頭がいっぱいだった。
そんな風に考えているジージルの事を気にもせずにヴリトラ達は前へ進んで行く。しばらく進むと、ヴリトラ達は広い場所に出て立ち止まった。体育館ほどの広さの平地で左には高い岩壁、右には崖があり、そこから岩山の周囲を見渡せる場所だ。ゴブリンやオークが棲みついている森も真下にあり見下ろす事ができた。
「広い所に出たな・・・洞窟のある場所はどの辺りなんだ?」
「団長から聞いた話によるとまだ上の様だ。この先から更に道は険しくなるらしいぞ」
「そっか。歩いて来て正解だったな。もし車や馬に乗って来たら進む事も戻る事もできなくなっちまってたかもしれないし」
自動車のタイヤや馬が岩や石のせいで動けなくなり、立ち往生してしまった時の事を想像するヴリトラ、ラピュス、リンドブルム。そこへジージルが三人の止まりまでやって来て平地を見回した。
「ここまではこれといって大きな問題は起きなかったけど・・・この後はどうするつもりなの?」
「どうするも、此処でしばらく休憩してからまた先へ進むつもりだけど?」
「他に何かする事はないの?此処で別れて行動するとか、見つかっていない道を探すとか」
「まずは例の洞窟の所まで行ってからだ。その後の事はその時に決めればいいさ」
これと言って変わった動きなどをせずに普通にここまでやって来たヴリトラ達にジージルは呆れたのか腕を組んで崖から岩山の周囲を見渡す。
「・・・ジージル殿、貴方がたがヴリトラ達の作戦に乗ると言ったんですよ?それに調査は始まったばかりです。ヴリトラの指示に従ってもらわないと困ります」
「分かってるわよ、うるさいわね・・・」
ラピュスに注意され、彼女に背を向けながら返事をするジージル。そんなジージルを見ていたリンドブルムはラピュスの隣でニッと笑う。
「そんな怖い顔をしてるとしわが増えますよ?」
「・・・ッ!うっさい、このチビスケェ!」
「貴方とそんなに変わらないと思いますけど?」
リンドブルムにからかわれ、ジージルは振り返り目くじらを立てながらリンドブルムを怒鳴り付ける。そんなジージルを見てリンドブルムは楽しそうに笑っており、ヴリトラやラピュス、懲罰遊撃達、白銀剣士隊の隊員達はジト目で背丈がほぼ同じ二人の会話を見ていた。そんな時、平地の奥にある道から何かが近づいて来る気配がし、それを感じ取ったヴリトラとリンドブルムが奥に視線を向ける。
「どうした?」
ラピュスがヴリトラの様子に気付いて訊ねると、ヴリトラは平地の奥の方を向いて森羅の鞘を掴み、何時でも森羅が抜ける様にする。リンドブルムも奥の方を向いてライトソドムとダークゴモラを抜いた。
「何よ?突然そんな物を手にして」
リンドブルムを睨んでいたジージルが少し表情を和らげて訊ねる。ヴリトラとリンドブルムは視線を変えずにジッと奥を見たまま警戒心を強くした。そしてそんな二人の様子を見てラピュスとジージルも平地の奥を見つめる。
「気付いたから?リンドブルム」
「うん、お客さんが来たね」
二人が静かに会話した直後、上へ続く道から若葉色の肌に尖った耳をした小さな人型の生き物と小麦色の肌と豚の鼻をした人型の生き物が大勢姿を現した。その全てが革製の鎧を纏い、手には木で出来た棍棒や手斧を持っている。そう、彼等がふもとの森に棲みついているゴブリンとオーク達なのだ。
ゴブリンとオークの姿を確認したヴリトラは森羅を抜き、リンドブルムも愛銃二丁を構えた。ラピュスとジージルも騎士剣と弓を構え、懲罰遊撃隊と白銀剣士隊も一斉に自分達の武器を取る。
「へぇ~、あれがゴブリンとオークか」
「凄いね、アニメや漫画で見たまんまの姿だぁ」
初めて見るゴブリンとオークの姿に何処か楽しそうな表情を浮かべるヴリトラとリンドブルム。そんな二人を見た後にジージルはラピュスの方を向く。
「ちょっと、コイツ等どうして楽しそうにしているの?て言うか、意味の分かんない事も言ってるんだけど・・・」
「い、いえ、気にしないでください。それよりも、ゴブリン達が来ますよ?」
「分かってるわよ!先に言っておくけど、足を引っ張らないでよね?」
ラピュスに忠告をしながら弓を構えるジージル。その後ろでは白銀剣士隊の弓兵達も弓を構えて何時でも矢を放てるようにしていた。ヴリトラ達の存在に気付いたゴブリン達は武器を手に取り、鳴き声を上げて威嚇する。ヴリトラは森羅を右手に持ち、左手で耳の小型無線機のスイッチを入れた。しばらくコール音が鳴っていると誰かが応答し、ヴリトラは両手で森羅を持ち直す。
「こちら、ヴリトラ。例のゴブリンとオークの一団と接触した。敵さん達はやる気満々みたいだし、これから戦闘を開始する・・・!」
小型無線機で遠くにいる他の七竜将に状況を知らせたヴリトラ。それの直後、ゴブリンとオーク達はヴリトラ達に向かって走り出す。
「フン、ゴブリンやオークの頭じゃ敵に突っ込むしか思い浮かばなかったようね・・・・・・全員、放てぇ!」
ジージルの合図で弓兵達は一斉に矢を放つ。無数の矢はゴブリン達に向かって飛んで行き、数匹のゴブリンとオークに命中する。仲間が矢を受けて倒れたのを見てゴブリンとオークは驚き足を止めた。
「へぇ、大したもんだ。だが、まだまだ敵さんはいるようだ・・・」
白銀剣士隊の弓の腕を見て感心するヴリトラはまだ大勢いるゴブリンやオークを見て小さく笑う。矢を警戒しながらゴブリン達はヴリトラ達に向かって突っ込んでいき、少しずつ距離を縮めて行った。
「それじゃあ、遠くの敵はリンドブルムやジージル達に任せて俺達は近づいて来た敵を倒して行きますか」
「ああ」
ヴリトラとラピュスは森羅と騎士剣を構えて近づいて来るゴブリン達に向かって行く。懲罰遊撃隊の騎士達もその後に続いた。
遂にゴブリンとオークに接触したヴリトラ達のチーム。始めた戦うモンスターを相手にヴリトラ達はどう対応するのか、そして通信を聞いた他の七竜将はどう動くのだろうか。