第百六十話 竜達の絆 勝利への連携
ドリアード部隊との戦闘を開始したリンドブルム達。騎士達を守りながらBL兵達と戦うニーズヘッグとファフニール。そして隊長であるドリアードと戦うリンドブルムとジルニトラ。二人はドリアードの弱点に気付いて隙を伺いながら戦うも、その事にドリアードが気付いている事をリンドブルムとジルニトラは知らなかった。
マービング達を守りながらBL兵と戦うニーズヘッグ。MP7の弾丸をアスカロンで弾きながら近づき、隙を突いてBL兵に袈裟切りを放ち倒して行く。ドリアードの攻撃に巻き込まれて死んだBL兵とニーズヘッグが倒したBL兵を除いニーズヘッグの前に立つBL兵はあと二人となった。
「あと二人、一気に終わらせる!」
ニーズヘッグは遠くで自分を見ている残りのBL兵二人の方を向いてアスカロンを強く握り走り出した。BL兵達は向かって来るニーズヘッグにMP7を発砲し応戦する。ニーズヘッグは飛んで来る弾丸を全てアスカロンで弾き、銃撃が止んだ一瞬の隙を突いて跳び上がる。BL兵達を見下ろしながらアスカロンのスイッチを入れ、ニーズヘッグはアスカロンの刀身を鞭状にして攻撃した。鞭状とかした刀身は真っ直ぐBL兵達の方へ向かって行き、BL兵達の間まで切っ先が伸びるとニーズヘッグは柄を持つ手に力を入れる。
「蛇龍頭波刃!」
技の名前らしき言葉を口にし、ニーズヘッグは柄を素早く振った。するとアスカロンの切っ先は素早く動いて左右にいるBL兵達の体を切り刻んだ。BL兵達はその場に崩れ落ちるように倒れ、ニーズヘッグはBL兵達の前に着地し、動かなくなったBL兵達を見下ろす。
「フゥ、一先ず片付いたか・・・」
周りで倒れているBL兵達を見回した後、ニーズヘッグは離れた所で隠れているマービング達を確認した。マービングや他の男性騎士達は草むらや岩の陰でこそこそとニーズヘッグを見つめている。
「・・・ハァ、あれだけいきがってたくせに見た事の無い敵や強い敵を前にした途端にこれかよ」
ニーズヘッグはマービング達の変わり様を見て呆れた顔で頭を掻いた。
「さて、こっちは終わったが、あっちはどうなったかな?」
真面目な表情でファフニール達の方を向くニーズヘッグ。彼の視線の先ではファフニール達がBL兵と戦っている姿があった。
ファフニールはギガントパレードの大きな頭を盾にしてMP7の弾丸を防ぎ、銃撃が止んだ直後にギガントパレードを振り上げてBL兵の方へ走って行く。そして攻撃範囲に入った瞬間にギガントパレードを振り下ろして攻撃する。BL兵は後ろに跳んでギガントパレードを回避して反撃しようとした。すると回避したBL兵の左側面に突撃槍を持ったラランが滑り込む様に現れて突撃槍に風を集まる様に纏われていく。
「・・・裂空天馬槍!」
気の力で風を纏った突撃槍でBL兵に強力な突きを放つ。槍先はBL兵の脇腹に命中し、風の刃がBL兵の体や特殊スーツを切り刻む。BL兵は突撃槍に纏われた風で吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。
「お見事!」
「・・・うん」
笑って褒めるファフニールを見てラランは無表情のまま頷く。すると、そんなラランの背後から超振動マチェットを握ったBL兵がラランに襲い掛かってくる。ラランは振り返りながら突然の攻撃に驚き隙を作ってしまう。
「伏せて!」
ファフニールがラランに向かって叫ぶとそれを聞いたラランは咄嗟にその場にしゃがみこんだ。その直後、ファフニールは持っていたギガントパレードをオロチが斬月を投げる様にBL兵に向かって投げる。回転するギガントパレードはラランを狙っていたBL兵の体に直撃し、BL兵を大きく後ろへ打ち飛ばす。ギガントパレードがしゃがみこむラランの前に落ちて、ラランは飛ばされたBL兵の方を向きまばたきをする。そしてそんなラランの下へファフニールが駆け寄って来た。
「大丈夫?」
「・・・うん、平気」
