表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第七章~裏切りと言う名の正義~
127/333

第百二十六話  動き出した陰謀 仕組まれた竜達の暗殺

 王国から新たな依頼を受けた七竜将。その内容は簡単なものであったが、不審な点が幾つもある。七竜将は自分達をよく思わない者達が何かを企んでいると考え強く警戒するのだった。

 依頼書を受け取った翌日の朝、七竜将は荷物を積んだバンとミニミを取り付けてあるジープに乗って町の入口である橋の前に停まっていた。ジープの隣にはラランとアリサが見送りに来ており、ジープの助手席に乗るヴリトラと話をしている。


「わざわざ見送りに来てもらって悪いな?」

「いいえ、今日はこれと言って大きな任務もありませんから時間に余裕があるんです」

「・・・だから見送りに来た」

「フフ、そうか」


 小さく笑いながらも少し嬉しそうな顔を見せるヴリトラ。するとジープの後部座席に座っているリンドブルムが顔を出して話に参加して来た。


「あ~あ、今までもこうやって笑顔で見送りに来てくれていれば僕達もよりやる気を出したのになぁ?」

「・・・言ったでしょう?今までは任務がって時間に余裕が無かったから」


 からかう様な口調のリンドブルムをラランがジッと見つめながら低い声を出す。


「冗談だよ、冗談。そんな怖い顔しないでよ?」

「・・・フン」


 苦笑いをしながら宥めるリンドブルムにラランはそっぽ向いた。そんな二人のやりとりを見ていたヴリトラとアリサ、そして運転席のニーズヘッグは苦笑いをする。

 そんな中、アリサの表情が苦笑いから真面目な表情に変わり、アリサは周りを注意しながら懐に手を入れて折り畳んである一枚の羊皮紙を取り出す。そしてそれをヴリトラに差し出した。羊皮紙を見たヴリトラも真面目な表情になる羊皮紙を受け取る。


「・・・グランドウルフ団の情報です。分かった事を全て此処に書いておきました」

「そうか、ありがとう・・・」


 橋の近くにいる兵士に気付かれない様に小声で会話をするヴリトラとアリサ。ヴリトラは羊皮紙を受け取り、兵士に見られないように注意して羊皮紙を仕舞う。


「苦労しましたよ?国内の危険人物や一団の事を記録してある資料はなかなか見る事ができないんですから・・・」

「悪かったな?この依頼が無事に終わったら何かご馳走するよ。それで、どんな事が分かったんだ?」

「それが妙なんです。過去に王国内で起きた事件を辿って行ったら、グランドウルフ団が最後に事件を起こしたのが今から三ヶ月前になってるんです」

「三ヶ月前って言ったら、俺達がこの世界に来た頃じゃなかったか?」

「ハイ、それから今日まで彼等は一切動いていないんです。今までは頻繁に活動していたのに・・・」


 グランドウルフ団が三か月間の間全く動いていない事が不思議なアリサ。話を聞いていたヴリトラは腕を組みながら考え込む。


「・・・その三ヶ月前の事件でグランドウルフ団は騎士団と戦ったのか?」

「ハイ、誰の部隊かは分かりませんでしたけど、確か白銀剣士シルヴァリオン隊の一個中隊と・・・」

「・・・もしかすると、その時の戦いで壊滅的なダメージを受けたから立て直す為に姿を隠していたんじゃ・・・」

「それは無いと思いますよ?討伐に就いた白銀剣士隊の報告ではグランドウルフ団の約二割の団員を倒した途端に彼等は退散したらしいです。三ヶ月間も姿を隠す必要はないはずです・・・」


 被害が小さいわりに潜伏期間が長すぎる。ヴリトラとアリサは新たに出て来た不審な点に頭を悩ませる。リンドブルムとラランも難しい顔をして考え込んでいた。すると、運転席のニーズヘッグがヴリトラの肩を指で突いてくる。


「とりあえず出発しないか?走りながら考えればいいし、後ろのジャバウォック達もそろそろ痺れを切らせるぞ?」


 ニーズヘッグの言葉を聞いたヴリトラ達はジープの後ろに停まっているバンの方を向いた。運転席ではジャバウォックがハンドルを指で突き、助手席では腕を組みながらヴリトラ達を見ている。その顔は何処か不機嫌な様にも見えた。


