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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第六章~荒ぶる海の激闘~
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第百十七話  人魚の悪あがき 港消滅のカウントダウン!

 全ての上級BL兵を倒した七竜将。苦戦を強いられながらも彼等は全ての敵を倒し、残るは指揮官であるマーメイドを残すだけとなった。七竜将は戦いを終わらせる為に最後の戦いに挑む。

 港の中央で合流したリンドブルム達は目の前で停泊しているブラッド・レクイエム社の中型船を見上げていた。流石に長時間の戦いを繰り広げせいか彼等の表情には若干疲労が出ている。


「あとはこの船にいるマーメイドだけだな」

「うん!」

「だけど、まだ船に敵がいる可能性だってあるわよ?」


 ジャバウォックとリンドブルムの方を向いてジルニトラは少し不安な顔を見せる。そんな彼女の隣に立っているニーズヘッグが機械鎧の機銃の弾を再装填リロードしながらジルニトラに言った。


「心配ないさ。アイツ等は最初の襲撃で兵士の殆どを俺達にぶつけて来た。そしてソイツ等が全滅した後に上級兵を出したんだ。もしまだ船に戦力が残っていたのならさっきの上級兵との戦いで一緒にぶつけて来たさ」

「だから、もう船には敵がいないって事?」

「少なくとも戦闘員はいないだろうな。いるとしたら船の整備士くらいだ。まともな戦力はもう残っていないと考えて間違いないだろう」


 ニーズヘッグの推理を聞いて納得するジルニトラ。二人の近くでもファフニールとオロチがニーズヘッグの方を向いて話を聞き、ゆっくりと目の前の船に視線を向けた。


「それじゃあ、もう残りはあのマーメイドって人だけなんだね。どうしよう?このまま乗り込む?」

「いや、ヴリトラが戻ってからの方がいい。街の状況も知っておく必要がある・・・」


 街へ行ったきり戻ってこないヴリトラの事が気になり、彼の帰りを待ってから突入する事を提案するオロチ。それを聞いたジャバウォック、ニーズヘッグ、ジルニトラの三人も頷いて同意する。だがリンドブルムとファフニールはいまいち納得の行かないのか難しい顔をしていた。


「でも、その間に相手が態勢を立て直したり逃げたりする可能性だってあるよ?ヴリトラが来る前で身柄の確保ぐらいはしておいた方がいいんじゃない?」

「うん、私もそう思う」

「止めておいた方がいい。もし俺達が船に突入した瞬間に街で何かが起きたら直ぐに対処できなくなる。街の安全を確認してからの方が何かあった時の為に作戦を直ぐに決められるからな。それに何か罠が張ってある可能性もある」

「う~ん、言われてみればそうだね・・・」


 ニーズヘッグの話を聞いてリンドブルムは腕を組みながら納得した。ファフニールもギガントパレードを担ぎながら難しい顔を見せて頷く。そんな時、街へ続く中央の街道から声が聞こえて来た。


「おーい!皆ぁー!」

「・・・ヴリトラだ!」


 声を聞いて振り返るリンドブルムが街道を走って来るヴリトラとラピュスの姿を確認した。他の者達もヴリトラとラピュスの無事な姿を見て安心したのか小さく笑う。

 ヴリトラとラピュスはリンドブル達の下へやって来てゆっくりと周りを見回す。


「街に侵入した奴は全員倒した・・・おおぉ!?お前達だけで片づけちまったのか?」

「と~ぜん!あたし達は七竜将なんだからね?」

「そうそう!あんな敵なんて楽勝楽勝♪」


 驚くヴリトラの見ながら胸を張ってカッコつけるジルニトラとリンドブルム。そんな二人にヴリトラはニッと笑い、隣に立っているラピュスは二人を見ながら苦笑いを見せている。


