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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第八章~消えていく隣国の剣~
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第百四十七話  失った物と得た物 

 温かい日の光が照らす昼の公園。公園の中央にある広場の噴水の周りでは子供達がかけっこをしたり、噴水の前に座っている老人が読書をしているなど大勢の人で賑わっていた。その中にはベンチに座って休んでいるヴリトラとリンドブルムの姿があった。

 二人は目を閉じて日に当たりながらたまに吹く涼しい風を受けて気持ちよさそうな顔をしている。


「・・・今日も静かだなぁ」

「うん、前の事件がウソみたい」


 ヴリトラとリンドブルムは風を受けながら目を開いて広場を見回し、楽しそうに過ごしている人々を見ながら会話をした。

 元老院の一件から二週間が経ち、ようやく七竜将の冤罪が消えて評判が元に戻った。今では外を自由にである事もでき、依頼の数も増えてきている。


「つい二週間前までは町や村の中をコソコソと移動しないといけなかったのに今こうして堂々と歩いて行ける」

「これもパティーラム様が王様に僕等の無実を伝えてくれたおかげだよね?」

「パティーラム様だけじゃねぇぞ?ガバディア団長やラピュスのお母さん達が頑張ってくれたおかげだ」

「そうだったね」


 二人は笑いながら自分達の無実をヴァルボルトや上級貴族達に説明し、元老院が全て仕組んだ事だと証明してくれたパティーラム達に心から感謝する。すると、笑っていたリンドブルムが複雑そうな表情を見せて立ち上がり、ヴリトラの方を向いて後頭部を手で掻く。


「でも、その後も色々あったよねぇ、元老院の連中がズィーベン・ドラゴンを荒らして使えそうな物を全部持って行っちゃったんだもん。幸い、金塊や武器の類は持ってかれなかったけどね」

「金塊は特殊なアタッシュケースに保管してあったし、銃なんかもニーズヘッグ特製の武器庫にしまってあったから無事だったしな。でも、その盗まれた物も全部戻って来たし、良しとしようぜ」

「そうだね」


 過ぎた事を何時までも考えていても仕方がないという様にヴリトラとリンドブルムは話を終わらせる。


「それにしても、ファンストの野郎はどうやってブラッド・レクイエムと接触して奴等の手を借りたんだ・・・」

「そういえば、どうやったんだろう?」


 黒幕であったファンストがどうやってブラッド・レクイエム社の手を借りたのかその方法が分からず、今度は難しい顔を見せるヴリトラとリンドブルムは腕を組んで考え込んだ。


「その事なら私が説明しよう」

「「!」」


 聞こえて来た声に二人はふと顔を上げる。そして広場の入口から自分達の方へ歩いて来るラピュスとラランの姿を目にした。


「ラピュス、ララン」

「探したぞ、二人とも?ズィーベン・ドラゴンを訊ねたら公園に行ったとオロチから聞いて来たのだ」

「そうだったのか。わざわざ来なくてもズィーベン・ドラゴンで待っててくれればよかったのによ」

「何時戻って来るか分からないだろう?私達にも仕事があるんだ、あまり長い事いる訳にはいかない」

「ハハハ、確かにな」


 笑うヴリトラを見てラピュスは困り顔で腕を組んだ。そんな二人の隣ではそれぞれリンドブルムとラランが二人な顔を見ながら会話を聞いている姿がある。


「そっちはそれからどう?何だか色々あったみたいだけど?」

「・・・大丈夫、だいぶ落ち着いた」


 リンドブルムがラランに元老院の一件の後の事を訊ねるとラランは無表情のまま静かな声で答える。

 実はあの一件の後、元老院の従ったラピュスと第三遊撃隊、七竜将と同行していたララン、アリサの姫騎士二名は王城に呼び出されたのだ。家族を人質に取られて七竜将の討伐を強要されたとはいえ、戦友である七竜将の命を奪う事を決意したラピュス達、七竜将の無実を証明する為に元老院直属の白銀剣士シルヴァリオン隊の任務の妨害をし、逃亡中に兵士数名を負傷させたラランとアリサにもそれぞれ責任を取る必要があるとされて罰を与えられた。勿論、七竜将は納得できずに抗議したが、王国の決まりであるが故に一傭兵である七竜将が首を突っ込む事などできなかった。結局、ラピュスは青銅戦士ブロンゼム隊分隊長、アリサとラランは第三遊撃隊隊長、副隊長から降格、第三遊撃隊の騎士達にもそれぞれ減俸などの処分が下される事になったのだ。