「おっと・・・これ以上はジャバウォック達の怒りを買っちまうから、俺達はそろそろ行くわ?」

「そ、そうですね。すみません、長々と・・・」


 ジャバウォック達を待たせている事に気付いたヴリトラとアリスは苦笑いをしながら互いの顔を見合って話を終わらせた。アリサとラランがジープから離れるとニーズヘッグはキーを回してエンジンを掛ける。ジープのエンジンが掛かったのを確認したジャバウォックもバンのエンジンを掛けて何時でも走れるようにした。


「それじゃあ、行って来る。ラピュスが帰って来た俺達が依頼に行った事を伝えておいてくれ。本当は話しちゃいけないんだけどな・・・」

「アハハ、分かりました。こっそり伝えておきます」


 笑いながらウインクをするアリサを見てヴリトラとリンドブルムはニッと笑い、ニーズヘッグも小さく笑っている。


「それじゃあ、ララン。行って来るね?」

「・・・行ってらっしゃい」


 リンドブルムがラランに軽く挨拶をすると、ラランは無表情のまま小さな声で返事をした。そんなラランを見てリンドブルムは「やれやれ」と言いたそうに笑う。


「ララン、こういう時は笑顔で見送った方がいいよ?そうすれば相手も晴々とした気分で仕事に行けるんだしさ?」

「・・・ふ~ん」

「それに、ラランって可愛いし」

「・・・ッ!?」


 自分を可愛いと言うリンドブルムにラランは一瞬驚き、顔を見られない様にソッポ向いた。ヴリトラ達は笑いながら顔を逸らすラランを見ながら楽しそうに笑っている。


「・・・それじゃあ、行って来る」

「ええ、気を付けて」


 最後に軽い挨拶をし合うヴリトラとアリサ。それが済むとニーズヘッグはジープを走らせ、ジャバウォックもそれに続くようにバンを走らせて七竜将は目的地のナギカ村へ出発した。

 七竜将を見送ったアリサとラランはゆっくりと入口の方を向いて橋の上を歩いて行く。


「何か、リブルが来てからラランったら随分女の子らしくなってきたじゃない?」

「・・・それ、どういう意味?」

「アハハハ、ゴメンゴメン」


 まるで自分が女らしくないと言うアリサを見上げてラランはムッとする。そんなラランにアリサは笑いながら謝った。

 橋を渡り終えた二人は町に入り、そのまま詰所の方へ歩いて行く。するとさっきまで笑っていたアリサが真面目な顔になって歩きながらラランを見下す。


「ところで、さっきのどう思う?」

「・・・グランドウルフ団の事?」

「ええ。今回の七竜将の依頼の内容といい、グランドウルフ団の件といい、何だか不審な点が多すぎるわ。偶然にしては出来過ぎてる・・・」

「・・・誰かが仕組んだ?」

「その可能性もあるけど、調べるには情報が少なすぎるわ」


 七竜将の依頼内容とそれに繋がるグランドウルフ団の活動情報、そのどちらも情報が少なく、怪しいところが沢山ある事にアリサとラランは立ち止まり、難しい顔をして考え込んだ。


「・・・私、もう一度お城に行ってグランドウルフ団とギャルトム砦の事をもっと調べてみようと思うの。ラランはどうする?」

「・・・行く」

「なら急ぎましょう?今回の依頼は何か裏があるわ、もし七竜将に何かあったら大変」

「・・・隊長にも会わす顔が無い」


 七竜将の事を心配するアリサと未だにラピュスを隊長と呼んで慕っているララン。二人は遠くにいる仲間の事を考えながら通りを走って城へと向かって行った。


――――――


 ティムタームを出てから二十分後、七竜将が乗るジープとバンは凸凹でこぼこの道を走りながらナギカ村へ向かっていた。ジープの助手席ではヴリトラがアリサから受け取った羊皮紙を開いて内容を確認している。


「・・・ととととっ!ニーズヘッグ、もっと静かに走ってくれよ?車が揺れて書いてある事が読めねぇよ」

「無茶を言うな?これだけ凸凹した道だぞ?ゆっくり走っても揺れちまう。それと揺れた状態で喋るな、舌を噛むぞ?」

「大丈夫だよ、これぐらいなら・・・いてぇ!?」

「見ろ、言わんこっちゃない・・・」


 ガタガタ揺れる中、喋っていたヴリトラは舌を噛んでしまい、それを見たニーズヘッグは呆れ顔をしている。後部座席ではリンドブルムが座りながらヴリトラの背中を見つめていた。


「ヴリトラ、読むのは村に着いてからの方がいいんじゃないの?」

「ててて・・・そうは言ってられねぇよ?村に着いた時に何か予期せぬ事が起きたらマズイだろう?少しでも情報を頭に入れておかないと・・・」

(・・・無理だと思うけどなぁ~)


