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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第七章~裏切りと言う名の正義~
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第百十九話  それぞれの新しい道


 青空を飛びながら鳴く鳥達とその空の下に広がる平和なティムタームの町。その片隅にあるズィーベン・ドラゴンの庭では私服姿で武器の手入れをするヴリトラと車のメンテナンスをするニーズヘッグ。とてものどかな風景だった。

 港町カルティンの事件から一ヶ月が経ち、ティムタームに戻った七竜将はいつも通りの生活に戻っていた。町の戻ると直ぐにラピュス達第三遊撃隊はザザムス達海賊の事とブラッド・レクイエム社の事をガバディアに報告し、七竜将と第三遊撃隊の活躍は国中に広がる。七竜将の活躍に盛り上がる者達もいれば、彼等の活躍を良く思わない者もおり、七竜将はレヴァート王国中で注目される事になった。


「あれからもう一ヶ月か・・・」

「早いものだなぁ」


 木陰で座りながら森羅や銃器の手入れをするヴリトラとジープの真下に入りジープの点検をするニーズヘッグが一ヶ月前の海賊事件の事を思い出した。


「あの後、ザザムス達は裁判を受けたんだったよな?」

「ああ、ティムタームに着いた翌日に公開裁判が行われて海賊達の今後の事を決めるってラピュスから聞いた」

「俺達も見に行きたかったんだけど、俺達が行くと何かと騒ぎになるから行くなってガバディア団長に止められちまったんだよなぁ~」


 当時の事を思い出して武器の手入れする手を止めたヴリトラは真上にある木の枝を見上げながら言った。実は当時の裁判には一分の住民や事件に関わったラピュス達第三遊撃隊の騎士達も見物に行ったのだが、七竜将は海賊とブラッド・レクイエム社を倒した事で町中の注目となっているので裁判を見に来ると住民達が大騒ぎする可能性があるとガバディアが判断し、出入り禁止にしたのだ。故に七竜将は海賊達の裁判を直接見る事はできなかった。


「だけど、裁判はちゃんと行われたんだからいいじゃないか?お前が雇った弁護人もしっかり働いてくれたんだしよ」

「まぁ、確かにそうだけどさぁ・・・」


 見る事はできなくても正当な裁判が行われたからよしと思うニーズヘッグは小さく笑いながらヴリトラの方を見る。だがヴリトラはやっぱり納得できなかったのか木にもたれて不服そうな顔を見せた。

