第百一話 防衛準備と最終確認
海賊達と戦う為の特訓を終えたヴリトラ達はいよいよ海賊達との戦いを迎える。まだどれ程の戦力かも分からない海賊に僅か二十二人の傭兵と騎士、町の自警団が力を合わせて戦いを挑む。どの様な戦いになるのかは誰にも想像できなかった。
戦いの当日、ヴリトラ達は朝早くから戦いの準備に大忙しだった。海賊達の侵入路である港に土嚢や木箱と使ったバリケードを作り、町の中にも幾つもの仮拠点やバリケードを作るなどをしていた。
「よしっ!此処はこれくらいでいいだろう」
港から町へ入る入口付近に土嚢を積み上がてバリケードを完成させた特殊スーツ姿のヴリトラは汗を拭って一息つく。周りでも自警団や町の住民達が力を合わせてバリケードを作ったりなどをしている姿があった。その中にはニーズヘッグやファフニールの姿もある。
「ヴリトラ!」
自分の名を呼ぶ声がしてふと振り返ると、鎧を着たラピュスが走って来る姿を見つめた。ラピュスはヴリトラの前まで来ると状況確認の為に周囲を見回す。
「港の方がある程度進んだようだな?」
「いいや、まだだよ。港は一番海賊達の戦力が集中すると思われる場所だ。一番守りを固くしておかないといけない、もしかすると、迫撃砲をだけじゃなくて海賊船の大砲も撃ってくるかもしれないからな」」
「海賊船の大砲を?」
「ああ。多分、海賊達はあそこの沖に停泊して小船を降ろし、海賊達を上陸させるつもりだろう。その時に海賊達が上陸しやすいよう援護砲撃をしてくる可能性が高い」
ヴリトラは沖の方を指差して海賊船の停泊位置、海賊船の行動を予想する。それを聞いたラピュスは難しい顔をしながらヴリトラの隣で沖を見つめている。
「・・・それは考え難いんじゃないのか?今までの襲撃では海賊達は海賊船の大砲を撃ってこなかったとゲイル殿は言ってた。それにあそこから砲撃するには遠すぎると思うぞ?」
「前の襲撃で使ってこなかったから今回も使ってこないって思ってるのか?それは考え方が甘すぎるだろう。戦いでは常に相手の動きを読み、その裏をかいて行動するのが基本だ。前の戦いで大砲を撃ってこなかったから今回も撃ってこないと自警団や俺達に思い込ませて油断させようとしている、と読むのが正しいんじゃないか?」
「確かに、言われてみればそうも考えられるな・・・」
「それだけじゃないぜ。船に積まれている大砲っていうのは想像してる以上にも射程は長いんだ。あの沖からなら少なくともこの港に砲弾を当てる事ぐらいはできるはずだぜ」
海賊達の考えを読みながら腕を組んで話をするヴリトラ。ラピュスもそんなヴリトラを見て真面目な顔で頷く。これまで何度も窮地を潜り抜けて来たヴリトラを見て来たので彼の考えは信頼できると感じているのだ。
「・・・もう少しバリケードを多くしよう。大砲で直ぐに壊されちまうかもしれないが、少なくとも海賊達や迫撃砲の侵攻の妨げくらいにはなるさ」
「分かった。町の者達に伝えて材料などを運ばせよう」
「頼む・・・。ところで、町の方はどうなんだ?」
ヴリトラが町を担当していたラピュスの町の現状を尋ねる。ラピュスは懐からカルティンの地図を取り出し、それを広げてヴリトラに見せた。
「今はこの町長の町の守りを固くする為に土嚢や木箱などを使って正面入口や裏口にバリケードを設置している最中だ。既に町の中に仮拠点やバリケードを設置し終え、住民達も自警団を除いて全員が町の地下倉庫に避難している」
「町の入口の方はどうだ?」
「そっちの方もやり終えた。入口を囲む様に土嚢を積み、町の内側にも仮拠点を一つ作っておいた」
ラピュスは前にヴリトラ達と話した海賊が港の反対側、つまり町の入口から攻めて来る可能性があるという事を計算して町の入口の守りも固める為にバリケードを設置していたのだ。ヴリトラもその話を聞いて陸からの侵攻の対策を終えた事を知り頷いた。