「・・・そうやって調子に乗っているといつか足をすくわれるぞ・・・?」

「失礼ね!別に調子に乗ってなんかいないわよ」

「ちょっとカッコつけただけじゃん」


 二人から目を反らしながら低い声で言い放つオロチに二人はジッと睨み付ける。オロチはそんな二人の方を見ずに髪の手入れをした。


「ホラホラ、喧嘩すんな」

「相変わらずオロチは真面目だな?」


 怒るリンドブルムとジルニトラを宥めるジャバウォックとオロチを見て苦笑いをするニーズヘッグ。オロチは二人の方をチラッと見た後に再び髪の手入れに戻った。


「だが、オロチの言っている事も一理あるぞ?どんな相手だろうと、軽く見たらいつかはミスを犯す」

「ああ、お前達もオロチのああいうところを少しは見習え」

「ちぇ、分かったわよ」

「ハ~イ」


 ジルニトラとリンドブルムは若干納得できない様子で頷きながら返事をする。そんな会話を見ていたヴリトラとラピュスは苦笑いを見せ、船の方を向くと真剣な表情に戻った。


「ところで、敵の隊長さんは何処にいる?」


 ヴリトラがリンドブルム達に訊ねるとリンドブルム達も会話を止めてヴリトラの方を向く。


「ああぁ、あの女ならまだこの船の中にいるはずだ」

「女?・・・そう言えば、戦いが始まる前に他の連中の雰囲気の違う女の機械鎧兵士が甲板にいたな?」


 ジャバウォックの方を向きながらヴリトラが戦いの前に見た甲板の状況を思い出しながら訊き返す。ジャバウォックはヴリトラの方を向き黙って頷く。そこへオロチが話に加わりより詳しい情報をヴリトラに説明する。


「奴は自分をマーメイドと名乗った。その後に上級の機械鎧兵士が四人襲い掛かり、その後また奥の方へ下がって行った・・・」

「うん、それからは一度も姿を見せなかった」

「多分船内で隠れてるんじゃないかなぁ?」


 オロチに続いてリンドブルムとファフニールも話に参加してマーメイドが今何処にいるのかを想像する。そんな時、突然船首側の甲板から一つの影が現れてヴリトラ達を見下ろして。ブラッド・レクイエム社の部隊長、マーメイドだった。


「大したものね?まさか上級の兵士まで全員倒しちゃうなんて・・・」

「マーメイド!」


 姿を現したマーメイドを見上げて声を上げるファフニール。ヴリトラ達も一斉に武器を構えてマーメイドを見上げた。そしてマーメイドもヴリトラとラピュスの姿を見てまばたきをする。


「あら?新しい顔もいるわね?とりあえず、自己紹介だけはしておくわ。私はマーメイド、この部隊の隊長をしているの。よろしく♪」

「お前がブラッド・レクイエムの隊長か・・・。どうしてこの町や海賊達を襲った!?」


 ラピュスが騎士剣を構えながら尋ねるとマーメイドは退屈そうな顔で欠伸をする。


「ふぁ~っ。理由なんてないわ。ただ私達がこの海域を偵察している時に偶然海賊船と七竜将を見つけたから退屈しのぎの攻撃しただけよ。もっとも七竜将に攻撃したおかげでこんな風になっちゃったけどね?」

「たったそれだけの理由でこれだけの破壊活動を・・・?」

「何?もっと正確な理由をつけた方がよかった?」

「・・・ッ!外道がぁ!」


 ラピュスはマーメイドを睨み付けながら騎士剣を強く握る。だがラピュスの前にヴリトラが手を出して彼女を止める。そしてゆっくりとラピュスの方を向き顔を横へ振った。ラピュスはヴリトラの顔を見て「冷静になれ」というのを感じ取り悔しそうな顔を見せて俯く。

 落ち着いたラピュスを見た後にヴリトラはマーメイドの方を向き森羅の切っ先をマーメイドに向けた。


「もう終わりだ、マーメイド。お前の部下の機械鎧兵士は全員俺達が倒した。お前一人じゃ俺達に勝つ事もできない。諦めて投降しろ!」

「フフフフ。まだよ、私にはまだ切り札が残ってるわ」


 笑うマーメイドは走って甲板の奥へと逃げていく。それを見たリンドブルム達はマーメイドを追う為にジャンプして船首の甲板に飛び乗った。ヴリトラもラピュスを抱き寄せて高くジャンプをし、リンドブルム達よりも遅れて甲板の上に着地した。船首を見回すと何処にもマーメイドの姿は無い。


