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機械鎧(マシンメイル)は戦場を駆ける  作者: 黒沢 竜
第六章~荒ぶる海の激闘~
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第百十六話  黒い破壊者を噛み砕く竜達の牙!


 街に侵入して来たBL兵達を迎え撃つヴリトラ達。その中に上級のBL兵の姿があり抗戦するもその力に押されてしまうヴリトラはラピュスの作ったチャンスによって助けられる。そして街での戦いが終るとラランは他の避難所の様子を見に行くと別行動を取り、ヴリトラとラピュスは港へ急ぎ戻るのだった。

 港ではリンドブルム達がマーメイドの放った四人の上級BL兵と戦いを繰り広げている。通常のBL兵よりも大きく強力な武器と機械鎧を使う彼等を相手にリンドブルム達は若干押されている様子だった。


「ええーーいっ!」


 ファフニールはギガントパレードを振って目の前に立つ大型ハンマーを持つ上級BL兵に攻撃を仕掛けた。上級BL兵も持っている大型ハンマーを振り応戦する。二人の持つハンマーの頭がぶつかり合い、両者に大きな衝撃を伝えた。


「うわぁ~っ!」


 両手から体に伝わる衝撃に体を震わせながら声を上げるファフニール。一方、上級BL兵は声を上げる事も無くしっかりと大型ハンマーを握っていた。

 衝撃が和らぐとファフニールは大きく後ろに跳んで上級BL兵から距離を取る。そしてまだ若干震えている手をチラッと見た後に前を向く。そこには大型ハンマーを担ぎながら余裕の態度を見せている上級BL兵の姿があった。


「こ、こっちは手が痺れてるのに向こうは全くそんな様子を見せていない・・・何も感じていないの?」


 上級BL兵を見つめながら呟くファフニールはギガントパレードを構え直して集中する。それ直後に上級BL兵は機械鎧の両腕をゆっくりと下ろして肩の装甲を動かし始めた。すると機械鎧の中からヴリトラと戦った上級BL兵が使っていた物と同じ内蔵機銃が姿を現して銃口をファフニールに向ける。


「うわぁ、銃器!?」


 突然現れた機銃を見て驚くファフニール。そして上級BL兵はファフニールに向かって機銃を発砲した。ファフニールは急いでその場から移動して銃撃を何とか回避する。


「マシンガン!?大きなハンマーを使うから接近戦タイプかと思ったのに、これじゃあ私一人で戦うなんて無理だよぉ!」


 弱音を吐きながらもギガントパレードを左手に持つ変えて機械鎧の右腕を突き出して内蔵機銃を出すという冷静な行動を取るファフニール。そして走りながら機銃を撃ってくる上級BL兵に反撃した。上級BL兵も両肩の機銃を撃ちながら高くジャンプしてファフニールの銃撃を回避。倉庫の屋根の上まで跳び上がり銃撃を続ける。ファフニールも近くに積まれている木箱を踏み台にして倉庫の屋根まで移動した。二人は倉庫の屋根の上で向かい合い機銃と自分の得物を構える。


「此処なら下よりも広いから少しは戦いやすいかな?」


 一人で戦うのは無理などと言っておきながら余裕の表情を見せてギガントパレードを握るファフニール。そんなファフニールを見た上級BL兵も大型ハンマーを構え、機銃も狙いをつけて何時でも撃てる態勢に入っていた。そして両者は屋根を蹴り、相手に向かって跳んで行き再び自分達のハンマーの頭をぶつけ合う。

 その頃、リンドブルムとジルニトラはサコーM60を持つ上級BL兵と戦っていた。二人は上級BL兵のサコーM60の銃撃をかわしながら自分達の銃器で反撃するが二人の銃撃もアッサリとかわされてしまい戦いには何の変化も無かった。


「くらえぇ!」


 リンドブルムは走りながらライトソドムとダークゴモラの二丁を交互に撃って攻撃する。上級BL兵はリンドブルムの銃撃を回避、もしくは機械鎧と化している体の部分を盾にするなどして防ぎ、反撃の隙ができるとサコーM60で反撃する。銃口から吐き出される無数の弾丸はリンドブルムの足元や港の端に置かれている荷物に当たり石片などを飛び散らせた。