 二人が裁判の事を話しているとズィーベン・ドラゴンの中からジルニトラがお盆に飲み物の入った木製コップを二つ乗せてやって来た。


「おつかれ~。飲み物持って来たわよ、ちょっと休憩したら?」

「おお、あんがと」

「悪いな?」


 お盆を持つジルニトラの方を向き、礼を言うヴリトラのニーズヘッグは立ち上がってジルニトラの下へ行き、それぞれコップを手に取ると中の飲み物を一気に飲み干す。


「一気に飲み干したわねぇ?」

「そりゃあ、この暑い空の下で作業をしてたんだから喉も渇くさ?」

「アンタはずっと木陰にいたでしょう?そういう事はニーズヘッグの様に日の下で作業をしてから言いなさい」

「ハハハハ、確かにそうだな」


 ジルニトラのツッコミを聞いてコップを持ちながら笑うヴリトラ。そんな彼をジルニトラはジト目で、ニーズヘッグは苦笑いをして見ていた。


「そう言えば、さっき裁判がどうのこうのって話してるのが聞こえたけど、海賊達の裁判の事?」

「ああ、直接どんな判決が下されるのかを俺も見届けたかったからさぁ」


 二人の会話の内容が聞こえたジルニトラにヴリトラは説明する。ジルニトラも話を聞いてヴリトラと同じ気持ちだったのか「うんうん」頷いた。


「確かにあたし達も言って見届けるくらいはしたかったけど、ガバディア団長が止めたんだもんねぇ?」

「そうそう!」


 ヴリトラは「全くその通りだ!」と言いたそうに力強く頷く。二人の会話を見ていたニーズヘッグは持っているコップを手の中でゆっくりと回しだした。


「まぁ、今更言っても仕方ないさ?それに、裁判を見る事ができなくても、良い結果だったんだからいいじゃないか」

「確か、五年間、騎士団の監視の下で生活し、何も問題を起こさなかったら罪は取り消されるって判決だったわね?」

「ああ、執行猶予ってやつだ」


 ニーズヘッグとジルニトラはザザムス達に下された判決の内容を確認する様に話をする。ヴリトラが雇った弁護士のおかげでザザムス達の判決は随分軽くなったようだ。もし弁護人がいなかったら彼等は牢獄生活と言う判決を下されたいたに違いない。だがそんな彼等も執行猶予と言う自由を奪われる事の無い判決を下されたので七竜将にとっては良い結果と言える。

 ヴリトラとニーズヘッグは持っていたコップをジルニトラに渡し、それを受け取ったジルニトラは持っていたお盆の上にコップを置く。


「そう言えば、ザザムス達はどうなったんだろうなぁ?裁判の結果はラピュスから聞かされたけど、その後に何処へ行ったのかは教えて貰えなかったからなぁ」

「仕方ないわよ?ラピュスも上から聞かされてないみたいだし、彼等が新しく人生をやり直す為にもあまり情報を広げられないみたいよ?」

「それに、海賊を手嫌う連中も少なくない、彼等が蔑まれない為にも落ち着くまで彼等の正体は伏せておいた方がいい」


 三人は空を見上げながらザザムス達の事を考えて話し合う。嘗て海賊だった彼等が新しい生き方を見つけた幸せになってくれる事をヴリトラ達は心から祈った。

 ヴリトラ達が空を見上げていると、街へ続く道の方から誰かが手を振って歩いて来る人影が見えて三人は一斉に人影の方を向く。


「おっ?誰か来たぞ。お客かな?」


 ヴリトラは客かと思い人影の方を見て誰なのかを確認する。だが、それは街の住民ではなく鎧を着た三人の姫騎士、ラピュス、ララン、アリサの三人だった。だがよく見ると、ラピュスだけは普段と格好が違う。今までの様な黒い鎧ではなく、青銅色の鎧を着て青いマントを羽織っていた。ラランとアリサはいつも通りの姿をしている。


「ラピュス達だ」

「あら、本当」

「今日はどうしたんだろうな?」


 尋ねて来たラピュス達を見て、今度はどんな用事で来たのかを考えるニーズヘッグ。ラピュス達はヴリトラ達の方へ歩いて行き、三人の前で止まると軽く微笑んだ。


「調子はどうだ?」

「いつも通りさ。・・・・・・あっ!そう言えば、聞いたぜラピュス?お前、青銅戦士ブロンゼム隊に出世したんだってな?」

「ん?あ、ああ。ついこの間な・・・」


 笑うヴリトラにラピュスは照れくさそうに俯く。ラピュスの後ろではアリサが微笑んで見ており、ラランは相変わらず無表情のまま見ていた。ヴリトラの隣でもジルニトラとニーズヘッグがニッと笑っている。

 海賊の一件が解決してから二週間後、ラピュス達第三遊撃隊の騎士達は王城から呼び出されて今までの活躍と今回の海賊の件を高く評価されて恩賞を受けたのだ。ラピュスは遊撃隊からレヴァート王国の主力軍である青銅戦士隊の分隊長に出世し、アリサはラピュスに変わり第三遊撃隊の新しい隊長に、ラランは副隊長に昇進し、他の騎士達にもそれぞれ恩賞を受けた。その事は直ぐに七竜将の耳にも入り、彼等もラピュス達の昇進を喜んだ。


「しっかし、驚いたわねぇ。遊撃隊から青銅戦士隊の部隊長に出世するなんて?」

「ああ。普通、上の部隊に昇進する場合は隊員になってそこから隊長に昇進して行くものだが、いきなり分隊の隊長になるなんてのは滅多にない出世だぞ?」

「い、いやぁ・・・お前達と共に戦って来たからだ。私達がこうなれたのもお前達のおかげだ、ありがとう」


 褒めるジルニトラとニーズヘッグの方を向き、照れながら礼を言うラピュス。するとヴリトラがニヤリと笑いながらラピュスの肩をポンと叩く。


「何言ってるんだよ?俺達は自分のやるべき事をやっただけだ。ここまで出世したのはお前達が自分の力で自分の役目を果たしてこの国の為に戦ったからだよ」

「そうね。あたし達は何もしてないわ」


 ヴリトラと同じ気持ちなのかジルニトラも笑いながらラピュスを見て言った。ヴリトラ達にラピュスとアリサは嬉しそうに微笑み、ラランは表情は変わっていないが照れくさそうに頬を赤く染めていた。