 心の中でそう呟くリンドブルム。結局ヴリトラはジープが揺れるせいで殆ど書かれている内容を理解できず、読むのを諦めて村に着くのを待つ事にしたのだった。

 十分後、七竜将は襲撃を受けたナギカ村に到着する。だが、そこで七竜将が見たのは民家のあちこちがボロボロになり、村人が一人もいない無人の村だった。ジープとバンから降りた七竜将は自分達の武器を取り周囲を見回す。


「此処が、ナギカ村?」

「どうなってるの?誰もいないじゃない・・・」

「まさか、前の襲撃で村人は全員殺されちまったのか?」


 無人の村を見て驚くファフニール、ジルニトラ、ニーズヘッグの三人。ヴリトラも羊皮紙を握りながら驚いている。


「確かギャルトム砦に入るのを村人が確認しているって依頼所に書いてあったが、その村人は何処にいるんだよ?」

「・・・上から見てくる・・・」


 そう言ってオロチは両足のジェットブースターを点火して高く飛び上がった。オロチは村の上空から村全体を見渡して誰かいないかを探し出す。地上でそれを見たヴリトラはリンドブルム達に指示を出した。


「こっちも村を探して誰かいないか調べるぞ!」

「了解。あたしとファフニールは村の東側を探すわ」

「なら、俺とリンドブルムは西側だ」

「うん!」


 ジルニトラとファフニールは東側、ジャバウォックとリンドブルムは西側を探すと言い、それを聞いたヴリトラも頷く。


「分かった。俺とニーズヘッグはこの辺りを調べる。頼んだぞ?」

「「「「了解!」」」」


 指示を聞いてリンドブルム達はそれぞれ西側と東側へ走って行き、村人の捜索を始める。残ったヴリトラとニーズヘッグも周りを見ながら村人を探し出した。


「一体何がどうなってるんだ?」

「分からん。だが、嫌な予感がするというのは確かだ・・・」

「だろうな・・・」

「・・・ところでヴリトラ、その羊皮紙には何て書いてあるんだ?」

「ん?・・・ああ、そうだな。ちゃんと確認しないと・・・」


 ヴリトラは握っていた羊皮紙を広げて書かれている内容を確認する。そこにはファムステミリアの字でグランドウルフ団の事が書かれたあった。


「何て書いてあるんだ?」

「ああ・・・・・・『グランドウルフ団は僅か十五人で構成された傭兵団でその内の半分が王国騎士団に所属していた兵士達。遠近の両方の攻撃を得意としており、嘗ては騎士団から依頼をされていたほどの少数の精鋭傭兵団。だが、次第に過激になっていき、小さな村を襲う盗賊団に成り下がっていった。もっとも新しい報告では三ヶ月前にナギカ村から数キロ離れた位置にある小さな村を襲い、物資や食料を奪っている。その時は既に倍の人数にまでなっており、王国の白銀剣士隊と戦闘を行うも、数人が倒れた途端に逃亡。その後は行方が知れず』、だとさ」

「ラランとアリサは少数の傭兵団だって言ってたんだろう?そこに書かれてある内容によると随分大きくなったらしいな?」

「ああ、二人が知っている当時のグランドウルフ団とは随分変わったようだ・・・」


 グランドウルフ団が少数の傭兵団から大勢の盗賊団に変わった事を知ったヴリトラとニーズヘッグはグランドウルフ団への警戒を強くし気を引き締める。

 それから十数分後、リンドブルム達がヴリトラとニーズヘッグの下へ戻って来て村の状況を確認し合った。空からも地上からも村人を見つける事はできずに完全に無人の村だと断定される。


「村人おらず、か。どう思う、ヴリトラ?」

「・・・依頼に不審な点、そして村人がいない。これはもはや情報不足なんてものじゃないな」

「どうする、一度ティムタームに戻るか?」


 ジャバウォックがこの後どうするかを尋ねると、ヴリトラは俯いて考え込む。


「皆さーーん!」

「「「「「「「!?」」」」」」」


 突然何処からかアリサの声が聞こえて来た。七竜将はアリサの声に反応して声の聞こえた方を向くとティムタームのある方角の道から馬に乗って走って来るアリサとラランの姿が目に飛び込んできた。

