第百四十四話 怒りの対決 ラピュスVSメリュジーヌ!
目の前に現れたシャーリアはブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士メリュジーヌの変装だった。シャーリアを殺害し、トーマス達も皆殺しにして来た言うシャーリアの冷酷な言葉と態度にラピュスは怒りを爆発させた。
今まで見せた事の無い怒りを露わにしたラピュスは騎士剣を握りながらメリュジーヌに向かって走り出す。
「・・・この魔女がぁーーっ!!」
「止せ、ラピュス!」
怒りで冷静さを失いメリュジーヌに突っ込んで行くラピュスをヴリトラは止める。だがラピュスにはヴリトラの声は届かず、ラピュスは目の前で笑っているメリュジーヌに向かって騎士剣を振り下ろした。すると、メリュジーヌは表情を変えずに頭上から迫って来る騎士剣の刃を左手で軽く受け止める。
「何!?」
「・・・魔女?違うわ、サイボーグよ」
驚くラピュスを見ながら笑顔のままメリュジーヌは答えた。そして彼女は空いている右手を鎧の隙間に入れて何かを取り出す。それは減音器を付けているベレッタ90だった。
メリュジーヌはベレッタ90の銃口をラピュスの顔に向けて引き金を引こうとする。それを見たラピュスは咄嗟に騎士剣から手を離してその場から離れた。距離を取るとラピュスもハイパワーを取り出して銃口をメリュジーヌに向ける。
「ウフフ、怒ってるわりには随分と冷静な判断ができるのね?」
メリュジーヌはラピュスの騎士剣を捨てるとベレッタ90をラピュスに向けながら言った。よく見ると騎士剣を止めた左手の手の平には切傷があり、その下から鉄の装甲が見える。どうやら彼女は左手が機械鎧になっており、その上から人間の皮膚を真似た手袋を付けているようだ。
互いに銃口を相手に向けているラピュスとメリュジーヌ。二人の戦いを見てヴリトラ達にも緊張感が伝わって来る。
「待て、ラピュス!お前じゃその女には勝てない!」
「止めないでくれヴリトラ!コイツは私が倒す!」
「無茶を言うな!俺達だってブラッド・レクイエムの幹部クラスを相手に苦戦するんだ!騎士とは言え普通の人間であるお前に勝ち目はない!」
一人で幹部クラスの機械鎧兵士と戦おうとするラピュスを止めるヴリトラ。だが、ラピュスは表情を鋭く決して引こうとしなかった。
「確かに勝目は無いかもしれないだろう。だが、今引き下がってしまったら私はレヴァート王国の騎士として大切な物を沢山失ってしまう様な気がするんだ」
「ラピュス・・・」
王国騎士の誇りを胸にラピュスはハイパワーを両手で構えたまま、目の前に立つメリュジーヌをジッと睨む。そんなラピュスはヴリトラは真剣な表情で見つめながら名前を呟く。
「元老院の騎士隊とは言え、彼等もレヴァート王国の住民だった者達だ。彼等の無念を果たす為に私は王国の姫騎士として戦いたい。頼む、私にやらせてくれ!」
自分を利用していたとはいえ死んだトーマス達も王国の為に尽くす事を誓った同志達。ラピュスはその仇を討つ為に、これ以上ティムタームで好き勝手をさせない為に目の前にいる機械鎧兵士を倒すという強い意志をヴリトラに伝える。それを聞いたヴリトラは心を打たれたのか森羅をゆっくりと下ろしてラピュスを見つめる。
「・・・分かったよ」
「ヴリトラ!?」
ラピュスを一人で戦わせると決めたヴリトラにジャバウォックは驚いて彼の方を向く。騎士達も同じようにヴリトラの背中を見て驚いていた。
「本気か!?お前、今自分で言ったじゃねぇか?俺達七竜将でも幹部と一対一で戦うと苦戦するから普通の人間であるラピュスには勝ち目がねぇって!」
「ああ、言ったよ」
「なら、なぜ彼女を一人で戦わせる!?」