「これでもし陸から海賊達が攻めて来ても不意を突かれる事は無い。とりあえず入口の方は大丈夫だが、港からの侵攻はもっともキツイ。港近くの仮拠点にはできるだけ多くの騎士を配置させておいてくれ」
「ああ」
話が終るとラピュスは地図をしまい、町の方へと走って行った。ラピュスが去った後、ヴリトラはまたバリケード作りを再開する。現時刻は午前の九時を回っており、海賊の襲撃予定時刻まであと三時間だった。
港でバリケード作りが進んでいる時、町では仮拠点やバリケードの設置作業が終わり、七竜将や騎士団、自警団が町にまだ避難している人がいないかを確認する為に町の中を見回っていた。リンドブルム、ララン、ジルニトラは数人の騎士と自警団員を連れて町の大通りを歩き、建物の窓を見回している。
「この辺りにはもう誰も人はいないようだね?」
「・・・うん」
町の見回しながらリンドブルムが歩きながら民家を見上げており、その隣でもラランが並んで歩いている。二人の後ろではジルニトラが大通りの端から端を見ながら歩いていた。
「この大通りも広いわねぇ。迫撃砲なんて横に並べても軽く五つは入りそうよ?」
「本当だね。しかもこの大通りは港から町長の家までの道で一番近い距離だから、海賊達は通る可能性も高いよ」
リンドブルムとジルニトラが今自分達がいる大通りは海賊達にとって戦いやすい場所になるのではないかと話をしていると、三人の後ろを歩いていた自警団の一人が声を掛けてきた。
「この大通りは普段は市場で店も多く出ており、道幅も店が出ている時は丁度いいくらいなのです。海賊が襲撃して来るようになってからは店も片付けてこれ程広い通りになってしまいまして・・・」
「そう言えば、この大通りは迫撃砲の砲撃跡なんかがありませんけど、前の戦いの時には使われなかったんですか?」
「ええ。運よく、海賊達の迫撃砲の砲弾が底をつきまして、此処を通られる前に引き上げていったんです。もし前の戦いで海賊達が此処を通っていれば、町長の家も危なかったでしょう・・・」
少し暗い表情を見せる自警団員が前の戦況を振り返り、それをリンドブルム達に話す。それを聞いたリンドブルム達は大通りの港側の入口と町長の家側の入口を交互に見た。
「前の戦いで使わなかったって事は、今日の襲撃には海賊達はこの町を通る可能性があるって事だね」
「ええ、しかもこの大通りの長さはざっと見て200m。迫撃砲を運びながら歩いて進んだとしても出口まで掛かる時間は約2分。走って行けば1分も掛からないわ」
「一応、港側の入口の前に仮拠点を設置してあるけど、もしその拠点を突破されれば一気に町長の家まで近づいちゃうよ」
「ええ、しかもこの大通りは出口までは一本道で身を隠す場所も無い。そして後退しようにも隠れる場所が無いから迫撃砲に狙い撃ちをされちゃうわ・・・」
大通りまで攻め込まれたら押し返すのは難しくなり、自分達は一気に不利になると考えるリンドブルムとジルニトラ。考え込む二人をラランと騎士達、自警団員達は黙って見ている。すると、ラランはリンドブルムの特殊スーツを軽く引っ張った。
「ん?何?」
突然自分の特殊スーツを引っ張ってくるラランの方を向くリンドブルム。ラランは大通りをチラッと簡単に見た後にもう一度リンドブルムの方を向いた。
「・・・此処は隠れる場所が無いんでしょう?」
「うん。迫撃砲を此処まで持ち込まれたらかなり面倒な事になるね・・・」
「・・・でも、海賊達も逃げ場は無くなる」
「え?」
ラランの言葉にリンドブルムは小首を傾げる。ジルニトラも不思議そうな顔を見せて彼女を見ていた。するとラランは民家の屋根を指差して口を開いた。
