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第6話  漂 流

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン3


      「沖縄海底遺跡の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


箱根大学1年の慎吾、同2年のリナ。


リナは賭け麻雀で得たお金で、慎吾に沖縄行きの航空チケットをプレゼントする。


沖縄の海で泳いでいたが、天候が急変。波がうねり始め、高波が2人を襲う。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


      第6話  漂 流


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2月15日、金曜日。午後6時。




「ん……」


意識はないが,肌に突き刺す何かを感じる。


  ジリジリ……


全身に鈍い痛みのようなものがはしった。


「く……」


その痛みは、意識を覚醒させていく。


  ジリジリジリ……


「あっつ!」


叫び声と共に飛び起きたリナ。


「まぶし……」


ちょうど視線の先には太陽があり、思わず目をそむける。


「お、おはようございます。リナ先輩」


そむけた視線の先には、体育座りしている慎吾の姿があった。視線を合わせず、水平線を見つめている。


「……」


状況が飲み込めないまま


「……」


一呼吸ひとこきゅう置いて、周りを確認する。


「あちち……」


肌を突き刺していたのは、水平線の上に見える太陽からの光。隣には慎吾が座っていて、2人のいる場所は岩場。


「……」


後ろを振り返ると


「海……」


同じような光景だ。


「何? ここ、どこ?」


直径わずか5m程度の楕円形のような岩場。海抜数10cm程度の小さな領域には、時折波が侵入してくる。


「ちょっとした小島というか……」


「何、言ってんの。

 岩礁がんしょうってのよ、こーゆーのは。


 もう少し潮が満ちたら海面下になるから。

 こんなの島って言わないっつーの」


言いながら周りを見渡すが


「私が聞いてるのは、ビーチからどこにあるかって事」


さっきまでの砂浜は見あたらない。


「ぼ、僕もここがどこだか……」


「さっきまで泳いでた所は?」


「わ、わかりません。とにかく波が凄くて……

 どのように流されたか、全くわからなかったです」


「……」


リナは穏やかな海面を見ながら


「どこに流れ着いた?」


質問する。


「そこです」


慎吾はリナの目の前を指さした。


「どれぐらい流されたかわかる?」


「さ、さぁ? 1~2km?」


「距離じゃなくて時間よ。だいたいでいいから」


「けっこう流されてましたから……。3分ぐらい、いや、5分ぐらいかも」


「そんなに流されてたの!?」


やや驚いたあと


  【それだけ溺れて、よく生きていたわね、私】


じっと両手を見つめた。突然天気が崩れ、高波に遭遇した事は覚えているのが、その後の記憶は5秒もない。


「……」


自分の全身を見渡しても、傷らしい傷はなかった。


「ん?」


左肩。ビキニを止めているひもが、変な結び目になっているのに気づく。


  【あれだけ強い海流だったからね。水着、流されなくてよかったわ】


視線を合わさない慎吾をチラリと見た後、さりげなく紐を結び直した。そしてトレードマークの赤メガネをはずし、確認する。


  【これも】


無傷である事を確認し、慎吾に視線を移すと


「……」


相変わらずじっと水平線を見つめている。


  【まさか慎吾が……】


これまで幾度となく、慎吾には助けられてきた。頼りない見た目と違って、リナがピンチの時は率先して前に立ってくれる男だ。


「……」


露出度の高いリナの水着姿をまともに見られず、ただ水平線を見続ける慎吾。


「……」


リナは立ち上がり、水平線に視線を移した。


  【私の身長が165。この岩場が海抜50cmだと仮定して……】


頭の中で計算を始める。


「ありえない」


リナのつぶやきに対し


「な、何がです?」


ドキッとした表情を浮かべる慎吾。リナの方を向くも、視線はそらしたままだ。


「水平線まで約5km。

 360度見渡しても、私達が最初にいた砂浜は見えない。


 って事は、5km以上流されたって事でしょ?」


「えっと……」


「仮に5分流されたとして、時速60km以上で流された事になる。

 高速フェリー並の速さよ。


 そんな速さで海中なり、海面なり移動してたら、体中傷だらけのハズよ」


リナも慎吾もかすり傷1つっていない。


「……」


距離や速さの事は理解出来ないが、リナの言う【ありえない】が正しいであろう事は十分に理解した。


「し、しかし……」


いくら周りを見渡しても、自分達がやってきたはずの砂浜は見えない。


「……」


水辺線に近付く太陽を見ながら


  【あっちが西なら……】


リナは帰るべき道を模索する。


「見てるだけじゃ、ラチがあかない」


チラリと目の前の海面を見やったリナ。


  【なかなか、深そうだけど……】


思い切り背伸びをすると


「ちょっと潜ってみるか」


「え?」


ドボン!


慎吾の声と同時に海へ飛び込んだ。


「リナ先輩! 5km以上泳ぐ気ですか!?」


「まさか! 海流を調べるのよ。

 あと、何でもいいから情報があれば……ね」


立ち泳ぎで、首だけ出したリナが答える。大きく深呼吸した後、すっと潜っていった。


ドボン!


慎吾もリナの後を追う。


「……」


「……」


穏やかな海流にのって、平泳ぎで潜っていくリナ。一方、小刻みなバタ足だけでリナの後に続いていく慎吾。その右手にはパワーストーンが握られていた。


  【クラゲやウミヘビに気をつけて下さい】


慎吾はその霊能力で、喋らずともリナに言葉を伝える事が出来る。


「……」


後ろを振り返ったリナが頷いた。慎吾のように自分の言葉を伝える事は出来ないが、自分の意志はアイコンタクトで伝える。


「……」


再び正面を向くと、海流を感じながら行くべき道を探し始めた。



★☆


  【特に大きな流れは感じない】


海中はいたって穏やか。海流など感じる事なく、どこから流れてきたのか全くわからない。


  【上を見ても何も得られなかったから……】


何かしら陸へ戻るための情報を海中で得られないかと、いたるところに視線を突き刺す。


  【い、息が……】


苦しくなったので、海上へ浮上し


「ぷはっ!」


息継ぎした。


「……」


海面に顔を出し、辺りを見渡す。


「どうしました?」


リナについで海面に顔を出した慎吾。霊能力でなく直接尋ねた。


「岩場は?」


「え?」


言われて周りを見渡すが……


「あ、あれ?」


岩場はもちろん、元いた砂浜も見えなければ、一艘いっそうの船すら見えない。360度、水平線まで続く海だけだ。


「じょ、冗談でしょ?

 たった1分で海面がそんなに上昇するハズがない」


すでに太陽が水平線と接している。


「……」


愕然とする慎吾とリナ。


「太陽が落ちたら……」


間違いなく


「死ぬわよ、私達」


そうなる事を確信した。



    (第7話へ続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


海のど真ん中で焦りを感じるリナと慎吾。


リナは慎吾にパワーストーンを使うよう指示。言われた通り、パワーストーンで辺りを強烈な光で照らした。


その時、海底で揺らめく何かが見えた。


次回 「 第7話  霧 」

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