納得できないジャバウォックは力の入った声で訊ねる。するとヴリトラは森羅を下ろしたままラピュスをジッと見つめて口を動かした。
「・・・アイツはこの町を守る為に、そして仲間の仇を討つ為に命を賭けて目の前の強敵と戦おうとしているんだ。その覚悟を聞いておきながら戦いと止めると言うのは野暮ってもんだろう?」
「覚悟にこだわって命を落としちまったらどうしようもねぇだろう!?」
「自分が死ぬ事を覚悟してでも成し遂げようとしている奴を止める権利が誰にあるって言うんだ?」
「それは・・・」
ヴリトラの言葉にジャバウォックは口を止める。大切な物と守る為に死ぬ覚悟ができる者ほど心の強い者はないない。ヴリトラは国や家族、仲間を守る為に覚悟を決めたラピュスに賭けたくなり、彼女を一人で戦わせる事を決めたのだ。
真面目な表情でラピュスを見つめているヴリトラを見て、ジャバウォックはラピュスだけでなく、ヴリトラも何かを覚悟した事に気付きジッと彼の横顔を見つめる。
「・・・お前、ラピュスが勝てると思っているのか?」
「最初は無茶をしているだけだと思ってたけど、アイツの顔を見たらなぜか勝てるんじゃないかって考えるようになっちまうんだよ」
「根拠もないのにか?」
「初めて戦う相手に根拠も確信も無いだろう?」
ラピュスが幹部クラスに勝てる、そう考えているヴリトラにジャバウォックは意外そうな顔を見せ、離れた所でメリュジーヌにハイパワーを向けているラピュスを見つめた。
「・・・ジャバウォック、ラピュスは俺が見てる。お前は早くファンストを捕まえてくれ」
「・・・・・・しゃあねぇな、分かったよ」
これ以上言ってもヴリトラもラピュスも引かないと感じたジャバウォックはファンストを捕まえる事にした。デュランダルを持ち、二階へ続く階段前に立つファンストを見るジャバウォックは視線を変えずにヴリトラに一言声を掛けた。
「・・・ヴリトラ、ラピュスが死を覚悟している事は分かった。だが、もし彼女の身に何かあったらどうするつもりなんだ?」
「・・・有り得ねぇよ」
「何?」
「・・・ラピュスが本当に危険な状態になったら俺は迷わず助けに行くからな」
「・・・フッ、カッコつけやがって」
ジャバウォックは真面目な表情でラピュスを見つめながらアニメの様な台詞を口にするヴリトラを見てニッと笑いながら言った。
「それじゃあ取り掛かるが、周りの警備兵達はどうする?」
「心配ねぇだろう。アイツ等はシャーリアがブラッド・レクイエムの機械鎧兵士だと知って驚いたせいか完全に戦意を失っちまってる。俺達を襲って来る事はねぇだろう。まぁ、仮に襲ってきたら俺が叩きのめすけど」
「そうかい。じゃあ俺ももし警備兵が邪魔をして来たら、その警備兵を黙らせる事にするわ」
軽い会話を交わした後、ジャバウォックはファンストの向かって走り出した。するとヴリトラはさっきから黙ってラピュス達を見つめている遊撃隊の騎士達の方を向いて声を掛ける。
「おい、お前達もジャバウォックと一緒にファンストを捕まえに行け!此処は俺一人でなんとかする!」
「え?・・・ハ、ハイ!分かりました!」
ヴリトラの言葉に意外にも素直な態度を見せる騎士達はジャバウォックに続いて走り出す。ジャバウォックと騎士達は警備兵達の間を抜けてファンストの下に向かって行く。ファンストもそれに気付いて慌てて階段を駆け上がり二階へと逃げ出した。護衛の騎士達もそれ続き二階へ上がって行くとジャバウォック達は鋭う表情で階段を駆け上がりファンスト達の後を追っていく。
エントランスではヴリトラとメリュジーヌと向かい合うラピュス、そして呆然としている警備兵達だけが残った。警備兵達はヴリトラの言うとおり、シャーリアが殺されてメリュジーヌが変装していたという事実を知って戦意を失い固まっている。だが何人かは驚いてはいるもまだ戦意を失ってはいなかった。