「敵を全員倒すまで油断しちゃダメだよ?」
「・・・ゴメン」
自分の失敗を反省し謝るララン。ファフニールはギガントパレードを拾って担ぎながら微笑む。二人がそんな話をしていると、遠くで最後のBL兵とアリサが剣を交えている姿を見つけた。アリサはBL兵の超振動マチェットを騎士剣で何とか止めているが、機械鎧兵士の力には敵わず押されており表情が歪んでる。
「アリサさんが危ない!」
「・・・助けに行こう」
「勿論!」
二人は自分の得物を持ちアリサを助けに向かう。それからすぐに最後のBL兵はファフニール達によって倒され、ドリアードの連れていたBL兵は全員倒された。
そして、リンドブルムとジル二トラはドリアードの水圧カッターを回避しながら銃器で攻撃していた。だが、その全ての銃撃がかわされ、水圧カッターが二人に襲い掛かる。二人もドリアードの水圧カッターを全てかわしていた。
「どうした、何時まで逃げながらつまらねぇ攻撃をするつもりだ?ただ銃を撃つだけじゃ俺は倒せねぇぞ?」
笑いながら水圧カッターで攻撃し続けるドリアード。彼女の水圧カッターは縦横無尽に動き、平原の草や岩などを軽々と切り裂いて行く。そんな凄まじい威力の水をジャンプや姿勢を低くしながらリンドブルムとジルニトラは回避する。
(こうも水圧カッターを振り回されてたら一向に近づけないし狙いも付けられない!今はあの人の水が無くなるまで耐えるしかない)
リンドブルムは心の中でライトソドムとダークゴモラを握りながら水圧カッターをかわしていく。リンドブルムから離れた所でもジルニトラはサクリファイスを構えながら水圧カッターをかわしていた。
(あれから十数分間水圧カッターを回避し続けてる。もうそろそろ水が切れる頃だわ。勝負はその瞬間・・・!)
ジルニトラもドリアードの水圧カッターの水が切れるのを待ちながらサクリファイスのグリップを強く握り、意識をドリアードの集中させた。
やがてドリアードの水圧カッターの勢いが弱くなっていき、水の放出量も減って来た。それを見たドリアードは舌打ちをし、リンドブルムとジルニトラもその事に気付いて反応を見せる。
「水の勢いが弱まった。そろそろ水が切れる!」
「よし、行くわよ!」
リンドブルムとジルニトラは勢いの弱まった水圧カッターをかわしながらチャンスを見つけ、それぞれドリアードの左右に移動して彼女を挟んだ。
「チッ、挟み撃ちか!」
ドリアードは水の少なくなってきた水圧カッターの銃口を左右の二人に向けて再び発射する。しかし勢いが弱くなった水圧カッターをリンドブルムとジルニトラは今までよりも軽々とかわしながらドリアードの向かって走り出す。そして遂に、銃口から水が出て来なくなり、水圧カッターの水が無くなった。
「よし!水が無くなった!」
「今まで好き放題やってくれたわね。今度あたし達の番よ!」
二人は走りながら自分達の銃をドリアードに向けて撃った。ドリアードは機械鎧の両腕で弾丸を防ぎながら後ろに跳んで二人から離れようとする。しかしリンドブルムもジルニトラも逃がすまいと跳んで逃げるドリアードの後を追った。しかし、それはドリアードの罠だったのだ。
「・・・バァカ」
ニヤリと笑いながらドリアードは右腕の前前腕部の装甲を開いた。すると機械鎧の腕の中から金属製の細長い筒状の物が一本飛び出し、ドリアードは素早く左手を腰に回して腰に納めてある同じ筒状の物を機械鎧の中に叩き込む様に入れて装甲を閉める。その直後、自分に向かって走って来るリンドブルムとジルニトラに銃口を向けた。すると、銃口からもの凄い勢いで水圧カッターが発射されたのだ。
「「!?」」
突然放たれた水圧カッターに驚くリンドブルムとジルニトラ。二人は急停止し、咄嗟に左右へ飛ぶ。水圧カッターは二人のギリギリ真横を通過するが、完全にはかわしき切れずリンドブルムは左腕を、ジルニトラは右脇腹を掠めてしまう。掠ったところからは痛みが広がり二人の表情が歪む。傷口からは出血があり、二人は傷口を押さえてドリアードを警戒する。
