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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第七章~裏切りと言う名の正義~
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第百四十一話  上級住宅街へ向かえ!

 ティムタームに潜入する事ができたヴリトラ達は自分達の役割を全うする為に三つに班に分かれる。ヴリトラ達の班がファンストの下へ向かう為に上級住宅街へ、ニーズヘッグ達の班は軟禁されたラピュス達の家族を助ける為に軟禁場所の捜索に、そしてリンドブルム達の班は王城へ向かった。夜のティムタームの町でヴリトラ達は大切な物を取り戻す為に動き出す。

 静かな町を誰にも見つからない様に進んで行くヴリトラ達。街道では数人の町の住民達が酒場の前や街道の隅で話し合いをしており通る事はできない。その為ヴリトラ達は人気の少ない裏通りを通って上級住宅街へ向かうのだった。


「皆、見つからない様になるべく姿勢を低くして行けよ?あと、裏通りだからって油断するな?」


 姿勢を低くしながら先頭を進むヴリトラは振り向いて後をついて来るラピュス達に注意する。ラピュス達も姿勢を低くしながらヴリトラの方を向いて真面目な顔をしていた。


「ヴリトラ、此処までは何も起こらずに進んでこれたがこの先には傭兵達が集まる小道具店がある。あそこの店は他とは違って夜遅くに営業しているんだ、この時間は傭兵達が大勢いる可能性が高いぞ?」


 ラピュスがこれから進む道に障害がある事をヴリトラに伝え、それを聞いたヴリトラと二人の間で姿勢を低くしているジャバウォックがラピュスの方を向いて難しい顔を見せる。


「夜中に営業する店か、しかも傭兵達が集まっている。ちょっと厄介だな、奴等にとって今の俺達は多額の賞金が掛かったお尋ね者だ。もし姿を見られたら一斉に襲い掛かって来る」

「それだけじゃねぇ。今俺達は敵地にいるんだ、もし傭兵達が騒ぎ出したら町中にいる兵士や騎士達が集まって来る。俺達だけじゃなくリンドブルムやニーズヘッグ達の班も危ない、見つかったら全てお終いだ」

「ああ、その通りだな。・・・ラピュス、他に上級貴族のいる住宅街へ行く道はないのか?」


 ヴリトラが他の道が無いかラピュスに尋ねるとラピュスも難しい顔をして俯いた。


「・・・他にも道はあるが、その場合は裏通りを出ないといけない。そうなると町の住民や兵士達に見つかる可能性が高くなる。だがその分、短時間で上級住宅街へ着く事が可能だ」

「ハイリスクハイリターンって訳か・・・」

「だがこのまま進めば傭兵達に当たり住宅街への距離も長い。しかし傭兵達を通り越せば敵に見つかる可能性は一気に下がる」

「距離が長い分敵に見つからない安全なルートを進む事ができるって事だな?」

「そうだ」


 ラピュスの話を聞いたヴリトラは俯いて考え出した。危険だが短距離を進むか、安全だが長距離の道を進むか、どちらを進むかで上級住宅街へ到着する時間も変わってくる、つまり作戦の流れも変わってくる。そう考えているヴリトラはゆっくりとラピュス達の方を向く。


「お前達はどっちの道を進むべきだと思う?一応皆の意見を聞きたいんだけど・・・」


 ヴリトラの問いかけにラピュス達は互いの顔を見合って考え出す。だがジャバウォックだけは悩む事なくヴリトラを見てニッと笑った。


「俺はお前の選んだ道で構わないぜ?」

「そう言う答えが一番困るんだけど・・・」

「どちらかを選んでも変わってくるのは到着する時間と危険度だけだろう?リンドブルムとニーズヘッグの班に支障が出る訳じゃねぇんだからよ」

「それはそうだけどさぁ・・・」


 ジャバウォックの適当ではあるが一理ある意見に困るヴリトラ。そこへラピュスは二人の会話に参加して来た。


「ヴリトラ、私はこのまま裏通りを通って進んだ方がいいと思う。確かに傭兵達の集まる小道具店の前を通るのは危険かもしれないが、裏通りを出てしまえば大勢の人に見つかってしまい大騒ぎになる。そうなったら元老院の耳にも私達の事が伝わってしまう」

