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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第七章~裏切りと言う名の正義~
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第百三十六話  戦いの真実と元老院への怒り


 ラピュスと再会を果たしたヴリトラ達。だがヴリトラとラピュスは互いに自分の意思をぶつけ合い、一歩も引かずとうとう刃を交えてしまう。他の者達も自分達が生き残る為に目の前で武器を取る嘗ての戦友達と戦いを始めるのだった。

 猛獣達が棲みついている森の中でヴリトラとラピュスは自分の得物を強く握り何度も刃をぶつけ合った。その度に火花と金属音が広がり二人の闘志が周りで戦っているリンドブルム達にも伝わって行く。だが、伝わっているのは人間だけではない。森に住む猛獣達もヴリトラ達の戦いを離れた所から見ていたのだ。本来なら襲い掛かっているところだが、今のヴリトラ達に近づいてはいけないと猛獣達の本能が伝えている。故に猛獣達はヴリトラ達を襲わずにジッと離れて戦いを見ていた。


「凄い戦いだね・・・」


 ヴリトラとラピュスから少し離れた所ではリンドブルムが男性騎士の連続切りを回避しながら二人の戦いを見ている。一方で男性騎士は自分を視界から外しているにもかかわらず斬撃を全て回避しているリンドブルムに驚いていた。


「まさか機械鎧兵士であるヴリトラとあそこまで渡り合うなんて、僕達と最後に会った日から今日までの間にそれだけ力を付けたのか、あるいはヴリトラが手加減しているのか・・・・・・それは無いか?ヴリトラがあそこまで感情的になっている時は大抵全力で戦っているし・・・」


 リンドブルムはヴリトラとラピュスの方を向いたまま男性騎士の騎士剣をギリギリで回避して後ろに下がっている。男性騎士は自分とリンドブルムとの力の差を突きつけられてショックを受けている様子だが、攻撃の手を緩める事はなかった。何としてもリンドブルムを倒さなければいけない、その思いだけが彼の体を動かしているのだ。

 男性騎士が騎士剣を振り上げてリンドブルムの頭上から斬撃を放ち攻撃する。するとリンドブルムは足を止めて迫って来る騎士剣の刀身を顔の向きを変えずに右手一本で難なく止めた。


「な、何っ!?」


 重い刀身を右手一本で止めてしまう少年に男性騎士は思わず声を上げる。いくら子供と言えどリンドブルムの右腕は機械鎧、常識外れの力を持っている為、剣を片手で止めるのなど簡単だった。


「・・・子供が他人の戦いを見て驚いている時ぐらい、攻撃するのを止めてもらえませんか?」


 リンドブルムは男性騎士の方を向くと鋭い視線を向けながら低い声を出す。刀身を持つ手を離したリンドブルムは素早く男性騎士の懐に入り込んで男性騎士の体に掌底を撃ち込んだ。


「うぉあああああっ!」


 鎧の上からにもかかわらずその衝撃は強く、男性騎士は声を上げながら後ろに飛ばされていった。やがて男性騎士は地面に叩きつけられて仰向けのまま動かなくなる。それを見届けたリンドブルムは両手をパンパンと払った。


「手加減したから大した怪我ではないはずですよ?」


 吹き飛ばすくらいの力で攻撃しておきながら手加減したと言うリンドブルム。その戦いを見ていたニーズヘッグは苦笑いをしており、彼の相手である二人の騎士は目を丸くしていた。


「まったく、手加減するならもう少し力を抜いてやれよ」


 ニーズヘッグはリンドブルムを見ながら小さな声で呟き、自分の相手である騎士達の方を向き直した。騎士達もニーズヘッグが自分の方を向いた事に気付いてそれぞれ騎士剣を構えてニーズヘッグを見つめる。


「・・・まだやる気なのか?俺達とお前達とでは力の差が大きすぎるって事は分かるだろう?」

「ぐう・・・」


 アスカロンを下ろした状態のニーズヘッグに男性騎士は小さく声を漏らす。無防備の状態で隙だらけなのになぜか攻め込めない騎士達。そんな二人の騎士を見ていたニーズヘッグはアスカロンを手首だけを動かして回し始める。


