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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第八章~消えていく隣国の剣~
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第百五十七話  警護任務開始 動き出した悪魔と精霊

 レイグリーザに着いた日の夜、ラピュス達は七竜将の絆を知り、より彼等への信頼を強くする。それと同時に彼女達も心の中で彼等に負けない位の絆と強さを手にする事を願うのだった。

 翌日、七竜将とラピュスはカイネリアに呼び出されて王城の会議室にやって来た。部屋ではカイネリアやハーパー、大勢のセメリト王国騎士団の隊長達が集まって席に付いている。その中でラピュスも席に付き、七竜将はラピュスの後ろの立ち待機していた。


「・・・以上がラピュス殿の出された提案です」

「成る程、つまりこの国にいるブラッド・レクイエムという連中を全て倒すまで今任務で外に出ている騎士隊を近くの町や村に待機させ、これから任務に出る騎士隊に彼等を同行させ、奴等を倒すというのだな?」

「その通りです、『レッドム』団長」


 カイネリアは昨日の夜、ヴリトラとラピュスが考えた案をレッドム団長と呼ぶ中年の男性騎士に話す。そのレッドムという男性騎士は昨日ヴリトラ達がセメリト王に会った時に彼の脇に控えていた紅の鎧を着た騎士だった。


「しかし、いくら敵が未知の力を持っているとは言え、敵と戦わずただ身を潜めて待つという事に騎士達が納得するとは思えんな・・・」

「その通りです!敵を前に戦わないなど、騎士の恥もいいところですぞ!」


 レッドムの考えに彼の隣の席に付いている中年の男性騎士が気に入らないのか声を上げて同意する。他の騎士達も同じ意見なのか互いにざわざわと話し合いを始めた。


(ハァ、やっぱり反対する連中が出て来たか。まっ、想定はしてたけどな・・・)


 ラピュスの後ろでヴリトラは異議を唱える騎士達を見つめながら心の中で呟く。彼等のとっては自分達の身の安全よりも騎士としての誇りの方が大切なようだ。

 そんな話し合いをしている騎士達を見て、カイネリアの隣に座っているハーパーが席を立ち周りの騎士達を真面目な顔で見つめる。


「皆さん、奴等を甘く見てはいけません!奴等の力は我々の想像を遥かに超えています。現に私の部隊も襲撃を受けて私を含む四人の騎士以外は全員殺されてしまいました。もし、此処にいる七竜将とラピュス殿の部隊が来なければ私達は今頃どうなっていたか・・・」


 ハーパーは自分が体験した事を騎士達に話し、それを聞いた騎士達は黙ってハーパーの方を見る。


「既に我が国の騎士団は大きな被害を受けています。敵の力や武器の事も分からない以上、無暗に戦いを挑んでも返り討ちに遭い、また多くの同志を犠牲にしてしまう」

「だからこそ、この国や仲間を守る為に我々は騎士としてそのブラッド・レクイエムという連中に戦いを挑むのではないか!何もせずに隠れていては犠牲になってしまった者達の魂が浮かばれぬ!」

「そうだ、敵の力が分からないからと言って戦わずにいては騎士と誇りに自ら傷をつける事になる!」


 ハーパーの話を聞いて他の騎士達は揃って意見する。だがそれを聞いたハーパーは呆れる様な表情で騎士達を見つめ、ゆっくりと口を動かした。


「騎士の誇りを傷つけたくないからと言って危険な戦いに自ら足を踏み入れるというのですか?・・・それは勇気ではなく無謀です」

「何だと!?」

「口を慎め、若造が!」


 哀れむ様な口調をするハーパーに他の騎士達、特に年配の騎士達は席を立ちハーパーを睨み付ける。会議室の空気が悪くなることにラピュスやカイネリアは若干戸惑いを見せる。七竜将はただ黙ってハーパー達を見ていた。

 ハーパー達が睨み合っているとレッドムがテーブルを強く叩き騎士達を言い争いを止める。


「そこまでだ!今は会議中だぞ?」


 レッドムに喝を入れられたハーパー達は静かになり席に付く。場の空気が元に戻りラピュスとカイネリアはホッと胸を撫で下ろした。騎士達が落ちついたのを見てレッドムはラピュスの方を向く。


