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第10話  光

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 慎吾のスピリチュアル事件簿 SEASON 4


      「沖縄・海底遺跡の謎」 


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前回までのあらすじ


箱根大学1年の慎吾、同2年のリナ。リナは賭け麻雀で得たお金で、慎吾に沖縄行きの航空チケットをプレゼントする。


沖縄の海で泳いでいた2人だが、天候が急変。陸から遠く離れた場所で漂流してしまった。


不自然な泡が出てくる所を発見したリナは、慎吾に泡が湧き出てくる海底を調べさせた。突然海底に穴があき、2人は吸い込まれる。岩壁に囲まれたドーム状の空間に閉じこめられた2人は、人食いサメと遭遇した。



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      第10話  光


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暗闇の中、体長5mを超える人食いザメが2人に向かっていく。


「リナ先輩!」


とっさに慎吾がリナの前に出た。とはいえ暗闇の中、前後左右はわからないが


  ザザザ……


【音】がする方を向き、リナを自分の背後に位置させる。


「し、慎吾……」


後ろから弱々しい声をあげるリナ。


「静かに! 音に集中して!」


パワーストーンを落としてしまった右手で拳を作り、サメがやってくるであろう方向へ向けた。何かあれば、素手で戦うつもりだ。


  【く、くる!】


2人とも体中に力が入る。しかし巨大なサメと正面衝突するかと思われたその瞬間


「!?」


予想しなかった事態が起こった。


  ドッガン!!


突然、後方から強烈な衝撃音が聞こえる。


「な、何!?」


音と同時に、その方向からわずかな光が差し込んできた。


「な……」


事態が飲み込めないリナと慎吾は、慌てて音のした方を振り返る。


「!」


「!」


大小の石が飛び散ってこちらに向かってくるのが目に入った。それを回避するため、2人は反射的に相手の手を取り海中へ潜り込む。


サメは慎吾達にぶつかる直前、急角度で方向転換し横をすり抜け、2人の1m後方の岩壁に強烈に体当たりしたのだ。その際、強烈な衝撃で岩壁の一部が砕け散り、慎吾達を襲った。


しかし2人にそんな事を理解する余裕はない。ただ目の前にある危機に対して即座に体が勝手に動いただけだ。


「……」


「……」


海中で見つめ合う2人。お互い相手の手を取り、助けようとした行動。それが全く同時だったため、目を丸くしている。


「ぷはっ!」


「かはっ!」


海面に顔を出した2人は、緊張を保ったまま辺りを見回す。


「……」


かすかに差し込んだ光を頼りに周りを見渡すが、サメの姿は見えない。チラリと背中の岩壁を見やると、さっきまでサッカーボール大の大きさだった穴が、人一人が通れるほどに広がっており、そこから光が差し込んでいる。


とはいえ、慎吾達の周辺2~3mが何とか見える程度で、遠くの状況はわからない。


「サ、サメは?」


不安そうに声を出すリナは、慎吾の肩を掴んだ。


「い、います。気配を感じます」


慎吾は表情をこわばらせたまま、素手で戦闘態勢に入っている。


この閉ざされた空間を遊泳しているシュモクザメは人食いザメだ。暗闇から光が差し込み、若干周りが見えるようになったとはいえ


  【危機的状況である事に変わりはない……】


そう思えた。


  ザッパーン!!