「・・・上から攻撃すればいい」
「上から?」
ジルニトラは民家の屋根の上の方を向いて聞き返す。リンドブルムや周りの騎士達も同じように屋根の上を見上げる。しばらくして、リンドブルムはハッと何かに気付いて様な表情を見せた。
「・・・・・・あっ、そうかぁ!その方法なら逆にこっちが有利になるね!」
「・・・確かに。それにしても、こんな簡単な事に気付かないなんて、あたし達もまだまだね」
「アハハ、そうだね。今回はラランのおかげでいい作戦が見つかったよ。ありがとう、ララン!」
「・・・う、うん」
何かいい作戦を思いついたのか、リンドブルムはラランの手を握って礼を言う。ラランも突然笑って自分に礼を言うリンドブルムを見て照れくさいのか、頬を少し赤くして頷く。
それから、七竜将、第三遊撃隊、自警団は港に集合して作戦の確認をした。既に時間は午前十時になっていた。
「みんな集まったな?いよいよ海賊達との戦いが始まる。アイツ等は迫撃砲と言うとんでもない武器を使って来る。下手をすれば俺達もこのカルティンもただでは済まない、損害を少しでも減らす為にはできるだけ早く海賊達を倒すしかないんだ。皆、頑張ってくれ!」
ヴリトラの言葉に騎士、自警団員達は気合を入れながら声を上げる。七竜将が姫騎士達もヴリトラと一緒に騎士達を見ながら鋭う表情を見せていた。
「この港には七竜将から俺とジル、ニーズヘッグの三人、遊撃隊からラピュス、アリサ、そしてMP7を持つ騎士を四人、そして自警団から数人が付く」
「分かった、騎士は私が選んでおく」
ヴリトラの指示を聞いて頷くラピュス。ニーズヘッグ、ジルニトラ、アリサの三人も黙って頷いた。
「町長の家の守りはファウとジャバウォックに任せる。リブル、ララン、オロチの三人はそれぞれ仮拠点に付いて町に侵入して来た海賊達を迎え撃ってくれ」
「了解♪」
「任せろ・・・」
ファフニールとオロチがそれぞれ自分の役割を聞いて返事をし、リンドブルム達もヴリトラの方を見ながら頷いた。
「仮拠点にいる奴は押されているところがあれば、できるだけそこの救援に向かうようにしてくれ。それと迫撃砲は銃器を使う奴がいない場合は絶対に戦いを挑むな!」
ヴリトラがもう一度迫撃砲の脅威をその場にいる者達に力を入れた声で話す。そして騎士や自警団員達もそれを聞いて顔に緊張が走る。
「そうだ、ヴリトラ。実は一つ作戦に加えたい事があるんだけど・・・」
「ん?何だ?」
突然手を上げて作戦の追加を進言するリンドブルムを見てヴリトラは尋ねる。
「実は町長の家に続く道の中に凄く大きい通りをジルと見つけたんだ。そこは一本道で隠れる場所も無くて、通過されると町長の家の直ぐ近くに出ちゃって、迫撃砲を持ち込まれたらかなり不利になりそうなんだよ」
「だからね、ちょっとそこの通りに仕掛けをしておきたいの」
「仕掛け?」
リンドブルムに続いてジルニトラもヴリトラに作戦の変更を話し、それを聞いてヴリトラはジルニトラの方を向き、仕掛けとやらの内容を尋ねる。そして二人はヴリトラ達にその内容をは伝えて作戦の一部を変更した。
一時間後、配置決めも終わり、各自それぞれの持ち場で戦いの準備をしたり武器の確認などに入った。ヴリトラ達は港のバリケードの陰に身を隠しながら沖の方を見ている。ヴリトラ、ニーズヘッグ、ジルニトラはそれぞれ遠距離用の武器を手に取って海賊船が姿を現すのをジッと待っていた。
「あと一時間で正午か・・・」
「一時間もあれば全ての準備と確認も終わる。余裕で奴等を迎え撃つ事ができるな」
バリケードに隠れながら話をするヴリトラとラピュス。二人の手にはそれぞれオートマグとハイパワーが握られており、二人は弾倉の弾を確認すると再び沖の方に視線を戻した。