「アイツ、何処行きやがった?」

「・・・いた、あそこ!」


 リンドブルムは船尾の方へ走って行くマーメイドを見つけて指を差す。それを見たヴリトラ達は一斉にマーメイドの後を追って走り出した。甲板通路を通り、船尾側の甲板に辿り着くと一番奥に立ちヴリトラ達の方を向いて腕を組んでいるマーメイドを見つける。ヴリトラ達はマーメイドを逃がさない様にする為にマーメイドを取り囲んだ。


「追い詰めたぞ?無駄な抵抗はやめろ!」

「・・・フフフフ」


 ニーズヘッグの言葉を聞き突然マーメイドは笑い出した。


「何がおかしい・・・?」

「フフフ、貴方達にいい物を見せてあげるわ」


 そう言ってマーメイドは手の平サイズの黒い機械を取り出してヴリトラ達に見せた。よく見るとその黒い機械には小さな赤いボタンが付いていた。


「これはこの船の自爆スイッチよ」

「自爆スイッチ!?」

「そう、これを押せば十分でこの船は吹き飛ぶわ。更にこの船には長時間の航海ができるように大量の液体燃料も積んであるの。それも私達ブラッド・レクイエム社が混合した特別な物がね?もしこの船が爆発すればその液体燃料にも引火、この港町なんて跡形も無く吹き飛んじゃうわよ」

「何だと!?」

「バカ言わないで!液体燃料で町全体を吹き飛ばすなんてできるはずないわ!核兵器じゃあるまいし!」


 驚くヴリトラとマーメイドの言った事がハッタリだと言うジルニトラ。だがそんな二人を見てマーメイドは余裕の笑みを浮かべていた。


「言ったでしょう?私達が混合した特別な液体燃料だってね?」


 マーメイドはそう言うと持っていた自爆スイッチをポチッと押してしまう。


「て、押すなよ!」


 アッサリとスイッチを押したマーメイドにツッコミを入れるヴリトラ。マーメイドはスイッチを海に捨ててヴリトラ達を笑顔で見つめ続ける。


「今回は私の負けにしておいてあげるわ。でも、次はこうは行かないわよ?と言うよりも、まずアンタ達がこの場を乗り越えない限り、私と再戦する事も有り得ないけどね?」

「お前、この状況で逃げるつもりか・・・?」

「ええ、逃げるわよ。何しろ私は、人魚マーメイドなんだから♪」


 マーメイドが笑顔でオロチにそう告げた瞬間、マーメイドの機械鎧の両脚が動き出して外側を向き出した。そして両脚の裏側から妙な形の機械が飛び出して両脚の裏側を連結させる。更に連結された脚には無数の関節部分が現れてクネクネと動き出した。

 変形が終ったマーメイドの姿はまるで人魚の様な姿になっており、それを見たヴリトラ達は驚きの表情を見せる。


「お前、その姿は・・・」

「驚いた?ウフフ、これが私がマーメイドのコードネームを持つ理由よ。私の機械鎧は海中戦闘に特化した機械鎧なの。だから、海では私は誰にも負けないし、誰にも私を捕まえる事はできないって事。それじゃあ、バイバ~イ♪」


 話を適当に終わらせたマーメイドは勢いよくジャンプをし、バク転しながら海へ飛び込んだ。ヴリトラ達はマーメイドが海に飛び込むのを見て驚き、マーメイドの飛び込んだ所を覗き込んだ。ヴリトラ達は水中を華麗に泳ぐマーメイドの姿を薄らと捕らえるも、その姿はやがて見えなくなった。


「クソォ!また逃げられちまった・・・!」


 マーメイドに逃げられてしまい、悔しがるヴリトラ。ラピュス達も悔しそうな表情を見せている。だが、ニーズヘッグだけは悔しがっておらず、寧ろ焦っている表情を見せていた。