「改めて、おめでとう、三人とも」

「ああ、ありがとう」

「ありがとうございます!」

「・・・ありがと」


 祝福するヴリトラと嬉しそうにする三人の姫騎士。彼女達の昇進を七竜将も自分の事の様に喜んでおり、笑いながらラピュス達を見つめた。


「近いうちにお前達にも陛下から恩賞があるはずだ。その時は全員で登城してもらうから時間を空けておけよ?」

「ええ?ただの傭兵である俺達に恩賞?王様が俺達に会いたいから登城してもらうって話は聞いてるけど、恩賞まで受けるほどの事はしてないぞ?」

「何を言っているんだ?お前達は自覚していないかもしれないが、これまでのお前達の活躍は国中に広がっており今ではこの国で七竜将の名を知らない者はいないと言うくらいお前達は有名になってるんだぞ?

「マ、マジかよ・・・」


 自分達の存在が国中に広がり有名になっている事を聞かされて驚くヴリトラ。ニーズヘッグとジルニトラも驚いてまばたきをしていた。


「今では皆さんは王国軍をも超えるレヴァート王国最強の傭兵隊と言われているんですよ?ですから、陛下も恩賞するに相応しい存在だと思われていらっしゃるんですよ」

「・・・貴方達の方が凄い」


 ラピュスに続いてアリサとラランも七竜将を褒め称え、今度はヴリトラ達が照れくさそうな顔を見せる。


「だから、陛下は顔を見るのと同時にお前達に恩賞を与えて話をしたいと思っていらっしゃるのだ」

「な、成る程、そう言う理由ならちゃんと登城しないとな?」


 ヴリトラは恩賞を受ける理由に納得して登城する事を改めて承諾する。三人が複雑そうな顔で互いの顔を見合っていると、ラピュスが何かを思い出したような顔を見せて懐から一枚の封筒を取り出した。

 

「そうだった、スッカリ忘れていた。実は今日此処を訪ねたのはお前達にこれを渡す為なんだ」

「ん?・・・何だよ、この封筒?」

「今朝、騎士団の詰所に届いた物だ。ザザムス殿達からの手紙だよ」

「ええぇ?あの爺さんからの?」


 ヴリトラはザザムスからの手紙だと聞かされて驚き、ラピュスの顔を見る。ニーズヘッグとジルニトラも少し驚いたのかヴリトラの後ろから顔を覗かせた。


「おぉい、さっきから誰と話してるんだ?」


 庭でヴリトラ達が話をしていると、ズィーベン・ドラゴンの中からジャバウォック達が顔を出して外を覗く。ジャバウォック達はラピュス達の姿を確認すると一斉に外へ出て来た。


「よぉ!ラピュス達じゃねぇか?」

「今日はどうしたの?」


 ジャバウォックとリンドブルムが訪ねて来た理由をラピュス達に訊くとヴリトラがラピュスから手紙を受け取り、リンドブルム達に見せる。


「これを持って来てくれたんだよ」

「何、それ?」

「ザザムスの爺さん達からの手紙だってよ」

「えぇ?本当?」


 海賊達からの手紙だと聞いてリンドブルムも驚く。七竜将は皆海賊達がその後どうなったのか全く知らないので、彼等が手紙だと聞かされて少し興奮していた。


「マジか!何て書いてあるんだ?」

「早く見てみようよ!」

「分かった分かった!今開けるから待てって!」


 ジャバウォックとファフニールが手紙の中が気になり早く読む様に急かす。ヴリトラはそんな二人の方を向いてめんどくさそうな顔をしながら封筒を開ける。


「ねぇねぇ!何て書いてあるの?」

「落ち着け、ファウ・・・」


 ヴリトラの隣で飛び跳ねながら興奮するファフニールを宥めるオロチ。そんな二人のやりとりを見てヴリトラは困り顔になる。


「それじゃあ、読むぞ?・・・・・・『拝啓、七竜将の皆様。以前は大変お世話になりました。皆さんが雇ってくださった弁護人のおかげで私達の罪は軽くなり、騎士団の監視下で生活するという形になりました』」