「問題は奴等がどんな編成で攻めて来るかだな。主力がこの港から攻めて来るのは間違いないが、別働隊がどれ位の数なのかで戦いは左右される。そっちは運に任せるしかないな・・・」
「こちらの予想した通りに相手が部隊を編成してくれていると嬉しいのだがな」
二人が海賊達の攻め方について話をしていると、ヴリトラの耳の小型通信機からコール音が聞こえてきた。気付いたヴリトラは小型通信機のスイッチを入れる。
「こちらファフニール。ヴリトラ、聞こえる?」
「ファフニールか、どうした?」
「たった今町長さんが地下へ避難したよ。もう町に残ってるのは私達だけ」
「分かった。これで間違って町の住民を攻撃してしまう様な事は無いな」
「助けに来ておいて私達が町の人達を傷つけちゃ洒落にならないもんね?」
「フッ、確かにそうだ」
ファフニールの半分ふざけた様な言葉を聞いてヴリトラは小さく笑う。ヴリトラが隠れているバリケードの斜め後ろにある二ヵ所にバリケードに隠れていたニーズヘッグとジルニトラも小型通信機でその通信を聞いていたのか、ヴリトラの様に小さく笑っていた。
「ところで他の仮拠点の様子はどうだ?」
「町の入口前の拠点にはオロチが行ってるけど、今のところは何もないみたいだよ?・・・そうだよね、オロチ?」
「ああ、人影一つ見えない・・・」
ファフニールが小型通信機を通してカルティンの入口前の拠点にいるオロチに尋ねると、オロチも小型無線機を使い返事をする。オロチは斬月を肩に担ぎ、バリケードから顔を出して目の前にある左右の道を交互に見た。
「此処から見て右側、つまり海賊達が使うと思われる浜辺に繋がる道からは誰も来ない。そして私達がこの町に来る時に使った渓谷に続く左側の道からも誰も来ない・・・」
「そうか。もし読み通り海賊達が浜辺からその道を通って町へ来るのなら、間違いなく右の道から来るはずだ。警戒しておけよ?」
「了解・・・」
ヴリトラはオロチの返事を聞くと小型通信機を通して七竜将全員に向けて力の入った声を出す。
「いいか皆?分かってると思うが、自分が機械鎧兵士だからと言って負けないなんて思い込むなよ?俺達の世界にも生身で機械鎧兵士を倒した人間だっているんだ。世界には俺達の想像を超えた力を持つ奴がいるんだ!」
隣でヴリトラの話を聞いていたラピュスが少し意外そうな顔を見せていた。生身の人間で超人的な力を持つ機械鎧兵士を倒した者もいると聞き、今まで機械鎧兵士は無敵だと思ていたのだろう。ラピュスは表情を変えずに黙ってヴリトラの横顔を見ていた。
「そして、この世界にも俺達よりも強い奴がわんさかいるはずだ。今回の敵は普通の海賊だろうが、迫撃砲を持っている。俺達機械鎧兵士も迫撃砲をまともにくらっちゃあ、ただじゃ済まない。最後まで気を抜くなよ?」
「分かってるぜ、んな事はよ」
「伊達に長い間戦場を潜り抜けて来たんじゃないんかだらね」
「そう言うお前こそ、油断して失敗するなよ?」
ジャバウォック、リンドブルム、ニーズヘッグがそれぞれ自分の思った事を小さく笑いながらヴリトラに言う。互いに相手を信じながら忠告し合う七竜将。彼等の絆は決してそこら辺の傭兵や兵士達の絆の様な並の物ではない。何度も窮地を潜り抜け、何度も共に生き残って来たからこそ生まれた強い絆で結ばれているのだ。ラピュスはそんなヴリトラ達の絆が羨ましいのか、微笑みながらヴリトラを見続けていた。
「よし、それじゃあ残り一時間、海賊達が来るまで皆体力を・・・」
ヴリトラが話を終わらせようと最後に一言言おうとした瞬間、突如何処からか警鐘の鳴る音が聞こえて町中に響き渡った。その音を聞いたヴリトラ達はフッと顔を上げて鐘の鳴る方を向く。港の端にある見張り台の上に一人の自警団員が立っており、片手に剣を持ちながら警鐘を鳴らしている姿があった。