 アリサとラランが乗った馬は村に到着して七竜将の前で止まった。馬の上では汗を流しながらホッとするアリサと無表情ではあるが汗を流しているラランの姿があった。


「ま、間にあったぁ!」

「アリサ?一体どうしたんだ?」

「あ、あの後お城で色々調べていたらとんでもない事が分かったんで知らせに来たんですよ!馬で追いつけるかどうか不安でしたけど、ギリギリでした・・・」

「とんでもない事?」


 理解できないヴリトラとリンドブルム達がアリサを見つめていると、村の西側から多数の馬が走る音が聞こえて来た。ヴリトラ達は一斉に音のする方を見ると、村の外から馬に乗った大勢の騎士達が村に入って来てヴリトラ達の方へ向かって来る。規模は二個中隊ほどで全員が銀色の鎧と青いマントを纏っており、その騎馬隊の何人かはレヴァート王国の旗を掲げていた。


「何だ?あの騎士達は・・・」

「そんな、どうして此処に!?」


 騎馬隊を見て不思議に思うオロチと驚きの表情を浮かべるアリサ。その隣ではラランも驚きの表情を見せている。


「おい、アリサ。さっきから一体どうなってるんだ?アイツ等の事を知ってるのか?」


 ヴリトラがアリサの方を向いて訊ねると、アリサは騎馬隊の方を向いたまま頷く。


「・・・白銀剣士隊です。それも元老院直属の・・・」

「元老院!?」


 ヴリトラは元老院という言葉に反応し驚きの表情を浮かべる。リンドブルム達も同じだった。自分達を忌み嫌うファンストが支配する元老院の直属の騎士達が不審な点が多い依頼の最中に現れるとなると、嫌な予感しかしなかった。そしてその予感は的中する。

 騎馬隊はヴリトラ達の5mほど手前で止まりヴリトラ達をジッと見つめている。そして先頭を走っていた男性騎士が馬を数歩進ませて腰に納めてある騎士剣を抜いた。


「七竜将、まだこの村にいたのか?」

「・・・色々聞きたい事はあるけど、まず一つ訊かせてもらうぞ?どうして元老院直属の白銀剣士隊が此処にいるんだ?しかもこんな大勢で?」

「どうして我々の事を・・・ん?」


 男性騎士はヴリトラ達の近くにいるアリサとラランを見て、なぜヴリトラが自分達の正体を知っているのかその理由に気付いた。


「成る程、その騎士達が教えたのか・・・。しかし妙だな?確か今お前達が引き受けている依頼は誰にも話すなと言われいるはずだが、どうしてそこの姫騎士達がお前達と共にいるのだ?」

「質問に質問で返すのは止めてくれないか?まずはそっちがこちらの質問に答えるべきだろう?」

「フ・・・まぁ、よかろう。どうせお前達は此処で終わるのだからな」

「何だと?」


 ヴリトラは男性騎士を睨み付けながら訊き返す。そして男性騎士はヴリトラ達を見つめながらゆっくりと話を始めた。


「我々はお前達七竜将を始末する為に此処に来たのだ」

「始末だと?」

「そうだ。お前達は危険すぎる。元老院の方々はお前達七竜将がブラッド・レクイエムとか言う連中の様に自分達に牙を向け、敵になる事を恐れてお前達を処刑する事を決定された」

「何ぃ?」

「無茶苦茶だぁ!」

「俺達は一度契約を交わした相手を裏切るような事を絶対にしねぇ!」


 男性騎士の言葉に表情を鋭くするヴリトラとその隣でリンドブルムとジャバウォックも抗議する。当然ニーズヘッグ達も揃って騎士達を睨みつけていた。


「お前達は所詮傭兵、金で動くだけの信用できない連中だ」

「だから私達に今回の仕事を依頼し、グランドウルフ団と戦わせてもし生き残った時はお前達が私達を始末するつもりだったのか・・・」

「グランドウルフ団?・・・ああぁ、そういう内容だったな」

「「「「「「「?」」」」」」」


 オロチの話を聞いた男性騎士は一瞬不思議そうな顔を見せるが、直ぐに元の表情に戻る。それを見た七竜将達も表情を鋭くしたまま男性騎士を見つめた。


「皆さん、グランドウルフ団はもう存在していません。三ヶ月前に全滅していたんです、元老院の騎士隊によって・・・」

「何?だってお前、報告では二割を倒した途端に奴等は退散したって・・・・・・ッ!まさか!?」

「ええ、それはその討伐に就いた騎士達がついた大ウソです。本当はその討伐の時に全滅させていたんですよ・・・」


 ヴリトラ達はアリサの口から出たグランドウルフ団全滅の事実を聞いて驚く。アリサとラランは暗い顔で俯いた。


「元老院は国に不都合な事が起きるとそれをもみ消す為に色々な事をやるみたいなんです。グランドウルフ団の事も不都合な事をもみ消すのに利用する為に全滅した事を隠して退散したとウソの報告を・・・」