 上級BL兵がリンドブルムに向けてサコーM60を乱射していると、上級BL兵の左側に無数に積まれている革製の大きな袋の陰からジルニトラが跳び出してサクリファイスを撃った。上級BL兵はジルニトラの気配に気付いていたのか咄嗟に振り返りジルニトラの銃撃をかわした。


「チィ!かわされたわぁ!」


 隙を突いて攻撃したはずなのにギリギリで攻撃をかわされた事を悔しがるジルニトラ。そんな彼女に上級BL兵は銃口を向けてサコーM60を発砲する。ジルニトラは後ろにジグザグに跳びながら銃撃を回避し、今度はサクリファイスに付いているグレネードランチャーで上級BL兵を狙った。


「吹っ飛びなさい!」


 ジルニトラはそう言ってグレネードランチャーの引き金を引く。放たれたグレネード弾は上級BL兵に向かって飛んで行き命中するかと思われた。だが上級BL兵は両足の裏のジェットブースターを点火し高く飛び上がる。グレネード弾は上級BL兵に命中する事なく倉庫の壁に命中して爆発した。

 リンドブルムとジルニトラは空中で自分達を見下ろしており上級BL兵を見上げて驚きの表情を見せる。


「と、飛んだ!?アイツもオロチみたいに飛べるの!?」

「空を飛べるとなると、ちょっと面倒な事になるわね・・・」


 二人もヴリトラと同じ様な反応を見せて自分達が一気に不利になった事に気付いて汗を流した。戦いのおいて制空権を手に入れた者が有利に立つ。例え二対一で人数的に有利でも制空権を取られてはそれも意味が無い。

 上級BL兵は地上にいるリンドブルムとジルニトラに向けてサコーM60の銃口を向けて銃撃する。二人は雨の様に降り注ぐ弾丸を走ってかわし、近くに積まれている建築用の木材の陰に隠れた。


「ヤバいよ、どうするの?」

「空を飛んでる以上、あたし達の銃撃は簡単にかわされちゃうわ。何とか隙を見つけて攻撃を当てないと・・・」


 木材の陰に隠れながらリンドブルムとジルニトラは愛銃の弾倉を新しいのに変える。銃撃によって目の前に飛び散る木片を見ながら必死で考える二人、するとリンドブルムが何かを思いついたのかフッと顔を上げた。


「そうだ、これを使おう!」

「これって?」


 リンドブルムは自分の右腕の前前腕部を見て隅にある小さなスイッチを押した。すると前前腕部の装甲がスライドする様に動き、その下から小さな金属の球体が三つ並んで姿を現す。リンドブルムはその内の一つを手に取りジルニトラに見せた。


「小型爆弾じゃない。そんなのどうするの?」

「これをね・・・」


 リンドブルムはジルニトラの指で「耳を貸して」と合図を送り、ジルニトラは不思議そうな顔で耳を傾ける。リンドブルムは小さな声でジルニトラに何かを話し始める。しばらくするとジルニトラは意外そうな顔を見せて頷いた。


「・・・成る程、なかなかいいアイディアね?」

「でしょう?」


 何かいい作戦を思いついたの二人は木材の陰に隠れながら小さく笑い未だに銃撃して来る上級BL兵の方を向いた。

 一方、ジャバウォック達も上級BL兵達に若干手を焼いている様子だった。1mほどの大きさの鎖付き鉄球と野太刀を持つ上級BL兵を前に、ジャバウォック、ニーズヘッグ、オロチの三人も自分の得物を手に構えている。


「コイツ等、接近戦を重視した装備をしてやがる。迂闊に近寄れねぇな」

「ああ、それなら距離を取って銃器で攻撃した方が良さそうだ」


 ジャバウォックとニーズヘッグが戦い方を変えるべきだと話していると、オロチが斬月を構えたまま視線だけを遠くで戦っているリンドブルム達に向けている。


「距離を取って戦ってもあまり意味は無さそうだぞ・・・?」

「何?」

「どういう事だ?」


 二人がオロチの方を向いて尋ねるとオロチは両足の機械鎧を動かしてジェットブースターを点火させる。ゆっくりと上昇してジャバウォックとニーズヘッグの真上から二人の上級BL兵を見下した。すると野太刀を持つ上級BL兵も両足の機械鎧のジェットブースターを起動させて浮かび上がりオロチと同じ高さまで上昇した。それを見てジャバウォックとニーズヘッグは驚いて目を見張る。


