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殺意:紫恋

 ……殺してもいいですか?




 

「紫苑どうした、黙り込んで?」

 智おじさんの声で俺は、過去から現実に引き戻される。目の前にいる二人、『おじさん』と『母さん』が俺の父親を殺した張本人だ。

「紫苑、言っておくが……俺は変わったお前の父親を止めただけだ。恨むなとは言わないが、少なくともあのままではお前達二人は殺されていたかもしれないんだぞ?」

 その言葉に母さんは小さな鳴咽を漏らす。何を考えているかは知らないけど、悲劇を思うのなら……許さない。

「智おじさん……」

「……何だ、紫苑?」

「父さんは…どうして変わったんですか?」

 優しかった父さんが変わった理由……どうしてだ。

「ははは……簡単な理由だな、それは。……紫苑、人が変わるというのはとても簡単な事なんだよ」

 智おじさんは口元を吊り上げ、気持ち悪いくらいに微笑むと、ただ一つ笑っていない瞳で俺を捕らえる。

「聡……お前の父親は極度の仕事とストレスで精神的大分参っていたようだ。そんな時……自分だけが苦しんでいると思い込んでいる時に、側で無邪気に騒ぐ子供がいたとしたら?」


―――!? まさか……


 男の言葉に俺はある答えが頭に浮かぶ。


「……ふふ、気付いたようだな……お前が大好きだった父親を変え、そして死に追い込んだのは―――」


「……そんな……」



『―――お前だよ』



 その愛情を足の裏で潰したのは……自分自身。




「違うわ紫苑! あなたのせいじゃない!!」

 女が声を張り上げ男の言葉を否定する。が、その言葉は、俺に届かない。

「俺なのか……? 俺が父さんを……」

「そうだ紫苑、無邪気ゆえだな」

 残酷に肯定され、その真実に俺は視線を下に移す。

 ここで死んだ父さんは俺のせいで殺された??


「違う!! あなたは……あなたは……」

「……そろそろだまれ、美佐江……見苦しい」

「うっ!」

 女は男に胸倉を掴まれると、勢いよく突き飛ばされ、部屋の壁にたたき付けられる。

「母さん……」

「ははは、まだこいつを『母』と呼べるか? 優しい子な紫苑は?」

 そう言うとゆっくり、こっちに微笑みを浮かべながら歩いてくる男。その瞳は今までで一番冷ややかだった―――


『その優しさが自分を殺すのさ』


 ―――そう、あの時のように。


「!? ぐっ」

 とっさに俺は男の繰り出した右手から逃れると、距離を置く。その男の右手には一メートルくらいの縄のロープが握られていた。

「……ほう、捕まえたかと思ったが―――」

「がはっ」

 男は自分が言葉を発し終わる前に俺に近づき、左手で俺の首を掴むと、そのままの勢いで畳みに倒す。

「紫苑!! 智さん止めて!!」

 叩き付けられたショックで動けないのか、ただ女は叫ぶだけ。

「美佐江……腹をくくれ。もう無理だ。紫苑には死んでもらう」

 男は俺に馬乗りになると、右手に握ったロープを俺の首に伸ばす。

「……お父さんの所に言って謝るんだな」

「…………まだだっ!」

「!?」

 俺は身体を斜め右に傾けると、戻る勢いを利用して男に裏拳を叩き込む。顎にもろ喰らった男は俺の上から消失した。

「まだぁ゛……まだ父さんの所には行けない……俺は、俺には―――」

 ゆっくり立ち上がった俺は膝をつく男を見下ろす。


『―――まだ謝らなくちゃならない奴らがいるんだ』            

 

俺の近くにいた奴ら。馬鹿みたいに笑って騒いで……何度…殺してやろうかと……何度…………何度……、


 

