第007章 〈実戦〉
2075/4/2 a.m.8:30 仮想模倣室第5ルーム
「よしお前ら、今日から本格的な能力制御実践訓練に入る。」
志島教官が教室に立ち、生徒たちを見渡した。
「昨日の結果を踏まえて、今日は予告の通り1対1、タイマンを行う。相手の能力を見抜く観察力と、状況判断を磨け。」
ざわめく教室。
「組み合わせは乱数でランダムに出される。」
ルームの壁に次々とペア名が表示されていく。
そして
【神岐悠真】VS【鈴木舞】
「うっわ、マジか。」
舞は思わず笑った。
「昨日、手加減してねって言ったばっかなんだけど?」
「それは……無理そうですね。」
明後の合図とともに、ルームの空間が開けた草原に変化した。
悠真は即座に距離を取る。視界が揺れ、風が吹き荒れる。風圧の乱流によって、炎の温度が制御しづらくなる__これは不利だ。
「どうしたの?炎が暴れてるよ?」
舞が笑う。
風を操り、竜巻のように舞い上がりながら高速で接近してくる。風は下方向へ吹いている、これでは爆雷も、
(風使い…なら。)
「こうする!」
悠真は周辺の草を燃やすことで上昇気流を発生させ、風の流れを乱す。風による攻撃は上に反れるようになり、当たりにくくなる。それに加え、身をかがめる。
「そう来るなら、それを超えるまでよ!」
舞は風の刃を作り、上昇気流へ打ち込んでくる。
この上昇気流を用いた戦法には弱点がある。それが、炎の範囲から外に出れば、たちまちもろに攻撃を受けるようになること。そして、あまりに速い攻撃には効果が弱いこと。
風の刃は悠真の想像より数段早く、上昇気流の守りを切り裂き迫る。
「しまった!」
悠真はとっさに炎で防ぎ、後方へ飛びのく。それと同時に上昇気流の範囲外へ出た。
「どう?早いでしょ!」
舞はそう言い、次々と風の刃を飛ばす。このままではいずれ切り裂かれる。しかし、風は時に炎を吹き消すのではなく、さらに勢いを強める追い風となる。
悠真は後ろへ思いっきり走る。
「逃げるつもり?」
舞は足に竜巻をまとわせ、高速で追いかけてくる。これなら風は前方、悠真の方向から後方、舞のほうへ吹く。
「待っていたよ!この時を!」
悠真は笑みをこぼし、巨大な火球を舞へ飛ばす、火球は竜巻に巻き込まれるように舞のほうへ一直線に飛んで行く。
「これは、まずいわねぇ…」
が__舞は全身から外側へ風を吹かせ、何とか炎を弾く。
「やるじゃん。でも、次はこっちの番。私にここまでさせるんだから、そろそろ倒れてよね!『圧空乱斬』!」
舞は体に大量の風を身にまとい、圧縮する。周辺の空気が歪み始める。そして、舞は拳を悠真へ振るうと、今までとは段違いの強力な、全てを切り裂く竜巻を生み出した。
「まじか…」
(竜巻による吸い込みか、直撃はまずい!)
悠真は何とか炎で全身を覆い、攻撃を防ぎ切ろうとするが、あっけなく切り裂かれ、戦闘不能に陥る。
{神岐 悠真が戦闘不能になりました。勝者、鈴木 舞}
「イエーイ!私の勝ち!」
「負けたよ、舞さん。」
「ううん、悠真もすごかったよ!まさか風を逆に利用されるとは…」
「よくやった。悠真、これが『力の使い方』ってやつだ。……お前の力は炎だが、質量をもつ、入学戦で見せた爆雷みたいに応用を考え続けろ。まぁ、『相手の力の使い方』はお前のほうが上手だったみたいだがな。」
「はい、先生!」
======================================
〈能力紹介〉「風を統べる者」
悠真のクラスメイト、舞の能力。シンプルに風を操るもので、圧縮したり、飛行したりもできる。攻撃面では強いが、防御面が脆弱で、物理的な攻撃にはめっぽう弱い。しかし今回の相手は炎使いである悠真だったので、炎を吹き飛ばすことができた。