「まったくもう!酷すぎるよ、ラピュス達は何も悪くないのに!」

「そんな事はない。私達は家族を助ける為とはいえお前達を裏切り元老院の言いなりになったのだ、当然の罰だ」

「でも!」


 今でもラピュス達が罰を受けた事に納得ができないリンドブルムはラピュスの方を向いて意見する。そこへラランが近づいて来てリンドブルムの肩にそっと手を置く。


「・・・リブル、仕方がない。これがレヴァートの法律」

「ララン・・・」

「・・・私も隊長も後悔してない。勿論アリサも」


 無表情のまま宥めるラランにリンドブルムは何も言わずに肩の力を抜いて一度溜め息をついた。


「確かに被害者であるラピュス達が罰を受ける事になったのは納得できないけど、それでも降格処分だけで済んだんだから今は良しとしようぜ?」

「ヴリトラまで・・・」


 ベンチに座ったまま話し掛けてきたヴリトラの方を向いてリンドブルムは不満そうな顔を見せる。


「ラピュス達にはそれぞれ強要された事や口封じで命を狙われたって理由があったんだ。きっとパティーラム様達が必死で陛下や上級貴族達に細かく説明してくれたから降格処分だけで済んだんだと思うぜ?」

「ヴリトラの言うとおりだ。もしそう言った理由がなければ私やラランも元老院の白銀剣士隊の様に騎士の称号を剥奪されて牢獄に送りになっていたかもしれない」


 パティーラムのおかげで今の自分達がいる、それをリンドブルムに微笑みながら説明するラピュス。そんなラピュスの顔を見たリンドブルムは一応納得してベンチに戻って座った。元老院の命令に従った白銀剣士隊の騎士達にはそれぞれ厳しい処罰が下されて現在は王城の近くにある牢獄に幽閉されているらしい。


「今回の一件だ私は遊撃隊の隊長に逆戻りだ。アリサは副隊長に、ラランは一般隊員に戻ってしまった」

「つまり、俺達と出会った頃の状態になっちまったって事か」

「ああ。ただ、今回の一件で私達は正規の遊撃隊ではなく、『懲罰遊撃隊ちょうばつゆうげきたい』として編成されたのだ」

「「懲罰遊撃隊?」」


 聞いた事の無い部隊名にヴリトラとリンドブルムは訊き返す。


「・・・任務中に重大な失敗したり、騎士達が罪を犯した時にその罪を償う為の任務をこなす部隊」

「その部隊は決められた期間の間、一部隊の指揮下に入り、その指揮する部隊の如何なる命令にも従わないといけない事になっている。例えそれがどれだけ無謀な命令であっても・・・」

「何だと?要するに特攻隊って事か?」

「そういう言い方もあるな・・・」


 ラピュス達が特攻隊として編成された事を聞いたヴリトラは気に入らないのか歯を強く噛みしめてギリッと音を立てる。勿論リンドブルムも同じだった。


「落ち着け、確かに私達第三遊撃隊は懲罰隊となったが、別に特攻隊として扱われる訳じゃないのだ」

「それでも、やっぱりどんな命令に従わないといけないなんて決まり、納得できないよ!どうしてそんな事を・・・!」


 二人を宥めようとするラピュスと下された罰の内容が気に入らずに苛立ちを見せるリンドブルム。するとそこへラランがまたリンドブルムにそっと声を掛けて来た。


「・・・私達は七竜将の指揮下に入る事になった」

「・・・・・・は?」

「何だって?」


 リンドブルムとヴリトラはラランの言葉に思わず声を出す。無表情のままのラランの隣でラピュスは苦笑いをしながら説明をする。


「私達はお前達七竜将の指揮下に入り、当分の間お前達の仕事の手伝いをする事になったのだ。普通は騎士が傭兵の指揮下に入る事など考えられないが、お前達は王国に協力し、依頼を直接受ける特別な傭兵隊だ。それにブラッドレクイエムの事もよく知っている。お前達の指揮下に入れた方が一番良いと姫様も思われたのだろう」