「ラピュス殿、お見苦しい姿を見せてしまった。申し訳ない」

「い、いえ、私は別に・・・」

「そなた達は我々よりも奴等の事に詳しい。どうすれば奴等に対抗できるのか、奴等から身を守れるのか詳しく教えてほしい」

「・・・ブラッド・レクイエムの事は私よりも七竜将かれらの方が詳しいです」


 ラピュスは自分の後ろに立っている七竜将の方を見てレッドムに言った。ヴリトラはふとラピュスの方を向いてまばたきをし不思議そうに小首を傾げた。それを見た騎士達は頼りなさそうな目でヴリトラを見ている。だが、レッドムやカイネリア、ハーパーはジッと彼等を見つめていた。どこか期待できると言いたそうな目で・・・。


「では、ヴリトラ殿、と言ったな?奴等の、ブラッド・レクイエムの連中と戦うにはどうしたらいい?」

「・・・・・・率直に言いますと、奴等は普通の人間ではありません。普通の人間や騎士では奴等の一般の兵士に勝つ事は難しいでしょう」

「何だと?」


 普通の人間ではない、ヴリトラの言葉を聞いたレッドムは驚いた。それと同時にヴリトラの言っている事の意味が分からずに難しい顔をする。


「使っている武器の事もありますが、奴等の身体能力は普通の人間よりも遥かに勝っています。優秀な騎士が数人がかりで倒せる猛獣は奴等は一人で倒してしまう。奴等に勝つには奴等と同じ力を使うしかない」


 ヴリトラは自分の腰の森羅を見ながら話し、リンドブルム達も自分の武器や機械鎧をジッと見ていた。


「で、では我々では奴等には絶対に勝てないと?」

「いえ、普通の人間でも奴等に勝てる人もいるはずです。現に奴等と戦って勝った騎士が此処にいますから」


 そう言ってヴリトラはラピュスの肩にそっと手を置く。レッドムやカイネリア達はラピュスがブラッド・レクイエム社の兵士に勝ったというのを知り、意外そうな顔を見せた。


「それなら、私達にも勝機があるという事ではないか」

「そうじゃ!やはり我々も戦うべきだ!」


 ハーパーと言い争いをしていた騎士達が再び戦うべきだと言い出す。


「ラピュスが奴等と戦って勝てたのは何度も俺達と行動を共にして奴等の力や戦い方をずっと見て来たからです。何より、彼女は奴等の恐ろしさを知っている。何の知らずに奴等と戦えば情報を得る前に一瞬で殺されてしまいます」


 ヴリトラがブラッド・レクイエム社の恐ろしさをさり気なく伝えて騎士達を止める。ヴリトラの話を聞いた騎士達は彼の鋭う表情を見て若干寒気の様なものを感じ、黙り込んでしまう。


「・・・では、我々はどうすれば・・・」

「奴等と戦うにはまず情報を持ち帰る必要があります。俺達と同行して奴等の戦い方を目に焼き付けてください。戦い方が分かればそこから作戦を練る事ができます」

「成る程・・・」


 レッドムはヴリトラの話を聞いて納得し、腕を組みながら考え込む。カイネリア達もヴリトラの話を聞いて難しい顔を見せる。


「レッドム殿、カイネリア殿から聞いたのですが、今日は任務で町の外に出る騎士隊が二つあるとか・・・?」

「む?・・・ああ、いかにもそうだ・・・」

「では、その任務に私達も同行させてもらえませんでしょうか?」

「何?」


 ラピュスの提案にレッドム達は驚く。だが七竜将はこうなうr事が分かっていたのか小さく笑ってラピュスの方を見ている。


「我々はこの国の人々をブラッド・レクイエムの者達から守る為にやってまいりました。そして奴等の狙いは騎士隊を襲い騎士を連れ去る事、私達が任務に出る隊に同行してその隊を奴等から守ります。それと同時に貴方がたはブラッド・レクイエムの戦い方や力を観察して情報を得てください。そうすれば次にもしブラッド・レクイエムと戦う時があれば戦いやすくなるはずです」