「ああ、それもある。他の騎士達も同じ意見か?」


 ラピュスの後ろに控えている四人の騎士に訊ねるヴリトラ。騎士達はお互いに相手の顔をしばらく見つめ合っているとヴリトラの方を向き頷いた。


「そうか・・・」

「ヴリトラ、お前はどっちを選ぶんだ?」


 ジャバウォックがヴリトラ自身の意見を訊ねると、ヴリトラは小道具店へ続いている裏道の方を見つめて口を動かした。


「俺は裏通りを出て近道をした方がいいと思ってる」

「だが、それでは敵に見つかる可能性が高くなるぞ?」


 見つかる危険を覚悟に近道をする事を選ぶヴリトラはラピュスは意見する。するとヴリトラはラピュスの方を向いて地面を指差した。


「確かに見つかる危険が一気に高まる。だけど、この道を見てくれ。この裏通りは薄暗くて人通りも少なく敵に見つかる可能性も低い。だけど此処は左右を民家に挟まれた一本道で隠れる場所も無い。もしこの先にいる小道具店の傭兵達に見つかったら俺達は逃げ場を無く下手をすれば挟み撃ちにされちまう」

「戦って相手を気絶させるとかすれば問題ないのではないか?」


 ヴリトラの話を聞いていたラピュスは戦うと言う案を出したがそれを聞いたヴリトラは顔を横へ振る。


「そうなったらすぐに騒ぎが町中に広がって敵の増援が来る。もしそうなったらあっという間に退路を断たれてお終いだ。そしてリンドブルム達の方にも追手が回る」

「成る程、それなら例え敵に遭遇する可能性が高くても広くて姿を隠す場所の多い表に出た方がまだ安心って事か。そう言う考え方もあるな」


 ジャバウォックがヴリトラの考えを聞いて腕を組みながら納得する。それを聞いたラピュスは一理あると難しい顔を見せた。彼女の後ろに控えている騎士達は少し不安そうな顔を見せている。

 しばらく一同はその場でどっちの道を選ぶか考えた。するとラピュスは考えるのを止めてヴリトラを真面目な顔で見つめる。


「・・・ヴリトラ、私はお前の選択を信じる事にする」

「え?」

「た、隊長?」


 ラピュスの出した答えに後ろに控えていた二人の男性騎士が声を出す。ラピュスはゆっくりと振り返り騎士達の方を向いた。


「表は危険だが、ジャバウォックの言うとおり隠れる場所も多く、例え敵と遭遇しても身を隠して先へ進むチャンスを待てばいい。それなら私は表通りを進む事にする。それに表通りなら早く上級住宅街に着くしな」


 騎士達はラピュスの顔を不安そうな顔で見ていたが、確かに一本道で敵に遭遇してしまったら逃げ場は無く一網打尽にされてしまう。それなら例え敵に見つかる可能性が高くても広くて動きやすく隠れる場所の多い道を方がいい。騎士達はそう考えてラピュスの真面目な顔でジッと見つめるた。

 ラピュスは騎士達も裏通りを出る道を選んだ事を確認して小さく笑いヴリトラとジャバウォックの方を向いて頷く。ラピュス達はOKだと確認したヴリトラとジャバウォックも小さく笑い返す。


「じゃあ決まりだな。ラピュス、表に出るにはどうしたらいい?」

「此処から少し行くと道が二手に分かれている。それを左に進めば大通りに出られる」

「よっしゃ、それじゃあ行きますかぁ!」


 ヴリトラが姿勢を高くして走り出すとラピュス達もその後に続いて走り出す。安全な道を進み、時にはあえて危険な道を選び進むという選択肢を選ぶヴリトラ達の目には不安が全く無く、強い覚悟だけが宿っていた。

 その頃、家族の軟禁場所を探すニーズヘッグ達の班は住民達に見られない様に注意しながら進んで行き、町外れの倉庫にやって来ていた。沢山の大きな倉庫が並ぶ場所でニーズヘッグ達は目の前に大きな倉庫を見上げている。


