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第11話  海底遺跡

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 SEASON 4


      「沖縄・海底遺跡の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


箱根大学1年の慎吾、2年のリナ。リナは賭け麻雀で得たお金で、慎吾に沖縄行きの航空チケットをプレゼントする。沖縄の海で遊泳中、天候が急変。陸から遠く離れた場所で漂流してしまった。


海底の閉ざされた空間に閉じこめられた2人。何とか脱出しようとするのだが……


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


      第11話  海底遺跡


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「……」


手を握られ、沈黙を保つ慎吾。少しずつリナの手に暖かみがもどっているのがわかる。


「スゥ……」


目を閉じ、大きく深呼吸するリナ。


「ハァ……」


パワーストーンの光だけでなく、慎吾の手の温かさも感じ取っていた。




★☆


15分後。


「ありがと。だいぶよくなった」


何度も深呼吸を繰り返したリナは、すっくと立ち上がる。


「ん……」


思い切り背伸びをした後、軽く5~6歩いてみた。


「うん、大丈夫。まだ体はダルいけど、問題ない」


それを聞いた慎吾が笑顔で立ち上がる。


「安心しました。無理はしないで下さいね。

 もし何かあったら、僕が……」


「あんた、私の保護者? 心配してくれるのはありがたいけどさ……

 度が過ぎるとムカつくんだけど」


そのセリフを聞いた慎吾は


「あは。いつものリナ先輩だ」


満面の笑みを浮かべた。


「……」


相変わらず喜ぶツボのわからない男だ。


「……」


軽くストレッチをしながら、今いる場所を見渡す。


海底洞窟とでもいおうか、両サイドは狭い空間なれど奥はかなり深くまで続いているようだ。岩の天井も見え、かなり高く感じられた。天井岩の隙間から強烈な光が差し込んでいる。


  【何の光だろ?】


先ほどサメに襲われた空間は光が届かなかったが、今いる場所は周りを確認できるほど明るい。


「で? これからどうするの? あの何とかザメはなんて言ってた?」


やや皮肉混じりに言うリナ。


「とりあえず、奥まで歩いてみましょう」


特に気にする様子を見せない慎吾は、ハーフパンツのポケットにパワーストーンを押し込む。リナの前に立つとスタスタと歩き始めた。


2人は海中から岩場へあがっている。時々水たまりのように海水が溜まってる場所があり、その中には小さな魚がうごめいていた。


「……」


慎吾の後ろを歩くリナ。


  【体、おも……】


久々に陸にあがったせいか、体中、どこもかしこも重りをつけているようだ。


  【ダイエットしなきゃ。水泳って、有酸素運動だったわよね……】


ふと自分の両手を見つめると、びっくりするほどふやけていた。


  【泳ぎ過ぎは、美容に悪いってか】


「リナ先輩、大丈夫ですか?」


時折慎吾は足を止め、リナに声をかける。


「あー、もう大丈夫だってば。ちょうど今、ダイエットあきらめたとこよ」


「ダイエット? リナ先輩が?」


ふとビキニ姿のリナを見て、ほほを赤らめる。


「まぁね。一応、年頃の乙女だし」


言いながら自分の腹部をつねった。


「あ、えっと……」


恥ずかしさからリナに背を向けた慎吾は


「あ、あの。光って、どうして温かいんですか?」


ごまかすように質問した。


「あんた、ホントに数理系苦手よね。光は体に当たると吸収されるの。

 そして光エネルギーは、熱になるから温かく感じるのよ」


「へ、へぇ」


慎吾は高い高い天井を見つめた。


「それよりさ。どこまで続いているの、この洞窟みたいな場所」


あの細い穴を通ってこちら側についた時は幅が20m程の空間だったが、今は幅が5m程度の通路のような場所。緩やかなカーブに沿って、2人は奥へ進んでいる。両サイドは高さ50m近い岩壁で、天井もまた岩のゴツゴツした表面が見える。