「・・・俺達はお前達に危害を加えるつもりはないんだ。降参してくれないか?」

「な、何を言っているんだ。我々は騎士だぞ?どんな相手であろうと真剣勝負で自ら負けを認めるなど有ってはならない!」

「負け戦でもか?」

「まだ負けてません!」


 男性騎士に続いて女性騎士も騎士剣を構えながら言い返す。そんな二人にニーズヘッグは肩をすくめ、アスカロンを両手で構える。


「アンタ達のその騎士としてのプライドは認めるぜ?だけど、勝てないと分かってて勝負を挑むのはただの無謀だ。どうしても下がらないのなら、力づくで黙らせるが?」

「の、望むところです!」


 いきなり構えて警告をしてくるニーズヘッグに女性騎士か構え直し、男性騎士も騎士剣を強く握った。するとその直後にニーズヘッグは地を蹴り二人に向かって跳んで行く。突然向かって来たニーズヘッグに驚く騎士達は咄嗟に後ろに下がって距離を取ろうとした。だがニーズヘッグはアスカロンを勢いよく左斜めに振り、柄に付いているボタンを押す。アスカロンの刀身を鞭状となり騎士達に向かって伸びていき二人の騎士剣を払い落とした。


「うわぁ!?」

「な、何だと!?」


 騎士剣を払い落とされて驚く騎士達はその場で尻餅をついていしまった。そしてニーズヘッグは二人の目の前に立ち、刀身の戻ったアスカロンを二人に突きつける。


「・・・武器を払い落とされて剣を突きつけられる。普通の戦いだったらアンタ達はとっくに斬り捨てられているだろう」

「・・・・・・き、斬れ」


 男性騎士は負けを認めたのかニーズヘッグに斬るように言う。女性騎士も仕方ないと思ったのか目を閉じて覚悟を決めた。だが、ニーズヘッグはアスカロンを鞘に納めてジッと座り込んでいる騎士達を見下ろす。


「・・・断る、敗者に指図する権利はない。アンタ達を生かすか殺すかは俺に決めさせてもらうぜ」


 殺す事を断ったニーズヘッグに驚く騎士達。だがそれと同時に敵に情けを掛けれられるという耐え難い屈辱を受ける事にもなる。しかし七竜将を裏切り、尚且つ敗北した自分達には何も言う資格は無いと考えたのか二人は俯いて黙り込んだ。

 リンドブルムとニーズヘッグの戦いが終った時、ヴリトラとラランはそれぞれの相手と向かい合っていた。どちらも苦戦している様には見えないが決着がつく様子も見られない。


「フッ!」


 ラランは両手に力を込めて目の前で騎士剣を構える男性騎士に突撃槍で攻撃した。だが男性騎士はラランの突きをかわして側面に回り込むとラランに袈裟切りを放つ。ラランは素早くその袈裟切りを突撃槍で止めて男性騎士の足を払った。足を払われた男性騎士はその場に仰向けに倒れ、ラランは槍先を倒れている男性騎士に向ける。だが次の瞬間、背後から二つの気配を感じて振り返りながら突撃槍を勢いよく横に振って後ろに攻撃した。そこには騎士剣を持つ男性騎士と女性騎士の姿があり、二人はラランの突撃槍に反応して素早く後ろに下がり攻撃をかわす。


「・・・かわされた」

「流石ね、ララン・・・」

「三対一なのに全くケリがつかないなんて、やはり副隊長は強い」


 ラランの強さに感服する女性騎士と男性騎士はラランを見ながら騎士剣を構える。ラランも体勢を立て直す為に距離を取り突撃槍を構え直した。するとラランに倒されていた男性騎士も起き上がって落ちている自分の騎士剣を拾ってラランを見つめる。