突如慎吾の正面にサメが現れる。5mはあろうかという巨体は山が隆起するがごとく、慎吾の正面に立ちはだかった。


「慎吾!」


背後にいたリナは力の限り慎吾の肩を握る。


「?」


サメは青白い腹部を見せ、背面飛びのように慎吾から離れた場所で着水した。そしてそのまま背びれを海面に現したまま、2人から離れていく。


「……」


その姿はやがて暗闇の中へ消えていった。


「!?」


反射的に目の前におちてきた石をキャッチする慎吾。


  【パ、パワーストーン!】


先ほど落としてしまったそれが、慎吾の両手に握られていた。


「し、慎吾! 大丈夫!」


「……」


「慎吾!?」


慎吾の肩を揺らす。


「あ、はい。大丈夫です……」


その視線は遠くを見つめていた。さっきまで強烈に感じたサメの存在感は全くない。


「サ、サメ! 人食いザメは!?」


心配そうにリナが声をかけるが


「彼は…… 僕たちを助けたいみたいです」


「は?」


予想外の言葉が返ってきた。


「あんた、何言ってんの? 人食いサメが人を助けるって?」


「えっと……。はい」


リナからしてみればおかしな事を言っているという事はわかるが、自分の言った事に自信がある。


「冗談よしてよ。いつから魚の思考がわかるように……」


「今はそんな議論してる時ではありません」


「……」


正論だ。


「彼が道を示してくれました。あそこへ行けと」


根拠はないが確信はある。慎吾が見つめた場所へ


「……」


リナも視線を合わせる。


「あそこ?」


サメが体当たりした場所だ。1人なら通れるその場所からは、かすかに光が漏れている。


「えぇ」


「な、何があるの? またでっかいサメとか出てきたら最悪よ」


「大丈夫です」


慎吾はパワーストーンをぎゅっと握りしめると


「唵!」


かけ声とともに、光の剣を出した。


「何かあれば僕が」


リナの方を向いてニコリと笑う。言葉とは裏腹に、危機感は全くない。


「僕が先に行きます。すぐ、ついてきて下さい」


「う、うん」


「……」


動こうとしない慎吾。


「リナ先輩?」


「な、何?」


慎吾は自分の右肩を一瞥いちべつした。


「あ! ごめん!」


未だに力強く慎吾の肩を握りしめていた事に気づく。


「……」


その手を通してリナの不安が伝わってきた。


「大丈夫ですよ」


察した慎吾は笑顔を見せる。


「では、お先に」


そう言うとウミヘビのように体をくねらせ、穴に向け泳いでいった。


「ま、待ってよ!」


後ろからリナがクロールでついてくる。


岩壁に開いた穴は5mほど奥へ続いていた。そこを抜けると


「こ、ここは……」


再び岩壁に囲まれた空間。


「何? また同じようなところ?」


同じく穴を出たリナに


「いえ」


慎吾が答えた。先ほどと違いパワーストーンを使わずとも明るい空間だ。


「……」


上を見上げる2人。先ほどの空間より遙かに高い位置に天井が見える。高さは50mぐらいだろうか。いびつな岩の隙間に所々穴が開いていて、そこから強烈な光が差し込んでいた。


「な、何の光でしょうか? 太陽は沈んでるはずだし」


リナも同じ事を思うが、答は見つからない。


「……」


視線を前に移し、辺りを見渡す。パっと見、幅は20mといった場所で、背中は先ほどの空間とつながった岩壁。両サイドもまた岩壁だが、閉ざされた場所ではなく、アーケード通りのように奥へ続いていた。さらに


「もう、泳ぐ必要ないみたいです」


足が海底についた。先へ進むと水深が浅くなり、泳ぐのではなく海底を歩く形となる。


「海底が盛り上がっている……」


穴を出て20mほど行くと、2人の体は完全に水から出た。凸凹でこぼこの岩場を、裸足で歩く2人。


「あ、あれ?」


リナが裏返った声をあげる。


「どうしました?」


慎吾が振り返ると


「あぅ……」


こちらも裏返った声を漏らした。トラブル続きでゆっくり見る機会のなかったリナの水着姿(もっともゆっくり見る機会があっても、視線をそらすのだが)。それを真正面から直視し、顔を赤らめる。


足下の岩場を見ながら


「ど、どうかしました?」


もう1度リナに声をかける。


「あ、足が……」


「……」


チラリとリナのあらわになった太ももを見ると、ガクガク震えていた。


「足が動かない……」


瞬間、ガクンと膝が落ちる。


「リナ先輩!」


反射的にリナの両肩を支えた。


「はぁ、はぁ……」


膝をついたリナは呼吸を乱し始める。


「はぁ、はぁ。う、嘘でしょ。はぁ、はぁ。か、体が……」


急に寒気を感じ体中が震え出す。しかし自分の意志で震えを止められない。


「長時間泳いでたから……

 体力を使いきったのかも」


慎吾の言葉に対し


「はぁ、はぁ……」


  【あんたは余裕なわけ? 私より体力あるっていう当てつけ?】


文句を言いたいところだが、今はそれどころではない。


「はぁ、はぁ」


先ほどまではピンチの連続ゆえ、緊張から疲労を忘れていた。危機を脱し安心したせいか、一気に蓄積されたものが出てきたのだと理解する。


「さ、寒……」


体の震えが止まらない。慎吾はリナの水着姿を直視しないよう、背後に立ち


「な、何か毛布みたいものがあれば……」


心配そうに声をかけた。辺りを見渡すが、暖をとれるような物は見あたらない。


震えるリナは


「光」


声を絞り出す。


「え?」


首をかしげた慎吾。


「光…… 光、出して……」


今いる場所は、周りが十分見えるほど明るいが


「は、はい」


慎吾はリナの要求に応える。


リナの横に回り、同じ目線になるよう慎吾も膝をついた。パワーストーンを握りしめ、リナの目の前に持ってくると


「唵!」


かけ声とともに、パワーストーンから光を発した。


「……」


リナは無言で慎吾のパワーストーンを持つ手を握りしめた。


「リ、リナ先輩……」


とても冷たい手だ。


「もっと…… もっと強い光、出せる?」


呼吸を乱しながら、慎吾に要求する。頷いた慎吾は無言で頷いたあと


「唵!」


強くパワーストーンを握りしめた。先ほどよりも強烈な光が2人の顔や、岩壁を照らした。


「暖かい……」


リナは慎吾の手の上から、両手でパワーストーンを握りしめた。



     (続く)

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次回予告


奥へ入っていった2人は、明らかに人が造りし数々の物と遭遇する。


そしてその奥には……


次回 「 第11話  海底遺跡 」

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