銀色砂時計
永遠を生きる神様が、戯れで1つのおもちゃを造りました。
ひょうたん型のガラスの中に、銀色の砂をたくさん閉じ込めただけの単純な
おもちゃ。ひっくり返すと、上から下に、砂がゆっくり流れ出します。
その流れ出る様が、とても綺麗で儚くて、神様は何度も何度も繰り返します。
銀色の砂が、さらさら さらさら 落ちていく。
ある時、ふと神様は気づきます。このおもちゃが一定の間隔で終わることに。
そして、それは同時に永遠という流れの中から、時間という概念を切り出す
行為であることに。
神様は慌てます。なんてことをしてしまったんだろうと。
永遠を生きる神様にとって、時間ほど怖ろしいものはありませんでした。
時間は全てに平等で、あらゆる物の可能性となります。物質は時間という
可能性のもと、命を持ち始め、生命を育ませていきます。
そして、時間を対価に生まれた生命は、時間の中で消えていきます。
永遠に続く、別れの悲しみ。そこから逃れるために、時間という概念を消し
たのに。
神様は、今や時間の概念へと変化した銀色のおもちゃを強く握り締め、粉々
に砕いてしまいました。
その中で育まれていたであろう、生命もろとも。
神様は涙を流しながら、手から流れ出る砂を見つめます。
銀色の砂が、さらさら さらさら 落ちていく。