「ど、どうして・・・?」
「水は切れたはずなのに・・・まさか、わざと切れたフリをしていたの?」
「いや、そんなはずないよ。機械鎧に入れられる水の量なんて限られてる。あれだけ勢いよく水を使っていればもう空っぽになってもおかしくない」
なぜドリアードがまだ水圧カッターを使えるのか理解できないリンドブルムとジルニトラは傷口の痛みと理解不能の事実に表情を鋭くした。
「アーッハハハハハ!こうも予想通りに事が運ぶとはな」
「何ですって?」
大笑いするドリアードを睨みながらジルニトラは尋ねる。するとドリアードは今度は右手を腰に回してさっきの筒状の物を取り出し二人に見せた。
「これが何だかわかるか?」
「金属製の筒?」
リンドブルムはドリアードの持つ筒状の物を見て小首を傾げる。ドリアードは左腕の機械鎧の前前腕部の装甲を開き、中から筒状の物を出した。二人はドリアードの持っている物と同じ筒状の物が地面に落ちたのを見て目をピクリと動かす。
「コイツは俺の機械鎧の水を補給する為に筒、まぁ水筒の様な物だ。俺の機械鎧に取り付けられている内蔵兵器はこれだけでな、これが使えなくなると俺の戦力は大きく低下する。それを補う為にこの水筒を持ち歩き、水が無くなったらコイツを交換して水を入れるって事だ」
「そんな物まで用意していたなんて・・・」
「ヘッ、お前等の動きを見て俺の水圧カッターの水を空にする事が目的だって事は最初から気付いていた。それなのにお前等は俺がその弱点を補う方法を用意してるって事に気付かずに必死になってやがったから笑いを堪えるのに苦労したぜ」
驚くリンドブルムを見てドリアードは楽しそうに話す。そして補充の終えた機械鎧の水圧カッターの銃口を再びリンドブルムとジルニトラに向ける。それを見た二人も咄嗟に走り出した。
「また同じ事を繰り返す気か?」
笑いながらドリアードは再びバラバラに逃げる二人に水圧カッターを放ち攻撃する。リンドブルムは背後から迫って来る水圧カッターをジャンプで回避すると着地と同時にダークゴモラでドリアードを撃った。しかしドリアードはその弾丸はアッサリとかわしてしまう。やはり回避行動を取りながら機械鎧兵士を撃つのはいくらリンドブルムでも難しいようだ。
「アイツゥ、調子に乗ってぇ!」
ジルニトラは走りながらドリアードに向かってサクリファイスを発砲する。無数の弾丸がドリアードに向かって飛んで行くが、ドリアードは水圧カッターを器用に操り、飛んで来た弾丸を全て落してしまう。
「ウ、ウソォ・・・」
水圧カッターで弾丸を落した事に驚きを隠せないジルニトラ。そんなジルニトラにドリアードは反撃する。頭上から振り下ろされる水圧カッターを見てジルニトラは素早く横へ跳び攻撃をかわした。ジルニトラはすぐに態勢を立て直して走り出すとグレネード弾を取り出してサクリファイスのグレネードランチャーに装填する。
「銃弾がダメなら、これはどうかしら!?」
ドリアードを睨み、走りながらサクリファイスで狙いを付けるジルニトラはグレネードランチャーの引き金に指を掛ける。
「チッ、グレネードか!」
ジルニトラを見て面倒そうに舌打ちをするドリアード。そしてジルニトラはグレネードの引き金を引いた。銃口から吐き出されたグレネード弾はドリアードに向かって飛んで行き、ドリアードは後ろに跳びながら水圧カッターでグレネード弾を真っ二つにする。切られたグレネード弾は爆発して周囲に爆炎と煙を広げた。
「グレネード弾すら防ぐなんて・・・まぁ、銃弾より大きいから防ぎやすいのは確かか」
走りながら新しいグレネード弾を装填するジルニトラはドリアードを警戒してサクリファイスを構え直す。ドリアードも態勢を立て直して両腕の銃口をジルニトラに向けて水圧カッターを発射する。ジルニトラはスライディングで水圧カッターを回避し、素早くサクリファイスを撃って反撃した。だがドリアードは両腕を細かく動かし水圧カッターで弾丸を全て弾き落す。
