第百二十二話 対面 レヴァート国王ヴァルボルト
国王であるヴァルボルトに会う為に登城したヴリトラ達はパティーラムと再会。彼女との友人となり、一国の王女とヴリトラ達の間に新しい絆が生まれた。そんな晴々しい気分になった一同が遂に緊張感の漂う謁見の間に入る。
謁見の間の二枚扉が開き、パティーラムを先頭にゆっくりと謁見の間に入って行くヴリトラ達。広い謁見の間に敷かれている赤いカーペットの上を歩きながら部屋の両端には控えている大勢の貴族らしき人物達をチラチラと目だけを動かして見ているヴリトラ達は更なる緊張感を感じていた。
「凄いね。皆こっちを見てるよ・・・」
「堂々としてろ、軽く見られるぞ?」
少し動揺しているリンドブルムに小声で話し掛けるニーズヘッグ。ヴリトラ達もパティーラムの後をついて行きながら目だけを動かして自分達に注目している貴族達を見ていた。
「此処にいる全員が貴族かよ・・・」
「ああ、それも殆どが政治に関係している上級貴族の方ばかりだ」
ヴリトラとラピュスは謁見の間にいる貴族達を見ながら小声で話をしながら歩き、どんな人物がいるのかを観察している。高貴な服を着た男性や美しいドレスを着た女性、そして数人の衛兵や黄金近衛隊の騎士達の姿もあった。
静かに歩いていると、ラピュスは自分から見て右側にいるある貴族を見つけると目を見張り驚きの表情を見せる。彼女の視線の先には青い貴族服を着た男性と水色のドレスを着た女性の姿があった。
「どうした?」
ラピュスの顔を見たヴリトラは小声で問いかける。ラピュスも小声のままヴリトラの質問に答えた。
「見ろ、あそこに立っている青い服と水色のドレスを着た男女がいるだろう?」
「ん?・・・ああ、いるな?」
「あのお二人はレヴァート王国騎士団の人事関係の職務を任されているミッケール伯爵と妻のミッケール伯爵夫人だ。あのお二人が騎士団に入団した者達の部隊の編制、騎士達の昇格の決定などを任されている方々なのだ」
「へぇ~」
「元は指折りの実力を持つ騎士だったらしく、ミッケール夫人も優秀な姫騎士をされていたらしい・・・」
「成る程、騎士だった人達なら騎士団の人事関係の仕事も安心して任せられるって訳だ」
説明を聞いて納得の表情を見せるヴリトラ。するとラピュスは今度は反対側を見て一人の緑の貴族服を着た初老の男性を見つけた。
「あそこにいらっしゃるのはスペンテント侯爵だ。他国との経済の交渉や財政などを任されている方だ」
「つまり、政治関係ではかなり重要な人って事か?」
「そうだ。私も騎士団の入団式の時に何人かの上級貴族の方々を見て事はあるが、これだけ大勢の上級貴族の方々を見たのは初めてだ」
今までに見た事の無い上級貴族を目の前にラピュスも少し緊張しながら歩いている。一方でヴリトラは国王のヴァルボルトに会う事には緊張しているが、周りの上級貴族達についてはあまり緊張というものが感じられなかった。七竜将がいた世界には貴族という言葉があまり大きいものではなかったのでピンと来ないのだろう。
カーペットの上を歩いて玉座の方へ歩いて行くヴリトラ達。やがてパティーラムの足が止まり、後ろを歩いていたヴリトラ達も止まった。ヴリトラ達の前には玉座に座る国王ヴァルボルトの姿があり、彼の右脇にパティーラムの姉である長女アンナ、次女エリスの姿があり、左脇には騎士団長のガバディア、黄金近衛隊の隊長であるザクセンの姿がある。パティーラムはヴァルボルトを見つめながらドレスの両端を指で摘まみ、ゆっくりと広げて軽くお辞儀をした。
「国王陛下、傭兵隊七竜将、そして三名の姫騎士をお連れしました」