 レッドムはラピュスの案を聞いて考え込む。敵の情報を得る為とはいえ、傭兵や同盟国の騎士達に守られるのはどうかと思っているのだ。だが、敵の事を知らずに戦って殺されてしまっては意味がない。考えた末、レッドムはゆっくりとラピュスと七竜将の方を向いた。


「・・・分かりました。ラピュス殿、そして七竜将、我々に力を貸してもらいたい」

「だ、団長殿!?本気ですか?」

「傭兵や同盟国の騎士に守ってもらうなど・・・」


 納得ができない他の騎士達が驚いてレッドムに訊き返す。するとレッドムは騎士達の方を向いてゆっくりと立ち上がる。


「我々が敵の事を何も知らないのは事実だ。そんな状態で敵に戦いを挑んでも負けるのは目に見えている。それこそハーパーの言った通り、勇気ではなく無謀にすぎん。我々には守らなくてはならない物がある。陛下達王族、国の民、そして自分達の家族、それらを守る事ができずに命を落とす事こそが騎士の誇りを傷つける事になる、違うか?」


 レッドムの話を聞いて周りの騎士達は反応しレッドムに視線を向ける。


「国を守る力を得る為に他人に守られる事は決して恥ではない。私はそう思っている」


 話を聞いたカイネリアは誇らしく笑みを浮かべ、ハーパーも笑って頷く。他の騎士達もまるで自分の間違いに気付いたかのように俯いていた。

 レッドムはもう一度七竜将とラピュスの方を向いて真剣な表情を見せて小さく頭を下げる。


「改めて、お願いする。ラピュス・フォーネ殿、ヴリトラ殿、どうか我々の為に力を貸してほしい」


 頭を下げる騎士団長を見てラピュスは少し驚いており、ヴリトラは小さく笑い両手を腰に当てている。


「勿論です。なっ、皆?」


 ヴリトラが後ろを向くと、そこには笑ってヴリトラの方を見ているリンドブルム達の姿があった。しかし、オロチだけは相変わらず無表情のままだった。

 レッドムは頭を上げて喜んで力を貸してくれる七竜将に心から感謝し、カイネリアやハーパーも七竜将を見て小さく笑っている。


「それじゃあ、その任務に行く部隊の事ですが・・・」


 ヴリトラが今日任務で町を出る部隊の事についてレッドム達と話し始める。それから彼等は部隊の編制、行き先などを確認し、どの部隊に誰を付けるかを決めたのだった。

 そしてその日の正午、七竜将と懲罰遊撃隊はレイグリーザの正門前にセメリト王国の二つの騎士隊と共に集まっていた。騎士隊はどちらも一個小隊で数人の騎士と大勢の兵士で編成されている。七竜将と懲罰遊撃隊はそれぞれ二つに分かれて各騎士隊に同行する事になった。


「全員揃ったな?」

「ああ」


 ジープの助手席でヴリトラが全員揃っているのを確認すると、ラピュスが馬に乗って返事をする。周りではリンドブルム達の乗ったバンとララン達の懲罰遊撃隊が全員馬に乗って待機しており、その隣ではセメリトの騎士隊の姿があった。騎士隊の先頭にはカイネリアと茶色の鎧を着て金色の短髪をした若い青年の騎士の姿があった。どうやらこの二人が今回任務に出る騎士隊の隊長の様だ。


「よし。それじゃあ、行きますか?」

「ああ」


 カイネリアが頷き、後ろにいる自分の隊員達に合図を送り正門を潜り外に出る。その後をヴリトラ、ジャバウォック、オロチの乗ったジープとラピュスと数人の懲罰遊撃隊の騎士がついて行く。


「皆さーん!気を付けてくださいねーっ!」

「お前達もなー!」


 後ろで手を振りながら大きな声を出すアリサにラピュスは後ろを向き手を振り返して返事をする。ヴリトラ達が出発するとバンからリンドブルムが下りて来てアリサの方へ歩いて行く。