「飛びやがった!コイツ等もオロチと同じジェットブースター付きの機械鎧を纏っていたのか!?」

「空を飛べるとなると、確かに距離を取って攻撃しても意味ないかもな・・・」


 二人が戦術の変更が意味ないと知って汗を垂らす。するとそこへもう一人の上級BL兵が鎖付き鉄球を勢いよく振り回しジャバウォックとニーズヘッグに向かって振り下ろした。二人は咄嗟に左右へ跳んで鉄球をギリギリで回避する。

 ニーズヘッグは鉄球をかわした直後に機械鎧の内蔵機銃を出して上級BL兵に反撃した。だが上級BK兵は鎖を引っ張り鉄球を引き寄せると片手でキャッチしニーズヘッグの銃撃をその鉄球を盾にして防いだ。


「何て奴だ、あのバカデカイ鉄球を片手で持ち上げるなんて・・・」


 自分の銃撃を鉄球で防いだ上級BL兵を見て驚くニーズヘッグはアスカロンを構えて敵の出方を待つ。すると今度はニーズヘッグと反対の方へ跳んだジャバウォックがデュランダルを構えて上級BL兵に向かって行く。


「まぁ、両腕が機械鎧なんだから鉄球を片手で持てても不思議じゃねぇよなっ!」


 上級BL兵の怪力の事を口にしながらデュランダルを振りおろして攻撃するジャバウォック。上級BL兵はジャバウォックの方を向き、鉄球で斬撃を止めた。デュランダルと鉄球がぶつかり火花と金属が削れる様な音を周囲に広げる。


「おまけにあの大きさの鉄球を持っておいてこの素早さ、今までの機械鎧兵士と違うのは間違いないようだな」

「いちいち分かり切った事は言わなくていいんだよ!」


 ニーズヘッグはジャバウォックに言い放ちながら上級BL兵に近づいて行き、アスカロンで攻撃を仕掛けた。上級BL兵は鉄球を持つ手に力を入れてデュランダルを押し返すとそのまま鉄球をニーズヘッグに向かって投げつけた。

 突然鉄球を投げつけて来た上級BL兵の攻撃に驚いたニーズヘッグは素早く横に跳んで鉄球を回避する。だが上級BL兵の攻撃はそれで終わらず、鎖を両手で持ち器用に動かして鉄球を引き戻すと回避行動を取ったニーズヘッグの真上に振り落した。


「何っ!?」


 真上からの攻撃に反応が遅れたニーズヘッグ。鉄球が彼を押しつぶそうとした、次の瞬間、ジャバウォックが鉄球に向かって右パンチを撃ち込んだ。機械鎧の拳が鉄球に当たり、鉄球はニーズヘッグの頭上から移動して地面に叩きつけられる。それを見た上級BL兵は舌打ちをして鉄球を引き戻した。


「大丈夫か?」

「ああ、助かったぜ」


 ジャバウォックに助けられて命拾いをしたニーズヘッグは礼を言いながら立ち上がり、ジャバウォックと並んで上級BL兵の方を向いた。

 空中ではオロチが野太刀を持つ上級BL兵と刃を交えていた。斬月と野太刀の刃が触れ合いそこから火花と高い金属音が響き渡る。二人の機械鎧兵士の空中戦は他の戦い違い条件は互角である為、どちらも気を抜く様子は無かった。


「やはりリーチが長く軽い野太刀を使う奴の方が若干有利か・・・」


 オロチは自分の使っている斬月と相手の上級BL兵が使う野太刀を見て自分と状況を再確認する。オロチの持つ斬月は斧である為、刃は短く重量もある。それに引き替え上級BL兵の使う野太刀は非常に刃が長く、大きさから普通の日本刀よりは重たいが斬月ほどではない。しかも使っている上級BL兵は両腕を機械鎧にしている為、重い野太刀も竿竹の様に軽々と振り回せる。故にオロチの方が不利な状態にあった。