「姫様?それってつまり、俺達の指揮下に入れる様にしたのはパティーラム様なのか?」

「更にガバディア団長もな。お二人はお前達が私達を危険な目に遭わせる事はないと信じてくれているのだ」


 ラピュスの話を聞いて驚きの顔を見せるヴリトラとリンドブルム。パティーラムとガバディアは七竜将の事を信じてる故にラピュス達を彼等の指揮下に入れる事を推薦した。それは同時に懲罰隊として忌み嫌われるラピュス達が他の騎士達によって無謀な命令を下される事から守る為でもあったのだ。先の事まで計算して編成したパティーラムとガバディアにヴリトラ達は感服する。


「凄い人達だな。俺達の息が合っている事だけでなく、ラピュス達を守る為に細かく計算しているとは・・・」

「うん、ビックリした」

「・・・こりゃあ、二人の期待を裏切らないようにしないとな」

「うん!」


 向かい合ってヴリトラとリンドブルムは笑い合った。


「ハァ、本当はズィーベン・ドラゴンで話したかったのだが、お前達にだけ先に話す事になってしまったか」

「・・・またジャバウォック達に話すの、めんどくさい」


 笑っている二人と違い、「やれやれ」と言いたそうな顔を見せるラピュスとめんどくさそうな顔で呟くララン。そんな二人の事を気にせずに笑っているヴリトラとリンドブルムであったが、これで七竜将は常に第三遊撃隊と行動を共にする事になる。それは色んな意味で双方にとって都合のいい事だった。

 ラピュス達の処罰の事に付いて話を聞いたヴリトラとリンドブルムはふと何かを思い出してラピュスの方を向く。


「どういえば、さっきファンストがブラッド・レクイエムと接触した事について説明するって言ってたよな?」

「何か分かったの?」


 二人の話を聞いたラピュスもファンストの事を思い出して目を見張る。ラランもラピュスの隣でポンと手を叩いて思い出した。二人はベンチに座っているヴリトラとリンドブルムの前まで移動して話を始める。


「昨日、ファンストの取り調べをした兵士から聞いたのだが、お前達が陛下に呼ばれて登城した日の夜、ファンストはブラッド・レクイエムの男と接触して七竜将を追い詰める為の作戦や情報を聞いたらしい」

「ブラッド・レクイエムの男?ソイツはどんな奴だったんだ?」

「ファンストの話では黒い全身甲冑フルプレートアーマーを身に纏った長身の男だとか・・・」

「全身甲冑!?」

「ヴリトラ、それって・・・」

「ああ、間違いなくジークフリートだ・・・」


 ヴリトラの脳裏に黒騎士ジークフリートの姿が浮かび上がる。ブラッド・レクイエムで黒い全身甲冑をしている男はジークフリートしかいない。四人は一度戦った時の事を思い出して表情を鋭くした。


「だけど何でファンストはジークフリートの助けを素直に受けてそれを隠してたんだろう?相手が自分の嫌う傭兵で、しかも敵なら屋敷に侵入した時点で追い出そうとするはずなのに・・・」