「・・・本当の事を教えて。皆は元老院の言ってる事を信じてるの?」

「またその話?言ってるでしょう、私達は命令を受けて此処に来ているって」

「・・・質問に答えて」


 話を逸らそうとする女性騎士にラランは少し力の入った声を出す。幼い少女の口から出た低い声に三人の若い騎士達は一瞬驚きを見せる。


「・・・元老院のデマカセを信じているの?」

「・・・彼等がデマカセを言っているという証拠はあるんですか?」

「・・・そ、そうですよ」


 今度は質問に質問で返す男性騎士達にラランは次第に苛立ち表情が鋭くなっていく。それは僅か十一歳の少女が作るような表情には思えない程の物だった。


「・・・いい加減にしないと、本気で怒る」


 ラランに睨み付けに騎士達はビクついて一歩後ろに下がる。そのララン達の光景はまるで蛇に睨まれた蛙達の様だ。二十代程の三人の騎士達は十一歳の姫騎士に恐れをなして固まっていた。

 離れた所でラランが騎士達を睨みつけている時、ヴリトラもラピュスと剣を交え続けていた。刃と刃がぶつかる度に飛び散る火花と高い音、そして二人の闘志が周りに見えない壁の様なものを作り出し、誰も近づけなくしていた。その中でヴリトラとラピュスは戦い続けている。


「答えろラピュス!何で貴族と平民を差別するような元老院の奴等の言いなりになる!?」

「何度も言わせるな!私は言いなりになどになっていない、騎士として自分の意思で戦っているんだ!」

「ウソをつくな!お前は仲間との絆より騎士の生き方を選ぶような女じゃねぇ!」

「・・・クゥ!勝手に私の事を知った様な気になるなぁ!」


 森羅と騎士剣を交差させて互いに押し合うヴリトラとラピュス。二人はお互いに自分の思いを言葉でぶつけ合いながら剣を交えている。剣と言葉二つの武器で同時に戦うその集中力と精神力は普通の者には真似できない事だ。


「私はお前の考えているようなお人好しな女ではない。私情で騎士の誇りを捨て考えを変える事など!」


 ラピュスは騎士剣を大きく横へ振りヴリトラを押し戻した。ヴリトラは後ろへ軽く跳んでラピュスから距離を取ると森羅を構えジッとラピュスを見つめる。


「・・・つまりお前は騎士としての使命を優先して今まで戦って来たと?」

「そうだ!」


 ヴリトラはラピュスの答えを聞くと突然表情から鋭さを消し、構えを止めてゆっくりと森羅を下ろした。ヴリトラの不可解な行動にラピュスは意外そうな顔を見せる。


「なら訊くが、騎士としての使命を強く持っているのなら、どうしてこの数日の間に俺達の前に現れず今日に限って俺達を討伐しに来た?」

「何?」

「だってそうだろう?お前が王国の騎士として俺達と戦うって言うのなら俺達との付き合いが長く、戦い方を知っているお前が真っ先に討伐を志願して俺達の前に現れるはずじゃねぇか。なのにお前は今日までの数日間、討伐隊として俺達の前に現れなかった。どうして今日になって俺達の前に現れたんだ?」

「そ、それは・・・」


 ヴリトラの問いかけに言葉を詰まらせるラピュス。周りにいるリンドブルム達も戦いを中断して話をしているヴリトラとラピュスの方を向き話を聞いていた。


「・・・俺達が王国に追われる身になった日から今日までお前は俺達の前に現れなかった。それは俺達が王国に反乱を起こしていないと信じていたからじゃないのか?」

「ち、違う!今まで討伐の任務を与えられていなかったからだ。数日前にようやく元老院の使者から今回の討伐任務に参加しろと・・・」

「プライドの塊の様な元老院が自分達よりも位の低い青銅戦士隊の隊長と遊撃隊の騎士達に討伐任務を命じたと?・・・考え難いなぁ?」

「・・・・・・」


 ヴリトラの推理を聞いているラピュスはさり気なく目を逸らした。ヴリトラは森羅の峰で肩を軽く叩きながら考える。そして何かに気付いたのかハッと表情を変えてラピュスをジッと見つめた。


「・・・お前達、何か元老院に弱みを握られてるんじゃねぇのか?」

「ッ!」

「それでお前達は俺達の討伐に無理矢理参加せられて俺達を討ちに来た・・・」

「・・・違う!そんな事はない!」


 ラピュスが声を上げながらヴリトラを睨み騎士剣を強く握る。それを見ていたヴリトラは森羅を下ろしてラピュスの出方を待つ。すると、突然ヴリトラの小型通信機からコール音が鳴り、それに反応したヴリトラは目を見張る。リンドブルムとニーズヘッグも同じだった。三人は同時に小型無線機のスイッチを入れて応答する。