相変わらず天井岩の隙間から光が差し込んでいるが、未だにその光の正体はわからない。足下は凸凹岩で、低い位置には海水が溜まっている場所が続く。


「?」


慎吾が何かに気づいた。歩きながら横の岩壁に手を添える。


「何? 何かあった?」


後ろから声をかけるリナ。


「えぇ。この岩……

 ちょっと黒っぽいから、何かなと」


「……」


リナも岩壁に手を触れる。


「確かにここらへんの岩、ふつうのとは違うみたいね。

 何かの鉱物かしら?」


「鉱物?」


「たぶんだけどね」


「沖縄近海には、豊富な資源が眠ってるって……

 よくニュースで聞きます」


「ふ~ん……」


リナは特に興味を示さず、歩き続けた。


歩き始めて10分が過ぎた頃、2人は開けた場所に出る。


「わぁ……」


先頭の慎吾が、感嘆の声をあげた。足下は相変わらずゴツゴツした岩場で、いたるところに海水の水たまりが見える。しかし先ほどまでの細い通路のような場所とは違い、ドーム型野球場のような開けた空間で、石や岩による建造物のような物が見えた。


「こ、ここは……」


上を見つめると、50mぐらい先だろうか。天井はなく


「そ、空が……」


完全に開けている。


「……」


リナも上を見つめている。


「ありえない。もう太陽落ちてる時間なのに……」


青空と雲が見えた。太陽は見えないが、完全に開けた天井からは光が差し込み、自分たちのいる場所がどういうところなのかハッキリと判別できた。


「よくわからないけど、ニセモノの空と雲ね。

 何がここを照らしているのかはわからないけど……」


「リナ先輩、見てください」


慎吾は1本の石柱へ歩み寄った。高さは慎吾よりやや低め、1m50cmぐらいの高さの石柱だ。直径は40cmぐらいで、先の方はかなり凸凹しており、何となく人の顔に見える。


「何、これ? 何か子供みたいね」


「たぶんコレ、人頭税石にんとうぜいせきです」


※ 「じんとうぜいせき」とも言う


「は? ニントー?」


「昔、沖縄が琉球りゅうきゅうと呼ばれていた頃……

 宮古島や八重山島で人頭税にんとうぜいという、重い税が島民に課せられたんです。


 この石と同じ高さになるまで成長したら、税を課せられたと言われています」


「……」


慎吾のいう人頭税石が、等間隔に奥まで何体も続いていた。


「これだけ綺麗に並んでいたら自然物じゃない、人が並べたんだろう事は確かだけど……

 何? 海底に住んでる人にまで税金を課していたっていうの?


 それはちょっと信じられないわね」


「まぁ、確かに……

 ただ人頭税石も、ホントに税を課す目安につかわれていたかどうかは……


 実のところそういった事を示す資料や伝承はなく、謎の石柱なんです」


「まぁ、税金の話はどうでもいいのよ。

 問題は今でも人がいるか、そして私たちが元の場所へ戻れるか……ね」


慎吾とリナは、さらに奥へと歩いていくが、足場の起伏が激しく歩きづらい。運動神経のよい2人は、凸凹道をスイスイと先へ進んでいく。


「わ……」


奥に行くと大小様々な直方体状の切石がたくさんあった。階段状に整然と積まれていたり、円形状に積まれていたり、あるいは乱雑に積み重ねられているところもあった。


「これだけの物を作れるって事は……

 けっこう人が住んでいたようね。今は全く気配感じないけど」


建造物の1つを軽く触れたリナ。


「海底遺跡ですよ! こんな遺跡があるなんて、全く聞いたことありません!

 僕たちが最初の発見者です!」


慎吾は興奮気味に、周りにある切石を触りまくっている。


「すごい! 本当にすごい! まるでエジプトのカルナック遺跡みたいだ!