「バカ、何度やっても同じだよ!」
「クゥ!」
軽々と自分の銃撃を防ぐドリアードの余裕の表情に腹を立てるジルニトラ。スライディングから立ち上がって再び走り出し攻撃しようとするが、そこへドリアードの水圧カッターが襲い掛かる。ジルニトラは素早く体を動かして迫って来る水圧カッターを回避し続けた。
「これじゃあ、攻撃をかわしているだけで体力が減っていくわ!このままじゃ・・・」
「そらそらそらぁ~!」
攻撃をかわすジルニトラを見て楽しみながら両腕を振り回して水圧カッターで攻撃するドリアード。ジルニトラは姿勢を低くしたジャンプなどで攻撃をギリギリでかわし続ける。しかしジルニトラの表情には徐々に疲れが見え始めており、このままでは何時かは体勢を崩して水圧カッターの餌食になってしまう。ドリアードはそれを狙ってジルニトラに攻撃をし続けた。
しかし、そんな攻撃を続けている内に水圧カッターの勢いが弱まり、その事に気付いたドリアードは舌打ちをする。
「チッ、水が無くなってきたか」
水圧カッターの水か無くなりかけ、一旦攻撃を止めたドリアードは新しい水筒を腰から二つ取る。攻撃が収まりジルニトラはホッとしながら後ろに跳んでドリアードから距離を取った。
「危なかったわ。もう回避する体力なんて残ってなかった・・・」
体力に限界が来ていたジルニトラは水筒を交換しようとしているドリアードの反撃する事もできず、姿勢を低くして体を休めた。そんな中、ドリアードは新しい水筒を機械鎧の中に入れて水を補給し終えて笑みを浮かべる。
「よし、生き返ったぜ。さぁ、ゲーム再開だ!」
「戦いをゲームと見るなんて、貴方って意外と戦闘狂なんですね?」
水の補給を終えて楽しそうにするドリアードの背後からリンドブルムが哀れむような表情でドリアードの語りかける。そんなリンドブルムにドリアードは振り返りながら水圧カッターで攻撃した。リンドブルムは右から迫って来る水圧カッターをジャンプでかわしてライトソドムで反撃する。ドリアードは銃撃をかわすと左腕の銃口をリンドブルムに向けて水圧カッターを放つ。リンドブルムはジャンプをしながら体を反らして水圧カッターをギリギリでかわす。しかし水圧カッターはリンドブルムの頬を掠めて傷をつける。着地したリンドブルムの頬からは血がにじみ出てゆっくりと垂れた。
「ジャンプしながら俺の水圧カッターをかわすとは、なかなかやるな?」
「そりゃあ、どうも」
「フッ・・・さてと、そろそろ俺もお前等と遊ぶのにも飽きてきた。さっさとお前等を始末して他の奴等を消すとしよう。俺の部下達は皆やられちまったみたいだしな?」
ドリアードは遠くで倒れているBL兵達を見ながら言う。ドリアードは軽蔑する様な表情を見せており、心の中では「役立たず」と思っているのだろう。
「余裕ですね?貴方の部下が皆やられたって事は貴方は一人で僕達全員を相手にするって事ですよ?」
リンドブルムは七竜将と騎士達を全員相手にすると言う現実を前にしても余裕の表情を見せているドリアードを不思議に思う。ドリアードは笑いながらリンドブルムの方を向いて水圧カッターの銃口を向ける。
「七竜将全員が揃った状態なら流石にヤバいが、四人だけなら俺一人でも軽く倒せる。その後に騎士達を全員連れて帰らせてもらうぜ」
「・・・・・随分とナメられたもんですね」
珍しく不機嫌な表情を見せるリンドブルムはドリアードを睨む。その瞬間、リンドブルムはライトソドムをゆっくりと上げて銃口をドリアードに向ける。ドリアードもリンドブルムが自分の銃口を向けた瞬間に水圧カッターを発射した。リンドブルムは銃口をドリアードに向けたまま大きく右へ跳んで攻撃をかわす。すると、リンドブルムは左手に持っているダークゴモラの銃口を自分が跳んだ方向へ向けて引き金を引いた。ドリアードは見当違いの方向に向かってダークゴモラを撃ったリンドブルムを見て意外そうな顔を浮かべる。
(あのガキ、一体何を考えてるんだ?)
