第百六十二話 BL兵との戦い 戦士達の強き戦意
レイグリーザを前に合流したヴリトラ達の前にブラッド・レクイエム社強襲部隊のデーモン隊が現れる。隊長のデーモンは瀕死の状態のドリアードの容赦なく止めを刺すという冷酷な一面を見せ、それを見たヴリトラ達はデーモンに対する怒りを覚えるのだった。
平原の真ん中で睨み合うヴリトラ達とデーモン隊。双方は武器を構えて相手の出方を見ながらジッとしており殆ど動かなかずにいる。
「七竜将、大人しくお前達の連れている騎士を渡せ。そうすれば苦しまずに息の根を止めてやる」
「もし大人しく渡さなかったらどうするつもりだ?」
「その時は我々に逆らった事を後悔するくらいゆっくりとなぶり殺しにしてやるだけだ」
「ハッ!どっちを選んでも殺されるっていうなら最後まで俺達は自分達のやり方を貫き通すさ」
デーモンを見ながら鼻で笑うヴリトラは森羅を構える。周りでもラピュス達が自分達の武器を取ってカイネリア達を庇う様に彼女達の前に立つ。その姿を見たデーモンは溜め息をつき顔を横へ軽く振る。
「やれやれ、七竜将はもう少し利口な者達だと思ったのだがな」
「大人しく命を差し出す事が利口ならバカで結構だ。それにな、今まで戦ってきた幹部クラスの機械鎧兵士達もお前と同じ様な事を言って負けたんだぜ?」
「今の貴方も死亡フラグを立てている様なものですよ」
ヴリトラとその隣でライトソドムとダークゴモラを握っているリンドブルムが笑いながらデーモンに言い放ち、それを聞いたデーモンは目を鋭くしてヴリトラ達を睨む。
「俺を今までの連中と一緒にするな。他の奴等と俺とではレベルが違うのだ」
「うわぁ~、こりゃまた小物の言いそうな台詞だな」
「本当だね」
笑ったまま挑発するヴリトラとリンドブルムにデーモンは更に表情を鋭くした。二人を見てヴリトラの隣にいるラピュスや後ろのカイネリアは「大丈夫なのか」と言いたそうな顔を見せる。
「・・・お前達はどうしても悲惨な死に方をしたいらしいな」
我慢の限界が来たのか、デーモンは片手を上げて周りのBL兵達に指示を出した。九人いるBL兵の中、四人は超振動マチェットを構えており、五人はMP7を握っている。その五人は前に出てMP7をヴリトラ達に向けて引き金を引いた。するとヴリトラ、ジャバウォック、ニーズヘッグ、オロチの四人が素早くラピュス達の前に移動して武器を構える。MP7の銃口から吐き出された無数の弾丸はヴリトラ達の方へ飛んで行き、彼等は持っている武器でMP7の弾丸を全て弾いて行く。もの凄い速さで弾丸を防ぐ四人にラピュスは頼もしく思い、カイネリアは驚いて目を丸くしている。
「な、何が起きているのだ・・・?」
「彼等は敵の見えないくらい速い攻撃を全て武器で防いでいるんです」
「見えない攻撃?」
「ええ、それが銃と呼ばれる未知の武器ですよ」
「ジュウ?」
銃器の事を知らないカイネリアにラピュスが説明していると、銃声が止んでBL兵達の銃撃が止まる。銃撃を防いだ四人は傷一つ付いていない状態でデーモン達を見つめていた。
「・・・成る程、ジークフリート司令の言った通り少しはできるようだな」
ヴリトラ達を見て少し感心するデーモン。ヴリトラは森羅を右手に持ち、左手の人差し指を曲げて「来い」と挑発した。
「・・・殺せ」
静かなデーモンの命令を聞いたBL兵全員が一斉に動き出す。MP7を持っていたBL兵達は全員MP7を捨てて超振動マチェット抜き、残りの四人も握っていた超振動マチェットを片手にベレッタ90を抜きヴリトラ達に向かって走り出す。
「行くぞ、皆!」
ヴリトラが声を上げて周りのラピュス達に指示を出し、ラピュス達も一斉に動き出す。ヴリトラ、ジャバウォック、ニーズヘッグの三人は向かって来るBL兵達を迎え撃ち、残りのリンドブルム達はラピュス達を守る役目に付いた。ヴリトラがBL兵の斬撃を森羅で防ぎカウンター攻撃を撃ち込むも、BL兵もそれを防いで反撃する。ジャバウォックとニーズヘッグも同じ様な戦いをしており激しい攻防を繰り広げていた。三人が四人のBL兵を相手にし、リンドブルム達の方には残りの五人のBL兵が向かって行く。