「来たぞぉーーっ!海賊達の船が来たぞぉーーっ!」
自警団員からの海賊が来たという知らせを聞いて港にいるヴリトラ達の表情が鋭くなる。海賊達が予告していた時間より一時間も早く来た事に驚いて体に緊張が走った。
「予告していた時間よりも一時間も早く来るとは・・・。クッ!海賊達め、やはりウソをついていたか!」
「まぁ、そうだろうな。町を襲って金品や食料を奪うのにわざわざ相手に教えた通りの時間に来る必要は無い。と言うか、時間通りに来る海賊なんて、ただのバカだよ・・・」
相手を油断させて隙を突くという海賊達の作戦を読んでいたのかヴリトラとラピュスは鋭い表情で沖の方を見て持っている拳銃を構える。二人の後ろのバリケードに身を隠しているニーズヘッグとジルニトラも内蔵機銃とサクリファイスを構えて臨戦態勢に入っていた。
「皆、聞こえるか?予想していたよりも早く海賊達が来やがった。いよいよ戦いが始まるぞ」
「ヘッ、やっぱり早く来たか。もっとも海賊が時間通りに来る、なんて約束を守るとも思えねぇけどな?」
「ヴリトラ、海賊船は見えるのか・・・?」
オロチが港の現状を尋ねるとヴリトラは沖の方を向いて質問に答えた。
「・・・いや、此処からだとまだ建物の陰に隠れてて見えない。だが直ぐに姿を見せるはずだ、皆、周りにいる騎士や自警団員に戦いが始まる事を伝えておいてくれ!」
「「「「「「了解!」」」」」」
ヴリトラの命令に返事をし、七竜将は一斉に小型通信機を切った。ヴリトラは自分の周りで同じようにバリケードに隠れながら自分の方を向いている騎士や自警団員達の方を向いて力強い声を出した。
「皆!もうすぐ海賊船が姿を現す。奴等は港が大砲の射程に入った途端にぶっ放って来るだろう。だけど、アンタ達には俺達七竜将が付いてる。簡単には負けやしない。・・・いや、必ず勝つ!いいな、皆!」
その言葉を聞いた騎士、自警団員達は一斉に声を上げる。そしてジッと沖の方を見ていると、港の端にある建物の陰から大きな船が姿を現した。三本のマストに黒い帆、そしてマストのてっぺんにも黒い旗が掲げられていた。そして無数の大砲が海賊船から砲口を出し、デッキには大勢の海賊達の姿がある。明らかに海賊船と分かる外見だった。そして海賊船の周りには数隻の小型船が浮かんでいる。よく見るとその小型船には大砲が一つ積まれており、その周りに数人の人影もあった。どうやら迫撃砲を積んだ小型船の様だ。
「お出ましだ!」
ヴリトラがニッと笑い海賊船を見ていると、海賊船の大砲がヴリトラ達に狙いを定める。そして砲口から轟音と共に砲弾が吐き出されてヴリトラ達に向かって飛んで来た。だが砲弾は港に届く事無く湾内に落ちて沈んでいった。砲撃して来た海賊達に騎士や自警団員達がどよめく。
「落ち着け!まだ距離がある。恐らく威嚇砲撃だろう・・・」
「お前の読み通り、奴等、海賊船の大砲も使って来たな?」
「ああ、海賊船の砲まで使ったという事は、この襲撃で全てを奪い取るつもりだろう。だが、そうはさせないぜ」
ラピュスと共に海賊船を睨むつけるヴリトラ。すると海賊船の周りに浮いていた小型船が一斉に港に向かって動き出した。海賊船も進路を港に変えてゆっくりと動き出す。それを見たヴリトラは海賊船が大砲の届く所まで移動して一気に砲撃するという事に気付いた。そしてオートマグを構えてニッと笑う。その後にラピュス達も一斉に銃器を構えて海賊戦闘態勢に入った。
いよいよ始まった海賊との戦い。無数の大砲を積んだ海賊船と迫撃砲を積んだ数隻の小型船にヴリトラ達はどう立ち向かうのか。今までの戦いの中で最も激しい戦いが始まろうとしていた。