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迷い街の運び屋  作者: San


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5/10

迷いの運び屋 5

目的の建物の前に着く。


 古いマンションだった。


 階段を上がる。


 二階。


 廊下の奥に目的の部屋がある。


 歩いていると、途中の壁にもたれている人がいた。


 先輩だった。


 腕を組んで、ぼんやり廊下を見ている。


 俺を見ると、小さくあごを上げた。


「……来たか。」


「はい。」


「初めてだしな。」


 少し間。


「一応、見とく。」


 それだけ言った。


 俺はドアの前に立つ。


 チャイムを押す。


 少しして、ドアが開いた。


 出てきたのは、きれいな女性だった。


 整った顔。


 髪も長くて、年齢は二十代くらいに見える。


 部屋の中を少しだけ見る。


 何もない。


 本当に何もなかった。


 家具もない。


 壁も床も空っぽだった。


 女性は箱を見る。


 それから俺を見る。


「配達です。」


 そう言って箱を渡す。


 女性は静かに受け取った。


 サインを書く。


 それだけだった。


 質問はしない。


 女性も何も言わない。


 ドアが閉まる。



 廊下を戻る。


 先輩も歩き出す。


 階段を下りながら、俺は少し言った。


「……きれいな人でしたね。」


 先輩が止まる。


「は?」


 少し振り向く。


「何言ってんだ。」


 面倒くさそうな顔で言う。


「どう見ても、おっさんだろ。」


 俺は黙った。


 先輩は少し俺を見る。


 それから、小さく息をついた。


 少しだけ、納得したような顔をした。


「……ああ。」


 また歩き出す。


「まあ。」


 階段を下りながら言う。


「そういうの、たまにあるさ。」


 それだけだった。


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