「来たわよ、皆!」
「たった五人だからと言って油断しないで!」
ジルニトラとリンドブルムが自分達の周りにいるラピュス達に忠告し、リンドブルム、ジルニトラ、オロチ、ファフニールの四人は一歩前に出て武器を構える。すると、ラピュス達懲罰遊撃隊も四人と一緒に前に出た。
「ラピュス?」
「私達も戦う。もうお前達に守られてばかりの存在じゃないんだ」
「・・・分かった。でも、彼等が普通の人間じゃないって事だけは忘れないでよ?彼等の身体能力は常人を越えているんだから」
「ああ、分かってる!」
ラピュス達は七竜将と共に何度もブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士と遭遇している。故にブラッド・レクイエム社との戦い方を知っている為、どう対応していいのか分かっていた。そんな彼女達なら大丈夫だとリンドブルム達は悟ったんだ。
戦闘準備が整うと、リンドブルム、ジルニトラ、そして数人の懲罰遊撃隊の騎士達が自分達の持っている銃器でBL兵達に攻撃した。だが、BL兵達はリンドブルム達が撃った弾丸を超振動マチェットで弾いて行き少しずつ距離を縮めて行く。
「銃が効かない!?アイツ等も弾を防げるのか!?」
「当然だ、機械鎧兵士ならそれくらい簡単にできる・・・」
銃器が効かない事に驚く懲罰隊の男性騎士にオロチが静かに言う。オロチは近づいて来たBL兵の一人に向かって走り出し、そんなオロチのBL兵はベレッタ90で応戦した。オロチは斬月で弾丸を弾き、BL兵に向かって斬月を振り下ろす。BL兵は横に動いてオロチの斬撃をかわし、側面に回り込んで超振動マチェットで斬りかかる。するとオロチは素早く斬月の柄の部分で斬撃を防ぎ、隙のできたBL兵を蹴り飛ばす。そのまま体勢の崩れたBL兵を斬月で攻撃しBL兵を斬り捨てた。
「まず一人・・・」
一瞬にしてBL兵を一人倒したオロチを見て驚く懲罰隊の騎士達。カイネリア達もそんな戦いをまばたきをしながら見ている。
今度は二人のBL兵がラランとアリサの方へ向かって行き超振動マチェットで攻撃する。二人はそれぞれ突撃槍と騎士剣で斬撃を止めるが、BL兵の攻撃の重さに武器を持つ手を震わせる。
「・・・重い」
「やっぱり、ブラッド・レクイエムの兵士は普通の兵士と違う・・・」
両腕に力を入れて何とか押し戻そうとするが、普通の人間、しかも女性の力で機械鎧兵士を押し戻すなどほぼ不可能だった。BL兵達は超振動マチェットを持つ腕に更に力を入れて二人の動きを封じようとする。そしてもう片方の手に持っているベレッタ90をがら空きな腹部に向ける。それに気づいた二人は「マズイ」という表情を浮かべた。すると突然BL兵達の持っているベレッタ90が弾かれて宙を舞う。驚いたBL兵達とララン、アリサの二人が銃声のした方を向くと愛銃二丁を構えているリンドブルムの姿があった。
「剣と槍だけで戦っている女性を相手に機械鎧兵士が銃を使うとは、卑怯ですよ?」
BL兵達を睨みながらリンドブルムは低い声で言った。その事でBL兵達の意識からラランとアリサは消えており完全に隙を見せていた。二人はこのチャンスを逃さずに、一気に武器を押し戻してBL兵達の体勢を崩し、そのままBL兵達の突撃槍と騎士剣で攻撃する。まともに攻撃を受けたBL兵達はその場に仰向けに倒れて動かなくなり、ラランとアリサは息を吐いてホッとした。そこへリンドブルムが駆け寄って二人安否を確認する。
「大丈夫?」
「・・・平気。助かった」
「ハイ。ありがとうございます」
「お礼は後にしてください。まだ敵は残っているんですから」