「此処が町の物資などを保管しておく倉庫か」

「ええ、武術大会の時にブラッド・レクイエム社の目的を調べていた時に此処に一度着た事があってね。もしかしたら此処にいるんじゃないかなって思ったの」


 ニーズヘッグの隣に立っているジルニトラが前の武術大会の一件での事を思い出して説明した。その隣ではファフニールとアリサが同じように倉庫を見上げている姿がある。


「私は闘技場でヴリトラ達の応援をしてたから何も知らなかったけど、こんな大きな倉庫があったんだね・・・」

「確かに此処なら数人の人間を隠す事もできますし、物資の補給以外で人が立ち寄る事もありません。人を隠すのには打ってつけです」

「それじゃあ、早速此処から調べましょう!各自、別れてこの倉庫の周辺を調べて。何かあったらすぐに知らせる事!」

 

 ジルニトラが周りにいる者達に指示を出し、アリサや第三遊撃隊の騎士達が真面目な顔で頷く。ファフニールも微笑みながらジルニトラを見ているが、ニーズヘッグはジト目でジルニトラの顔を横から眺めている。心の中では「勝ってに進めるなよ」と思っているのだろう。こうしてニーズヘッグ達の倉庫周辺の捜索が始まった。


「ところでどこを中心に調べたらいいんでしょうか?」


 別の倉庫の前に立つアリサが隣にいるジルニトラに訊ねた。ジルニトラはアリサの方を向いて倉庫を指差す。


「どこって、そりゃあ倉庫の中よ。人間を大勢隠せる所と言ったら倉庫の中くらいでしょう?」

「でも、此処の倉庫は殆どが町の住民や政治関係の貴族が使っていて鍵が掛けられています。その鍵も倉庫を使っている人が持っていてその人以外には開けられない事になっているんですよ?」

「鍵を無くした時の為に合鍵くらいは用意してあるはずでしょう?元老院の人間なら此処の倉庫の合鍵を手に入れるの何て簡単なはずよ」

「う~ん・・・でも私は倉庫にいると見せかけて予想外の場所に軟禁していると思うんです」

「倉庫以外の場所?」

「ハイ、例えば倉庫の隅にあるあの物置小屋の中とか・・・」


 そう言ってアリサは倉庫の隣に建っている小さな小屋を指差した。それを見たジルニトラは倉庫を見た後にアリサの方を見直して頬をポリポリと指で掻く。


「・・・あたし達の裏をかいてあそこに軟禁しているって事?」

「勿論、私の予想にすぎませんけど・・・」

「・・・・・・まぁ、どの道この周辺の倉庫や小屋なんかは全部調べるつもりだったし、とりあえず最初はあの小屋を調べてみましょうか?」

「ハイ」


 ジルニトラとアリサはそう言って倉庫の隣にある小屋へ向かって歩いて行く。


「そう言えば、リンドブルムさん達の班は何をしにお城へ向かったんですか?私達何も聞いてないんですけど・・・」

「ああぁ、あれは元老院の奴等が言い逃れできない様にする為の切り札を用意しにいたの」

「切り札?それは一体・・・」

「まだ秘密♪さぁ、さっさと始めるわよ!」


 そう言ってジルニトラは走り出して小屋へと向かった。アリサも慌ててその後を追い走り出す。果たしてこの倉庫の何処かに家族は軟禁されているのだろうか、ニーズヘッグ達の捜索が始まるのだった。

 ニーズヘッグ達が倉庫の捜索を始めた頃、ヴリトラ達は上級住宅街の入口前に来ていた。住宅街への入口には大きな庭門の様な門があり、侵入できない様に塀が上級住宅街を囲んでいる。そして門の前には槍を持った兵士が二人門番をしており、その様子を離れた所にある木箱の陰からヴリトラ達は覗き見ていた。


「あそこが上級住宅街への入口だ」

「あの門の先に上級貴族達が住む屋敷が沢山あるんだな?」

「ああ、そうだ」


 木箱の陰から門を見ながら会話をするラピュスとヴリトラ。その後ろではジャバウォックや四人の騎士達が姿勢を低くして休んでいる。ジャバウォックは落ち着いた表情をしているが、騎士達に表情には付かれた見えていた。此処に来るまでにヴリトラ達は何度も住民や町を見回っている兵士達と出くわし、その度に身を隠して見つからない様にしながら前へ進んで行き、常に緊張状態でいたのだ。隠密行動を得意とするヴリトラとジャバウォックにそんな二人の間近で何度も行動しており緊張状態でいる事に慣れたラピュスは平気だが、騎士達にとってはかなり辛かったのだろう、大量の汗を掻いていた。