感謝したことだろう。



 胸の苦しみは、あの引き裂かれそうな思いは『殺意』であり、『愛情』。


 俺は……謝らなくちゃいけないんだ。


「は……はは……はははははは……」

 男は俺に背を向け笑い出すと、ゆっくりと立ち上がる。

「……紫苑…勘違いするなよ。俺はお前の事情なんて知った事じゃない…。ただ死ねばいいんだよ!」


 振り返った男が右手に持つ物はロープではなく、小さく、しかし確実な殺意を放つバタフライナイフ。

 それはスローモーションのように俺に向かってくる。―――!? 避けられない……


 死が近づいてくる。俺の首元を引き裂く軌道で。


―――くそっ……




ざしゅっ……







「…………な、なんで」

 畳みに倒れた俺には今の状況が理解できない。……そうさ……いつだって俺の常識をいとも簡単に凌駕するんだ―――



「シ……オン…平、気?」


―――この女は。


「恋華!? お前、どうして!!」 俺の上に覆いかぶさる恋華は灰色の髪を俺の身体に巻き付かせ、力無く笑う。


「恋……!?」


 ふと、恋華を起こそうと触れた左腕に違和感を覚えた俺は、視線をその違和感へと向ける。

「…お前……ばかやろ…」

 紅く濡れた俺の右手が全てを物語っていた。

「……何でお前は俺を庇えるんだよ…何で傷つく事が出来んだよ……?」

 その俺の問いに恋華は、傷ついていることを感じさせない満面の笑みで答えた。



『好きだからだよ、シオン』


 単純過ぎて溜息が出そうな答えだ。

「馬鹿! 馬鹿だお前は……」

 俺は恋華をどかすと立ち上がる。

「シオン……」



「ありがとう」



 俺は男をしっかりと視界に捕らながら恋華に言葉を紡ぐ。それは心からの言葉。

「シオン、トモは病院に運ばれて行ったよ……まだ安否は分からないけど……」

「そうか……あの光景を見ても俺の所に来るなんてな……」

「……皆、シオンを信じてるから」



『……知ってるよ』



「……お別れは終わったか、紫苑? その女の子がこなければ楽に逝けたものを……。人を傷つけてまで生きたいか?」

「言ったはずだよ、智おじさん……。俺はまだ謝らなきゃいけない奴らがいるんだ……あと、俺は…智おじさん、あんたを―――」



『―――殴りたい』



『言うようになったな、シオン……』


 胸から響いた皮肉の声が俺を笑わせる。


「紫苑!!」

 男は俺が走りだすと同時にバタフライナイフを構え、身構える。


「あぁぁぁぁ!!」


どしゅっ


 ……痛みと熱さが混じった感覚に俺は歯を食いしばる。痛みは左腹部から、視界に映るは男の冷笑。俺の右拳は男の左頬に届く事なく、殺される。

「残念だったな紫苑―――」


「あぁぁぁぁぁ!!」


「あがっ!?」


 男が油断した隙をついて俺は勢いよく頭突きをかます。何とも言えない感触と共に左腹部の痛みは増したが、顔をおさえて男はよろける。

「……ぐあ゛っぢごん」

 男は俺からの追撃を恐れたのか、すぐに顔から手をどかすが、それがあだになった。

「あぁ!!」

「!? ぐっふ」

 全神経を集中した俺の右拳は男の左顎にめり込む。 右拳に激痛を感じながらも、俺は拳を振りぬいた。

 智おじさんが畳みに倒れ、俺も畳みに倒れたのはほぼ同時。

「……ぐぅ……」

 倒れた衝撃で走った激痛の原因、左腹部に視線を送ると、そこからはじわじわと紅い血液が流れ出している。

「シ、シオン!!」

 仰向けに倒れた俺の視界に映るあおい瞳。頬に生暖かい水滴が落ちてくる。

「……れ……れん……か…お、おれ……の…ちも……あか……」

「馬鹿!! シオンの方が馬鹿だよ!! 死んだら許さない!! 絶対許さないから!!」

 恋華は制服の上着を脱ぐと俺の傷口にあてる。

「シオンのお母さん!! 救急車を!!」

「あ、は、はい!!」

