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1日目終了

 教室にみんな入ると先生が入ってきて、みんなを座らせた。

 私も自分の席に座る。

 先生はみんなが席に着くのを見届けてからしゃべり始めた。

「今日からこのクラスの担任になる中村修一(なかむらしゅういち)です。1年間よろしくお願いします」

 そう言って優しく微笑む中村先生は、黒髪にメガネをかけている優しそうな先生だった。

 この先生なら1年間大丈夫そう。よかった……。

 ホッと息をついた。

 ふと結を見ると、ものすごく嫌そうな顔をしていた。

 どうしたんだろう?

 そんなことをぼんやり思っていると、先生が明日の予定を話していた。

「えっとですね……明日は1時間目に自己紹介をしてもらいますので、話す内容を考えておいてください。2時間目は校内案内。3時間目は交流を兼ねてスポーツをしましょう。明日はこれで終了です。体操服を持ってきてください」

 自己紹介とか、本当に嫌。笑われるだけじゃん……。はあー、明日行きたくない。

 一気にテンションが下がっていると、終業のチャイムが鳴った。

「詳しいことは明日話しますね。では……起立」

 先生がそう言うと、みんなガタガタと音を立てて立ち上がった。

「礼」

「ありがとうございました」

 みんな一斉に礼をし、挨拶をしてみんな思い思いに動き出した。

「結、さっきなんで嫌そうな顔してたの?」

 良い先生っぽいのにと付け足すと、露骨に嫌そうな顔をした。

「嫌だよ、ああいう人。絶対裏表ある。なかったとしても面倒な性格だよ、あれ」

 はあ、面倒とつぶやく結を綾と二人で見ながら苦笑した。

 そのとき、二つ結びをした女の子が声をかけてきた。

「えっと、左右(あてら)さん。呼んでるよ」

 結のほうを見るとハテナを浮かべていたが、何かを思い出したのか、鞄を持って立ち上がった。

「じゃあ先帰るね。あ、伝言ありがとう」

 結が二つ結びの子の肩をぽんっと叩いて出ていった。

「あの、ありがとね。声かけにくかったでしょ」

 綾が苦笑しながら言った。

「大丈夫。左右さんって少し怖いと思うけど優しいね」

 二つ結びの子が笑いながらそう言った。

「あ、あたし月見里杏里(やまなしあんり)っていうんだ」

 よろしくっと自己紹介してきた。

 この子、もしかして天然……?

「私、日向海沙(ひなたみさ)です」

「うちは音太綾(おとおあや)です」

 私たちも自己紹介した。

「さっきいたのが左右結(あてらゆう)。ちょっと男っぽいけど優しい面もあるよ」

 綾はそう言うけど、全然優しくないと私は思ってる。根は優しいのはわかってるけど、いつも私のことからかってくるし……。

「私のことは名前で呼んで。あとタメでいいから」

 杏里がそう言い終わったときに結のお母さんが入ってきた。

「海沙。綾ちゃん。結を見なかった? 全然連絡ないからこっちまで来たんだけど……」

 教室にもいないわ……と教室を見渡しながら言った。

「結ちゃんならもう帰りましたよ」

 綾が丁寧にそう答えた。

「綾ちゃん、教えてくれてありがとう。まったく結ったら、いっつも遊びに行って」

 プンプン怒りながら教室を出ようとしていた。

 相変わらずだな……。なんであのお母さんからあの意地悪な結が生まれたんだろう?

「あ、二人とも、お母さんが待ってたわよ」

 そう言い残して帰っていった。

「やばい、帰らなきゃ!」

 慌てて自分の鞄を取りに戻り、

「じゃあね、杏里」

「杏里ちゃん、また明日ね」

 杏里に挨拶して、急いで校門へ向かった。

 校門に行くと、お母さんたちがいた。

「海沙、早く! このあと仕事なんだから」

 車を指しながら早く乗れと訴えている。

「ごめんなさい」

 お母さんの周りがものすんごく黒い……。

「綾、また明日ね」

 そう言い車に乗った瞬間、ビューンと走りだした。


 すぐに家に着いた。

「ご飯はあるもん食べといて」

 それだけ言うと、お母さんは仕事に行ってしまった。

 入学式のときぐらい休めばいいのに……。

 鞄の中から鍵を取り出し、家に入った。

 制服から私服に着替え、台所でお湯を沸かす。

 棚から適当にカップラーメンを取り出し、お湯を注ぎこんだ。

 新しい小説の主人公どうしようかな。

 タイマーをセットし、リビングの机にラーメンを置いて、執筆モードに入る。

 ジャンルどうしよう? ファンタジー? でも最近そればっかだな……。じゃあ全然書いてない恋愛? いやいや、そんな乙女チックなものを書ける自信はない。うーん……。

 ピピピピピ。

 丁度タイマーが鳴った。

「いただきます」

 タイマーを止め、ズズズっとラーメンをすすった。

 やっぱりファンタジーにしようかな。主人公は……男の子かな。あー、でも学園ものでも良いかも。結が主人公だったら面白そう!

 ラーメンを食べながらそんなことを考えていると結からメールが来た。

 一瞬ビクッとなったけど、メールを見るとプリが張ってあった。

 海沙も来るー?

 本文はたった一言で、プリも送られてきていた。

 それには結、吾妻君、結の弟、(いちじく)君が写っていた。

 小説書きたいから遠慮しとく。

 そう返信して、またラーメンを食べ始めた。

 本当は吾妻君たちが怖いからなんだけど……。

 最後の一口を食べ、ノートを開いて執筆モードオン。

 主人公の名前は、無難に佐藤っと。下は……どっちでもいけるように空にしよう。

 名前を書き、細かい設定を書いていく。

 ピーンポーン

 インターホンが鳴った。

 誰だろう?

「はい」

 そう言うと、ものすごくだるそうな声が聞こえてきた。

「結が日向に渡してこいって言うから届けに来た」

 結、また人を使って……。

 外に出ると、そこには中学のときの同級生がいた。

「ほらっ」

 ぐいっと紙袋を押し付けられた。

「あ、ありがとう……ございます」

 そう言ってお辞儀をした。

「別にいい。結の命令に逆らったらあとが怖いからな」

 ああ、なるほど。あとで仕返しが来るね。

 同級生はそそくさと帰っていった。

 それを一応見送り、私も家に入った。

「結、急にどうしたんだろう?」

 リビングに戻り、紙袋を見つめながらそんなことをつぶやく。

 紙袋を開けると、小さな箱とラッピングされた袋があった。

「なんだろ……」

 小さな箱を開けると、パンッと音を立ててビヨーンと指人形が飛び出してきた。

 私はびっくりして腰を抜かしてしまった。

 これが結の狙いか!

 次は引っかかるものかと袋を開けてみる。

「あれ? 飛び出してこない」

 袋の中をのぞくと、小さいおもちゃの手が飛び出し、顔に当たった。

「いったー。やっぱこれもびっくり箱……」

 紙袋に箱と袋を入れようとしたら、ペンと消しゴムが出てきた。

 あっ! このペン、私が欲しいって言ってたやつだ!

 結も良いところあるね!

 失礼な褒め方をしながらまた小説を書き始めた。

「ただいまー」

 玄関からお母さんの声が聞こえてきた。

 時計を見るともう19時過ぎだった。

 そんなに集中してたんだ。

 夕食を食べて少し勉強をし、お風呂に入った。

 もう22時か。明日に備えて寝よう。

 髪をぱぱっと乾かして、寝た。

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