「お前等、大丈夫か?」

「あ、ああ、平気だ」

「此処に来るまでずっと心臓がドクドクしっぱなしだったから疲れちゃったわ」

「アンタ等、よく顔色一つ変えずにいられるなぁ?」

「隊長も汗一つ掻いていないぞ・・・」


 騎士達がヴリトラ達の様子を窺いながらそれぞれ感じた事を口にした。そんな四人の騎士の顔を見てジャバウォックは少し呆れる様な顔を見せている。彼は心の中で「こんなんで本当に国を守れるのか?この騎士達は・・・」と思っていのだった。


「おい、お前達、何時までも休んでいないで準備をしろ。そろそろ行動に移るぞ?」


 ラピュスは休んでいる部下達に声を掛け、それを聞いた騎士達は「もう動くのか?」と言いたげな表情を見せる。騎士達が体勢を直す姿を見たラピュスは再び門の方を向く。


「まずはあの門番を何とかしないといけない。ヴリトラ、お前ならどうする?」

「ウム・・・気絶させるともし誰かが来た時に誰かが住宅街に侵入した事がバレちまう。だからと言って見つからない様に何処かへ隠す時間も無い」

「じゃあどうする?」

「・・・・・・」


 門の前にいる番兵を見ていたヴリトラは左右をチラチラと見回す。上級住宅街の前には横へ真っ直ぐ続く一本道があるだけで何も無く、一本道を挟んだ向かえにいくつかの民家がありその前に積まれている木箱の陰にヴリトラ達は隠れているのだ。

 ヴリトラは遠くに誰もいらず、自分達の方に近づいて来る者がいない事を確認するとバックパックに手を突っ込み何かを取り出した。


「何だそれは?」

「爆竹だよ」

「バクチク?」


 ラピュスはヴリトラが取り出した小さな無数の赤い筒状の物を見て不思議そうに小首を傾げた。


「コイツは小さな火薬が詰められていて火がつくと大きな音を鳴らす物なんだ。相手の注意を引く為に持ち歩いてるんだよ」


 ヴリトラは片手に爆竹を持ち、もう片方の手をバックパックに入れてライターを取り出した。爆竹とライターを手に取るとヴリトラはラピュス達の方をゆっくりと向く。


「いいか皆?この爆竹を使って番兵の注意を反らす。大きな音が鳴ればアイツ等も何かあったと思って音のした方へ向かうはずだ。その隙に門を通って住宅街へ侵入する。誰かに見られたら面倒だ、番兵が離れたらすぐに入るぞ?」

「了解だ」


 ジャバウォックが頷きながら返事をし、その隣にいた騎士達も全員頷く。確認したヴリトラは門の方を向きライターで爆竹の導火線に火を付ける。そして勢いよく爆竹を遠くへ投げた。宙を舞う爆竹は地面に落ち、パンパンと大きな音を立てて破裂する。


「何だ!?」

「あっちから聞こえたぞ!」


 門の前に立っていた二人の番兵は遠くから聞こえて来た破裂音に反応して音のした方へ走り出す。


「今だ!」


 番兵が門の前から移動した直後にヴリトラは合図を送り、ヴリトラ達は一斉に木箱の陰から飛び出して門へ走る。大きな門をヴリトラとジャバウォックは素早くほんの少しだけ開けてその隙間から上級住宅街へ潜入した。全員が入った事を確認したヴリトラは怪しまれな様に門を閉め、一同は上級住宅街の奥へと走って行く。

 上級住宅街への潜入に成功したヴリトラ達は近くにある公園の様な広場へ入り込み、茂みの中へ身を隠した。


「よし、何とか潜入に成功だな」

「だが、問題はここからだぜ?」


 姿勢を低くしてジャバウォックは周りを見回しながらヴリトラに言った。上級貴族の住宅街と言うだけあって周囲には大きな屋敷が幾つも建っており、その全てに立派な中庭がある。不審者が入れない様に塀で囲まれた広い敷地の中に建てられた数え切れない程の屋敷。その静かな住宅街でヴリトラ達は静かに身を潜めていた。