「こちらジャバウォック。ヴリトラ、聞こえるか?」

「ジャバウォックか、何だ?今取り込んでるんだけど?」


 小型無線機から聞こえて来たジャバウォックの声にヴリトラは若干不機嫌そうな声で応答する。リンドブルムとニーズヘッグも黙ってジャバウォックの声を聞いており、ラピュスも目の前で会話をしている相手を斬るのは騎士道に反すると思ったのか攻撃せずに騎士剣を構えたままヴリトラを見ている。


「ヴリトラ、今すぐ戦いを止めろ。これ以上ラピュス達と戦うな!」

「何だって?」


 突然の戦闘中止にヴリトラは驚いて訊き返した。リンドブルムとニーズヘッグの二人もそれを聞いて驚きの表情を浮かべる。


「どういう事なんだ?」

「こっちでも第三遊撃隊の連中と交戦しててな。たった今戦いが終り、奴等から話を聞いたんだよ。そしたらとんでもない事が分かった」

「・・・何だよ?」

「ラピュス達は人質を取られてるんだ」

「人質?」


 ジャバウォックの言葉を聞いたヴリトラ、リンドブルム、ニーズヘッグ、そしてヴリトラの言葉を聞いたララン、四人はそれぞれ目の前にいるラピュスと第三遊撃隊の騎士達を見つめた。ラピュス達は目を合わせる事ができないのか目を逸らしたり俯いたりしていた。

 目を逸らすラピュスを見ていたヴリトラはゆっくりと小型無線機を通してジャバウォックに指示を出した。


「・・・分かった。詳しい事は直接本人から聞く。お前は確かファフニールとジルニトラの二人と一緒だったよな?」

「ああ、今ジルニトラが騎士達の応急手当てをしている」

「そうか・・・オロチ、聞こえるか?」


 ヴリトラは通信を聞いているはずのオロチに声を掛ける。すると小型通信機から今度はオロチの声が聞こえて来た。


「聞こえている・・・」

「そっちの方はどうだ?」

「こっちでも第三遊撃隊とし遭遇した。五分ほど前に戦いが終って今休んでいる。騎士達も数人怪我をしているが全員生きてる・・・」

「OK。それじゃあ、お前達はしばらくそこで待機しててくれ。ジャバウォック達も休んでおけ、こっちが片付いたら直ぐに次の指示を出す」

「分かった」

「了解だ・・・」


 ジャバウォックとオロチは返事をして通信を切った。通信が終るとヴリトラは森羅をゆっくりと鞘に納めてラピュスの方に歩いて行く。ラピュスは近づいて来るヴリトラに顔を合わせようとせずにずっと目を逸らし続けてヴリトラの方を見ようとしなかった。ラピュスの前までやって来たヴリトラはラピュスのジッと見つめる。


「やっぱり弱みを握られていたんだな・・・・・・ラピュス、話してくれないか?もうウソをつく必要も無くなったんだしよ?」

「・・・・・・」


 ヴリトラはラピュスを見つめながら話をしてくれよう頼む。しかしラピュスはどんな顔をすればいいのか分からないのか困った様な顔で目を逸らし続けている。そんなラピュスを見ていたヴリトラは小さな苦笑いを見せた。


「・・・悪かったな?」

「え・・・?」


 突然謝ってきてヴリトラはラピュスは驚いてヴリトラの方を向く。


「実は俺、最初はお前が本当に俺達を裏切ったんじゃないかって思ってたんだ。だけど、お前と剣を交えている時に違うって気付いた。お前の剣には力が入っていないし、お前が本気で俺達を殺すつもりなら気の力を使ってるはずだろう?何より、お前からは殺意が感じられなかった」