 目の前で野太刀を構える上級BL兵を見てオロチは斬月を構え直し次にどう攻めるかを考え始める。


(さて、どのように攻める?奴の使い武器が野太刀だけではない事は間違いない。間違いなく機械鎧の内蔵兵器もあるはずだ。まずは奴の手の内を全て明かさせなければ・・・)


 上級BL兵の武装を確認する為に様子を窺う事にしたオロチはジェットブースターの出力を上げて上級BL兵に向かって飛んで行く。そして持っている斬月で勢いよく袈裟切りを放った。上級BL兵は野太刀でオロチの斬撃を止めるが、重い一撃を細い刀身で止めるのは難しく力に押されて後ろの飛ばされる。しかしジェットブースターを使い上手く体勢を崩さずに持ち堪えた。

 オロチの攻撃を止めた上級BL兵は野太刀を下ろすと両肩の装甲を動かして内蔵機銃を出すとオロチに狙いを付けて発砲する。オロチは素早く斬月を構え直して刃の部分で弾丸を弾いて銃撃を防いだ。


「チッ!やはり機銃を内蔵していたか・・・!」


 予想通りの武装をしていたことを知りオロチは上級BL兵を睨みながら弾丸を弾き続ける。

 しばらく銃撃を防いでいたオロチは隙を見てその場から移動し港の上空を飛び回る。上級BL兵もオロチの後を追い飛んで行く。オロチは後ろから追って来る上級BL兵に注意しながらジェットブースターの出力を上げて加速する。上級BL兵は加速したオロチを見て再び機銃を発砲し追撃した。


「撃って来たか・・・!」


 後ろから飛んで来る弾丸を避けながら跳び続けるオロチ。すると勢いよく急降下して上級BL兵の射線上から移動した。そして急降下しながら自分の真上を飛んでいる上級BL兵の方を向き直して両足の下腿の外側の装甲を動かして中から三連式小型マイクロ弾を出すと一斉に発射する。六発の小型マイクロ弾は上級BL兵の方へ向かって行き、それを見て上級BL兵は咄嗟に方向転換をして小型マイクロ弾をかわした。その直後に自分の真下にいるオロチに向かって急降下して行き、野太刀で反撃してくる。

 オロチは小型マイクロ弾をかわされた事には驚いたが、向かって来る上級BL兵には驚かずに冷静に対応し、斬月で上級BL兵の野太刀を止めた。だが飛行状態で真上からの攻撃を受け止めてしまった為にそのまま地上に向かって落されてしまい、港へ叩きつけられる様に落下した。


「オロチ!」


 ニーズヘッグが上級BL兵の鉄球をかわしながら落下したオロチの方を向いて名を叫ぶ。巻き上がる砂煙の中から埃まみれのオロチが姿を現し、空中の上級BL兵を見上げた。


「油断した・・・」


 オロチは自分のミスを口にしながら斬月を構え直して上級BL兵に警戒する。上級BL兵は空中から機銃をを撃って攻撃し、オロチはそれを走ってかわした。空中からオロチを追撃し、空を飛ぶ隙を与えないようにする上級BL兵にオロチは舌打ちする。


「チッ!やはり一度落したら簡単には飛ばせないか・・・。だが、私を甘く見るなよ・・・」


 走りながら呟くオロチは走ったままの状態で斬月を空中の上級BL兵に向かって投げた。斬月は回転しながら上級BL兵の方へ飛んで行くが、上級BL兵はそれをアッサリとかわしてしまった。遠くへ飛んで行く斬月を見届けた上級BL兵は再びオロチの方を振り向く。だがそこにはいつの間にか急接近し、目の前まで跳び上がっているオロチの姿があった。


「!」

「私が斬月や機械鎧に頼るだけの女と思ったか・・・?」


 鋭く冷たい視線を上級BL兵へ向けるオロチ。オロチは右手で拳を作り、上級BL兵の左胸にパンチを撃ち込んだ。


「鉄拳、鬼殺し・・・!」


 オロチの強烈なパンチが上級BL兵の左胸に命中し心臓に衝撃を与える。そのショックで上級BL兵の心臓は停止し、意識を失った上級BL兵はそのまま落下して地上に叩きつけられた。オロチもそれを確認しながらゆっくりと降下していき、着地するとブーメランの要領で戻って来た斬月をキャッチする。目の前で倒れている上級BL兵を黙って見下す。