 リンドブルムはなぜファンストがジークフリートの助力を得て、しかも彼の事を他の者達に話さなかったのか分からずに頭を悩ませる。


「そりゃあ、俺達を殺す為にレヴァートが敵視しているブラッド・レクイエムの力を借りると自分の評判や立場が悪くなるからだろう?」

「成る程・・・」


 ヴリトラの話を聞いて納得し頷くリンドブルム。するとラピュスが腕を組みながら目を閉じて静かに口を開いた。


「そうではない」

「え?」

「ファンストはお前達を始末したあかつきにはブラッド・レクイエムと密かに契約を交わしてより大きな権力を手に入れる為の切り札にするつもりだったらしい」

「散々傭兵を見下していた男が自分の欲の為に手の平を返して傭兵の力を手に入れようと考えてたって事か。食えない男だな」

「まったくだ。あんな男がこの国の元老院最高責任者を務めて、自分が利用されていたと思うな情けなく思えてくる」


 ファンストが密かに計画していたブラッド・レクイエム社との契約、その事実を聞いたヴリトラは舌打ちをし、ラピュスも自分達の国を動かしている元老院の最高議長の心変わりに腹を立てる。リンドブルムとラランも真面目な顔で二人の方を見ながら会話を聞いていた。


「そう言えばファンストはどうなったの?」


 リンドブルムがファンストのその後の事をラピュスとラランに訊ねた。するとラランがリンドブルムの方を向いて説明を始める。


「・・・ファンストは元老院の立場を利用して独断でブラッド・レクイエムと手を組み、リブル達を殺そうとした事で責任を取らされて監獄に送られた」

「やっぱりね・・・」

「・・・当然元老院最高議長の任を解かれて爵位も剥奪。財産も全部没収された」

「まっ、当然と言えば当然だよね」


 自業自得と言いたそうにリンドブルムは納得の顔を見せる。ラランも無表情のまま頷いた。


「今王城では次の最高議長の選挙が行われており、今後の元老院の有り方についての話し合いが行われている」

「自分勝手なファンストがいなくなった事で元老院も少しはマシになるって事か」

「そうであってもらいない。でないと国中の民達が安心して生活できないからな・・・」


 ヴリトラとラピュスも今後元老院がどんな方向へ進んで行くのか少し心配らしく難しい顔をしながら話し合っている。ファンストの一件で元老院に対する国民の信頼が下がり、国民達も不安を抱えていた。信頼を少しでも早く取り戻す事を四人は心の中で願う。

 一通りの話を済ませた四人が一息つくと、突然猛烈な暑さが四人に襲い掛かる。


「うぅ~!暑い!」

「・・・まだ夏だから当然」

「さっきまで真剣な話をしていたから暑さを感じずにいたから気付かなかったんだな」

「いつの間にか日差しも強くなって、公園には私達以外には誰もいないぞ・・・」


 ラピュスが周囲を見回すと確かに公園の広場にはヴリトラ達以外誰もいない。ヴリトラとリンドブルムはベンチから立ち上がって汗を拭って同じように周囲を見回す。


「確かにいないな・・・」

「僕達も一度ズィーベン・ドラゴンに戻ろうか?」

「そうだな。ジャバウォック達にもラピュス達の事も話さないといけないし」

「ついでにファンストの事もね?」

「ああ。ラピュス達も一緒に来るか?冷たいジュースでも飲んで行けよ」」

「そうだね、そうしなよ」


 二人がラピュスとラランにズィーベン・ドラゴンに寄る様に話すと、二人は小さく笑って頷いた。


「では、お言葉に甘えるとしよう」

「・・・冷たいジュース」

「よし、決まりだな。二人には今聞いた事を皆に話してもらいたいし」

「ん?・・・もしかしてそっちが本音か?自分で話すのが面倒だから私達に説明させようと・・・」

「ギク・・・」


 ラピュスがジト目でヴリトラに訊ねるとヴリトラはピクリと反応する。それを見たラピュスは溜め息をついて呆れ果てる。リンドブルムは苦笑いでヴリトラを見上げており、ラランは無表情のまま瞬きをしてヴリトラとラピュスを見上げていた。それから四人は暑い中、ズィーベン・ドラゴンへ向かって歩いて行く。


――――――


 その日の夜、王城の近くにある監獄。その中の牢獄の一つに貴族服のままのファンストは幽閉されていた。周りの牢獄には誰もおらず、ファンストは一人静かに牢獄の中で座っている。


