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第4話  斎場御嶽(せーふぁうたき)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 シーズン3


      「沖縄海底遺跡の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


箱根大学1年の慎吾、同2年のリナ。


リナは賭け麻雀で得たお金で、慎吾に沖縄行きの航空チケットをプレゼントする。


沖縄へ到着した2人。リナは慎吾の家へ案内された。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


      第4話   斎場御嶽せーふぁうたき  


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2月15日、金曜日。午後3時半。


南城市。




「大人2枚、お願いします」


「400円です」


慎吾はリナの分の料金も支払い、建物の中へを進める。何かの展示物がガラスケースの中に並び、それらを説明するパネルが壁に掛かっていた。沖縄の歴史的なものが書かれているようだが


「ここ、どこ?」


後ろからついてきたリナはそれらをチラリと見るだけで、興味を示そうとしない。


斎場御嶽せーふぁうたきです」


「は? 何、それ?」


御嶽うたきは、神が降り立つと言われる神聖な地。

 斎場御嶽せーふぁうたきは、その中でも最高位の御嶽うたきなんです」


「神が降り立つ場所で、お金なんか取るの?」


「今は観光地としても開放されていますから。

 そうそう、ユネスコの世界遺産にも登録されているですよ」


「へー。ふーん。そう」


気のない言葉を返すリナ。


「興味なさそうですね」


「ていうかさ。頭に入ってこない。

 神が降り立つとか、何を言ってるんだかって感じー」


いかにもつまらないというオーラをかもし出す。


「リナ先輩、少し声を抑えて。

 信仰深い人も多く訪れますから……」


建物はさほど広くなく、すぐに外に出た。


「え? もう終わり? 神様は?」


「建物の中ではないですよ。ここから……」


言うと慎吾は、木々に囲まれた登り坂の上を指さす。


「この上です」


「え? この先があんの?」


「10分程度で全て見て回れますから。この後、海へ案内しますよ」


「……」


逡巡しゅんじゅんの後


「OK。まぁ、ここはホストに従っておくわ。

 10分我慢すれば、海ね、海」


小さな溜息をついて、ポンと慎吾の肩を後ろから押した。


慎吾を先頭に、2人はやや滑りやすい足場の坂を登っていく。


「慎吾さぁ、よくここに来るの?」


「はい。家から歩いて15分程度ですからね。

 それにここは、県内でも最大級のパワースポットなんですよ」


「パワースポットねぇ……」


以前、リナは埋蔵金を巡る事件で慎吾と共にパワースポットを訪れた事がある。


  【赤城山だったっけ?】


慎吾と慎吾の師匠ししょう的存在である故人・江浜、そして江浜の娘あんずはその場所で強力な霊的力を得ていた。


  【私は全く何も感じなかったけど】


慎吾の後をついていくリナ。


「ん~」


両手を広げ、深呼吸しながら歩く慎吾。


「リナ先輩は何か感じません? 力がみなぎるような」


真似して深呼吸してみたが、何も感じない。


「全然……」


「よかった」


「よかった?」


「えぇ。非常に強力なパワースポットですから。

 パワーを感じるだけならいいのですが……


 感じすぎて、気分悪くなる人が結構いるんですよ」


「あ、そ」


私には関係ないというオーラのリナ。


「沖縄は霊的な場所が多いだけでなく、霊的なものを感じる人も多いんです。

 強力過ぎるパワースポットなど、逆に近寄れない人もいてですね……」

 

「……」


慎吾の言葉がリナの耳に入ると、即座に反対の耳から出ていく。


「……」


大きな木々が立ち並ぶなか、幅の狭い石歩道に沿って歩いて行く。不意に広がった空間に大きな岩場があり、人々が手を合わせ拝んでいたり、写真を撮ったりしている。


  【神の降り立った場所? パワースポット?】


リナには全く神聖さなど感じなかった。ふと前を見ると


「……」


慎吾が至る所に視線を突き刺している。


「何か探しているの?」


「あ、いえ」


笑ってごまかす慎吾。


「……」


何か隠し事をしていそうな雰囲気を感じたリナだが


「わ! 何、ここ!?」


目の前に現れた不思議な光景に、心が奪われた。


10数mはあるであろう大きな岩がそびえ立ち、お互いを支えるようわずかに横へ傾き、重なり合っている。その下はまるでトンネルのように、直角三角形のような空間が数m奥へ続いていた。