「お前等、悔しがっている場合じゃないぞ!?アイツの言った事が真実ならこの船はあと数分吹っ飛んじまう。この港町もな!」

「・・・ッ!そうだった!」


 ニーズヘッグの言葉を聞いて自爆装置の事を思い出すヴリトラ。ラピュス達も一斉にニーズヘッグの方を向いて驚きの表情を見せた。


「とにかく、船内を探せ!何処かに必ず自爆装置があるはずだ!」

「わ、分かった!」

「ニーズヘッグ、お前はブリッジに向かってくれ。船の中心であるブリッジになら自爆装置がある可能性が高い」

「了解だ!」

「他の皆は手分けして探すんだ。もしブリッジ以外の場所で自爆装置を見つけたら直ぐにニーズヘッグに知らせろ。爆弾の解体とかはニーズヘッグにしかできないからな」

「「「「「了解!」」」」」


 ヴリトラの指示を聞き頷くリンドブルム。ニーズヘッグや他の者達も揃って返事をする。そしてヴリトラ達は急いで居住区への入口へ向かった。

 船内に入ると直ぐにバラバラになった一同。ニーズヘッグはヴリトラの指示通りブリッジへ向かい至るところを調べて自爆装置を探し始める。ヴリトラ達もそれぞれ機関室、船倉、リフレッシュルームなど色々な部屋を調べて回った。既にマーメイドが自爆スイッチを押して数分が経っており、ヴリトラ達に表情にも焦りが見え始めている。


「なぁ、ヴリトラ。ちょっといいか?」

「んん?何だよ?」


 機関室を調べているヴリトラとラピュス。ヴリトラがエンジンや発電装置の間や天井を見て探していると中、ラピュスはヴリトラに声を掛けてきた。


「この船に敵がいないのなら、船を沖の方まで移動させたらいいんじゃないか?そうすれが例え爆発しても町は助かるのだから・・・」

「無理だ。マーメイドは押してから十分後に爆発するって言っただろう?この船は街の方を向いている。船を反転させて爆発の届かない辺りまで移動させるだけでも十分以上掛かっちまう。つまり、移動させるって言う方法は最初から潰されてるんだよ!」

「そ、そんな・・・!」

「それに、仮に爆発前に沖の方へ移動させたとしても、俺達は間違いなく爆発に巻き込まれてお終いだ」


 ヴリトラはマーメイドが最初から自爆装置を解除する以外に町を守る方法を与えなかった事に気付いており、急いで全員に自爆装置を探す様に指示したのだ。ラピュスは危険な状態にも拘わらず、冷静に仲間に指示を出したヴリトラに感服していた。

 それから再び自爆装置の探索に戻ったラピュスと黙々と探しているヴリトラ。するとヴリトラは大きなタンクの様な物に取り付けられている小さな四角い機械を見つける。その機械には点滅する小さな赤いランプ、その隣には小さな電子タイマーが取り付けられていた。


「あった!・・・自爆装置だ!」

「何!?」


 自爆装置を見つけたヴリトラにラピュスが駆け寄り隣で覗き込む。そして目の前にある自爆装置を見て驚きの表情を見せた。自爆装置の残り時間は既に二分三十秒になっている。


「急いでニーズヘッグに知らせねぇと!」


 ヴリトラは小型無線機のスイッチを入れてブリッジにいるニーズヘッグに連絡を入れた。しばらくすると応答した音が聞こえてヴリトラは目の前の自爆装置を見ながら話し掛ける。


「こちらヴリトラ、ニーズヘッグ、聞こえるか?」

「見つけたのか?」

「ああ、機関室の大きなタンクみたいな物に取り付けられていた。きっとコイツがマーメイドの言っていた特殊な液体燃料のタンクだろう」

「そうか・・・。了解した、すぐに行く。残り時間はどれ位だ?」

「・・・二分三秒だ」

「何ぃ!?マズイな、此処ブリッジから機関室までは最短距離でも一分は掛かる。そっちへ行って爆弾の構造を調べて解体を始めたらもう間に合わない!」

「間に合わない!?じゃあどうすりゃいいんだ?」


 ニーズヘッグが間に合わない事を聞いて声を上げるヴリトラ。それを隣で聞いていたラピュスや他の場所を調べていたリンドブルム達も耳を疑った。ニーズヘッグはしばらく考え込み、冷静にヴリトラと会話をする。