「ウム、ご苦労だったな、パティーラム。下がりなさい」
「ハイ」
パティーラムはゆっくりと顔を上げて姉達の下へ歩いて行く。パティーラムが前からいなくなると、ラピュス達姫騎士は静かにその場に跪き、それを見た七竜将は少し慌てた様子で跪いた。ヴァルボルトは跪くヴリトラ達を見て静かに口を開く。
「突然呼び出してすまなかったな。お主達が七竜将、そして七竜将と共に戦った姫騎士達だな?」
「ハッ!お会いできて光栄であります!」
跪きながら力の入った声を出して返事をするラピュス。国王であるヴァルボルトに声を掛けられて相当緊張しているようだ。だがそれはラランとアリサ、そしてヴリトラ達も例外ではない。戦場で生死の境に身を置く彼等も経験した事の無い状況に普段とは違う緊張感を感じてしまっているのだ。
ヴァルボルトは緊張しているラピュスの声を聞き、小さく苦笑いを見せる。
「そんなに緊張せんでもよい。もっと楽にしなさい」
「い、いえ!国王陛下の前でそのような事・・・」
「フム。・・・では、もっと体の力を抜きなさい。これは国王としての命令だ」
「ハ、ハイ・・・・・・え?」
ラピュスはヴァルボルトの言葉を聞き今度は力の抜けた声を出しながら顔を上げる。楽にしろ、というあまりにも拍子抜けの命令にラピュスから一気に緊張感が抜けた。ラランとアリサも同じように顔を上げ、七竜将は意外そうな顔をしていたがラピュス達ほど驚いた様子は無かった。パティーラムやアンナ、ガバディアはラピュス達を見ながら必死で笑いを堪えていた。
「パティーラムから聞いておらんか?儂は堅苦しいのがあまり好きではないのだ。だからもう少し力を抜いてくれた方が話しやすくて良いのだよ」
「し、しかし・・・」
「言ったであろう?命令だ」
「う・・・!」
騎士として国王の命令には逆らえない、だがあまりのも国王らしくない命令に動揺を見せるラピュス。どうすればいいのか分からないラピュスは汗を掻きながら考え込む。すると、ラピュスの隣で跪いていたヴリトラがラピュスの方を向いて笑い出した。
「何緊張してるんだよ?陛下がいいって言ってるんだからもっと力を抜けよ?」
「なっ!?お、お前なぁ!状況を分かってるのか!?そもそも陛下の前でそんな軽い態度を・・・!」
「陛下の命令だろう?だったら命令には従わないとな?」
突然跪きながら笑って軽くなるヴリトラにラピュスは驚きと戸惑いを感じながらヴリトラに注意をする。さっきまでの緊張感がウソの様な態度を取るヴリトラに二人の後ろで跪いている七竜将、ラランとアリサは全員が目を丸くしていた。勿論、ヴリトラ達を見つめているエリス、ザクセンや上級貴族達も同じように目を丸くして固まっている。だがその中でパティーラム、アンナ、ガバディアの三人だけは未だに笑いを堪え続けていた。
ヴリトラの態度を見てしばらく固まっていたニーズヘッグはハッと気が付き頭に血管を浮かべながらヴリトラを睨み付ける。
「お前なぁ!もう少し空気読めよ!此処をどこだと思ってるんだ?それに今目の前にいらっしゃるのはこの国の王様だぞ!?」
「いや、その王様が楽にしろって言うから言われたとおりに・・・」
「限度があるだろう!?楽にし過ぎだぁ!」
「まぁまぁ、落ち着いて・・・」
目くじらを当てて立ち上がり怒るニーズヘッグに驚くヴリトラ。怒るニーズヘッグを宥めるリンドブルム。周りにいた他の七竜将は呆れ顔で三人から目を反らしていた。
「ハァ、こりゃあ、色んな意味で終わったかもな・・・?」
「まぁ・・・いいんじゃない?パティーラム様も言ってたしさ?」
「いや、よくねぇだろう?」
「ヴリトラは時々空気を読めない時があるから困る・・・」