「・・・分かった」
「ハイ!」
ライトソドムとダークゴモラを構えながら残りのBL兵やデーモンを警戒するリンドブルム。ラランとアリサも周りを見て残りのBL兵を警戒した。
残りのBL兵達はセメリト王国騎士隊の近くでファフニールやカイネリアと交戦していた。ファフニールはギガントパレードで超振動マチェットを余裕で防いでいるが、カイネリアは重い一撃を凌ぎながら後ろに下がり苦戦している。マービングや他の騎士や兵士達はカイネリアが苦戦している姿に武器は構えているが驚きの表情を浮かべいるだけで動こうとしなかった。
「カイネリアさん、無理しないでください!」
「む、無理などして、いない!」
カイネリアは騎士剣を両手でしっかり握りながら超振動マチェットを止めている。一方でBL兵は片手だけで超振動マチェットを握っており、カイネリアと違ってまだまだ余裕だった。
「お、おのれぇ!片手だけでこれ程の力を・・・!」
次第にカイネリアの表情にも疲れが見え始め、超振動マチェットを止めている騎士剣の刃が徐々にカイネリアの顔に近づいて来る。カイネリアは自分の持てる力を全てを使って押し戻そうとするが全く騎士剣が動かない。
(少しでも力を抜けばそれで終わりだ。何とか距離を取って反撃の機会を・・・!)
カイネリアは両手でしっかりと騎士剣を握りながら後ろに跳んでBL兵から距離を作ろうとする。だが、距離を取ったカイネリアにBL兵はベレッタ90を撃ち、弾丸はカイネリアの右大腿部に当たってしまった。
「ぐうぅ!?」
足に伝わる痛みにカイネリアはその場に倒れてしまう。右大腿部にできた銃創からは出血し、これまでに感じた事のない痛みがカイネリアを襲った。
「な、何だこれは・・・何時の間にアイツは攻撃は・・・・・・ま、まさか・・・これが銃と言う武器の力なのか・・・?」
自分が銃撃された事に気付き、苦痛の表情を浮かべるカイネリアは近づいて来るBL兵を見る。兵士達も流石にカイネリアを助けないといけないと考えたのか武器を持ってBL兵に向かって行く。だがそんな兵士達をBL兵は容赦なく銃撃する。腕や脚など鎧や兜で守られていない箇所を狙って一人ずつ動けなくしていき、その光景を見たカイネリアやもう一人のBL兵を相手にしていたファフニールも目を見張った。
「や、やめろぉ!」
「いけない、このままじゃ兵士の人達が!」
ファフニールは兵士達が危ないと感じ、両手に力を入れてギガントパレードでBL兵の超振動マチェットを押し戻し、態勢を崩したBL兵をギガントパレードで打ち飛ばす。飛ばされたBL兵は地面に叩きつけられて動かなくなり、ファフニールは急いで最後のBL兵に向かって走り出した。
BL兵が動けなくなった兵士達にベレッタ90を向けて止めを刺そうとした、その時、騎士剣を構えたラピュスがBL兵に斬りかかり、それに気づいたBL兵は超振動マチェットでラピュスの騎士剣を止める。
「させるか!」
「ラピュスさん!」
BL兵を止めて兵士達を守ったラピュスの姿にファフニールは思わず声を上げて笑みを浮かべる。カイネリアもラピュスの姿を見て驚くのと同時に安心した。
ラピュスの騎士剣とBL兵の超振動マチェットの刃が触れ合い、大量の火花と金属が削れる音が周囲に広がる。ラピュスが両手で持つ騎士剣をBL兵が片手で持つ超振動マチェットで止めており、明らかに力ではラピュスが劣っていた。
「やはり、機械鎧兵士を倒した経験があっても力では不利か・・・だが!」
ラピュスは後ろへ跳んでBL兵から距離を取ろうとする。そこへBL兵がベレッタ90を構えてカイネリアの時と同じように攻撃しようとした。だがラピュスは驚く様子を見せずに意識をBL兵に集中させる。
(よく見るんだ。銃口の向き引き金を引くタイミング、それをよく見れば銃撃を防げる。ファンストの屋敷で戦った時の事を思い出せ!)