 一部始終を呆然と見ていた母さんは恋華の声で我に返り、躓きながらも部屋を出ていく。

「……れ……れぇん…か……」


―――言わなくちゃ……


「喋らないでシオン!! 今、救急車くるから!!」


―――言わなくちゃ……


「れ……」

「お願い、喋らないで……ナイフが抜けちゃって血が止まらないのよ……」

 涙をボロボロこぼしながら俺の傷口をおさえて、自分の怪我をもろともしない恋華。

「…………れんか」


―――言わなくちゃ


「……なに?」

                                                                                                








『ごめんな』






 そして俺の意識は暗い瞼の裏側へ堕ちていった……。














 いつだって人は変われるんだ。


『よう、シオン。ところでお前は死ぬのか?』


 そこは暗闇の中、光るように浮かぶ道に俺ともう一人の俺が対面する形で立っている。

「……いや、まだ死ねないよ。俺にはやらなくちゃならないことがあるから」

 俺は『俺』に微笑むと、一歩足を踏み出す。その一歩には過去に感じた重さはなく、とても軽い。

「…お前は行くんだな、あっちに」

 高低のない『俺』の声が、暗闇の中静かに囁く。

「あぁ、俺は行くよ。色んな奴に謝り、感謝しながら生きていくよ」

「そうか」

 『俺』は微笑むと頭を左右に揺らし、瞳を閉じる。

「……ごめん、俺はお前にも謝らなくちゃいけない」

 俺の言葉に『俺』は瞳を開ける。

「お前は俺だ。でも、俺はずっとお前から逃げ続けて……『殺意』と『愛情』を自分勝手に解釈して堕ちようとしていた……。自分自身を受け入れられない奴に自分をコントロールするなんて無理な話しなのに…」

 そこまで言った時、『俺』が笑い始めた。

「はははは、人はこんなにも変わるのか」

「変われたのは皆のおかげだ。俺を見捨てず、信じてくれた皆がいたからだ……」

「……じゃあ、とっとと行くんだな」

 『俺』が右手を肩の位置まで上げると、暗闇の中、一本道に立つ俺の隣に新たな光る道ができる。それを確認した俺が『俺』を見ると、手を前後に力無く振り、早く行けと促している。            

「……なぁ、お前も一緒に―――」


「馬鹿言うな、どこまでお人よしなんだ、シオン」

「……」

 俺の言葉を遮った『俺』は呆れたように呟いた。

「勘違いするな、シオン。俺は確かに『お前』だ。けれど、性質そのものまで一緒に共有するのは無理な話だ。俺はこの道を歩み続ける。……この道はお前の歩む道のすぐ隣にある……。」

 小さく微笑む『俺』は一つため息をはくと、鋭い目つきで俺を睨んだ。

「……シオン、覚えておけ。俺は『お前』になることを諦めた訳じゃない……。次にお前が自分に弱音を吐いて、堕ちていくようであれば、その時は……容赦しない」

 殺意とは違う威圧感。鳥肌が立つ。

「……あぁ、分かった」

「じゃあ……さっさと行け、甘ちゃん」

 『俺』は俺に背を向け一筋の道を歩きだす。


「おいっ!!」


「……なんだ?」


 俺はとっさに叫んでいた。あんなに怯えていた感情との別れ……。



『……ありがとう…………紫苑』



『……さようなら…………紫苑』




 『俺』達はすごく近く、違う道を歩き始めた。







 沢山のモノを傷つけた。


 沢山のモノに手をかけた。


 許してくれとは思わない。


 俺は……この思いと共に歩いていく。







「……こんな気持ち初めてだ…」


 瞳を開けるとそこは病院だった。

 自分しかいない個室の中で、少しの間ストライプの模様が走る天井を見ていたが、俺はふと起きようと、上半身を動かす。……思ってはいたが、やっぱり身体が軋み、腹部に痛みが走る。

