表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

第9話  閉ざされし場所

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 慎吾のスピリチュアル事件簿 SEASON 4


      「沖縄・海底遺跡の謎」 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回までのあらすじ


箱根大学1年の慎吾、同2年のリナ。リナは賭け麻雀で得たお金で、慎吾に沖縄行きの航空チケットをプレゼントする。


沖縄の海で泳いでいた2人だが、天候が急変。陸から遠く離れた場所で漂流してしまった。


海底で不自然な泡を発見したリナ。慎吾に調べさせるが、突然海底に穴が開き、2人は吸い込まれていく。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


      第9話  閉ざされし場所


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  【ぐく……】


慎吾を先頭に


  【ちょっと…… マジやばい……】


2人は海底に開いた穴へと吸い込まれていった。


直径2m程だろうか。海底深くへと続く細長い穴に、まるでウォータースライダーに乗ってるかのように、体を右へ左へ揺らしながら落ちていく。


  【い、息が……】


慎吾ほど長時間息を止められないリナが苦しみ始めた時


「わ!」


慎吾が声をあげ


「!?」


リナは突然海水が周りから消えたのを感じた。


「え? 何?」


呼吸もでき、声もあげる事ができるが、体は重力に従って落ちている。おそるおそる下を見た瞬間


  ザッパーン!


大きな衝撃を受けた。再び海中に潜ったようだが、3m程沈んだ後、先ほどまでのような水の流れはないと気づいた。あわてて上へ泳ぐと、すぐに海面に顔を出す。


「はぁ、はぁ……」


大きく息を吸い込み周りを見渡すが、暗くて何も見えない。


「慎吾!」


リナが声をあげると


  【ここです!】


頭の中に声が聞こえた。


「下?」


気配を感じて真下を見ると、海中から薄暗い光の球が浮き上がってくるのが見えた。


  ザパン!