「この広い住宅街の中にファンストの屋敷があるんだよな?」

「ああ、ファンスト公の屋敷は元老院の最高議長が住むと言うだけあってかなり大きな屋敷だ。他の屋敷よりも目立つからすぐに見つかると思う」

「だが、それでもこの広い場所から見つけ出すのはちと骨が折れそうだぜ?」


 ジャバウォックは茂みから顔を出して周囲を見回しながら言った。ヴリトラも難しい顔をしながら一番近くに建っている屋敷を見上げる。


「しかも此処は上級貴族達が住む場所だ。この敷地内では外以上に兵士達が厳重に警備してるだろうから、探すのに時間を掛けているとすぐ見つかっちまう」

「いや、それは大丈夫だ」

「え?」

「此処はティムタームでは王城の次に重要な場所となっている。この町で上級住宅街に侵入しようと考える者は一人もいない。だから唯一住宅街に入れるさっきの入口にしか警備の兵士はいないのだ」

「・・・つまり、ここに侵入する者などいないから安全だと考えて住宅街の中には警備兵はいないって事なのか?」

「そういう事だ」

「ハァ・・・本当に此処って重要な場所なの?」

「普通、重要な場所こそ警備を強くするべきだろう・・・」


 重要な場所なのに警備の兵士がいない、それを聞いたヴリトラは呆れ顔で溜め息をつき、ジャバウォックも上級貴族達の考え方が理解できず同じように呆れ顔をしていた。


「確かに屋敷の外には兵士はいないが、各屋敷には上級貴族の私兵隊が警備している」

「自分達の屋敷にはちゃんと警護がいるから外の事は気にしたくてもいいってか?」

「それも理由の一つだろうな」

「無茶苦茶だな・・・」


 ヴリトラは頭痛がしてきたのか頭を押さえながら俯く。


「特にファンスト公の様な元老院の方々の屋敷には白銀剣士隊が警備をしている。気を付けた方がいい」

「それは分かったが、そのファンストの家が分からないんじゃどうしようもないぞ?」


 目的地であるファンストの屋敷は間違いなく上級住宅街にある。だが、その正確な場所が分からずヴリトラは再び表情を難しくした。ラピュスとジャバウォック、騎士達も同じ様な表情を浮かべる。


「・・・大きな屋敷を一つずつ調べるしかないな」

「そうだな・・・」

「なら、早速始めようぜ」


 ヴリトラ達は立ち上がり、周囲を警戒しながら広場を出て上級住宅街の奥へ走って行きファンストの屋敷を探し始める。全てを取り戻す為にヴリトラ達は黒幕の下へ向かって行った。

 同時刻、上級住宅街の入口を警備していた番兵二人が戻って来た。


「結局何だったんだ、さっきの音は?」

「さあな?」

「それよりも早く持ち場に戻ろうぜ。交代の奴が来た時にいなかったら文句を言われちま・・・ん?」


 番兵の一人が前を見ると上級住宅街の入口前に立つ人影を見つける。二人は持っている槍を構えて人影の下に駆け寄った。


「おい!そこで何をしている?」


 番兵達が人影の顔を見るとふと表情が和らぎ警戒を解いて槍を下ろした。


「ああぁ、貴方でしたか?どうしてこちらに?確か任務で町の外へ・・・」


 知り合いだったらしく番兵は話しながら人影に近づいた。だが次の瞬間、人影は右腕を上げて番兵達に右手を向ける。そして小さな音が二回響き二人の番兵はその場に倒れた。血を流して動かなくなった二人の番兵を見下す人影が不敵な笑みを浮かべる。その右手には減音器サプレッサーが装着されているベレッタ90が握られていた。人影はベレッタ90を持ったまま門を開き、静かに上級住宅街へと入って行く。

 動き出したヴリトラ達はそれぞれ目的地へ向かい行動を開始する。そしてヴリトラ達の班は誰にも見られずに上級住宅街へと潜入した。だがヴリトラ達は自分達以外に上級住宅街へ侵入した者がいる事にまだ気づいていない。


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