「それで今回、俺達を消す為に世間では生き残っている事になっているグランドウルフ団を使って俺達をおびき寄せたって事か。そして俺達がギャルトム砦に来たのを見計らって奇襲を仕掛けるつもりだったと?」


 ヴリトラが元老院の意図を読み、目の前にいる騎馬隊を睨み付けた。

 男性騎士はヴリトラに騎士剣の切っ先を向けて静かに話を進める。


「とにかく、お前達はこの国の平和を乱す異物と判断された。よってお前達を此処で処刑する。・・・そして、そこにいる二人の姫騎士もな」

「何だと!?」


 ラランとアリサも処刑すると言い出した男性騎士にヴリトラは耳を疑う。リンドブルム達やラランとアリサも同じ様に驚いている。


「ちょっと待て!コイツ等は何も関係ない、殺す必要なんてどこにも無いだろう!?」

「その二人は知り過ぎた。もしソイツ等が首都に戻れば元老院の評判が悪くなるかもしれないからな。それに今回の真実を知る者は誰一人生かしておくつもりはない!」

「何ですって!?」

「酷すぎる!」


 自分達の行いを隠す為にアリサとラランも一緒に始末すると言い出した男性騎士にジルニトラとファフニールは声を上げる。勿論、リーダーであるヴリトラも腹を立てており、左手で森羅の柄を掴み何時でも森羅を抜けるようにしていた。


「・・・おい、今の話からだと俺達を始末するっていうのは元老院の独断なんだろう?陛下がこの事を知ったらお前達だってただじゃ済まないぞ。それに俺達はこれまで多くの敵をたった数人で倒して来たんだ。お前達だけで勝てると思ってるのか?」

「フン、お前達に逃げ場などない。国中の町や村には既にお前達が王国に対して反乱を企てようとした逆賊として指名手配してある。つまり国中の人間全てがお前達の敵だ!」


 その言葉を合図に男性騎士の後ろに控えていた騎兵隊が一斉に騎士剣や突撃槍、弓矢を構えてヴリトラ達に狙いを付ける。それを見たヴリトラ達は一斉に構えた。


「オロチ!」


 ヴリトラがオロチの方を向いて名を叫ぶ。するとオロチは素早く腰のバックパックに手を入れて何かを取り出した。オロチの手の中には三つのスーパーボールほどの大きさの球があり、オロチはそれを勢いよく地面に叩きつけた。するとその三つの球から煙が出て周囲を包み込んだ。騎馬隊は突然の煙に視界を奪われて動揺する。


「これは・・・」

「煙玉だ。皆、車まで走れ!」


 煙に驚くアリサの手を引いて走り出すヴリトラ。リンドブルムもラランを連れて走り出す。煙から抜け出るとヴリトラとリンドブルムはアリサとラランをジープに乗せ、七竜将の全員ジープとバンに乗り込んだ。


「いいぞ、出せ!」


 ヴリトラは運転席のニーズヘッグに合図を出すとニーズヘッグはアクセルを踏みジープを走らせる。それに続いてジャバウォック達が乗るバンも走り出し、二台の車はナギカ村から脱出した。煙が消えると騎馬隊はヴリトラ達が姿を消した事に気付いて周りを見回す。


「おのれぇ、逃げおったな!探せぇ!」


 男性騎士は部下の騎士達に指示を出し、騎士達も一斉に馬を走らせて村や周囲を探し始める。男性騎士は騎士剣を鞘に納めて静かに空を見上げた。


「運よく逃げた。だが忘れるな、この国にお前達の居場所はない。そしてお前達はこの国から出る事もできないのだ!」


 その場にいないヴリトラ達に警告する様に男性騎士は空に向かって言い放った。それから村の周辺を捜索するも七竜将を見つけられなかった騎馬隊はティムタームに帰還。そして元老院は七竜将と彼等と共にいたラランとアリサの二名の姫騎士を王国反逆という有りもしない罪で指名手配し国中に号外を発行したのだった。

 元老院の策にはまりレヴァート王国中に逆賊として指名手配されてしまったヴリトラ達。国中を敵に回す事になってしまったヴリトラ達はこれからどうなるのだろうか?そしてそれを知ったラピュスはどの様な反応を見せるのか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