三庫理さんぐぅいと呼ばれる場所です。

 この先にチョウノハナ(京のはな)と呼ばれる、拝むための場所があるんですよ」


2人は巨岩トンネルを通っていく。やがて小さな拝所があり、その向こうにはあの光景が見えた。


「わぁ……」


思わずリナの声が漏れる。木々に囲まれた空間の向こうに、沖縄の青い海が広がっていた。


海と空を分かつ水平線を見ていると


「パワースポット云々(うんぬん)はわかんないけどさ。

 こんなステキな海見ると、元気になる!」


体中に何かを感じ、自然と笑顔になる。海を見た事でテンションが上がり、元気になったと理解した。


「……」


慎吾もまた、海の方を見ながら視線を泳がせている。


「あれ?」


ポニーテールを潮風に揺らせながら


「なんか島があるわね」


リナは目を細めた。


久高くだか島ですね」


「久高島?」


「えぇ。よく皇族関係も訪れている島です。もちろん、お忍びでですが」


「皇族関係? え? 天皇陛下とか?」


「はい」


「嘘。いくら沖縄が有名な観光地だとしても……

 あんな小さな島に、天皇が行くわけないっしょ」


「観光じゃないですよ」


「え?」


「久高島は……

 神の作った島ですから」


「……」


今一度慎吾の言葉を、頭の中で反芻はんすうしてみた。


「言ってる意味がわかんない。

 なんで神が作った島に天皇が?」


「え? いや、本気で……」


目を丸くした慎吾はリナを見つめる。


「本気で聞いてますよね?」


「?」


リナが冗談を言ってるようには見えない。


「どうしよう。古事記の話からすべきかな?」


慎吾が難しい顔をしたので


「あ、何? また歴史の話? それとも文学?」


「まぁ、しいていえば両方ですかね」


「パス! 話さなくていい!」


自分の質問を取り下げた。


「沖縄の海が美しいという事だけはちゃんと理解してるから!

 あと、久高島が神の島って事ね! うんうん。わかった!」


何やらめんどくさい説明になりそうだと察したリナは、慎吾が話そうとする事を拒否する。


「じゃぁ少しだけ。

 久高島の東側には、ニライカナイっていう神々の島があると言われているんです。


 だからあの島は最高の聖地として……」


歴史と文学を愛する慎吾。


「……」


リナは数字に関しては人並み外れた記憶力を持っている。またプログラミングも得意とし、ネットの世界ならあらゆるところへ進入できる自信がある。反面、歴史だの文学だのの話は全く頭に入らないし、記憶にも残らない。


「かつての琉球国王も自ら久高島に出向き、祭祀さいしを……」


リナに説明しながら、慎吾はじっとその島を見つめる。


  【あの島の近く……】


飛行機の中で感じた何か。それが、視線の先にいるようだと強く感じた。。



★☆


  【リナ先輩と僕の目的地は同じだ】


海を見つめながら慎吾は一通り話しを終えた。


「さ、リナ先輩。海、行きましょうか」


ついにその言葉を言ってくれた。


「うん!」


さっきまでのテンションとは大違い。斎場御嶽せーふぁうたきに来て、初めてリナが慎吾の先に立って歩いて行く。


「!?」


突然、リナは三庫理さんぐぅいのトンネルで立ち止まった。


「どうかしました?」


「いや。何か、クモの巣が……」


「え? クモの巣?」


「うん、この感覚はクモの巣よ。最初通った時はなかったのに。

 たった数分で巣を作り上げるなんて、働き者のクモだわ」


頬を払ったリナは、再び歩き出そうとする。


「あれ? どったの? 早く海へ行きましょうよ」


2,3歩歩いて立ち止まったリナ。振り返ると


「……」


慎吾が無表情で立ち止まっている。


「あ、はい。今すぐ」


思い出したように、再び歩き出した。


「海までどれぐらいで着く?」


「えっと。ここを出たら、歩いて20分ぐらいです」


「走れば10分ね!

 昨日買ったコレ、ついにデビューだわ!」


リナは首元から、クイッと服の下にあるブラ紐を握った。箱根を出るときからすでに着用していた水着だ。


「……」


「何よ。パワースポット来たのに、元気なくなってない?

 ちょっとは私を見習って、テンション上げなさい!」


「はい……」


ここに来た時とは全くテンションが入れ替わっている2人。


  【クモなどいない場所で、クモの巣を感じる時は……】


何かの霊とすれ違った時だという事を慎吾は知っている。


  【霊感のない人間は感じないはずだけど……】


小走りするリナの背中を追いかけながら


  【リナ先輩にも霊感が?】


複雑な感情が体中を駆け巡った。




     (第5話へ続く)

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次回予告


斎場御嶽せーふぁうたきをでた瞬間、小さな地震が発生した。


やがて揺れは収まったものの、不安になる慎吾。


リナは沖縄の海で豪快に泳ぎ始めたが、突然天気が崩れ、雷が海へと落ちた。


次回 「 第5話  スコール 」

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