「でもでも、私達はそんなヴリトラについて行くって決めたんだよねぇ?」
ジャバウォック、ジルニトラ、オロチ、ファフニールもそれぞれ思っている事をペラペラと口にし、国王の前で取る態度とは思えない様に振る舞っている。そんな七竜将の姿にラピュス達三人の姫騎士は「もうダメだ」と言いう様な放心状態となっていた。周りの上級貴族達もこそこそと小さな声で話し始めている。七竜将の無礼な態度に不信感を抱き始めたようだ。
周りの事を気にもせずにマイペースな態度を取る七竜将にラピュスは次第に怒りを感じ始め、体をプルプルと震わせる。そして遂にラピュスの怒りは限界を超えた。
「~~~ッ!いい加減にしてぇ~~っ!」
「うぉわぁ!?」
ラピュスの怒鳴り声が謁見の間に響き、七竜将や姫騎士達、そして王族や上級貴族達は一斉に驚いた。
「・・・アンタ達、陛下の前でそんな無礼な態度を取って、何を考えてるのよ!?もう少し立場と態度をわきまえなさい!」
「・・・い、いや。それを言うんだったら、お前も・・・」
驚きながらラピュスを指差すヴリトラ。その事にラピュスは鋭い表情で小首を傾げて周りを見回す。そして周りの上級貴族達が驚いている姿を見てハッとした。
(し、ししし、しまったぁ~~!)
自分自身も怒りで立場と場所を忘れており、ヴァルボルト達の前で失態を見せた事にショックを受ける。ラランとアリサもそんなラピュスの姿を見て真っ白になっている。ラピュスは心の中で「もうダメだ」と大量の汗を掻き固まってしまう。すると・・・。
「・・・フッ、ハハハハハハハハッ!」
「・・・え?」
「ええ?」
突然玉座に座ったヴァルボルトが大笑いをしだし、それを見たラピュスとヴリトラは間抜けな声を出す。周りの上級貴族達もヴァルボルトの予想外の反応に目を丸くしたまま玉座の方を向く。ヴァルボルトの周りにいた王族や護衛の騎士達も同じ様な態度を取っている。
「へ、陛下?どうされたのですか?」
第二王女のエリスがヴァルボルトに問いかける。そして自分の両隣で笑いを堪え続けているパティーラムとアンナの事にも気付く。
「姉上、パティ、二人も何を笑っているんだ?」
「い、いいえ。フフフ」
「何でもないぞ?フフッ」
笑いを堪え続けている二人にエリスはポカーンとしていた。そしてヴァルボルトも笑いが治まって来たのか、顔を手で押さえながら俯いた。
「ハハ、ハハハハ!・・・いやぁ、こんなに笑ったのは何年ぶりだろうなぁ?」
「あ、あの・・・陛下?」
涙目でまだ微かに笑っているヴァルボルトを見てラピュスは目を丸くする。ヴァルボルトはようやく落ち着いたのかヴリトラ達の方を向いて大きく息を吐いた。
「フゥー、いやぁ、すまなかったな?お主達の様な常識破りの者達を見てついついおかしくなって笑ってしまった」
「も、申し訳ありません!陛下の前であのような醜態を・・・」
「言ったであろう?儂はもっと楽にしろと。だが、あそこまで楽になるとは正直思わなかったぞ?ハハハ」
「し、失礼しました・・・!おい、ヴリトラ!お前も謝れ!」
跪いたままラピュスはヴリトラの方を向いて謝る様に言う。ヴリトラもラピュスの恐ろしい睨み付けに寒気を感じて言われたとおりに跪き頭を下げた。
「失礼しました・・・」
「いや、よい。お主達を見ていると若い頃の自分の姿を思い出す。たまにはこの様な振る舞いも良いものだ。お主、確かヴリトラと申したな?」
「え?・・・あ、ハイ」
「お主のおかげで久しぶりに腹の底から笑う事ができた。礼を言うぞ?」
「ハ、ハァ・・・?」
失礼な態度を取ったにもかかわらず礼を言うヴァルボルトに少し調子が狂うヴリトラは目を丸くしながら頷いた。