「お、おい・・・どうするんだよ?」
「どうするって・・・・・・とりあえず、俺達のやるべきことをやるんだよ」
「やるべき事って・・・」
「この屋敷の主であるファンスト様をお守りするんだ!」
「お、おう!そ、そうだな、とにかく二階へ急ぐぞ!」
数人の警備兵達は槍を手にして二階へ続く階段を駆け上がりジャバウォック達の後を追う。それを見ていたヴリトラは目を細くしながら意外そうな素振りを見せていた。
「へぇ~?警備兵の中にもアイツ等みたいな奴等がいるんだなぁ・・・それに引き替え他の奴等はなんて情けない・・・」
ヴリトラは戦意を失い壁にもたれたり座り込んだりしている兵士を見て呆れ顔を見せる。
そんな中、ラピュスはハイパワーを構えながら目の前でベレッタ90を構えて笑っているメリュジーヌと向かい合っている。ラピュスは鋭い表情で警戒心を強くしているが、メリュジーヌは警戒心を全く見せない余裕の態度を取っていた。
「どうやらお許しが出たようね?」
「私は別に許可を求めた訳ではない。お前だけは私の手で倒すとヴリトラに伝えただけだ」
「フフ、大した度胸じゃない。ちょっと見直したわ」
メリュジーヌはベレッタ90を口で咥えると左手で右腕の肘部分を掴み勢いよく引っ張る。すると右腕の皮膚がはがれてその下から機械鎧の腕が姿を現した。
「ひ、皮膚がはがれた?」
驚くラピュスを見てメリュジーヌは左腕の皮膚も引っ張り機械鎧の腕をラピュスに見せる。両腕の機械鎧が露わになるとメリュジーヌは持っていた皮膚を捨てて咥えていたベレッタ90を右手に取り再び笑顔を浮かべる。
「ウフフ、驚いた?これは皮膚に見えるけどゴムで出来た手袋よ。姫騎士に変装するのに機械鎧が露わになってたらマズイでしょう?」
「成る程、機械鎧兵士なのにどこも義肢になっていないから変だと思ったが、まさか隠していたとはな・・・」
ラピュスはようやくメリュジーヌが機械鎧兵士である事に納得してハイパワーを構えたままメリュジーヌに機械鎧を見つめる。メリュジーヌはジルニトラと同じように両腕の前腕部分が機械鎧となっており、顔や体、脚は生身のままだった。ラピュスは機械鎧と化している両腕に特に警戒しながらメリュジーヌの足元に落ちている騎士剣を取ろうか考えている。
(・・・機械鎧兵士は機械鎧に幾つもの武器が隠してあるとヴリトラは言っていた。この拳銃だけではアイツに勝つ事はまず無理だ。何とか剣を拾わないと、剣を手にすれば気の力も使えるしまだ勝機はある!)
心の中で何とか騎士剣を拾おうと考えるラピュス。そんなラピュスを見ながらヴリトラは黙って見守っている。これはラピュスが死を覚悟して挑んだ戦い、彼女の為にも手助けはせずに戦いを見届ける事をヴリトラは決めたのだ。今でもヴリトラは心の中でラピュスの勝利を強く願っている。
ラピュスはハイパワーを構えながら自分とメリュジーヌの距離、騎士剣を拾いに行くまでに掛かる時間を考えながら頭の中で作戦を立てる。幹部クラスの機械鎧兵士と一人で戦うのは初めての経験の為、大きな緊張感がラピュスにのしかかった。
「どうしたの?私を一人で倒すって言ってたのになかなか動かないじゃない。もしかして、今になって怖気づいた?」
「私は機械鎧兵士の力がどれ程のものか知っている。迂闊に近づくのは自殺行為だという事もな!」
「慎重なのね。いや、臆病と言うべきかしら?」
動こうとしないラピュスを笑いながら挑発するメリュジーヌ。ラピュスは挑発に乗る事無く警戒しながら作戦を練り続ける。だが、メリュジーヌもそれを見過ごす程愚かではなかった。
「何か作戦を立ててるつもりでしょうけど、そんな事はさせないわ。そっちが来ないなら、私から行くわよ!」