「心臓を完全に停止させた。もう目覚める事はない・・・」


 クールな眼差しで見つめながら遠回しに勝利を口にするオロチ。彼女の言うとおり、上級BL兵はそれから再び動く事はなかった。

 その光景を別の上級BL兵と戦っていたジャバウォックとニーズヘッグが遠くから見ていた。一人で上級BL兵を倒したオロチの強さに少し驚いている様だ。


「流石はオロチだな、一人で上級のBL兵を倒しちまうなんて」

「ああ。俺達もさっさと片付けるぞ!」


 二人は視線を目の前で鎖付き鉄球を振り回している上級BL兵に向けて自分達の得物を構える。上級BL兵は回していた鉄球を二人の頭上から勢いよく振り下ろして攻撃し、ジャバウォックとニーズヘッグは同時に後ろへ跳んでかわした。回避した直後にニーズヘッグは機銃を出して反撃するがその銃撃を上級BL兵は鉄球を盾にして防いでしまう。すると上級BL兵の両脚の機械鎧の脛部分の装甲が左右に開き、機械鎧の中から縦一列に並んでいる小型ミサイルが姿を現した。


「何っ!?」


 突然現れた小型ミサイルに驚くニーズヘッグ。そして上級BL兵は小型ミサイルを全て発射させる。銃撃を止めたニーズヘッグはアスカロンを鞭状にして迫って来る六発の小型ミサイルを全て斬り、小型ミサイルは空中で爆散した。全ての小型ミサイルを破壊したニーズヘッグだったが、そんな彼に上級BL兵の鉄球が迫る。


「ヤベッ!」

「ニーズヘッグ、伏せろ!」


 背後から聞こえてくるジャバウォックの声に反応したニーズヘッグは咄嗟にその場にしゃがみこんだ。鉄球はニーズヘッグの頭上を通り越し、ニーズヘッグの後ろに立っていがジャバウォックの方へ飛んで行く。ジャバウォックはデュランダルを地面に刺して両手を空けた状態にしており、右腕を引いてパンチを撃ち込む態勢に入っていた。


「テメェの鉄球、自分で受けてみな!」


 ジャバウォックは右腕の機械鎧の肘部分が開いて小さなジェットブースターが姿を現す。そしてジャバウォックは向かって来る鉄球をジッと見つめる。


「ジェットナックル!」


 肘部分のジェットブースターが火を吹く、機械鎧の拳が鉄球に向かって撃ち込まれた。以前トコトムトの村でストラスタ公国軍と戦った時に使ったジャバウォックの機械鎧の内蔵兵器だ。鉄球とジャバウォックのパンチがぶつかり、大きな音を上げながら鉄球を上級BL兵の方へ押し飛ばす。飛ばされた鉄球は上級BL兵を巻き込むながら飛んで行き倉庫の入口の扉にぶつかり、扉ごと倉庫の中に上級BL兵を吹き飛ばした。倉庫の中では多くの物資に囲まれて動かなくなった上級BL兵の姿がある。

 外では疲れた表情で倉庫を見つめるジャバウォックとニーズヘッグの姿があった。


「助かったぜ、ジャバウォック」

「何言ってやがる?お前ならあの程度、簡単に乗り切れたはずだぜ?」


 小さく笑いながら話をするジャバウォックとニーズヘッグ。三人の力によって上級BL兵の中の二人は倒れ、ジャバウォック達は見事に勝利した。

 そして同時刻、リンドブルム達の方でも戦いに変化が現れていた。


「それじゃあ、手筈通りに行くよ?」

「OK」


 木材の陰に隠れながら話をするリンドブルムとジルニトラ。二人は何かの作戦の確認をしていたのか、話が終ると上級BL兵の銃撃が続く中、木材の陰から二手に分かれて飛び出した。上空から二人を見ていた上級BL兵はまずリンドブルムにサコーM60を向けて追撃する。銃弾の雨が降るな中で全力で走り続けるリンドブルム。するとリンドブルムは分かれて走ったジルニトラの方を向いて目で合図を送る。それを確認したジルニトラは自分の手の中を見る。そこにはさっき木材の陰に隠れていた時にリンドブルムが出した小型爆弾があった・