心の中で自分に言い聞かせるラピュスはBL兵の持つベレッタ90に意識を集中させる。そして引き金に触れている指が動くのを見た瞬間、騎士剣を平らにして体の前へ動かす。その瞬間、ベレッタ90は火を吹き弾丸を吐き出した。弾丸は真っ直ぐラピュスに向かって飛んで行くが、ラピュスの騎士剣がそれを止めて高い金属音と共に弾丸は弾き飛ばされる。
「!」
普通の人間が銃撃を防いだのを見てBL兵は驚き、一瞬の隙ができた。ラピュスはその隙を見逃さず、騎士剣を右手に持ち空いた左手でハイパワーを抜くとBL兵に向かって連射する。BL兵は向かって来る弾丸は超振動マチェットで弾いていくが隙を見せていた為、全ての弾丸を防ぎ切れずに数発は機械鎧や腕や腹部に命中した。銃撃を受けて態勢を崩したBL兵にラピュスは再び向かって行き、騎士剣を勢いよく振り袈裟切りを放つ。刃はBL兵の体を切り裂き、BL兵はその場に倒れた。
「・・・フゥ」
BL兵を倒して気が抜けたのか小さく息を吐くラピュス。そこへファフニールがラピュスの下へ駆け寄って来た。
「ラピュスさん、大丈夫ですか?」
「ああ、何とかな・・・」
騎士剣とハイパワーを下ろし少し疲れの見える表情で微笑むラピュス。そんなラピュスを見た後にファフニールは目の前で倒れているBL兵を見下した。
「・・・一人でブラッド・レクイエムの機械鎧兵士を倒すなんて、改めてラピュスさんの事を凄いと思いました」
「お前達と長い間行動を共にしていれば、奴等との戦い方のコツぐらい嫌でも身に付くさ・・・」
「それでも無傷で勝つなんて事は同じ機械鎧兵士でもない限りほぼ無理ですよ・・・もしラピュスさんが機械鎧兵士になったら私達よりも強くなるかもしれませんよ」
「止めてくれ」
驚くファフニールを見ながら苦笑いを見せるラピュス。そこへカイネリアが撃たれた足を引きずりながら近寄って来た。
「た、倒したのか?」
「ええ、なんとか・・・」
「それよりもカイネリアさん、足は大丈夫なんですか?」
ファフニールが撃たれた足の具合を尋ねるとカイネリアは目を閉じて小さく笑う。
「平気だ、これぐらいの傷で・・・うぐっ!」
余裕の表情を見せていたカイネリアだったが痛みを感じると表情を崩して葉を食いしばる。
「カイネリア殿!?」
「だ、大丈夫だ・・・」
心配するラピュスを安心させようと汗を垂らしながら目を閉じて呟くカイネリア。明らかにやせ我慢をしている。ファフニールはカイネリアの撃たれた足の状態を確認すると小さく頷く。
「・・・大丈夫、弾は抜けています。すぐに手当てをしましょう」
「何を言っている?まだ敵の大将が残っているだろう?」
「兵士は全員倒しました。敵のリーダー一人ならそんなに心配する事はありませんよ。それに、貴方の仲間の手当てもしないといけません」
ファフニールが撃たれた箇所を押さえて痛みに耐えるカイネリアの隊の兵士達を見て言った。カイネリアも撃たれた部下達の事を思い出して少し悔しそうな表情を見せる。
「・・・分かった。その代わり部下達はしっかりと手当てしてくれ。私はすぐに戦いに戻るから応急処置程度で構わない」
「・・・分かりました」
カイネリアを見て微笑むファフニール。心の中ではカイネリアを仲間想いのいい姫騎士だと思っていた。
ファフニールとカイネリアのやり取りを見てファフニールと同じ様に微笑むラピュス。彼女はゆっくりと振り返りBL兵達の相手をしているヴリトラ、ジャバウォック、ニーズヘッグを見た。既に四人いたBL兵の中、三人は倒れ、最後の一人はヴリトラに超振動マチェットで攻撃をしている。ヴリトラはBL兵の斬撃を体を反らして回避し素早く森羅で反撃した。斬られたBL兵はその場に俯せになって倒れる。全てのBL兵が倒れるとラピュスはヴリトラ達の下へ駆け寄った。
「ヴリトラ!」
「ラピュス、大丈夫か?」