メリュジーヌはベレッタ90をラピュスに向けて引き金を引こうとする。それ見たラピュスは咄嗟に右へ走り出した。メリュジーヌは笑いながらラピュスを追う様にベレッタ90を動かし連続で引き金を引く。銃口から弾丸が吐き出されるのと同時にエントランスに減音器によって小さくなった銃声が響いた。弾丸はラピュスの顔の真横を通過したり、鎧の肩の部分に当たるなどしてラピュスに襲い掛かり、彼女もその恐怖に耐えながらハイパワーで反撃する。
「フッ」
銃撃して来たラピュスを鼻で笑うメリュジーヌは体を反らして飛んで来た弾丸を簡単に回避してしまう。弾丸が回避されたのを見てラピュスは舌打ちをするも休む事無くハイパワーを撃ち続ける。だがメリュジーヌはその銃撃全てをかわし余裕の笑みを浮かべていた。
「無駄無駄、機械鎧兵士に正面から銃撃しても簡単にかわされちゃうわよ?」
「無駄かどうかは、私が決める事だ!」
ラピュスはハイパワーを撃ちながらメリュジーヌの方へ向かって走り出す。自分に向かって来るラピュスを少し意外そうな顔で見るメリュジーヌだったが、すぐにベレッタ90を向ける。するとラピュスはメリュジーヌが引き金を引く直前に銃口の射線上から移動してメリュジーヌの銃撃を回避した。
「あら、ただの人間が銃撃をかわしたなんて・・・」
「銃口の向きと引き金を引くタイミングを計算すれば銃撃をかわす事ができると以前ヴリトラ達から聞いた。驚く事でもないだろう!」
驚くメリュジーヌに向かって叫ぶ様に言い放つラピュスは一気に距離を縮める。そしてハイパワーを左手に持ち替えると姿勢を低くしてメリュジーヌの足元に落ちている騎士剣を右手で拾い上げると勢いよく騎士剣を横に振って攻撃した。メリュジーヌは迫って来る刃を見て素早く後ろに跳び斬撃を回避した。だが、右手に持っていたベレッタ90は騎士剣の切っ先に当たってしまいメリュジーヌの手から弾き飛ばされた。
「しまった」
手から離れて遠くへ飛ばされたベレッタ90を見ながらメリュジーヌは呟く。両足が床に付くとメリュジーヌはすぐにラピュスの方を向き騎士剣を握りハイパワーの銃口を向けているラピュスを見つめるのだった。
「やるわね、ラピュス・フォーネ。流石は七竜将と共に戦っていただけの事はあるわ」
「それだけじゃねぇよ」
二人の戦いを見ていたヴリトラがメリュジーヌに話し掛けてきた。メリュジーヌはラピュスを警戒しながら視線をヴリトラに向ける。
「ソイツはお前等のところの一般兵を一人で倒した事のある実力者だ。お前が思ってる以上にソイツはやるぜ?」
「あらまぁ、うちの兵士を倒した事があるの?それは正直驚いたわぁ」
ラピュスがBL兵を倒した事のある騎士だと聞いて驚きを見せるメリュジーヌ。だがその表情には驚きの表情は見られず、少し意外だった思っている程度の表情だった。
「フフ、ちょっと貴方を過小評価していたみたい。謝るわ」
「別に何とも思っていない・・・」
また笑顔を見せるメリュジーヌにラピュスはジッと睨んだ。だがこの時ラピュスはメリュジーヌの笑顔に鬱陶しさと同時に不気味さを感じ取っていた。そして彼女の予感は的中する。
「そんな人が相手なら、私も本気を出さないと失礼よね?」
メリュジーヌは笑いながら腰に納めてある二本の細剣を抜いて構えた。更に左腕の機械鎧の後前腕部の装甲を動かし、機械鎧の中からひし形の水晶が出て来た。更に右腕の機械鎧の後前腕部の装甲も動き出し中から小さな銃口の様な物が姿を見せる。
「内蔵兵器を起動させたか・・・」
「貴方が普通の戦士じゃないと分かったのならこっちも機械鎧の力をフルに使わないとね?」
細剣を構えながら再び笑顔で答えるメリュジーヌ。これでメリュジーヌは機械鎧兵士の力を全て使って攻撃して来る。拳銃を使って戦うのとは訳が違う事にラピュスは更なる緊張感を感じた。