「それじゃあ、僕達も出発しましょう」

「ええ、そうですね」


 自分達も出発しようと話をする二人。するとそこへ隊長である青年騎士が馬に乗って近づいて来る。


「君達が我々と同行するレヴァート王国の騎士と傭兵かい?」

「あっ、ハイ、アリサ・レミンスです。そしてこっちがリンドブルムさん」

「どうも・・・」


 青年騎士に挨拶をするアリサとリンドブルム。そんな二人を青年騎士は興味の無さそうな目で見ながら髪を直す。


「隊長の『マービング』だ。よろしく頼むよ」

「ハイ、よろしくお願いします」

「・・・初めに言っておくけど、僕はまだ君達の事を信用していない」

「ん?」


 マービングを名乗る青年騎士の言葉にリンドブルムは反応して見上げる。アリサやその後ろにいるラランもマービングを黙って見つめていた。


「君達がハーパー達を助けてくれた事には感謝しているよ。だけど、僕達ではブラッド・レクイエムとかいう連中に勝つのは難しいと言ったらしいじゃないか?」

「え、え~っと・・・」

「ええ、そうですよ?」


 場の空気が重くなりと若干戸惑いを見せるアリサに変わったリンドブルムが真面目な顔で答える。ハッキリと言ったリンドブルムの方を向いてアリサは「何て事を言うんですか!?」と言いたげな表情で驚く。


「まったくもって不愉快だよ。それではまるで僕達セメリト王国の騎士達が劣っている様ではないか」

「勝つのが難しいと確かにヴリトラは言いましたよ?でも、皆さんが劣っているなどとヴリトラは思っていません。勿論僕達も・・・」

「フン、子供のくせに一人前の事を言うんだね君は?」

「ただ真実を言っただけです」


 互いに相手の顔を見て言いたい事をハッキリと言い合うリンドブルムとマービング。二人の間の空気が次第に悪くなっていくと感じたアリサはまた戸惑いと表情を見せる。ラランは無表情でそれをただ見守っていた。


「・・・フゥ、皆さんが僕達の事をどう思うかは勝手ですけど、僕達は皆さんを守る為にセメリトに来たんです。それだけは忘れないでください」

「心配無用だ。我々は自分の身は自分で守る事ができる、申し訳ないが君達の役目は無いと思うよ」


 マービングはそう言ってリンドブルム達から離れていき、自分の隊の指示を出して出発する。先に出発したマービングの隊をリンドブルムは目を細くして見ていた。そこへラランが馬に乗ってリンドブルムの隣にやって来て同じようにマービングの隊を見つめる。


「・・・感じ悪い」

「自分達では勝てない相手がいると聞かされてそこへ傭兵が手を貸すなんていうんだもの、騎士として納得できないんだよ」

「・・・実際、奴等を見れば分かる」

「まぁ、そうだろうね・・・」


 リンドブルムとラランはマービングの姿をしばらく見ると馬を動かして自分の配置に戻り、バンに乗り込んでドアを閉めた。それを確認したアリサはフゥと溜め息をつきマービング達の後を追う。懲罰遊撃隊が進むとリンドブルム、ニーズヘッグ、ジルニトラ、ファフニールの乗るバンがゆっくりと後に続くのだった。

 

――――――


 レイグリーザから南西に約10K離れた位置にある周囲の見渡す事のできる程の高さの崖。そのてっぺんから周囲を見回す無数の人影があり、その全てがBL兵だった。そしてその近くには二機の黒い「UH-1Y ヴェノム」が停まっており、その近くでも数人のBL兵がMP7を持って見張っている姿がある。


「・・・この辺りで一番近くにあるのは首都のレイグリーザか」


 BL兵達の中で一人、黒いフード付きマントを身に纏いその下にブラッド・レクイエム社の特殊スーツを着た長身の男が地図を眺めていた。フードの下には黒い逆立った髪にどじょう髭と短い顎鬚を生やした目付の鋭い三十代後半程の顔があり、両腕両足が黒い機械鎧となっている。そして腰には直剣が鞘に納められていた。