 ゆっくりと手紙に書かれてある内容を読み上げているヴリトラ。彼の周りにはリンドブルム達が集まり、黙って手紙を覗き見ながら聞いていた。


「『儂等は今、とある小さな町に住み小さな機織きしょくの店をして生活しております。元々、海賊として生きる事に抵抗を感じていたお嬢は幼い頃に母親から教わった機織を思い出して可愛らしい織物を作ってそれを大勢のお客さんに勝ってもらっています。最初は不景気でなかなかお客さんが来ませんでしたが、パージュや他の者達も力を合わせて手伝い、少しずつお客が増えていき、いつの間にかその町で有名な店となりお嬢の顔にも笑顔で出てきました』」

「きしょくって?」

「はたおりの事だよ」


 機織の意味が分からないリンドブルムにニーズヘッグが分かりやすい言葉で教える。二人が話を終えたのを確認したヴリトラは手紙を再び読みだす。


「『パージュの奴も最初は全く機織が分からずに困り果てていましたが、お嬢が細かく丁寧に教えていき、今ではお嬢にも負けないくらいに上達し、二人が楽しそうに機織をしている姿は本当の姉妹の様でした。これからは二人が儂等の知らない生き方を見つけて行き、大勢の人達に笑顔を与えてくれる存在になってくれる事を儂等は心から祈っております。こちらが落ちつきましたら皆さんにお礼に伺いますので、その時はまたお手紙をお送りします。最後に、またお会いする日が来るまで、お体を大切になさってください。本当に、ありがとうございました。  ソフィーヌ織物店 ザザムス』、だってさ」


 全ての手紙を読み終わったヴリトラはラピュス達の方を見る。一同もザザムスやシャン達がどうしているのかを知って少し安心したのか笑顔を見せていた。


「どうやら上手くやってるみたいだね、あの人達?」

「ああ、海賊としての生き方しか知らないって言ってたが、あのお嬢ちゃんがはたおりを知ったおかげで別の生き方を選べたようだしな。これでアイツ等ももう戦いの世界に足を踏み込む事は無いだろう」


 平和な生き方を選ぶ事ができたザザムス達にリンドブルムとジャバウォックは笑いながら話し合う。そこへオロチとニーズヘッグが真剣な顔をして二人の会話に加わって来た。


「だが、新しい生き方を始めたからまだそれほど時間は経っていない。彼等が海賊の生き方から完全に抜け出すにはまだ時間が掛かるだろう・・・」

「同感だ。一度戦いの世界に入ってしまった者は簡単には戦いを忘れる事はできない。それに、自分達の罪もしっかり償わないといけないからな」

「周りから冷たい目で見られる事のあるだろう。しかし、それらを乗り越えて全ての罪を償った時、彼等は本当に戦いの世界から縁を切る事ができる。それが彼等の試練だ・・・」


 オロチとニーズヘッグがの言葉を聞きリンドブルム達も真面目な顔になり黙って話を聞く。


「大丈夫だよ、あの人達は固い絆で結ばれてるんだもん。どんな事があっても力を合わせて乗り越えて行けるよ!私達みたいに!」

「・・・そうね。海賊だった時から生死を共にしてきたんだもんね?」


 少し重い空気になっている所にファフニールが笑顔を見せながらリンドブルム達を見回す。そんなファフニールを見ていたジルニトラも微笑みながら頷いてザザムス達なら大丈夫だと言う。そんな二人の話を聞いたリンドブルム達も自然と笑って頷いていた。

