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入学式の朝

 今日はまちにまった入学式。友達たくさんできるかなー、なんて思う私ではありません。

 友達ができるか以前に、ちゃんと接することができるかが問題なのです!

 と、心の中でしゃべっていると、「そろそろ行くわよー」と、お母さんが声をかけてきた。

 私は慌てて立ち上がって、鏡の前に立った。

 リボンの形良し。髪型も良し。鞄の中身もチェックしたし、いざ、戦場へ!

 と、鞄を持って自分の部屋を出た。

「お母さん、もう行けるよ」

 リビングへ入りお母さんに声をかけると、お母さんは「じゃあ行きましょう」と言って玄関へ行った。

 私も続いて玄関に行き靴を履くと、ケータイが鳴った。

 誰だろうと思いケータイを開けると、(ゆう)からメールが来ていた。

 何々……『もう教室にいるよー。友達できたよ』、と。……うん、やっぱり結は行動が早い。

 はあ……とため息をつきながら外に出ると、お母さんが車に乗って待っていた。

 急いで後部座席に座ると、「行くわよーっ」とお母さんが言い、ビィユーンッと車が発車した。

「お母さん、とばしすぎ」

 私がそう言っているのにお母さんは涼しい顔で

「あまりとばしてないわよ?」

 そう言った。

 ちょっ、あまりとか、普段どんだけスピード出してるんですか!

 心の中でそうツッコミながら、早く学校へ着くことを祈った。


 学校へ着くと着くで大変だった。

 ここ……広すぎない……!?絶対道に迷う。

 思わず口が開いてしまった。

 教室までどうやって行こう……。

 頭の中はそれでいっぱいで、お母さんの「保護者は先に体育館らしいから」という言葉を聞き逃してしまった。

 まあ、お母さんと一緒なら……と、自問自答を繰り返して出た答えがそれだった。

「ねえ、お母さん……ってあれ?なんでいないの……?」

 My worldに入りきっていたので、お母さんがいないことに今気がついた。

 どうしよう……。こもままじゃ遅刻しちゃうじゃん。

 やばいやばい……と言いながらオロオロしていると、急に笑い声が聞こえてきた。

 この笑い声は……。

「結っ! それに(あや)!」

 よかったーと思い、未だに笑っている結と笑顔の綾の元へ行った。

「何、校門で百面相してるの……。あはは、マジうける」

 全然笑いが止まらない結を見て少し泣きそうになっていると、綾が結を止めた。

「結ちゃん、だめだよ。海沙が泣いちゃう」

 結は笑いを止めたが、今度は意地悪な笑みを浮かべて、私に「先に教室に行って」と伝えた。

「えっ!? えっと……あの……」

 私がモジモジしていると、冗談だって嬉しそうに笑った。

 そして綾を教室に連れていこうとしたので、私も必死に付いていった。

 教室に行く途中で、吾妻(あがつま)君に会った。

「結っ、探したぞ」

 結がどうしたのか聞いていたら、吾妻君がピアスを結に渡した。

「忘れ物だ。オレん所の教室にあったぞ」

「おう、サンキュー。さすが(りゅう)

 ピアスを耳につけながら結は吾妻君を褒めた。

 そして吾妻君は「じゃあまた後でな」と言い、教室に戻った。

「結ちゃん、そのピアスかっこいいね」

 綾が結のピアスを褒めると、嬉しそうに笑って、歩き出した。

 私と綾は結に付いていきながら、結に質問した。

「結、そのピアス誰かにもらったの?」

 私がそう聞くと、結は友達と答えただけだった。

 ……結の言う友達が多すぎてわかんない。

 綾に目で訴えてみたが、首を横に振るだけだった。

「はい。とぉーちゃぁーく。ウチらの教室はこちらでーす」

 結のやる気のないBGMに、1ーEのドアを見た。

 綾を見ると、不安そうな顔をしていた。

 ああ。たぶん、私もこんな顔してるんだな。

 不安そうな綾の顔を見て結は笑った。

「大丈夫だって。いろんな人と話したけど、みんな良いヤツだったし。それに笑顔で第1印象が変わるんだぜ」

 結が男口調でそう言うと、綾がそうだねっと笑った。

 私もつられて笑うと、結が笑ってドアに手をかけた。

「ようこそ、1ーEへ」

 ガラガラっとドアを開けながら結が言った。

 教室の中は賑やかで、楽しそうな雰囲気だったのでホッと一息つく私と綾だった。

「今、出席番号順で座ってんだ。綾はウチの隣で……ああ、後で案内するからちょっと待ってて。海沙は……ここだな」

 そう言って結が指で示した席は、ドア側から2列目の一番前の席だった。

 えっ、本当に!?一番前とか嫌なんだけど。

 心の中で必死に叫んでいたら、結が綾を連れて自分の席に戻っていってしまった。

 席は、結が窓際の前から五番目。ようするに後ろから二番目。綾は結の隣の席だった。

 二人とも、すごい裏切りだよ……。

 なんていじけてたら先生が来た。

「みなさん、おはようございます。これから入学式が始まりますので教室を出て1~20、21~40で二列に並んでください」

 先生がそう言うと、さっきまでの雰囲気が嘘みたいに張り詰めた空気になった。

 えっと……私はここかな……と並んだら、隣が綾だった。

 心の中で喜んでいたら、いつの間にか前に進んでいた。

 やばいっと思って小走りしたらこけそうになったところを綾に助けられた。

「ありがとう、綾」

 そう言うと、綾は気にしないでと微笑んでくれた。

 綾は優しいなあ。結だったら絶対助けないよ。

 そう思っていると、後ろのほうでくしゅんっと誰かがくしゃみをしていた。

 結かな?

 なんて思いながらクスッと笑ってしまった。

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