 男が静かに地図を眺めていると一人のBL兵が男に駆け寄って来る。


「『デーモン』隊長、首都レイグリーザの近くにある荒野で発見された第七班の遺体を調べたところ、数人が銃で撃たれて死亡した事が分かりました」

「何?銃だと?・・・つまり、この国に我々と同じ武器を使う者が・・・」


 BL兵から情報を聞いたデーモンと呼ばれる男。彼こそがジークフリートがセメリト王国に送り込んだ二人の幹部の一人であるデーモンだったのだ。そして彼等はリンドブルムとオロチが荒野で倒したBL兵の部隊を仲間に調べさせていたようだ。


「この国は確か七竜将が拠点にしているレヴァート王国の同盟国だったな。だとすると・・・」

「奴等がこの国に来てるって考えるのが普通だろうな」


 何処からか聞こえてくる少女の声にデーモンとBL兵が反応して声のした方を向く。そして遠くから歩いて来る一人の小柄な少女の姿を見つめた。その少女は濃い茶髪のショートボブに黒い略帽を被り、ファフニールと同じくらいの身長をしている。そして彼女の両腕は機械鎧となっており黒い特殊スーツを着ていた。


「やはりそう思うか?『ドリアード』」

「思うかと言うよりも、そう考えるのが普通じゃねぇのか、デーモンのおっさん」


 男口調の少女をドリアードと呼ぶデーモン。ドリアードはデーモンの前まで来ると報告に来たBL兵の方を向いた。


「おい、他にも荒野の近くでやられた部隊はあるのか?」

「いえ、発見されたのはその第七班だけです」

「・・・となると、七竜将は第七班を倒した後に一番近くにある大きな町へ向かった可能性がたけぇな」


 ドリアードは腕を組みながら七竜将の動きを計算する。どうやら彼女は仲間を倒したのが七竜将だと確信しているようだ。


「確か荒野の近くにはこの国の首都があるんだったよな?」

「ハイ、首都レイグリーザです」

「・・・・・・」

「ドリアード、何を考えている?」


 黙り込むドリアードの訊ねるデーモン。するとドリアードは腕を組んだままデーモンを見上げる。


「決まってんだろう?その首都の方へ向かうんだよ。もしかしたら七竜将がいるかもしれねぇしな」

「俺達に与えられた任務は素材となる騎士を取られて連れ帰る事だ。余計な事はするな」

「はぁ~?バカじゃねぇのか?ここで一番目障りな七竜将を始末しておけば、もう俺達の邪魔をするる奴がいなくなるって事じゃねぇか」

「これまでも多くの兵士や幹部が七竜将に挑んでは返り討ちにされたのを忘れたのか?そもそも奴等が本当にその首都のある方角にいるとも限らない」


 七竜将を討伐しようとするドリアードを止めるデーモン。だがドリアードを考えを変えようとしなかった。


「・・・何だよおっさん。もしかして奴等が怖いのか?」

「何?」

「ハッ、情けねぇなぁ~。悪魔のコードネームを持つ男がたかが七人の傭兵を恐れてるなんてよぉ」


 挑発しながら笑うドリアードをデーモンを睨みながら黙って見つめる。そしてデーモンはドリアードに背を向けて再び地図を見た。


「・・・勝手にしろ。だが、行くならお前の部隊だけにしろ。俺の部隊までお前につき合わせるな」

「あっそ、じゃあそうさせてもらうぜ?」

「それと、お前が勝手に行動した事はジークフリート司令にしっかりと報告させてもらう」

「勝手にしろよ。と言うか、司令も七竜将と遭遇する事を考えて俺とアンタを向かわせたんだと思うぜ」


 デーモンの忠告を軽く流してドリアードは自分の部隊のBL兵達を招集させて一機のヴェノムに乗り込んだ。ドリアード達が乗ったヴェノムはプロペラを回し始め、もの凄い勢いで砂煙を上げながら上昇を始める。そして高く上昇したヴェノムはレイグリーザのある方角へ飛んで行った。

 残ったデーモンと指揮下のBL兵達は飛んで行ったヴェノムを見上げていた。


「・・・バカな娘だ」


 意味深な言葉を残してデーモンは地図に視線を向ける。

 いよいよ七竜将達がセメリト王国の騎士隊の警護をする為に動いた。だがそれと同時にブラッド・レクイエム社の部隊も動き、レイグリーザ方面に向かっている事にヴリトラ達は気付いていない。


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