「ヴリトラ・・・」

「感情的になって全力で戦っていたせいでお前に殺意が無い事に気付くのが遅れたなんて、俺もまだ未熟って証拠か・・・」


 苦笑いをするヴリトラを見てラピュスはまばたきをしながらヴリトラを見つめる。裏切られたのにその事で自分を責める事もなく笑っている青年にラピュスは呆然としていた。

 そんな呆然としているラピュスにヴリトラは一度息を吐き、苦笑いから真面目な表情に直した。


「ラピュス、聞かせてくれ。一体何が遭ったんだ?」


 真面目な顔でなぜ元老院の言いなりになっていたのかを訊ねるヴリトラ。ラピュスはヴリトラの顔を見てしばらく黙り込んでいた。そしてゆっくりと目を閉じて俯き口を開く。


「・・・・・・分かった、正直に話そう」


 ラピュスが全てを話す決意をし、ヴリトラや周りにいるリンドブルム達と第三遊撃隊の騎士達が二人の下へ集まっていく。ラピュスは俯いたまま静かに話を始めた。


「・・・お前達が王国反乱の容疑で指名手配されたのを聞いた私は第三遊撃隊やガバディア団長と協力し合い、お前達の無実を証明する証拠や真相を調べていた。元老院はお前達に賞金を懸けて直属の騎士団や国中の傭兵隊を使いお前達を始末しようとしていたのだ」

「だけど、なぜ俺達を陥れる様な事を?」

「理由は単純だ。元老院がお前達の様な優れた傭兵隊が気に入らなかったからだ」

「チッ!食えない連中だ・・・」


 元老院が自分達を陥れようとした理由を聞き、ニーズヘッグは舌打ちをする。周りの者達も元老院の身勝手さに呆れと苛立ちの表情を浮かべていた。


「しかし、なかなかお前達を始末する事のできない元老院はお前達と共に何度も戦った私達にお前達の討伐作戦に参加するよう言って来たんだ」

「・・・そんな事を?」

「勿論私達は反対した。そしたら奴等、従わなかったら私達や私達の家族を処刑すると言い出したのだ。家族は今も元老院に拘束されて・・・」

「バカな!?そんな勝手な理由で何の罪もない人達を処刑するだと?そんなの認められるはずないだろう!」

「そうだよ!そんな事をしたパティーラム様や王様が黙ってるはずないもん!」


 ニーズヘッグとリンドブルムが元老院の無茶苦茶な行動に腹を立てて大声を出す。ラピュスは二人の方を見ながら暗い表情を見せる。


「奴等はこの国で大きな権力を持っている。ある程度なら陛下や姫様達のお耳に入れずに物事を進めることができるんだ・・・」

「・・・その気になれば人を処刑して行方不明になった事にすることもできる」

「成る程、確かに俺達に無実の罪を被せて指名手配にさせたんだから、それぐらいは簡単か・・・」


 ニーズヘッグはラピュスとラランの話を聞いて元老院の権力の強さを理解する。ラピュスの話を聞いていたヴリトラはラピュスの肩にそっと手を乗せた。


「ラピュス、どうして最初に俺達にその事を話してくれなかったんだ?事情を知っていれば俺達も戦わずに済んだし、人質の事を何とかできたかもしれないだろう?」

「・・・すまない。でも、私には元老院に従う以外に母様や皆の家族を助ける方法が思いつかなかったんだ・・・自分が情けない・・・」


 肩を震わせたラピュスは泣きそうな声を出しながら自分の行いを恥じる。それを見たヴリトラは肩に乗せている手を退かして優しくラピュスの頭を撫でた。


「・・・元老院を叩きのめす理由がもう一つ増えたな」

「え?」


 ラピュスは顔を上げて鋭い表情のヴリトラを見る。そしてヴリトラは振り返り、周りにいるリンドブルム達の方を向く。


「・・・皆、これからティムタームに行くぞ!」

「えっ!?」


 ヴリトラの突然の一言にラピュスは驚いて声を出す。周りのラランや騎士達も同じように驚いていた。だが、リンドブルムとニーズヘッグはまるでヴリトラは何を言うのか分かっていたかのように黙って彼の方を見ている。

 ラピュス達が襲って来た理由と元老院が自分達を消そうとした理由を知ったヴリトラ達は元老院に対して怒りを覚える。そしてそんな中でヴリトラはリンドブルム達にティムタームへ戻る事を伝えた。一体ヴリトラは何を考えているのだろうか。


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