「お主は確かラピュス・フォーネだったな?」
「ハ、ハイ!」
「お主の活躍と騎士道に対する強い意志はガバディアから聞かされておる。だが、もう少し気持ちに余裕を持つ事も覚えんといかんぞ?」
「・・・ハイ!」
ヴァルボルトの言葉を聞きラピュスは光栄に思いながら力強く返事をする。ヴリトラとラピュスの姿を見て、リンドブルム達も少し安心して余裕が出て来たのか小さく笑いながら二人の背中を見つめた。
「あのぉ、陛下。そろそろ本題の方に入った方がよろしいかと・・・?」
「ん?おおぁ、そうであったな」
近衛隊長のザクセンに言われて話を戻すヴァルボルトはヴリトラ達を見つめる。
「改めて、よく来てくれたな。お主達の活躍はストラスタ公国との戦いの時から聞かされている。僅か七人の傭兵が見た事の無い武器を使い、数え切れない程の敵を打ち倒したと。そして先の海賊の一件、お主達のおかげでカルティンの町を守られた。更に海賊達も新しい生き方へ導いたとも聞いている」
「ハイ」
「お主達の力には本当に感服した。それについても改めて礼を言わせてもらうぞ?」
「いいえ、俺達もこの国に住まわせて頂いてる以上、国の為に尽くすのは当然の事ですから」
跪きながら謙遜するヴリトラを見つめて小さく笑うヴァルボルト。すると再びザクセンがヴァルボルトの方を向き話に加わって来る。
「陛下、例の者達の事も聞いておいた方が良いのではないでしょうか?」
「・・・そうだな」
ザクセンの話を聞いたヴァルボルトは突然真剣な顔を見せる。それを見たヴリトラ達は不思議そうな顔でヴァルボルトを見つめた。
「・・・七竜将よ、カルティンの町を襲った海賊達を襲撃し、更にカルティンと我が騎士団の騎士、そして町の自警団を襲った者達の事を詳しく聞かせてもらいたいのだが?」
「「「「「「「!」」」」」」」
ヴァルボルトの話を聞いた七竜将全員の表情が鋭くなり、ラピュス達も驚きの表情を浮かべていた。カルティンの町を襲撃した者達、ブラッド・レクイエム社の事を聞きたいというヴァルボルトの質問に七竜将は黙り込む。彼等によって数人の騎士と自警団員が殺されているのだ、王家の耳にブラッド・レクイエム社の事が入っても不思議じゃなかった。
「奴等は我々が見た事の無いような姿をし、お主達が使っている武器と似たような武器を所持していると聞いている。奴等の事を詳しく話してほしい」
「それは・・・」
大勢の人間に囲まれて話すべきかを悩むヴリトラ。ラピュス達やザクセンの隣に立っているガバディアも静かにヴリトラを見守っている。
「・・・一部の者達の間では、お主達は奴等の仲間でこの町に潜り込んでいる間者ではないかという噂も広まっており」
「・・・俺達を疑っているという事ですね?」
ヴリトラは真剣な表情でヴァルボルトを見つめる。この状況では誰もが自分達をブラッド・レクイエム社のスパイだと疑っても不思議じゃない。中には直ぐに自分達を拘束したいと考えている者もいるだろう。ヴリトラや周りのラピュス達も周りで自分達を冷たい目で見つめる上級貴族達を見回した。
「儂は国の為に戦ってくれたお主達を疑いたくないのだ。もし、お主達が奴等の仲間でないと言うのなら、どうか知っている事を全て話してほしい・・・」
疑いを晴らす為に話してほしい、その言葉を聞いたヴリトラ達は黙り込んで考え込む。今の状況では何を言っても信じてもらえるはずがない。下手に黙秘したらかえって疑われる。だったら、ヴリトラ達の出す答えは一つしかない。
「・・・分かりました。奴等の事をお話しします」