 ヴリトラがそんなリンドブルム達の楽しそうな会話を見ていると、ふと何かを思い出してラピュス達の方を向く。


「そう言えば、生死で思い出したんだけど・・・カルティンの戦いでブラッド・レクイエムの連中の殺された騎士達はどうなったんだ?そっちの事は何も聞かされてないけど?」


 ヴリトラがブラッド・レクイエム社の機械鎧兵士に殺された騎士達の事が気になりラピュスに尋ねると、ラピュスは真剣な表情で答えた。


「・・・勿論、丁重に埋葬された。今はもう戦死者墓地に眠っている」

「そうか・・・家族の方は?」

「だいぶ落ち着かれた。覚悟していたとはいえ、私達が戦死を報告した時はかなり動揺されていたよ」

「当然だろう。騎士として働いているから何時死んでももおかしくないと覚悟していても自分の家族や大切な人が死んだと聞かされれば誰だった取り乱す。もし、大切な人が死んだと聞かされても何も感じなかったら、その人は人間じゃない。人間の皮を被った悪魔さ・・・」


 ヴリトラの鋭い言葉を聞き、ラピュスも真剣に話を聞く。ラランとアリサもそんな二人の会話を黙って聞いていた。


「ラピュス、前に俺が言った言葉を覚えているか?『人を殺して何も感じないのは異常者だけだ』と言ったのを?」

「ああ」

「確かの人を殺す事に何も感じない奴は異常だ。だけど、人が死んだ事を何も感じない奴もイカれてる。人の命が消える事は決して軽い事じゃない。命を奪う者も、奪われる者もショックを受ける。人間とはそう言う生き物なんだ」

「それは分かってる」

「お前だって、敵と戦い命を奪った時には心が揺れるだろう?」

「勿論だ」

「それが普通なんだ。・・・いいか、ラピュス?この先、俺達は人の命に関わる状況や立場に何度も立つ事になるだろう。人の命が消える光景を何度も目にする、それは俺達の立場上、仕方がない事だ。だけどな、心だけは絶対に無くすな?人の命が消えるのを見て何も感じなくなったら・・・その人間は終わる」


 ヴリトラが低い声でラピュスを見つめながら忠告し、それを聞いたラピュスは微量の汗を垂らしながら息を飲んでゆっくりと頷いた。ラランとアリサも目の前から伝わって来る緊張感に思わず固まり目を見張って二人を見ている。


「お前は遊撃隊から青銅戦士隊に出世して前よりも戦場に足を踏み入れる事が多くなるはずだ。今俺が言った事を忘れないでくれよ?俺は、お前に人が死んでも何も感じない様な人間になってもらいたくないからな・・・」

「・・・分かった。ありがとう」


 目を閉じながら話を聞くラピュスは忠告してくれたヴリトラに礼を言うとゆっくりと目を開いて彼の顔を見つめた。ヴリトラとラピュスはまるで互いを信じ、心配し合うように見つめ合っている。

 するとそこへアリサが目を閉じてわざとらしく咳き込んだ。


「・・・オホンッ!」

「「!」」


 アリサの咳を聞いて一瞬驚くヴリトラとラピュス。そこには呆れる様な顔で二人見るアリサとジト目で二人を見上げるラランの姿があった。


「お二人とも、仲が良いのは結構ですが、もう少し場をわきまえて頂きたいかと?」

「な、何を言ってるんだ!?」

「~~~ッ」


 顔を赤くして興奮するラピュスと頬を少し染めて目を反らしながら頬を指で掻くヴリトラ。


「と、とりあえず、折角来たんだから寄って行けよ?何か出すからさ?」

「そ、そうだな。なら遠慮無く・・・」


 誤魔化すように二人は話し合いをしているリンドブルム達の方へ歩いて行く。その後ろ姿を見てアリサは呆れ顔からニッと楽しそうな笑顔に変わった。


「・・・あの二人、気付かない間にいい感じになってると思わない?」

「・・・さぁ?」

「んも~、ラランはそういう事にはてんで無関心なんだからぁ」


 少し困った様な顔でラランを見下したアリサはヴリトラとラピュスの後を追ってズィーベン・ドラゴンの方へ歩いて行く。一人残ったラランはラピュスの背中をジーッと見つめている。


「・・・あれは・・・恋?」


 そう呟いたラランは遅れてアリサの後をついて行き、七竜将と三人の姫騎士は楽しそうに話をしながらズィーベン・ドラゴンの中へと入って行った。

 海賊の一件が終り、昇進したラピュス達と新しい暮らしを見つけたザザムス達。またいつも通りの平和な日が流れて行く中で彼等はそんな日常をのどかに過ごし笑っているのだった。


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