「くぅ~!上級貴族の儂がこんな薄汚れた牢に入れられるとは。王家も上級貴族もどうかしておる!」


 自分の罪を棚に上げて王族や他の貴族を悪く言うファンスト。だが周りにはそんなファンストの戯言を聞く者など誰もいなかった。そんな時、静かな監獄の中に足音が響き少しずつ近づいて来る。その足音はガシャガシャと金属が揺れる様な音をさせており、鎧を着た者が近づいて来る事を現していた。やがて足音はファンストの牢獄の隣まで近づきファンストはふと牢獄の外を見る。そして牢獄の前に人影が現れた。


「何じゃ貴様は?・・・・・・ッ!?き、貴様は!」

「無様な姿だな?ファンスト」


 人影を見て驚き立ち上がるくファンスト。その人影が黒い全身甲冑を着た長身の騎士だった。牛の角の様な飾りを付けたアーメットを被った男、ブラッド・レクイエム社機械鎧兵士部隊司令官、ジークフリートだったのだ。


「貴様、どうして此処におる!?」

「お前の様子を窺いに来たのだ」


 ジークフリートの登場にファンストは早歩きで近づいて行き、強く鉄格子を掴んだ。


「何をぉ!・・・いや、そんな事はどうでもよい!一体どういう事だ?貴様から得た情報を元に七竜将を追い詰めたが上手く行かなかったではないか!そのせいで儂はこんな目に・・・!」

「フッ、言い掛かりは止めてもらおう。私はあくまでも七竜将の情報を与えただけ、奴等をどう攻略するか作戦はお前が決めろと言ったはずだ。そして不測の事態に備えてメリュジーヌをお前の警護に付かせた」

「じゃが、そのメリュジーヌという女も結局奴等にやられてしまったではないか!」

「確かに、だがそれは奴の力不足だっただけの事。もしくは七竜将・・・いや、あのラピュスと言う女の力が強すぎたのか・・・」

「むぅ?なぜその事を・・・」

「我々の情報網を甘く見てもらっては困る」


 静かな監獄の中で響く二人の男の声。しかし誰もその会話を聞いておらず、二人は周囲を警戒せずに話を進めて行く。


「いずれせよ、お前が自分の計画を過信し、七竜将の力を見くびったのが今回の失敗の原因だ。私に逆恨みをするのは筋違いであろう?」

「ぐぬぬぬぬぅ!」


 ジークフリートを睨み合がら歯ぎしりをするファンスト。そんなファンストを見ながらジークフリートは赤い目を光らせる。


「だが、私は力の弱いメリュジーヌを送ってしまった事も事実、その詫びはしないといけないな」


 ジークフリートはそう言って鎧の腰の部分に取り付けてある金属製のホルスターに納めてある愛銃コンテンダーを抜き、銃口をファンストに向けた。銃口を向けられたファンストは反応し後ろに下がる。


「き、貴様、何を・・・?」

「言っただろう?せめてもの詫びだ。こんな牢獄で惨めな生活をするなどお前にとっては地獄のはず。だからその地獄から解放してやろうと言うのだ。ただし、この世からも解放されてしまうがな」


 ジークフリートの行動と発言を聞いたファンストは青くなりジークフリートが何をしようとしているのかを理解する。牢獄の奥まで逃げると怯えた表情でジークフリートを見た。


「ま、まさか、この儂を・・・」

「お前をこのままにしておくと余計な事をレヴァート王国の連中に話す可能性がある。それは私達にとって都合が悪いのだ。何より、我等ブラッド・レクイエムは貴様の様な者を必要としていない!」

「や、やめろ・・・」

「それに私達は新たな計画を実行する事にした。計画をスムーズに進める為にもまずは目障りな敗北者には消えて貰わなければならない・・・・・・さらばだ、『元』元老院議長殿・・・」

「やめろぉーーーっ!」


 監獄内に響くファンストの叫び声、その直後に一発の銃声が監獄内に広がり何かが倒れる音がした。

 ようやく平和な日常を取り戻したヴリトラ達。元老院の一件で幾つか失う物もあったが新しく得るものもあった。ヴリトラ達とラピュス達はお互いの絆をより強くして新しい道を進む。だが、彼等はブラッド・レクイエム社の不穏な動きにまだ気づいていなかった。


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