話す事を決めたヴリトラは真剣な顔で頷く。リンドブルム達も異議は無いらしく黙ってヴァルボルトの方を見ている。すると、ラピュスが小声でヴリトラに声を掛けてきた。
「ヴリトラ、ブラッド・レクイエムの事を話すのはいいが、お前達が別の世界から来たという事は話さない方がいいと思うぞ?何かと都合が悪くなると思う」
「ああ、分かってるさ。こんなに大勢の人達に別の世界から来たって事を話すのは色んな意味でマズイ。そっちは方は上手く誤魔化すさ」
七竜将は別の世界から来たという事までは話さない事にしたヴリトラとそれを聞いて頷きながら納得するラピュス。二人の内緒話を後ろから見ていたリンドブルム達も何の話をしているのか察して顔を見合わせながら頷く。そしてヴリトラはヴァルボルト達にブラッド・レクイエム社の事を話し始めた。
それから十数分後、一通りの話を終えたヴリトラ達は口を閉じる。ヴァルボルト達もブラッド・レクイエム社の力やその存在を詳しく聞かされて驚きの表情を浮かべていた。
「・・・ブラッド・レクイエム、このヴァルトレイズ大陸から遥か遠くの大陸から来た巨大な傭兵組織、か。恐ろしい話だ」
ヴリトラはブラッドレクイエム社は今自分達がいるヴァルトレイズ大陸とは違う大陸から来た組織だとヴァルボルトに説明して、別世界の件は何とか誤魔化した。そして自分達はブラッドレクイエム社にさらわれて何とか彼等から逃れて来たいう設定にしたようだ。
「お主達はブラッド・レクイエムに連れ去らわれてこの大陸に来たという事で間違い何のだな?」
「・・・ハイ、逃げる時に奴等の持っていた武器を奪って何とか奴等と戦ってきました」
「成る程・・・そして奴等はこの大陸の秩序を変えると言ってお主達と我が国、いや、この大陸中の国に攻撃を仕掛けてきているという事か」
「まだ確信はできませんが、全ての国に宣戦布告する可能性は高いでしょう。そして奴等はあらゆる国に自分達の仲間を派遣して取引などをして利益を得ている、と思われます」
「ウム、奴等の使う武器などは我々の想像を遥かに超えた物ばかりだ。下手に刺激するのは危険かもしれんな・・・」
ヴァルボルトはヴリトラの話を聞いただけでブラッド・レクイエム社が危険な存在であるという事に直ぐに気付いた。パティーラム達王女やガバディア達騎士達、そして上級貴族達も難しい顔をして話を聞いている。
しばらく考え込んでいたヴァルボルトはヴリトラ達の方を見た。
「ヴリトラ、お主達はこれからどうするつもりなのだ?」
「俺達はこれからもブラッド・レクイエムの連中と戦い続けます。そして故郷に戻る方法を探すつもりです」
「そうか。我々は奴等の事をまだ何も分かっていない。そして奴等はまたいつか我が国の民を襲って来るであろう。その時はどうかお主達の力を貸してほしい」
「勿論です。全力で力になります!」
「忝い・・・」
力を貸してくれるヴリトラに頭を下げるヴァルボルト。パティーラムや他の上級貴族達も七竜将が力になってくれると聞いて少し安心したようだ。中にはまだ彼等を疑っている様子の者もいるが、ほんの僅かだった。
「では、次にお主達のこの国では対応について・・・」
「お待ちください陛下!」
ヴァルボルトが次の話に移ろうとした時、突然聞こえて来た声。一同が一斉に声のした方を向くと、ヴァルボルトの左脇、パティーラム達が立っている場所の近くで杖を持ちながらヴァルボルトを見ている老人、ファンストの姿があった。
平和的に話が終わりそうになった時に突然話に割り込んで来た元老院最高権力者のファンスト。謁見の前に漂う不穏た空気にヴリトラ達も鋭い視線をファンストに向けるのだった。