 ジル二トラは走るのを止めて空中でリンドブルムを狙っている上級BL兵を見上げて持っている小型爆弾を投げた。小型爆弾を真っ直ぐ上級BL兵の方へ飛んで行きフルフェイスマスクに当たる。


「!?」


 上級BL兵は銃撃を止めて視線を顔に当たったものへと向ける。そして宙を舞う小型爆弾を見つける。そして彼の足元ではリンドブルムがライトソドムを抜いてその小型爆弾を狙っていた。


「・・・バーン!」


 リンドブルムはそう言って引き金を引く。銃口から吐き出された弾丸が小型爆弾に命中、上級BL兵の目の前で小型爆弾は爆発した。

 爆発に巻き込まれた上級BL兵は上半身から煙を上げながら落ちて行き地上に叩きつけられた。爆発で上半身は殆ど焼け焦げ、煙も上がっておりよく見えなかった。そんな動かなくなった上級BL兵の近くによりリンドブルムとジルニトラは見下ろしている。


「上手くいったね?」

「ええ。でも、まさかこんな簡単で単純な手に引っかかるなんてねぇ・・・」

「優れた兵士ほど単純な作戦に引っかかりやすいってオロチが言ってたよ?」

「ハハハハハ・・・」


 リンドブルムの言葉を聞き、ジルニトラはただ苦笑いをするのだった。

 残ったファフニールも最後の上級BL兵と倉庫の屋根の上で戦いを繰り広げている。ハンマーの頭をぶつけ合い、相手の隙を伺いながら戦っている両者は一歩も引く様子を見せていなかった。


「フゥ、ずっと戦ってきたのに全く怯む様子が無い」


 目の前で大型ハンマーを持つ上級BL兵を見てファフニールは小さく息を吐いた。そんな彼女に上級BL兵は容赦なく両肩の機銃を撃つ。ファフニールは屋根の上を走り銃撃を回避しながら上級BL兵へ近づいて行く。そして攻撃範囲に入った瞬間にギガントパレードを勢いよく横へ振って攻撃する。だが上級BL兵はジャンプしてそれをかわし、そのまま両足のジェットブースターを起動させて空中戦に入ろうとした。


「逃がさないよ!」


 そう言ってファフニールは右胸を覆っている機械鎧の装甲を動かし始める。すると右胸の中から丸い赤いリニアレンズの様な物が姿を現してゆっくりと光りだす。そして空中へ逃げようとする上級BL兵を狙いリニアレンズの光をより強くする。


「くらえぇ!」


 ファフニールが叫んだ瞬間、光るリニアレンズから黄色い光の弾が放たれた。光弾は上級BL兵の方へ向かって行き、そのまま直撃して爆発する。空中で爆発しバラバラになった機械鎧や大型ハンマーは屋根の上や地上へと落ちて煙を上げ、それを見届けたファフニールは右胸の装甲を元に戻しゆっくりと深呼吸をする。


「・・・フゥ、やっぱりこの『粒子弾砲』は凄い破壊力だなぁ」


 自分の右胸をそっと撫でながら呟くファフニール。彼女が今使ったのは「高出力粒子弾砲」。メトリクスハートによって作られた高出力のエネルギーを使った粒子砲の一種。その破壊力は強大で七竜将が使う機械鎧の内蔵兵器の中で最大の火力を持っている。

 屋根の上から地上のリンドブルム達を見て手を振るファフニール。それを見てリンドブルムやジルニトラも手を振り、ジャバウォック達も簡単に合図を送った。


「これで全員勝ったね」


 笑いながらそう言って倉庫の屋根から飛び下りたファフニールはリンドブルム達の下へ戻って行った。

 それぞれ上級BL兵と戦い、苦戦しながらも勝利したリンドブルム達。彼等のまだ底の見えない力はレヴァート王国にとって最高の戦力となり、ブラッドレクイエム社にとって最大の脅威となるだろう。


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