「・・・ヴリトラ、その自爆装置はどんな形だ?コードとかが出ているか?」

「んん?・・・ああ、ちょっと待ってくれ」


 ヴリトラはもう一度自爆装置を確認してどんな構造なのかを調べた。そして自爆装置の上の部分に赤、青、の二色のコードが橋を掛ける様に自爆装置に付いているのを確認する。


「ランプとタイマーが付いていて、上の部分から二本のコードが出ている。上から赤、青の順番だ。それ以外には何も無い」

「二本のコードだけか・・・その二つの中どちらかを切れば解除されるだろう」

「もし、間違った方を切れば・・・」

「ドカーン、だ」


 間違えば即爆発、ヴリトラの額から汗が垂れる。どちらかを切れば自爆装置を止める事ができると言う単純な作りだが、それ故にとても危険な自爆装置だという事をヴリトラとニーズヘッグは知ってる。故に強い緊張感が襲い掛かるのだ。


「俺がそっちに行ってソイツを止める時間は無い。ヴリトラ、お前が止めろ!」

「何ぃ!?無理言うなよ、俺には爆弾解体の知識なんて無いんだぞ?」

「分かってる!でも、だからと言って何もしなかったらどの道皆お終いだ。だったら一か八かやるしかねぇだろう!」

「うううう・・・」


 他の選択肢は無いという現実に表情を歪めるヴリトラ。そうこうしてる間に残り時間は四十秒を切ってしまった。


「ヴリトラ、もう残り時間が無いんじゃないのか!?」


 ラピュスが自爆装置のタイマーを見てヴリトラに訊ねた。違う世界の数字を理解できないラピュスでも状況が悪くなっている事ぐらいは感じ取れる。

 ヴリトラもラピュスに言われてタイマーを見て残り時間が少ない事を知り表情が更に歪んだ。


「ゲッ!残り一分を切りやがった!」

「何だと!急げヴリトラ!」


 ニーズヘッグに言われてヴリトラは森羅を抜きコードを切る態勢に入った。


「くそぉ、どっちだ?・・・赤、いや青か?」

「ヴリトラ、急げ!」


 悩むヴリトラと焦るラピュス。小型通信機の向こうでもリンドブルム達が大量の汗を垂らしている。そして、残り時間が十秒を切った。


「ぐぅ~~~っ!ええい、ままよぉ!」


 覚悟を決めたヴリトラは森羅で二つのコードの中、青い方を切った。

 船内に広がる静寂。各部屋にいる一同は全員目を閉じており、しばらくしてゆっくりと目を開ける。


「・・・・・・んん?」


 リフレッシュルームにいたリンドブルムは周囲を見回す。そして船が爆発していない事に気付いた。


「大丈夫、なの・・・?」


 自分達が無事である事に実感が無いリンドブルムは落ち着かずにただ座り込んで周りを見続けるのだった。他の七竜将のメンバーも助かった事を理解してホッと胸を撫で下ろした。

 そして機関室では自爆装置の前でヴリトラとラピュスが立ったまま固まっている姿がある。青のコードを切り、自爆装置のタイマーは一と二を交互に表示して止まっていた。


「・・・・・・」


 上手く行った事が分からずにやや放心状態のヴリトラ。隣でもラピュスが固まってタイマーを見つめている。


「・・・どうして、青を選んだんだ・・・?」

「・・・ハァ、テキトーだよ。考えてる時間も無かったしな・・・」

「~~~ッ!」


 力が抜けたラピュスはその場に座り込んで放心状態となり、ヴリトラも持っていた森羅を落してその場に座り込み深く溜め息をつく。嘗て経験した事のない緊張感にヴリトラ達は寿命が縮んだような感覚に囚われたのだった。

 激しい激闘の末に、マーメイドには逃げられてしまったものの、ヴリトラ達はブラッド・レクイエム社の勝利する。だが、まだヴリトラ達にはやる事が残っていた。戦いが終わってもヴリトラ達の仕事はまだ終わっていない。


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