「あっ、そうそう一ついい事教えてあげるわ。この二本の細剣はあのシャーリアって奴が使っていた物よ。超振動剣じゃないから安心してね?」
「殺した相手の武器を使って何をへらへらと笑っている?」
「いいじゃない?相手を倒して手に入れた物、言ってみれば戦利品でしょう?」
「屁理屈ばかり並べるな!」
ラピュスはメリュジーヌに向かってハイパワーを発砲する。するとメリュジーヌは左腕の後前腕部をラピュスに向けてひし形の水晶を光らせた。すると水色をした半透明の光の板の様な物が現れて触れた銃弾を弾いた。
「何っ!?」
弾丸は弾かれた事にラピュスは目を見張って驚く。勿論ヴリトラや周りで戦いを眺めていた警備兵達も同じように驚いている。
「あれはまさか、電磁シールドか!?」
ヴリトラはメリュジーヌの水色の光の正体に気付いて声を出す。そう、メリュジーヌの機械鎧に内蔵されていたひし形の水晶は以前リンドブルムとファフニールが戦ったブラッド・レクイエム社の幹部エントが使っていた機械鎧の内蔵兵器と同じ物だったのだ。
銃弾を弾いた電磁シールドに驚くラピュスはただ目を見開いたままメリュジーヌを見つめている。そんなラピュスに対しメリュジーヌはニッと笑いながら隙ありと思ったのかラピュスに向かって走り出した。ラピュスも向かって来るメリュジーヌにハッとしてハイパワーを連続で撃つ。しかしその全てが電磁シールドの弾かれて軌道が逸れて行き、床やエントランスの壁に命中するだけだった。徐々に距離を詰めてくるメリュジーヌにラピュスはハイパワーをしまい騎士剣を両手で握って構える。
「銃が効かないと分かったら今度は肉弾戦?アハハッ、接近戦では機械鎧兵士の方が上よ!」
騎士剣で戦おうとするラピュスを見てメリュジーヌは一気に距離を詰め、右手に持っている細剣でラピュスに袈裟切りを放つ。ラピュスは素早く騎士剣でその斬撃を防ぐが騎士剣から伝わってる重さに表情が歪む。
「う、ううぅ!」
「いくら一般兵に勝ったとしても、一般兵の機械鎧と幹部の機械鎧は性能が違うの。内蔵兵器や機械鎧が出せるパワーもね!」
メリュジーヌは笑いながら左手に持つ細剣でラピュスに突きを放った。ラピュスは咄嗟に体を横に反らして突きをかわそうとするも、切っ先がラピュスの脇腹を掠ってしまう。
「くぅ!」
脇腹から伝わる痛みにラピュスは歯を食いしばりながら右手の細剣を騎士剣で払いメリュジーヌに向かって騎士剣を振り下ろし反撃する。だが、メリュジーヌは両手に持つ細剣の刃を交差させてラピュスの振り下ろしをアッサリと止めた。周囲には刃がぶつかった事で金属音と微量の火花が広がり、周りにいるヴリトラ達に戦いの激しさを伝える。
「ぐうぅぅ!」
「フフフフフ、言ったでしょう?一般の兵士と私達幹部は力が違うって?やっぱり私に一人で戦いを挑んだのは、愚かな行為だったわね?」
細剣を広げて騎士剣を押し戻すとメリュジーヌはラピュスの腹部に蹴りを入れてラピュスは蹴り飛ばす。背中を床に擦らせてしばらく押されていたラピュスはやがて止まり、数m離れた位置で起き上がりながら蹴られた腹部を押さえてメリュジーヌを睨み付ける。
「クッ・・・これが幹部の力か・・・」
「フフ・・・さぁ、お楽しみはまだまだ続くわよ?」
痛む体を立たせて騎士剣を構え直すラピュスと余裕の表情を浮かべて二本の細剣を構えるメリュジーヌ。その二人の戦いをヴリトラは森羅を強く握りながら見届けていた。
ラピュスとメリュジーヌの戦いが始まり、ヴリトラはラピュスを信じて戦いを見守る。しかし生身のラピュスと機械鎧兵士のメリュジーヌでは身体能力に大きな差があった。この不利な条件の中でラピュスはどう戦うのか・・・。