 本島からこんな近くにあるのに……


 どうして今まで発見されなかったんだろう!?」


「……」


慎吾とは対照的に、リナは冷静に周りを見ていた。


「……」


何度も上を見る。空と雲が見えるが……


  【空が見えるなんてありえない。何かがおかしいのは間違いないけんだけど……】


やがて2人の前に岩壁が立ちはだかった。


「行き止まり……」


左右を見てもさらに奥へと続く場所はなさそうだ。


「完全に袋小路ね」


「そんな。まだ何かあるはずなのに。

 絶対、奥に通じる通路か何かがあるはず……」


慎吾は先へ進む場所がないかと、岩壁に両手をつきながら辺りを探っている。


「なんで、この先に何かあると思うわけ?」


腕組みをしたリナが問いかける。


「ここには平らな場所がほとんどありません。

 おそらく祈りをささげたり、儀式的な事をやる場所だと思います。


 しかし人が生活していたなら、必ず平らな場所……

 居住区があるはずなんです」


「……」


リナは今一度通ってきたところを見渡した。


「なるほど」


今いる場所は、ごつごつした場所だ。


  【確かにこんなところで生活しろと言われたら……】


「凸凹した場所だらけで、住みにくい事この上なしね」


「絶対…… 絶対、この先があるはずなのに……」


「慎吾の言うこともわかるけどさ。実際のところ無い物は無いわけなんだし……」


リナもまた、慎吾ほどではないが絶望感に襲われている。


  【行けるところは全て行き尽くした。これからどうすれば……】


今来た道を戻っても、サメに襲われたあの空間へたどり着くだけだ。


「最悪、飢え死に。あるいは……」


天井を見上げるリナ。完全に開けて雲と空が見え、十分な光が差し込んでいる。チラリと横の岩壁を見た。


「ロッククライミングのすえ、転落死ってとこね」


大きくため息をついたリナ。


「……」


ここを脱出する方法が何も思いつかない。


「……」


慎吾の方へ視線を移す。パワーストーンを右手に握り、左手で壁を触りながらゆっくり歩いていた。


「何してんの?」


「……」


よほど集中しているようで、リナの問いかけに返事をしない。よく見ると彼は目を閉じていた。


「……」


ふと慎吾は立ち止まる。


「……」


パワーストーンを握る右手に力を入れた。そして


「ここだ」


確信めいた声を出す。


「何? 何がそこにあるの?」


「この先、奥に空間があります。この岩の向こうに……」


「……」


この1年間、慎吾の霊能力なるものを目にしてきたが、月日を追うごとにいろんな能力を身につけ、レベルアップしているのがわかる。


「で? どうやってあちら側へ行くの? 剣でも突き刺して、岩を打ち砕く?」


慎吾は首を振った。


「3mぐらい厚みのある岩です。さすがに砕くわけには……」


「岩の厚みまでわかるの?」


「はい」


「ふ~ん。とりあえずあちら側に何かあるってわけよね……」


リナは慎吾の隣へ行くと、両手を岩壁にあて何かを探し始めた。


「岩が薄くなってるところがあるかも。

 さっきのサメみたいに、何か衝撃与えたら人が通れる穴が出てくるとか……」


「僕もそれを考えていました。絶対に何かあるはずです!」


2人は行き止まりになった岩壁をくまなくチェックした。しかし……



★☆


10分後。


「これだけ探しても見つからないって事は……

 やっぱ、何もないんじゃない?」


「……」


慎吾は無言で向こうへ行くための【何か】を探し続けている。


「……」


リナは岩壁を背に、その場で座り込んだ。


「ノド、かわいた……」


上を見上げ、ため息をつく。


「……」


そのまま上を見ていると


「?」


岩壁から妙な出っ張りが出ているのに気づいた。


  【何だろ?】


再び立ち上がると、ちょうど目の高さにその出っ張りがある。


「五角形……」


両手を広げた程のサイズ、見事なまでに正五角形の形をした石が10cmほどつきだしている。


  【星砂ほしずなは聞いた事あるけど、星石ほしいしってのもあったっけ?】


それを触ってみると、予想に反してグラついた。どうやら1枚岩の一部ではないようだ。


「……」


両手で五角形石を握り、何度か動かす。


「!?」


下側に強く押すと、何かがカチッとはまったような気がした。


「……」


下側に押したまま、さらに奥へと押し込むと……


「わ……」


五角形石は奥へと押し込まれていく。そして


  ゴゴゴゴ……


小さな音が鳴り響いた。


「し、慎吾……」


か細い声を出すが、返事はない。横を見ると一心不乱に岩壁を触りまくっている慎吾の姿が目に入る。


「慎吾!!」


「は、はい!?」


ようやくリナの声に気づいた慎吾がよってくる。


「どうしました?」


「……」


リナはあごをちょこんと、前の壁に突き出した。


「?」


さされた方を見る慎吾。


「え?」


この場に似つかわしくない物がある。


「……」


首を横に振った慎吾は目をこすった後、もう1度それを見た。


「な、何でこんな物が?」




     (続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


壁から現れた、その場に似つかわしくない物体。それは2人がよく見慣れたものだが……


岩壁の向こうに何かがあると確信した2人は、先へ進むために知恵をしぼる。




次回 「 第12話  オーパーツ 」

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