「ああ、私は平気だ。ただカイネリア殿とセメリト王国の兵士数人が銃で撃たれた」
「何?」
「傷の具合はどうだ?」
ニーズヘッグが兵士達の状態を訊ねるとラピュスはニーズヘッグの方を向いて答える。
「ファフニールは大丈夫だと言っていた。今ジルニトラを呼びに行ってる」
「そうか。アイツが手当てをすれば大丈夫だろう」
「ああ・・・それじゃあ、俺達はこっちを片づけるとしますか」
ヴリトラは前を向き、遠くから高みの見物をしているデーモンを睨む。ラピュス達も同じようにデーモンを睨み付ける。デーモンは腕を組みながら自分を睨む四人を見て笑う。
「フッ、全員倒したか。もっともこれくらいはやってもらわないと面白くないがな」
「・・・本当に態度のデカいおっさんだな」
「フフフフフ・・・・・・ん?」
突如笑っていたデーモンが何かに気付いて視線を動かし左側を見ると、遠くで姿勢を低くしてレイグリーザのある方角へ平原の中を進むマービング達を見つけた。どうやらヴリトラ達とBL兵達の戦いの騒ぎに紛れてレイグリーザへ逃げるつもりだったらしい。ヴリトラ達もそれを確認してマービング達を見ている。
「急げ!奴等の意識が連中に向いている内に首都へ逃げ込むんだ!」
「ハ、ハイ!」
マービングと部下の男性騎士達はデーモンに気付かれている事も知らずに平原を進んで行く。その姿を見たデーモンはマービング達を睨みながら舌打ちをした。
「敵を前に逃げ出すとは見苦しい連中だ」
そう言ってデーモンはその場で高くジャンプする。突然ジャンプしたデーモンに四人は驚き一斉に上を見た。ヴリトラ達を見下ろせる高さまで上がったデーモンはマービング達の方を向いて機械鎧の両足の膝を曲げる。するとデーモンの両足の膝関節の装甲がニーズヘッグの機械鎧と同じように開いて機械鎧の中からロケット弾が姿を現し、デーモンはマービング達に向かってロケット弾二発を発射した。ロケット弾は逃げて行くマービング達の方へもの凄い速さで飛んで行き、マービング達は聞こえてくるロケット弾の音を聞いて走りながら音のする方向を見る。
「ん?あれは一体・・・」
マービングがロケット弾を見た時、既にロケット弾はマービング達の数m前まで近づいて来ており、ロケット弾はマービング達の足元に命中し爆発した。マービング達は何が起こったのかを理解する事もできずに爆発に巻き込まれてしまう。
「デーモンの奴、一体何を?」
「・・・逃げていたマービング達をロケット弾でふっ飛ばしたんだ」
「そ、それじゃあ、マービング殿達は・・・」
「あの爆発だ、助からないだろう・・・」
マービング達をロケット弾で吹き飛ばした光景を見て四人は改めてデーモンが非情な男だと確認する。両足の機械鎧を元に戻したデーモンは元の位置に着地してヴリトラ達の方を見た。
「すまなかったな、目障りなゴミ共がいたもので始末させてもらった」
「・・・戦意の無い敵も容赦なく殺すのか?」
「戦士にとって敵に背を向けるのは重罪だ。それはどの世界でも同じ事だろう?」
「・・・まぁ、助けを乞う仲間を躊躇なく殺すんだ。これくらいは平気でやるよな」
ヴリトラはデーモンに更なる怒りを覚えて森羅を強く握る。ラピュス達も同じように自分の武器を構えてデーモンを睨んだ。
「フフフ、さてこれでようやく心置きなくお前等と戦えるわけだ」
「・・・お前みたいな奴をこのまま野放しにする訳にはいかない」
「だったらどうする?俺を殺すか?」
「ああ、お前だけは容赦しない・・・!」
自分を睨み付けるヴリトラを見ながらデーモンは楽しそうに火焔剣を抜いた。ヴリトラ、ラピュス、ジャバウォック、ニーズヘッグの四人は慈悲を持たない悪魔を倒す為に剣を握る。
BL兵を全て倒したヴリトラ達。そしていよいよデーモンとの戦いが始まろうとしている。敵にも味方にも容赦しないデーモンにヴリトラ達はどう戦うのだろうか。