リナのすぐ横から、慎吾が顔を出す。


「すみません。パワーストーン落としちゃって」


右手に持つパワーストーンを見せる。ぼやけた光を放ち、お互いの顔が確認できる程度の明るさだ。


「と、とりあえず生きててよかったわ……」


2人とも立ち泳ぎの状態で、無事を確認し合う。


「ここ、どこ? もうちょっと強い光を出してよ」


「わかりました」


ちらりと右手のパワーストーンに視線を突き刺すと


「唵!」


かけ声とともに、パワーストーンから強烈な光が放たれた。


「……」


周りを見渡すと


「岩……」


360度、ドーム状の岩壁に囲まれていた。半径も高さも15~20m程度の閉ざされた空間。そのほぼ中心に2人はいた。


「……」


上を見上げたリナは


「あそこから落ちてきた?」


ドームの上側に、1カ所だけ水が滝のように流れ落ちてくる場所があった。


「そ、そうみたいですね」


そこから勢いつけて、ここまで放り出されたようだ。


「海底からここまで、どういう構造になってるのかしら……」


疑問は残るが


  【それよりも、これからどうすれば……】


何度周りを見渡しても岩壁ばかり。


「ど、どうしましょう、リナ先輩」


「……」


完全に閉ざされた空間。


  【このままじゃ、結局体力尽きておぼれ死ぬだけ……】


状況は最悪に思えたが


「リナ先輩!」


慎吾が明るい声を出す。


「あそこ!」


リナの右側を指さしているが、岩壁が見えるだけだ。


「何?」


「風です」


「風?」


「はい。あそこから風が吹いています!」


「……」


言われてみれば、何となく空気の流れを感じるような感じないような。と思ってる間に、慎吾はそこへ向け泳ぎ始めた。


「……」


リナもついていく。岩壁に近づくと、確かに空気の流れを感じた。


「リナ先輩、ここです!」


岩壁にたどり着いた慎吾は、海面との境界を指さす。そこには、サッカーボール程度の穴が開いていた。


「……」


顔を近づけて、穴の奥を覗く慎吾。


「な、何か見える?」


パワーストーンの強烈な光で奥を照らしてみたが


「見えません。かなり深く続いているようですが……」


「でも空気の流れがあるって事は、向こう側にも何かあるって事よね」


「そ、そうですが……」


穴は小さいので、入っていくことは不可能だ。


「……」


今一度周りを見渡すが、どこもかしこも閉ざされた岩壁。


「……」


チラリと慎吾を見るリナ。慎吾はまだ元気そうだが、リナは明らかな疲労を感じていた。


  【長時間海にいると、結構くるわね……】


やや焦りを感じるが


  【冷静に。こんなところで死ぬなんて、死んでもイヤ!】


必死に落ち着こうとする。しかし


「リ、リナ先輩……」


先ほどの明るい声とは対照的な声をかけられた。やっと絞り出したような、元気のない声だ。


「?」


慎吾は大きく見開いた目で、どこかをじっと見ている。


「な、何よ。暗い声出して」


視線を追ってリナもその方向を見る。


「こっちまで気分が落ちこ……」


それ以上の言葉を飲み込んだ。


「な、何よ、あれ……」


ようやく声を絞り出したリナは、信じられない光景を目にする。


さっきまで2人がいた場所に


「さ、魚?」


大きなひれのようなものが、海面上をジグザグに動いているのが見えた。本来は黒っぽい色だろうが、パワーストーンの明かりに照らされ、青白く不気味に発光している。


「……」


じっと、その動きを見守る2人。海面上に1mは突き出た三角形のそれは、まるでこの閉ざされた海のぬしであるかのように、奔放に動き回っていた。


海面上に見えるのは巨大な三角形だけだが、海中に巨大な何かがいる事は容易に想像できる。


「まさかでしょ? あんなでっかい魚が……」


  ザッパーン!


その生き物が、突然海面上を飛び跳ねた。


「な……」


「く、くじら!?」


体長5mはゆうに超える巨大な生き物が、一瞬とはいえ間違いなくその顔をこちらに向けた。T字型の異様な顔面、そしてその口からは何十もの白く大きな歯が見えた。


「……」


ゴクリと息をのむリナ。


「シュ、シュモクザメだ」


慎吾の言葉に対し


「シュ……サメ?」


背筋が凍った。


「ひ、人食いサメの一種です!」


慎吾の声が震えている。


「ひ、人食い!?」


さらに恐怖を募らせるリナ。今一度それに視線を合わせようとするが、飛び跳ねた勢いで深く潜ったらしく、その姿は見えない。


「……」


「……」


2人とも呆然と固まっていたが


「光の剣!」


リナが声をあげた。


「慎吾、光の剣を出して!」


「え?」


「早く! 襲われたら、それしか武器がないのよ!」


とはいえ、自分たちの3倍以上はゆうにある巨体。果たして太刀打ち出来るだろうか疑問だ。


「ひ、人食い種とはいえ、こちらから刺激しなければ……

 サメが人間を襲う事は滅多に……


 ないはず……」


その言葉に自信をもてない慎吾。


「と、とにかく静かにしていれば、そのうち……」


言いかけた慎吾の視線が、再び海面上に現れた巨大な三角形をとらえた。


しばらくジグザグに閉ざされた空間を泳いでいたそれは、突然こちらに狙いを定めたかのようにまっすぐ向かってくる。


「は、早く! 光の剣を!」


リナはそれを凝視したまま、慎吾の右肩を揺らした。


「あ!」


肩を揺らされた慎吾は、右手に握っていたパワーストーンを海中に落としてしまう。


「な!?」


慎吾の手からパワーストーンがこぼれ落ちたのを見て愕然とする。光源を失い、一瞬にして漆黒の闇に閉ざされた。


「く……」


暗闇の中、必死に立ち泳ぎする2人。見えはしないものの、あの三角形が猛烈な勢いでこちらに向かっているのが音でわかる。


  【こ、こんなところで死ぬわけには……】


リナは慎吾の左腕を、両手で抱きしめた。



     (続く)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回予告


暗闇、閉ざされた空間、巨大なサメ……


パワーストーンも手を離れた絶体絶命の状況で、ピンチを乗り切ろうとする慎吾達だが……


次回 「 第10話  光 」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