リンドブルムの行動が理解できずに彼が撃った方向を見るドリアード。その先にはニーズヘッグが立っており、弾丸は真っ直ぐニーズヘッグの方へ飛んで行く。ニーズヘッグは自分に向かって来る弾丸をジッと見つめて神経を集中させる。そしてアスカロンで弾丸を弾き返した。弾かれた弾丸はドリアードの方へ向かって飛んで行き、それを見たドリアードは初めて驚きの表情を見せる。
「バカな!自分が撃った弾丸は仲間に弾かせて跳弾に変えたっていうのか!?」
向かって来る弾丸を防ごうとドリアードはもう片方の腕を弾丸い向けて水圧カッターを撃とうとする。そこへ今度はギガントパレードを持ったファフニールが背後から現れて攻撃をしようとする。ドリアードはファフニールに気付いて咄嗟にファフニールのいる方向と正反対の方向へ跳んでファフニールから離れようとする。
「クソォ!次から次へと!」
突然自分が不利になった状況に苛立ちを見せるドリアード。そんな彼女の右側面にさっきまで休んでいたジルニトラが現れてサクリファイスの銃口を向けた。
「さっきのお返しはさせてもらうわよ?」
「!?」
ジルニトラの低い声を聞いてドリアードの表情に緊張が走る。水圧カッターで応戦しようと銃口を向けるが、それよりも速くジルニトラはドリアードの脇腹を蹴り、ドリアードは蹴り飛ばした。体勢を崩したドリアードの再び銃口を向けてグレネードランチャーを撃つ。グレネードはドリアードに向かって飛んで行き、態勢を崩して迎撃のできないドリアードの命中し大爆発を起こした。
「うわあああああぁ!!」
爆発の中から聞こえてくるドリアードの叫び声。ドリアードに致命的な攻撃を与える事に成功した七竜将は爆炎の中から出て来たボロボロのドリアードをジッと見つめる。そしてリンドブルムがゆっくりと地面に倒れて動かなくなったドリアードに近づき彼女を見下ろす。
「・・・確かに僕達は一人一人の力は貴方達ブラッド・レクイエム社の幹部に劣るかもしれません。ですが、それは仲間同士の助け合いでカバーしているんです。一人でどんな敵にでも勝てると思い込んでいる貴方達には無い力を僕等は持っています」
仲間同士の助け合い、それが七竜将の最大の力だと告げたリンドブルムはドリアードに背を向けて歩いて行き。ニーズヘッグ達もそれに続くように背を向けてララン達の方へ戻って行った。
ドリアードが倒されたんを空中で見ていたヴェノムはゆっくりと上昇して飛び去って行った。
「あっ!ヘリが逃げちゃう!」
「放っておけ」
ヴェノムが逃げて行くのを見て驚くファフニールを見てニーズヘッグは静かに言う。
「でも、情報を持ち帰らせるはマズいんじゃ・・・」
「アイツ等が得た情報は俺達がこの国にいるって事とドリアードの部隊が全滅したって事だけだ。奴等はきっと俺達がこの国にいるって事を既に知っている。だからこのまま帰しても俺達には何のデメリットも無い」
ニーズヘッグはヴェノムを返してもブラッド・レクイエム社の有力な情報を与えないと考えており、それを聞いたリンドブルム達も真剣な顔でその事を聞いていた。何にせよ、襲って来たドリアードの部隊を倒す事ができ、とりあえず危険は無くなり一同は一息つく。
「フゥ、とりあえず危険は去ったわね。他の皆は大丈夫かしら?」
「そう言えば、遊撃隊の騎士の人が肩を撃たれちゃったの。ジルニトラ、手当てしてあげて!」
「分かったわ」
ファフニールに案内されてジルニトラは懲罰遊撃隊の手当てに向かう。残ったリンドブルムとニーズヘッグはキョロキョロと周囲を警戒しているマービング達の方を見た。
「・・・セメリト王国の騎士隊も、あの人達だけになっちゃったね?」
「ああ・・・とりあえず、任務を続けられるか訊いてみよう」
二人は僅か四人の騎士だけとなってしまったセメリト王国の騎士達の下へ向かって今後の事についての話し合いをした。話し合いの結果、僅か四人となってしまったセメリト王国騎士隊は他国の傭兵と騎士隊の力を借りて任務を遂行する事となり、七竜将と懲罰遊撃隊に大きな借りを作る事になってしまう。そして任務を終えたリンドブルム達はレイグリーザへ戻って行き、その間、マービング達はずっと俯いて暗い顔をしていたのだった。
ドリアードの部隊を倒す事に成功したリンドブルム達。だが、まだデーモンの部隊が残っており、リンドブルム達や別行動中のヴリトラ達も警戒を怠らずに警護を続けるのだった。