「……痛い…………」

 苦労の末、やっと上半身を起こした俺の瞳からは止めどなく涙が溢れ始めた。



 温かく。


 そして全てを包み込んでくれる。



「……ひとりじゃ……ないっ」



 俺の使うベットに上半身を乗せ、健やかに眠る灰髪の女。……そっと頭に手をおくと、その温もりは俺を受け入れてくれる。


「……恋華……っ」







 涙が、止まらなかった。














 ……もう、一人じゃない。

 それはとても嬉しいことなんだ。






「……そんな事があったんだ…」


 心地よい昼間の陽射しが、少し開いたカーテンの隙間から差し込み、恋華の灰髪を銀色に染める。

「…まだ俺は小さかったから……全部を理解した訳じゃなかったケド、父さんがいなくなって…母さんの態度に酷く傷ついた」

 俺は窓の外を見つめる。あの日から俺は一ヶ月近く眠っていたらしい。腹部の怪我は急所を外れていたため、大事にはならなかった。



『紫苑……私はあなたの為を思って―――』


『母さん、本当にそれが俺の為になったと思う?』


『……』



 母さんと智おじさんはあの後警察に連れていかれたと恋華から聞いた。


 そして―――



 ―――父さんが見つかったことも。



 父さんは母さんの供述で少し離れた山の中から発見されたらしい。……俺はいずれ対面するであろう骨だけの父さんを思うと少し複雑な気持ちになった。

「恋華……」

「んっ? なーに??」

 ほぼ毎日病室に顔を見せる恋華に俺は声をかける。


『ありがとう』



 以外とすんなりその言葉は出た。

「俺を見てくれて……認めてくれてありがとう…」

 凄く言いたかったことを言えるようになれた。

「…ありがと、シオン」

 感謝されている本人が感謝しかえすという所が恋華らしい。

「…でも、もっと感謝すべき人が……いるんじゃない?」


 ……感謝……


「!?」

 恋華の言葉に俺の頭がフル回転し、記憶が蘇る。

「恋華!」

「傷に響くから焦っちゃダメだよ、シオン。……じゃあ、行こっか」

 差し延べられた恋華の手を掴む。温かい恋華の掌に不安が少し和らぐ。


 恋華の温もりを感じながら俺は病室を後にした。







 いつも一緒にいてくれた奴。


 ただ隣で馬鹿みたいに笑ってくれ続けた奴。


 ……許してくれるとは思ってない。


 …ただ、言ってやりたい。






ガラガラッ


 スライド式のドアを開けると、そこには制服姿の田淵と、相変わらずの恰好をした瀬戸と絢ちゃんがいる。皆、突然姿を見せた俺にびっくりしているようだ。


『……知徳』


 俺とは違う、四人で使う部屋の一番左手の窓側。そのベットに上半身を起こして存在している男に俺は声をかけた。


「……桜…もう身体はいいの?」

「おぉ、桜よ、現実に帰ってきたようだな」

「お兄ちゃん!! もう平気なの!?」

「……あぁ……」

 皆それぞれ俺に声をかけるが、俺にその声がちゃんと聞こえていたかは分からない。

 何故なら俺の視線はずっと、頭と……おそらく身体にも包帯を巻いた知徳に向けられていたからだ。

「……」

 俺が言葉に迷っていると、知徳が視線を合わせ、口を開く。


「よぅ、シオン。ご気分はいかがで?」


 相変わらず……だけど、真剣な顔をして知徳が言った。






『じゃあ……バイバイ』


 あの時、脇道で俺は知徳の首めがけ足を下ろした。

ドンッ


 渇いた音が袋小路に響く。

 ……が、今は瞳を閉じた知徳の首の横。コンクリートの地面に俺の足はあった。


『……臆病者が』


 胸の中からあいつの声がした。

「だまれ……つまらなくなっただけだ…」


『はははっ……馬鹿は殺しても治らないか?』






 足が外れた理由―――それは簡単だ。






「……知徳、俺はお前に……」

「謝るってか?」

 知徳が俺の言葉を遮って言葉を口にする。その声にはどこか制圧感があって、俺は口が開かない。

「言っとくケド、俺は酷くご立腹だぜ? 理由は分かってんだろ?? お前は皆を傷つけて独りで消えちまおうとした。……俺達はお前を信じてたのに、お前は俺達を信じなかった。……最後のは俺らの勝手だけど」

 そういうと知徳は足を組、俺に改めて身体を向けた。

 右目に眼帯をしているせいか、俺を見る左目には力がある。        

「だからまだ俺はお前を許せそうにない……それは言っておく」

 場を沈黙が支配する。それは心地いいものじゃない。だけど……俺は逃げてはいけない。       

「知徳……これだけは言わせてくれ」

 俺は息を静かに、大きく吸い込むと、知徳に視線を合わせる。

「知徳……。お前の言っていることは痛いほど分かる。俺は自分勝手で臆病だ……皆を信じないで一人で堕ちようとしてた……。だけど……だけど、終わった今だから言える―――」



『―――ありがとう……ごめん』



 その言葉に知徳以外の皆は静かに微笑んでいる。 

「許してもらおうなんて思ってない……だけどこれからの俺を見てくれたら嬉しい、今度は間違わないもし……間違ったら教えてほしい。知徳……俺はお前を―――」


 ずっと口にしなかったこと……


『―――親友だと思ってるから』



「……そーかい…」

 知徳はそう呟くと顔を下に向ける。俺からはその表情を見ることは出来ないが、後は知徳次第だ。

「……じゃあ、俺は行くよ……」

「……あ、私も行くね。トモ、お大事に」

 俺は恋華と共に、知徳達に背を向ける。スライド式のドアを開けた時、手が震えていたが、それはとても気持ちがいいものだった。




「……意地っ張りだね、知徳」

 紫苑と恋華が去った病室でふと、瀬戸が口を開いた。

「……何がだよ」

 瀬戸の言葉に知徳は少しバツが悪そうに呟いたが、どこか嬉しそうだ。

「ふむ、同志よ……本当は桜のことを怒ってはいないのだろう?」

 田淵の言葉に、知徳は押さえていた感情が溢れ出たように笑い出す。


「はははははは……。いや、だってよ……シオンが…シオンがよぉ〜」


 傷に障るのではないかというほどベットの上で笑う知徳。


「シオンが謝るってのも珍しいのによぉ……」



『親友だってよ!』



 今だ笑いを止めない知徳に瀬戸と田淵、そして絢にも笑顔が移る。

「……嬉しかったんだね」

「あぁ、そのようだな」

「あはは、金髪のお兄ちゃん、可笑しい〜」



 ……人間って変われんだな。でも、変えた人間が俺じゃなかったのは残念だけど……。でも、あの子に負けたんなら……いいや。



 少しすると知徳の笑いは収まり、一呼吸つくと、天井を見上げた。

「ラストまで後少し……。シオンの勝負所だな。」

「そうだね……。ってかあんた桜の保護者みたいだね」

「ふむ、私も同感だ」



「……ほっとけ」







「俺は……変われるかな?」

 病院のラウンジにあるベンチに腰掛け、初冬を迎えた外界に言葉を紡ぐ。

「……もう変わったよ、シオンは」

 その答は俺の隣に寄り添うように座る恋華が口にする。

「早く退院したいな……」

「だーめ、シオンとトモは来年の春まで退院できないんだから」

 悪戯に喋る恋華の声に、俺は静かに瞳を閉じる。




 この思いは、桜の華が咲く頃に……。

ありがとう。

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